ペリオ|Phase1 初期治療
SRPをして、4週後の再評価で数字がきれいに動いた。出血も止まった。——では次に会うのはいつがいいのでしょうか。3か月後のリコールは、慣習として広く行われてきましたが、その3か月のあいだ、治ったはずのポケットが実際どうなっているのかを見た研究は、意外なほど多くありません。1982年、その空白を埋めにいった論文があります。
①3か月という間隔は、どこから来たのか
歯周治療のあとのリコール間隔は、2週間から3か月、あるいはそれ以上まで、さまざまな間隔が検討されてきました。傾向としては頻度を上げるほど良好な歯周組織の健康が保たれる——ここまでは分かっていた。
ところが著者らは、当時の状況をこう書いています。「治癒した歯周ポケットが、プロフェッショナルケアの予約と予約のあいだにどうふるまうかについては、ほとんど情報がない。そのため、リコールの頻度はたいてい経験的な臨床判断に基づいて決められている」。
もう一つ、当時の議論がありました。SRPのあとに得られるアタッチメントの獲得は、新しい結合組織性の付着ではなく、炎症が引いた結果できる「長い接合上皮」だと組織学的に示されていた。だとするとその付着は、歯と歯肉を繋ぎとめる形式として本当に安定なのかという疑問が投げかけられていたのです。
だから著者らは、逆算しました。治癒がアタッチメントの獲得とプロービング時出血の停止で特徴づけられるなら、その獲得が失われ、出血が戻ってくることが再発のサインになるはずだ。ならば3か月のあいだにそのサインが出るかどうかを、実際に測ってみればいい。
②1回のSRPだけで、16週間追いかけた
対象は、慢性歯周炎で紹介されてきた10名の患者さんの128ポケット(手用プローブで3〜7mm)。ここに徹底した歯肉縁下のルートプレーニングを、たった1回だけ行いました。
測定は治療直前と、1・2・3・4・8・16週。この論文が扱うのは4週から16週まで=治った状態がどこまで保たれるかの部分です(4週までの初期治癒は同じチームの別報にあります)。
特筆すべきはプロービング圧を機械で統制していることです。15gm・25gm・50gmの規定圧と、手用プロービングの4通りで、ポケット深さ・プロービング時出血・歯肉縁の位置・臨床的アタッチメントレベル・歯肉指数・プラーク指数を記録しています。1982年の研究としては、かなり丁寧な作りです。
そして重要な条件がひとつ。各測定の時点で、口腔衛生指導と歯肉縁上の清掃が行われています。つまりこの研究が見ているのは「SRPを1回やって、あとは放置」ではなく、「1回のSRP+縁上の管理が続いている状態」です。
③結果:4週で得たものは、そのまま保たれた
プロービング時の出血は、25gm圧で治療前49%から4週で4%へ。8週で5%、16週で14%。16週にかけて数値としては増えていますが、統計学的に有意な増加ではありません。
手用プロービングでも同じ形です。治療前71%→4週27%→8週29%→16週37%。なおどの時点でも、プロービング圧を上げるほど出血するポケットの割合は増えました——出血を指標に使うなら圧の統制が要る、という当たり前の事実が、数字ではっきり出ています。
ポケット深さ(25gm圧)は3.60mm→2.27mm(4週)→2.27mm(8週)→2.36mm(16週)。プラーク指数は1.26→0.30→0.54→0.55、視診で炎症のあったポケットは81%→32%→33%→40%。いずれも8週・16週は治療前より有意に良く、4週との差は有意ではありませんでした。
アタッチメントレベルも同様に維持されています。25gm・50gm・手用のいずれでも、8週・16週の値は治療前より有意に良い。15gmという軽い圧だけは、8週でしか変化を検出できませんでした。
④深いポケットほど、得るものが大きい
この論文がもう一つ示したのが、初期のポケット深さによる反応の違いです。
ポケットの減少は、浅い部位(4mm未満)で0.68mm、深い部位(4mm以上)で2.07mm。アタッチメントの獲得は0.16mmに対して1.10mm。16週の時点でポケットが浅くなっていた割合は、63%に対して98%。アタッチメントを獲得した割合は37%に対して70%でした。
裏を返すと、浅い部位では63%が「変化なしか、むしろアタッチメントを失った」ということでもあります。深い部位では68%が1〜3mmのアタッチメント獲得を示したのと、きれいな対比になっています。
もう一つ、著者らが控えめに、しかしはっきり書いている点があります。「今回の1回のルートプレーニングによる治癒は、器具操作を繰り返した先行報告と驚くほどよく似ており、1回のルートプレーニングが繰り返しと同じだけ有効である可能性を示している」。
⑤明日の臨床へ
1つ目。3〜4か月というリコール間隔には、実測の裏づけがある。 著者らは「この所見は、歯周組織の健康維持のための3〜4か月というプロフェッショナルケアの頻度を支持する」と明言しています。加えて「良好なプラークコントロールを維持できる患者では、より長い間隔が適切かもしれない」とも。全員一律ではなく、その人のプラークコントロール次第という含みです。
2つ目。ただし前提は「縁上の管理が続いていること」。 この研究では各時点で口腔衛生指導と縁上清掃が行われ、その結果プラーク指数は低いまま推移しました。著者らも「これらの好ましい変化は、比較的低いレベルの歯肉縁上プラークの存在下で維持された」と条件を付けています。プラークが戻る人で同じ3か月が成立するとは、この研究は言っていません。
3つ目。再評価は「4週」で十分な情報が出ている。 4週で出た数字が16週まで動かなかったということは、4週の再評価が次の判断材料としてすでに信頼できるということでもあります。治らない部位を見極めるのに、何か月も待つ必要はない。
4つ目。出血を指標にするなら、圧を揃える。 同じ口の同じ時点でも、15gmで7%・25gmで14%・50gmで30%・手用で37%と、圧によって出血率はまるで変わりました。術者間・回次間で強さがばらつくと、その変化が「病状の変化」に見えてしまう——プロービングの再現性は、この頃から繰り返し指摘されている論点です。
今日のひとこと
10名の患者さんの128ポケット(3〜7mm)に、たった1回のSRPを行い、4週・8週・16週と追いかけた研究。4週の時点で得られた改善が、その後の3か月でどうなるかを見ています。結果、プロービング時の出血は治療前49%から4週で4%へ落ち、16週でも14%(25gm圧)。ポケット深さは3.60mmから2.27mmになり、16週でも2.36mm。8週・16週の値は、いずれも治療前より有意に良く、4週の値とは統計学的に差がない——つまり4週で手にした改善は、そのまま3か月保たれたということです。さらに深いポケットほど得が大きいことも示されました。ポケットの減少は浅い部位0.68mmに対し深い部位2.07mm、アタッチメント獲得は0.16mmに対し1.10mm。16週の時点でポケットが浅くなっていた割合は、浅い部位63%に対し深い部位98%です。著者らの結論は「1回のSRPと口腔衛生の改善によって1か月以内に起こる好ましい変化は、さらに3か月のあいだ維持できる」。3〜4か月というリコール間隔を支持し、プラークコントロールができる人ではもっと延ばせる可能性があると書かれています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


