治療のゴール達成率とSPC後の歯の喪失(システマティックレビュー・メタ解析)
PPD 4mm以下、BOP 10%未満。2018年の新分類が示した「安定した歯周炎」の基準です。では実際に、SPCへ移る時点でこの基準を満たしている患者は、どれくらいいるのでしょうか。15の研究、12,884人、323,111歯を集めた答えは——1.35%でした。そして、その先に続く数字のほうが、もっと重要です。
①「4mm残っちゃいましたね」と言う日
再評価。前よりずっと良くなった。でも7番の遠心に4mm、あそこにも5mm。教科書のゴールには届いていません。
この患者さんは、失敗なのでしょうか。——この論文は、その問いに数字で答えます。そして答えは、想像よりずっと厳しく、そして少し優しいものでした。
②それまで:ゴールは3つ、並立していた
「歯周治療のゴール」には、いま複数の定義があります。
どれも妥当に見えます。では、実際にどれだけの患者が到達しているのか。そして、到達しなかった人はその後どうなったのか。ここが空白でした。
③今回の一手:SPCへ入る時点の「達成率」を数える
著者らは、能動的な歯周治療を終えてSPC(サポーティブペリオドンタルケア)へ入った患者を追った研究を系統的に集めました。該当したのは15研究・12,884人・323,111歯。各研究の著者へ連絡を取り、解析に必要な臨床データを取り寄せています。
そのうえで、①SPC開始時に上記の基準を満たしていた割合と、②5年以上のSPCの中で、基準に届かなかったことが歯の喪失とどう結びついたかを、メタ解析で評価しました。
④結果その1:ほとんど、誰も届いていなかった
安定した歯周炎の基準を満たしていたのは1.35%。100人に1人です。EFPの治療のエンドポイントで11.00%、いちばん緩い「コントロールされた歯周炎」でも34.62%。
著者らの表現は率直です——圧倒的多数の患者と歯は、提唱されている歯周安定のエンドポイントに到達していない。
学会発表や専門誌で目にするのは、きれいに治った症例です。それは選ばれた症例だから当然で、責める話ではありません。ただ、その景色を「標準」だと思って自分の診療を測ると、物差しが狂います。
⑤結果その2:それでも、歯は残っていた
ここからが、この論文の本題です。
5年以上のSPCデータがある1,190人のうち、この期間に歯を失った人は3分の1に満たず、失われた歯は全体の3.14%でした。そして著者らは、こう結論します——圧倒的多数の患者と歯は提唱されたエンドポイントに到達しないが、それでもほとんどの歯周病患者は、平均10〜13年のSPCの中でほとんどの歯を保っている。
もちろん、届かないことが無害だという話ではありません。患者単位で見ると、「コントロールされた歯周炎」に届かなかった人の歯の喪失のリスク比は2.57、PPD 6mm未満に届かなかった人で1.98、PPD 5mm未満で1.59——いずれも統計学的に有意な関連でした。届かないほど、失いやすい。それは確かです。
⑥明日の臨床へ:ゴールを二階建てにする
今日のひとこと
ゴールに届く人はほとんどいない。それでも平均10〜13年のSPCで、失われた歯は全体の3.14%。届かないことと、失うことは、同じではない。


