1問1答 論文 歯周病

超音波スケーラー、磁歪式と圧電式で仕上がりは違うのか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

診療室にある超音波スケーラー。磁歪式(マグネット式)か、圧電式(ピエゾ式)か。どちらを使っても「歯石は取れる」ので、違いを意識する機会はあまりありません。チューリッヒ大学が、抜去歯30本を使って所要時間・歯石除去率・根面の粗さを同時に測りました。取れ高は同じでも、置いていくものが違いました。

論文
A comparative in vitro study of a magnetostrictive and a piezoelectric ultrasonic scaling instrument
著者
Busslinger A, Lampe K, Beuchat M, Lehmann B
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2001;28(7):642-649
種類
in vitro 比較研究(抜去歯30本・3群)
PMID
11422585

「超音波、どっちを使っても同じでしょう」

ユニットに付いている超音波スケーラー。磁歪式(マグネット式・キャビトロン系)か、圧電式(ピエゾ式)か。医院を移ると器械が変わって「手応えが違うな」と感じることはあっても、何がどう違うのかを確かめる機会はそう多くありません。

歯石が取れれば同じ、という感覚もあります。実際、超音波スケーラーが手用器具と同等に歯肉縁下の歯石を除去できることは、1980年代から繰り返し示されてきました。

ですがチューリッヒ大学の4人は、そこにもう2つの物差しを当てました。どれだけ速いかと、あとに残る根面はどうなっているかです。

先に結論: 歯石の取れ高は3群とも差なし。差がついたのは時間根面の粗さだった。圧電式はいちばん速いが、術後の表面粗さは手用・磁歪式より有意に粗い。磁歪式は速さと滑沢さのバランス型だった。

抜去歯30本、力もそろえて

使ったのは、歯肉縁上・縁下に歯石が付いた抜去歯30本。ランダムに3群(各10本)へ振り分けます。

  • A群|手用キュレット(M23Aユニバーサルキュレット)。1歯ごとにシャープニングし直す徹底ぶり。
  • B群|磁歪式超音波(Cavitron Jet SPS + Slimline インサート)
  • C群|圧電式超音波(Sonosoft 5 + 試作の改良チップ)

この研究の丁寧なところは力を標準化した点です。歯を感圧デバイスに固定し、キュレットは500g、両超音波は200gの側方圧が定められた範囲に収まるよう管理しました。第2の術者が時間を計り、圧を監視しています。

術者は1名。探針で触ってツルツルになるまでという、臨床と同じ終点で器具を止め、そこまでの時間をストップウォッチで測りました。

評価は3つ。①歯石量——術前後の写真を専用ソフトで白黒2値化し、対象面に占める歯石の面積率を算出。②表面粗さ(Ra)——シリコーン印象からレプリカを作り、精密表面粗さ計で5回ずつ測定。③SEM観察——実質の削除量・傷・欠けを観察。

歯石は、どれでも取れた

まず取れ高から。3群とも術前後で歯石量は有意に減少しました。

手用キュレットは21.96%→0.62%、磁歪式は15.17%→0.21%、圧電式は21.65%→1.13%。術後の残存歯石量に群間差はありませんでした。

ここは素直な結論です。正しく当てれば、どの器具でも歯石は取り切れる。器具の優劣を歯石除去能力で語る段階は、もう終わっているということです。

差がついたのは、時間と粗さ

対象面がツルツルになるまでの所要時間(秒) 140 70 0

126.1 手用キュレット

104.9 磁歪式

74.1 圧電式

p<0.01 磁歪式は他の2群と有意差なし
圧電式(74.1±27.6秒)は手用キュレット(126.1±38.2秒)より有意に短時間だった(p<0.01)。磁歪式(104.9±25.4秒)は両者の中間で、どちらとも有意差はつかなかった。

圧電式は手用の約6割の時間で終わりました。臨床でいえば、同じ枠でより多くの面に手が回るということです。

ところが、粗さを測ると順位が入れ替わります。

表面粗さ Ra(術前 → 術後):小さいほど滑沢 4 2 0

3.15 1.42 手用キュレット

2.48 1.36 磁歪式

3.31 2.02 圧電式

p<0.05 術前 術後 術前のRaは3群間で差なし

術前のRaは3群間で差がなかった。3群とも器具操作でRaは有意に減少したが、術後のRaは圧電式(2.02±0.41)だけが手用(1.42±0.48)・磁歪式(1.36±0.41)より有意に大きかった(p<0.05)。速さと引き換えに、粗い面が残ったことになる。

SEMが見せた、3つ目の物差し

粗さ計だけでは分からないことを、SEMが補います。ここは著者らも「主観的な観察」と断っていますが、示唆に富みます。

手用キュレット:もっとも滑沢な面を作る一方で、実質の削除量はもっとも多いように見えた。刃先に対応する幅広い削り跡(gouge)と、その脇の擦過傷が観察されています。

磁歪式実質の削除量がもっとも少なく、セメント質がよく保存されていた。ただし平滑な根面に小さな陥凹(pit)が点在し、高倍率では滑らかな部分と不整な部分が交互に現れました。

圧電式:削除量は中間。根面は3群でもっとも滑沢でなく不整で、陥凹はより頻繁でした。セメント質が下層の象牙質から剥がれ上がったような像が時折見られ、これがRaの高さにつながったと推測されています。

そして3群に共通して、根分岐部の入口や解剖学的な溝で削り跡が深く多くなるという所見がありました。器具の当てにくい場所ほど長く当ててしまい、適合も悪い——臨床の実感どおりの結果です。

明日の臨床へ

この論文から取り出せる実務的な線引きは、次の3つです。

速さを取るなら圧電式。 縁上の多量の歯石、時間の制約が大きい初診時のデブライドメント——「まず量を減らす」局面では、6割の時間で済む差は大きい。ただし仕上がりは粗いことを織り込んでおく。

実質を守りたいなら磁歪式(細径インサート)。 短時間で、かつ滑沢で保存的な面を残しました。SPCの反復デブライドメントのように、同じ根面を何十回と触り続ける場面では、1回あたりの削除量の少なさが効いてきます。

仕上げの滑沢さなら手用。 ただし実質の削除量は最大でした。「ツルツルになるまで」を追いすぎると、セメント質を余分に持っていく可能性があります。

力の話も忘れずに: この研究で使った側方圧は超音波で200g。著者らは、臨床的に妥当な超音波の圧は約100gで、200gは倍の力だと述べている。力を強くするほど歯質の削除量は増えるという先行研究があり、圧電式の粗さは「当てすぎ」の結果でもありうる。器具の選択より前に、まず側方圧を軽くする。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの注意: これは抜去歯を使ったin vitro研究で、1群10本という小さな規模です。著者ら自身、標準偏差の大きさと本数の少なさから「より明確な統計学的結果が出なかった」と認めています。術者は1名で研究の目的を知っており、時間と歯石量の評価にバイアスが入りうる点も明記されています。さらに2台の超音波装置は出力設定を「中」に揃えましたが、異なるメーカーの装置が同じパワーを出している保証はありません。圧電式の粗さが機種固有の性質なのか、出力が高かっただけなのかは、この研究では切り分けられません。それでも、歯石除去能力ではなく「あとに残る根面」で器具を比べた視点は今も有効で、SPCで同じ面を何度も触る私たちには、なお考える材料になります。

今日のひとこと

3種の器具はいずれも歯石をほぼ取り切りました。差がついたのは「時間」と「根面に残る粗さ」です。圧電式は最も速い一方で、術後の表面粗さは手用キュレットや磁歪式より有意に粗くなりました。磁歪式は短時間で滑沢な面を残す、いわばバランス型。手用キュレットは最も滑沢な面を作りますが、SEMでは実質の削除量が最も多く見えました。速さ・滑沢さ・実質の温存は同時には満たせません。何を優先するかで器具を選ぶ、という話です。

出典:Busslinger A, Lampe K, Beuchat M, Lehmann B. A comparative in vitro study of a magnetostrictive and a piezoelectric ultrasonic scaling instrument. J Clin Periodontol 2001;28(7):642-649. PMID: 11422585
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。