1問1答 論文 歯周病

切るべきかどうかは、深さが決めていた

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase2 歯周外科

外科か非外科か。この問いに一つの答えを出そうとすると、必ず矛盾する研究が出てきます。2015年、Mailoaらは2年以上追いかけた8つの研究を集め、術前のポケットの深さで3つに分けて解析し直しました。すると、浅い部位と深い部位で答えが正反対になりました。

論文
Long-Term Effect of Four Surgical Periodontal Therapies and One Non-Surgical Therapy: A Systematic Review and Meta-Analysis
著者
Mailoa J, Lin GH, Khoshkam V, MacEachern M, Chan HL, Wang HL
掲載
Journal of Periodontology 2015;86(10):1150-1158
種類
系統的レビュー+メタ解析(8研究=RCT 7本・準実験1本・追跡2〜13年)
PMID
26110453

同じ問いに、違う答えが返ってくる

歯周治療で、外科と非外科のどちらを選ぶか。この問いには長い議論の蓄積があるのに、研究ごとに答えが違います

2002年の系統的レビューでは、浅いポケット(1〜3mm)でポケット減少に差はなく、中等度から深いポケットでは外科のほうがよく減るとされました。ところが同じレビューは「長期では外科と非外科は同等で、どちらも付着の喪失を防ぐ」とも結論していますその後の縦断研究では、中等度(4〜6mm)と深い(7mm以上)ポケットで外科が優るという報告がある一方、ポケット減少は同等だったという報告も、非外科のほうが付着の喪失が少なかったという報告もあります

短期(1年以内)の研究に絞ると、また違う絵になります中等度のポケットでは、外科のほうがポケットはよく減るが、非外科のほうが付着はよく獲得できる浅いポケットでは、外科でも非外科でも付着を失うそして2年以上の追跡になると、結果はさらにばらつきます

先に結論: 浅い部位では外科ほど付着を失う(骨整形手術で61%)深い部位では骨整形手術がポケットをよく減らす

深さで3つに分けて、数え直す

4つのデータベースを1970年1月から2014年9月まで検索し、2641件から8本を選びました2名の査読者でκ=0.93)。条件は「慢性歯周炎の10名以上」「外科と非外科を比較した前向き比較試験」「2年以上の追跡」「ポケット深さと付着レベルの変化を報告」再生療法を扱った研究は除外されています。

8本のうち6本がスプリットマウス設計のRCT、1本が群分けのRCT、1本が準実験追跡は24か月から156か月(13年)まで外科の内訳は改良ウィドマンフラップ7本、骨整形手術3本、歯肉弁剥離掻爬2本、縁下掻爬1本で、非外科はすべてSRP全患者が3〜6か月ごとのメインテナンスを受けています

そして、この研究の肝は層別解析です。術前のポケット深さで「浅い1〜3mm」「中等度4〜6mm」「深い7mm以上」の3つに分け、それぞれで外科と非外科を比べました主要評価項目は付着レベルの獲得、副次項目はポケット深さの減少で、ランダム効果モデルで統合し、部位を解析単位としています

浅い部位と深い部位で、答えが逆になる

0 23.3% 46.7% 70% 1〜3mmの部位での付着レベルの喪失 (%) 23.2% 39.4% 61.4% スケーリング・ルートプレーニング 改良ウィドマンフラップ 骨整形手術 浅い部位ではどの治療でも付着を失うが、外科ほど失う量が大きい(メタ解析でも非外科が有意に有利)
術前1〜3mmの浅い部位での付着レベルの喪失。外科ほど失う量が大きい

浅い部位(1〜3mm)では、どの治療でも付着レベルを失いましたSRPで23.2%(10.6〜43.5%)、改良ウィドマンフラップで39.4%(22.9〜58.9%)、骨整形手術で61.39%ポケットについては、SRPで平均2.5%・フラップで3.3%「深くなり」、骨整形手術だけが6.3%減少しています。

メタ解析でも同じ向きですSRPは骨整形手術より0.30mm、フラップ手術より0.22mm、付着の喪失が少ない(いずれもp<0.05)ポケット減少では骨整形手術がSRPより0.02mm優りますが、この差の臨床的な意味は限られます

0 16.7% 33.3% 50% ポケット深さの減少率 (%) 18.7% 25.4% 30.8% 21.6% 33.1% 42.8% 4〜6mmの部位 7mm以上の部位 深くなるほど外科の優位が広がる。ただしメタ解析で有意だったのは、4〜6mmでのフラップ手術と、7mm以上での骨整形手術
中等度と深い部位でのポケット減少率。深くなるほど外科の優位が広がる

中等度(4〜6mm)では、ポケットの減少はSRP 18.7%・フラップ25.4%・骨整形30.8%メタ解析では、フラップ手術がSRPより0.35mm多く減少(p<0.05)しています。ところが付着の獲得は逆で、SRPが8.4%、フラップが6.5%、骨整形が5.22%統合すると、SRPはフラップより0.29mm、骨整形より0.34mm、付着で有利(いずれもp<0.05)でした。

深い部位(7mm以上)では、外科の優位がはっきりしますポケットの減少はSRP 21.6%・フラップ33.1%・骨整形42.8%・歯肉弁剥離掻爬41.8%メタ解析で、骨整形手術はSRPより0.83mm多く減少(95%CI 0.10〜1.57mm、p<0.05)フラップ手術とSRPのあいだには有意差がありませんでした付着については、骨整形手術とSRPで差がなく、フラップ手術(0.38mm)と歯肉弁剥離掻爬(0.60mm)ではSRPのほうが喪失が少ないという結果です。

「浅くなった」と「戻った」は別のこと

この層別解析が示しているのは、ポケットの減少と付着の獲得が、いつも同じ方向を向くわけではないということです。

浅い部位で付着を失う理由について、著者らはこう説明しています。介入そのものによる結合組織の喪失が、術後の付着レベルの低下として測定されるそしてその喪失は、メインテナンス期に少しずつ続くこともあるもともと3mmしかないポケットに器具を入れ、まして弁を挙上して骨を削れば、得るものより失うもののほうが大きくなる——数字はそう語っています。

もうひとつ、SRP後の「付着獲得」の解釈にも注意が要りますSRPで炎症が消退すると結合組織が再構築され、プローブが結合組織に入りにくくなりますその結果として測定値は改善しますが、これは「結合組織性付着の獲得」ではなく「炎症の消退による歯肉の質の変化」だと著者らは注意を促しています。

深い部位で骨整形手術が優る理由も整理されています。骨整形を伴わないフラップ手術では、5年後にポケットが術前の値に戻ったのに対し、骨整形手術では安定していたという報告があります。歯間のクレーターが除去され、スキャロップした骨形態が得られることで、軟組織のリバウンドが防がれるという機序です。

ここが要点: 浅い部位で外科を入れると、ポケットは変わらないのに付着だけ失う深い部位でこそ、外科の利得が損失を上回る

明日の臨床へ

1つ目。4〜6mmでは、まず非外科を選ぶ。 著者らの臨床的示唆そのものです——「初期の中等度ポケット(4〜6mm)では、付着の喪失が少ないSRPのほうが好ましい」ポケットの減少だけを見て外科を選ぶと、付着を失う

2つ目。7mm以上で外科を選ぶなら、骨整形を検討する。 この深さでは、骨整形手術がSRPより有意にポケットを減らします先行研究では臨界値としてポケット5.4mmが提案されており(5.4mm以上で外科、2.9〜5.4mmで非外科)、この解析とも整合します

3つ目。深さ以外の適応も忘れない。 根分岐部病変や根面の溝・陥凹があってSRPが物理的に届かない場合は、アクセスを得るための外科が適応だと著者らも明記しています。深さは判断の軸のひとつであって、すべてではありません

4つ目。メインテナンスが前提。 この8研究の患者は全員が3〜6か月ごとのメインテナンスを受けています3か月ごとの支持療法があれば、プラークコントロールの状態にかかわらず長期に維持できるという報告もあります術式の議論は、その土台の上に乗っています

ここだけ、冷静に補助線。 含まれた8本すべてが「バイアスリスク高」と判定されています——ランダム化の方法を記載していたのは1本だけ、割り付けの隠蔽と盲検化はどの研究も報告なし、3本は不完全なアウトカムデータそして大半が20世紀に行われた研究で、喫煙・糖尿病といったリスク因子の知見も、乳頭保存弁や低侵襲術式(MIST・M-MIST)も、その後に発展したものです差もミリ単位(0.22〜0.83mm)で、統計学的な有意差が臨床的に検出できる差かどうかは別問題だと著者ら自身が述べています。英語論文に限った検索であることも、出版バイアスの可能性を残します。それでも、「深さで層別すると答えが変わる」という構造は、術式選択の議論を「どちらが良いか」から「どこに使うか」へ移した点で有用です。

今日のひとこと

慢性歯周炎を対象に、外科治療(改良ウィドマンフラップ・骨整形手術・歯肉弁剥離掻爬・縁下掻爬)と非外科治療(SRP)を2年以上追跡して比較した前向き比較試験8本を集め、術前のポケット深さで「浅い1〜3mm」「中等度4〜6mm」「深い7mm以上」の3つに層別してメタ解析した研究。浅い部位(1〜3mm)では、どの治療でも付着レベルを失いました——SRPで23.2%、改良ウィドマンフラップで39.4%、骨整形手術で61.39%の喪失メタ解析でも、SRPは骨整形手術より0.30mm、フラップ手術より0.22mm付着の喪失が少ない(いずれもp<0.05)という結果でした。中等度(4〜6mm)では、ポケットの減少はSRP 18.7%・フラップ25.4%・骨整形30.8%と外科が優る一方で(フラップ手術がSRPより0.35mm多く減少、p<0.05)、付着の獲得はSRPのほうが有意に良好(フラップ比0.29mm・骨整形比0.34mm、いずれもp<0.05)深い部位(7mm以上)では、ポケットの減少はSRP 21.6%・フラップ33.1%・骨整形42.8%で、骨整形手術がSRPより0.83mm多く減少(p<0.05)付着については、骨整形手術とSRPで差がありませんでした。著者らの臨床的示唆は明快です——「4〜6mmの中等度では、付着の喪失が少ないSRPのほうが好ましい」「7mm以上で外科の適応があるなら、骨整形手術がポケット減少で優る」先行研究では外科の適応となる臨界値としてポケット5.4mmが提案されています

出典:Mailoa J, Lin GH, Khoshkam V, MacEachern M, Chan HL, Wang HL. Long-term effect of four surgical periodontal therapies and one non-surgical therapy: a systematic review and meta-analysis. J Periodontol 2015;86(10):1150-1158. PMID: 26110453
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。