ペリオ|Phase1 初期治療
「SRPで何ミリ改善しますか」と聞かれたら、正直に答えるなら「もとの深さによります」です。ではどのくらい違うのか。ハーバードの2人が、初期のポケットの深さで層別して数字を積み上げました。浅い部位・中等度・深部で、得られるものも失うものも、まったく違いました。
①「SRPで何ミリよくなりますか」
再評価の説明で、患者さんからこう聞かれることがあります。あるいは自分で治療計画を立てるとき、頭の中で見積もっているはずです。
正直に答えるなら、「もとの深さによります」。私たちは経験的にそれを知っています。ですが「どのくらい違うのか」を数字で言えるでしょうか。
ハーバード公衆衛生大学院とハーバード歯学部の2人が、この問いにメタアナリシスで答えました。彼らが最初に確認したのは、こういう関係です。初期のポケットの深さと、治療によるポケットの減少量には有意な相関がある(相関係数0.39、p<0.0001)。アタッチメント獲得量とも同様(0.40、p<0.0001)。
だから解析は、初期のポケットの深さで層別しなければ意味がない——そう判断して、層別データを報告している論文だけを集めました。
②深さで層別して、9つの研究を積み上げる
組み入れの条件は5つ。①SRP単独が主要な治療群のひとつであること、②患者または象限が無作為に割り付けられていること、③登録患者の80%以上が1年目の追跡検査に含まれていること、④ポケット深さとアタッチメントロスがミリ単位で報告されていること、⑤各研究とサブ解析の標本数が報告されていること。
そして層別の条件を加えた結果、13本が該当し、同じ集団を扱った重複を除いて9本が解析に入りました。層別はおおむね浅い(1〜3mm)/中等度(4〜6mm)/深い(7mm超)です。
重み付けには標本数を使っています。理想は標準誤差の逆数で重み付けすることですが、この分野の論文の約半数が標準誤差を報告していません。標準誤差を計算する術がないため、標本数で代用したと著者らは明記しています。
③浅い部位を触ると、アタッチメントを失う
この図の左端が、この論文のいちばん大事なところです。もともと浅い部位にSRPを行うと、ポケットはわずかに浅くなるものの、アタッチメントはむしろ失われる。著者らは「浅い初期ポケットの部位では、わずかなアタッチメントの喪失が明らかに生じているようだ」と書いています。
そして深さが増すにつれ、SRPの効果はより明確になっていきます。
④外科の優位は、3年で溶ける
第2の問いは、SRPと歯周外科(モディファイド・ウィドマン・フラップ)の比較です。7本の論文が条件を満たしました。
そしてアタッチメントに目を移すと、評価は逆転します。浅い部位と中等度の部位では、非外科のほうがアタッチメントを保つ(表の値がマイナス=外科が劣る)。深い部位では、外科と非外科で獲得量はほぼ同等でした。
つまり、外科がSRPに勝るのは「深いポケットの深さを減らす」という一点だけで、しかもその優位は年月とともに薄れていく——これが7本の論文をまとめた結論です。
⑤局所抗菌薬は「足す」ときだけ効く
第3の問いは、局所徐放性抗菌薬です。テトラサイクリン(12本)、25%メトロニダゾールゲル(11本)、2%ミノサイクリンゲル(6本)が検討されました。
結果は、3剤で驚くほど揃っています。
テトラサイクリン:SRP単独ではポケット減少0.60〜1.88mm・アタッチメント獲得0.20〜1.61mm。併用すると1.0〜2.80mm・0.66〜2.34mm。10本中8本で併用のほうがポケット減少の予後が良く、9本中6本で獲得量が大きくなりました。
メトロニダゾールゲル:単独ではSRPを上回る改善を示しません。しかし多くの研究で、SRPとの併用に上乗せの利益が観察されました(SRP単独0.60〜1.98mm、併用0.93〜2.09mm)。
ミノサイクリンゲル:SRPとの併用で、ポケット減少・アタッチメント獲得の両方に追加の改善(SRP単独0.60〜2.30mm、併用0.87〜3.64mm)。
⑥明日の臨床へ
この論文の数字は、そのまま治療計画の言葉になります。
1つめ。浅い部位は、触らないという選択がある。 1〜3mmの部位にSRPを行うと、ポケットの改善は0.21mmにすぎず、アタッチメントは0.23mm失われました。フルマウスSRPを機械的に全部位へ行うことの是非を、この数字は問い直します。BOP陰性で浅い部位に器具を入れる理由は、あまり見当たりません。
2つめ。深い部位こそ、丁寧にSRPをする値打ちがある。 2.20mmのポケット減少と1.42mmのアタッチメント獲得。しかも、この効果は6か月から72か月まで一貫していました(72か月時点で2.59mm・1.96mm)。
3つめ。外科の説明は「短期の差」と「長期の差」を分けて話す。 深い部位で外科がSRPを上回る幅は、6か月で1.03mm、6年で0.22mm。この2つの数字を両方伝えることが、誠実な説明になります。しかも浅い〜中等度の部位では、アタッチメントの保持という点で非外科が有利でした。
4つめ。局所抗菌薬は「上乗せ」として説明する。 単独では代わりになりません。SRPを丁寧にやったうえで、それでも残る深いポケットに足す——それが、この3剤の使い方です。
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
12か月時点のSRPの効果は、初期の浅い部位でポケットが0.21mm浅くなる一方、アタッチメントは0.23mm失われました。中等度では1.16mm浅くなり0.52mm獲得、深部では2.20mm浅くなり1.42mm獲得。触るほど得をするのは深い部位だけ、というのが数字の答えです。外科の優位も深部に限られ、しかも3年を超えると差は0.4mm未満まで縮みます。局所抗菌薬は単独では上乗せにならず、SRPと併用したときだけ一貫した改善が出ました。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


