エンド|2室モデルでS. mutansとE. faecalisを30日間挑ませ、ガッタパーチャと当時の新材料Resilonの封鎖を比べた実験。走査型電子顕微鏡で「どこが剥がれているのか」まで見ている。なお原著には「著者の1人がResilonの製造元と経済的な関係がある」と明記されている(Shipper 2004・Journal of Endodontics)
根尖性歯周炎は根管内の細菌が原因なので、治療は化学機械的な消毒と再感染を防ぐ封鎖の組み合わせになります。ところが著者らは後半が弱いと言います——根管形成の要件はすでによく確立されているのに、最適に消毒したあと、いまの充填材と術式では細菌の再挑戦を防ぐ封鎖を達成できていない。引かれる指摘も痛烈で、「歯内療法の成功は根管充填の質より歯冠修復の質に関係している」という主張がある——根管充填のほうがずっと深いところにあるにもかかわらず、です。そこで著者らは、単根の抜去歯156本を根長16mmに揃えて#50まで形成し、15本ずつ8群+12本ずつ3対照群に分けました。ガッタパーチャ(AH26またはEpiphanyシーラー・側方加圧または垂直加圧)と、Resilon+Epiphanyシーラー(ポリエステル系ポリマーの熱可塑性充填材で、セルフエッチングプライマーを併用)を、上室の細菌が充填した根管を通ってしか下室へ届かない2室モデルで30日間観察しています(S. mutansの群は24時間ごとに指示薬の変色を確認、E. faecalisの群は下室の混濁で検出)(判定者はどの群かを知らされていない盲検)。結果、陽性対照は1本を除き24時間以内に漏れ、陰性対照は1本も漏れず、本題ではガッタパーチャの73〜93%が漏れたのに対しResilonは7〜13%。漏れが起きた日の中央値はガッタパーチャが5〜9日、Resilonは4群とも「31日=漏れなし」でした(p<0.05)。走査型電子顕微鏡が示したのは、ガッタパーチャ標本のおよそ10µmの隙間が、象牙質側ではなくシーラーとガッタパーチャの間にあったこと。シーラーは象牙質に着いていたのに、コア材がシーラーから離れていたのです。
①「うまくいく理由は、根管充填ではなく歯冠の修復かもしれない」
根尖性歯周炎は根管内の細菌が原因です。だから治療は化学機械的な消毒と、再感染を防ぐ封鎖の組み合わせになります。
ところが著者らは、この2つのうち後半が弱いと言います。根管形成の要件はすでによく確立されているのに、最適に消毒したあと、いまの充填材と術式では細菌の再挑戦を防ぐ封鎖を達成できていない、と。
先行研究では、ガッタパーチャで充填した根管に細菌を挑ませると、30日以内に50%で根管の全長を通り抜けたと報告されていました(Torabinejad ら)。
結論を先に言います。この実験ではガッタパーチャ群の73〜93%が30日以内に漏れたのに対し、Resilon群は7〜13%。中央値で見ると、ガッタパーチャは5〜9日で漏れ、Resilonは4群とも「31日=漏れなし」でした。
②Resilonという発想:根管全部を接着させる
考え方の出発点は前作にあります。Shipper と Trope は、レジン製のファイバーポストに根尖側5〜8mmのガッタパーチャを付けたオブチュレーターとレジン系シーラーを使うと、従来のガッタパーチャ術式に比べて細菌の漏れの防止が50%改善することを示していました。
著者らが挙げる唯一の欠点は「そうした根管充填を再治療できるか」でした。
実際、これまでのレジン系充填材は作業性・エックス線造影性・除去のしやすさに問題を抱えており、ガッタパーチャを置き換えられたものはありません。
Epiphanyシーラー=デュアルキュアのレジンコンポジットシーラー。マトリクスはBisGMA・エトキシ化BisGMA・UDMA・親水性の二官能性メタクリレート、フィラーは水酸化カルシウム・硫酸バリウム・バリウムガラス・シリカでおよそ70%。40秒の照射で歯冠側2mmが硬化し、全体は15〜30分で自己硬化する。
③今回の一手:156本を8群に分け、30日間毎日見る
作業長は#15 Kファイルで生理学的根尖孔(根尖狭窄部)の0.5〜1mm手前、器具操作の前後に#15をアピカルフォラメンから出して穿通を確認。洗浄は1.25%次亜塩素酸ナトリウムを計15mL(27ゲージ針)、17%EDTAを5mLを形成中と形成後に使ってスミヤー層を除去。歯冠側3分の2をProfileのニッケルチタンロータリーでクラウンダウン、根尖側3分の1を.04テーパーの手用ニッケルチタンでISO #50まで(抄録は「#40〜50」と記載)。
156本を15本ずつ8群と12本ずつ3つの対照群に無作為に分けました。
群5Resilon側方加圧+Epiphany/群6Resilon垂直加圧+Epiphany(S. mutans)。群7・群8は群5・群6と同一で、E. faecalisで試験。
陽性対照=Resilon 12本とガッタパーチャ12本をシーラーなしで充填。陰性対照=12本を根面と歯冠側の根管口まで完全にワックスで覆う。
Resilonの群では、形成後にEpiphanyプライマー(セルフエッチング)を細い針で根管へ入れ、余剰をペーパーポイントで除いてから充填しています。充填した歯は14日間37℃で保管してシーラーを硬化させました。
30日間の判定を行った研究者は、どの群かを知らされていない(盲検)。統計はKruskal-Wallis検定とMann-Whitney U検定。
④結果:中央値で「5〜9日」対「漏れなし」
まず対照が期待どおりでした。陽性対照は1本を除いてすべて24時間以内に漏れ(漏れなかった1本はResilon側)、陰性対照は1本も漏れませんでした。
本題です。Resilonの漏れは、群8が7%(1本)、群5〜7がそれぞれ13%(2本)。対してガッタパーチャはシーラーや術式にかかわらず73〜93%が漏れました。Kruskal-Wallis検定で群間に有意差があり(p<0.05)、Mann-Whitney U検定でもResilon群がガッタパーチャ群より優れていました。
ただし細かく見ると差はあります。E. faecalisを使ったResilonの2群は、S. mutansの2群より早く漏れ始めました(最小値8日・5日 対 どちらも12日)。漏れた本数に統計的な差はなくても、最小値で見れば入り込む速さは違った、ということです(この差について検定は行われていません)。
⑤断面を見ると、剥がれている場所が違った
走査型電子顕微鏡の所見が、数字の理由を示しています。
Resilonの標本では、低倍率でResilonと象牙質の間に隙間が見えず、脱灰標本の高倍率でもResilonとEpiphanyシーラーの間に隙間がなく、象牙細管へ入り込んだレジンタグが見えた。
著者らはこれを「モノブロック」と呼びます。Resilonがシーラーに密着し、そのシーラーが象牙質壁に接着する——コア材とシーラーの間の接着こそが、この差を生んでいるのではないか、という読みです。
もうひとつ大事な確認が陽性対照にありました。シーラーなしのResilonも、1本を除いて24時間以内に漏れたのです(漏れなかった唯一の1本がResilon側でした。原著は考察では「両方の陽性対照が24時間以内に漏れた」と書いており、結果の記述と細かく食い違っています)。著者らは「これらの材料は根管壁にぴったり適合するのでシーラーは不要かもしれない、と言う人がいるので、あえてシーラーなしのResilonを試した」と書いています。答えは明確で、ガッタパーチャと同様、この新材料でもシーラーは封鎖にとって決定的でした。
⑥明日の臨床へ
・シーラーは省けない。適合のよい材料でも、シーラーなしでは24時間で漏れた。
・スミヤー層の除去は接着の前提。EDTAを使う理由が、この論文では接着の物理で説明されている。
・術式(側方か垂直か)は、Resilonでは差を生まなかった。
・再治療のしやすさは、この材料が従来のレジン系と違う点として挙げられている(加熱・溶媒で除去できる)。
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
著者らの結論:Resilon+Epiphanyシーラーで充填した根は、ガッタパーチャで充填した根より有意に細菌の漏れが少なかった。Resilonの漏れは群8が7%(1本)、群5〜7が各13%(2本)で、ガッタパーチャはシーラーや術式にかかわらず73〜93%。漏れが起きた日の中央値はガッタパーチャが5〜9日、Resilonは4群とも31日(=漏れなし)でした。理由は走査型電子顕微鏡が示しています——ガッタパーチャ標本のおよそ10µmの隙間は、象牙質とシーラーの間ではなく、シーラーとガッタパーチャの間にあった。シーラーはレジンタグを象牙質へ伸ばして着いているのに、コア材がそこから離れていたのです。Resilonでは低倍率でも脱灰標本の高倍率でも隙間が見えず、著者らはこれを「モノブロック」と呼びました。実務的に効く発見がもうひとつ。シーラーなしのResilonも、1本を除いて24時間以内に漏れました——「ぴったり適合するからシーラーは要らないのでは」という声に対して、あえて試した結果です。また側方加圧と垂直加圧は同じように有効で、S. mutansとE. faecalisの間に漏れた本数の差はありませんでした(ただしE. faecalisの群のほうが早く漏れ始めています)。筆者の読みでは、この論文の値打ちは順位より「剥がれているのはどこか」を見にいった点にあります。ただし原著には「著者の1人がResilonの製造元と経済的な関係がある」と明記されており、著者ら自身も「この実験モデルでは、ごくわずかな細菌の侵入でも下室で増殖すれば失敗になる。そのわずかな漏れは生体の防御で処理できるかもしれず、この結果を生体内の状況と直接結びつけることはできない」と書いています。SEMの観察も各1本ずつです。


