1問1答 論文 エンド

根尖病変のある歯、1回法と2回法で根管の奥の細菌は違う?——歯髄が壊死して根尖性歯周炎があり、抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本を治療し、最初の器具操作の約1週間後に抜歯して、近心根を切片で見たヒトの研究で、どこかに細菌を認めた歯は1回法6本中6本、水酸化カルシウムを1週間入れた2回法7本中5本だった。2回法でもイスマスは7本中4本に細菌が残り、統計の検定の記載はなく治癒は調べていない(Vera 2012)

1問1答 論文 エンド

エンド|歯髄が壊死して根尖性歯周炎があり、別の理由で抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本を、コイントスで1回法(6本)と、水酸化カルシウムを1週間入れる2回法(7本)に分けて根管治療し、最初の器具操作の約1週間後に抜歯して、近心根の切片で細菌の残り方を見たヒトの組織細菌学的研究(Vera・Siqueira・Ricucci・Loghin・Fernández・Flores・Cruz 2012・Journal of Endodontics)

根尖病変のある歯は、その日に根管充填するか、水酸化カルシウムを1週間入れるか。Vera らは2012年、歯髄が壊死して根尖性歯周炎があり、抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本を実際に治療してから抜き、近心根の切片で細菌が「どこに」残ったかを見ました。2本の主根管・イスマス・象牙細管・根尖分岐のどこかに細菌を認めた歯は、1回法で6本中6本、2回法で7本中5本でした。主根管の周りの象牙細管に細菌を認めた歯は1回法6本中5本、2回法0本でしたが、2回法でもイスマスは7本中4本に細菌が残っていました。本数が少なく統計の検定の記載はなく、治癒(臨床の成績)は調べていません。2回法には2回目の再形成と洗浄も加わっています。

論文
One- versus Two-visit Endodontic Treatment of Teeth with Apical Periodontitis: A Histobacteriologic Study
著者
J. Vera、J.F. Siqueira Jr、D. Ricucci、S. Loghin、N. Fernández、B. Flores、A.G. Cruz(メキシコ・トラスカラ大学 歯内療法学講座ほか)
掲載
Journal of Endodontics 2012;38(8):1040-1052
種類
ヒトの組織細菌学的研究。歯髄が壊死し根尖性歯周炎があり、この研究と関係のない理由で抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本を、コイントスで1回法6本(12根管)と2回法7本(14根管)に分けた。経験のある歯内療法医1人が、5%次亜塩素酸ナトリウム・17% EDTA・2%クロルヘキシジンで形成・洗浄。2回法は水酸化カルシウムを1週間入れ、2回目に再形成・洗浄して根管充填した直後に抜歯。1回法はその日に根管充填し7日後に抜歯。近心根の中央と根尖側の3分の1の連続切片を細菌の染色で見た。対照は健康な第三大臼歯4本と治療していない根尖性歯周炎の大臼歯4本。統計の検定の記載はない(少数のため統計解析は役立たないと著者ら)
資金・利益相反
資金の記載は見当たらない。著者らは利益相反は無いとしている
PMID
22794203

①根尖病変のある歯、1回で根管充填しますか?

根尖性歯周炎のある歯。形成と洗浄が終わったら、その日のうちに根管充填するか。水酸化カルシウムを1週間入れて、もう一度来てもらうか。迷う場面は多いと思います。

この問いに、培養ではなく組織の切片で答えようとしたのが、Vera・Siqueira・Ricucci らが2012年に Journal of Endodontics に出した研究です。実際に治療した歯を抜いて、根管のどこに細菌が残ったかを顕微鏡で見ています。

結論を先に書きます。
・歯髄が壊死して根尖性歯周炎があり、別の理由で抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本を、コイントスで1回法(6本)と2回法(7本)に分けて根管治療し、最初の器具操作の約1週間後に抜歯して、近心根の切片で細菌の残り方を見たヒトの研究(組織細菌学的研究)
・2回法は、水酸化カルシウムを1週間入れたあと、2回目に再形成・洗浄して根管充填した
・5つの部位(2本の主根管・イスマス・象牙細管・根尖分岐)のどこかに細菌を認めた歯は、1回法 6本中6本、2回法 7本中5本。どこにも認めなかった2本はどちらも2回法だった
・主根管の周りの象牙細管に細菌を認めた歯は、1回法 6本中5本、2回法 0本。ただし2回法でもイスマスは7本中4本に細菌が残っていた
・本数が少なく、統計の検定の記載はない。治癒(臨床の成績)も調べていない

②なぜこの研究が必要だったか

著者らは序論で、引用文献をもとに次のように整理しています。次亜塩素酸ナトリウムで形成・洗浄しても、多くの研究で根管の40〜60%に培養で細菌が残っていたこと。残った細菌は治療成績を下げうるため、根管貼薬が勧められてきたこと。ただ、最もよく使われる水酸化カルシウムでも、培養で細菌が出なくなる根管を有意に増やせるかどうかは、引用された研究の間で結果が一致していなかったことです。

もう1つの問題は調べ方でした。培養は感度が低く、育てにくい菌も多いうえ、試料は主根管からしか採れません。イスマスや根尖分岐、象牙細管のように器具も洗浄液も届きにくい場所の細菌は、培養では見えないのです。そこで著者らは、治療した歯を抜いて切片を作り、細菌が「どこに」残ったかを直接見ることにしました。

③何をどう比べたか

・歯:歯髄が壊死し、エックス線写真で根尖性歯周炎があり、この研究と関係のない理由(大きなう蝕や歯冠の破折で修復できない、歯周病)で抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本。メキシコのトラスカラ大学の倫理委員会の承認と、本人の同意を得た。コイントスで2群に分け、近心の2根管だけを調べた
・治療:経験のある歯内療法医1人が行った。近心頬側根管はK3とLightSpeed(根尖をサイズ60まで)、近心舌側根管はProTaper(F2=25/.08まで)で形成。5%次亜塩素酸ナトリウムで約45分洗浄し、17% EDTA、生理食塩水、最後に2%クロルヘキシジンで洗った。#10のKファイルで根尖の穿通を保った
・2回法(7本・14根管):水酸化カルシウムのペースト(pH 12.5超)をレンツロで入れて1週間。2回目に最終のファイルで再形成し、5%次亜塩素酸ナトリウム10mL・EDTA 10mL・生理食塩水・2%クロルヘキシジンで洗ってから、ガッタパーチャとシーラーで根管充填し、その直後に抜歯
・1回法(6本・12根管):同じ形成・洗浄のあと、その日に根管充填。水酸化カルシウムは使わず、根管充填の7日後に抜歯
・観察:近心根の中央と根尖側の3分の1から連続切片を作り、細菌を染める染色(Taylor 変法の Brown & Brenn 染色)をして、2人の評価者が光学顕微鏡で見た。主根管・イスマス・根尖分岐・象牙細管の細菌、残った削りくずや組織、根管充填材の入り方を記録した
・対照:健康な下顎第三大臼歯4本(陰性対照)と、治療していない根尖性歯周炎の下顎大臼歯4本(陽性対照)

④結果1:1回法は6本すべて、2回法は7本中5本に細菌が残った

原著の表1の全13行を、そのまま表にしました。1回法の6本は、すべてどこかの部位に細菌を認めました。2回法の7本では5本に認め、どこにも細菌を認めなかった2本は、どちらも2回法でした。

表:歯ごとの、細菌を認めた部位(原著の表1の全13行。根の中央と根尖側の3分の1) 歯(表1の順) 近心頬側 近心舌側 イスマス 象牙細管 根尖分岐 どこか 1回法 1 − あり あり あり あり あり 1回法 2 − − あり あり − あり 1回法 3 − あり − − − あり 1回法 4 あり − あり あり あり あり 1回法 5 あり あり あり あり あり あり 1回法 6 あり あり あり あり あり あり 2回法 1 あり あり − − あり あり 2回法 2 − あり あり あり − あり 2回法 3 − − あり − − あり 2回法 4 − − あり − あり あり 2回法 5 − − − − − なし 2回法 6 − − あり − − あり 2回法 7 − − − − − なし あり=組織切片で細菌を認めた/−=認めなかった(原著の+と−)。「どこか」=5つの部位のどれか1つ以上 近心頬側・近心舌側=それぞれの主根管。象牙細管=主根管とイスマスの周りの象牙質(原著の注) 2回法2の象牙細管の「あり」はイスマスの周りの象牙質の少数の細菌。主根管の周りの象牙細管に細菌を認めた歯は2回 法では0本(原著の本文と表2) 緑の太字の「なし」=5つの部位のどこにも細菌を認めなかった2本(どちらも2回法) ヒトの組織細菌学的研究:歯髄壊死・根尖性歯周炎のある抜歯予定の下顎大臼歯13本(コイントスで1回法6本・2回法7本) の近心根 2回法は水酸化カルシウムを1週間入れ、2回目に再形成・洗浄して根管充填。最初の器具操作の約1週間後に抜歯した。統 計の検定の記載はない(少数のため統計解析は役立たないと著者ら)
表:歯ごとの、細菌を認めた部位(原著の表1の全13行)。緑の太字の「なし」は、5つの部位のどこにも細菌を認めなかった2本(どちらも2回法)。

主根管だけを見ると、細菌が残っていたのは1回法で6本中5本、2回法で7本中2本でした(抄録と本文)。2回法の象牙細管の「あり」の1本は、イスマスの周りの象牙質に少数の細菌を認めたもので、主根管の周りの象牙細管に細菌を認めた歯は、2回法では0本と報告されています。

⑤結果2:部位ごとに見ると、差が大きかったのは象牙細管と根尖分岐

部位ごとに、細菌を認めた歯の割合を並べました(原著の表2)。

0 25% 50% 75% 100% 細菌を認めた歯の割合(%) 100% 71% 50% 14% 67% 29% 83% 57% 83% 0% 67% 29% どこか1つ以上 近心頬側根管 近心舌側根管 イスマス 象牙細管※ 根尖分岐 1回法(6本) 2回法・水酸化カルシウム1週間(7本) 原著の表2。本数:どこか1つ以上 1回法6本中6本・2回法7本中5本/近心頬側根管 3本・1本/近心舌側根 管 4本・2本/イスマス 5本・4本/象牙細管 5本・0本/根尖分岐 4本・2本 ※象牙細管=主根管の周りの象牙細管。2回法でも、イスマスの周りの象牙質に少数の細菌を認めた歯が1本 ある。0%には棒が無い 統計の検定の記載はない(少数のため統計解析は役立たないと著者ら) ヒトの組織細菌学的研究:歯髄壊死・根尖性歯周炎のある抜歯予定の下顎大臼歯13本の近心根を、最初の 器具操作の約1週間後に抜歯して切片で観察
図:部位ごとに細菌を認めた歯の割合(原著の表2)。濃い棒=1回法(6本)、淡い棒=2回法(7本)。本数は図の注記に書いた。0%には棒が無い。

1回法と2回法で、イスマスは6本中5本と7本中4本、主根管の周りの象牙細管は6本中5本と7本中0本、根尖分岐は6本中4本と7本中2本でした。本数が少なく、この差に統計の検定は付いていません。2回法でも、イスマスには半数を超える歯で細菌が残っていました。

ほかにも、次のことが報告されています。

・根尖分岐は13本すべてにあった。根管充填材は、1回法の6本すべてと2回法の7本中3本で根尖分岐の中にも入っていたが、根尖分岐とイスマスが充填材で完全に埋まっていた例は無く、入った充填材は壊死組織・削りくず・細菌と混ざっていることが多かった
・削りくずは1回法ではイスマスに必ずあり、多くの根管にもあった。2回法でもイスマス、特に根尖寄りに見られた
・根の外側の表面のバイオフィルムが3本(1回法2本・2回法1本)に見られた
・2つの形成法(K3+LightSpeed と ProTaper)で、細菌の残り方に違いは見られなかった(著者ら)

⑥著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、水酸化カルシウムを1週間入れた2回法は、1回法より根管系の細菌の状態が良かったと結論しています。貼薬しなかった歯では、根尖分岐・イスマス・象牙細管に細菌がより多く、より豊富に残っていた。いまの器具・洗浄液・手技では1回の来院で根管系を確実に消毒できず、根管充填の前に細菌を最大限減らすには抗菌性の根管貼薬が必要だ、という考えを裏付けた、としています。

そのうえで、著者ら自身が次の点に触れています。

・2回法の主根管の結果には、水酸化カルシウムそのものに加えて、2回目の再形成と、次亜塩素酸ナトリウムとクロルヘキシジンでの洗浄も効いたかもしれない
・貼薬で細菌が減ったのは、薬が届きにくい場所まで広がる時間ができたためだろう(著者らの考え)
・充填材で塞いで閉じ込めれば細菌は死ぬ、という1回法の考えには、根尖分岐や根尖部の細菌は歯周組織から栄養を得られるので当てはまらないかもしれない(著者らの考察)
・ほかの研究では、2回以上で水酸化カルシウムを使った方が成功率が10〜20%高かったという報告と、成功率の数値差がほとんどなかった報告や、1回法が10%高かった報告もある(引用文献の結果。この研究の結果ではない)

読み方として大事なのは、これは最初の器具操作の約1週間後に抜歯して、細菌の残り方を見た研究だという点です。根尖病変が治ったかどうかは見ていません。また、2回法は「水酸化カルシウムを入れた」だけでなく「2回形成・洗浄した」群でもあり、抜歯までの時間も、1回法は根管充填の7日後、2回法は根管充填の直後と違います。

⑦明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・主根管がきれいでも、イスマス・根尖分岐・象牙細管には細菌が残りうる:1回法では6本中5本でイスマスと象牙細管に細菌を認めた
・水酸化カルシウム1週間の2回法でも、ゼロにはならなかった:7本中5本に細菌が残り、イスマスは7本中4本
・根尖分岐とイスマスは、充填材で完全に埋まっていなかった:「充填材が入っている」ことと「封鎖・消毒できた」ことは別
・1回法か2回法かの決め手には、この研究だけでは足りない:13本の組織の所見で、治癒は調べていない。成績の比較は別の臨床研究で確かめる
ここだけ、冷静に補助線(1)ヒトの歯を実際に治療した研究ですが、抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本(1回法6本・2回法7本)の近心根だけの、少数の研究です。統計の検定の記載はなく、著者らも、少数のため統計解析は役立たないと書いています。
(2)対象は歯髄が壊死して根尖性歯周炎のある歯です。治癒(臨床の成績)は調べていません。見ているのは、最初の器具操作の約1週間後に抜歯した歯の切片の細菌です。
(3)2回法は、水酸化カルシウムに加えて2回目の再形成と洗浄も受けています。抜歯までの時間も、1回法は根管充填の7日後、2回法は根管充填の直後と違います。
(4)著者らが挙げた限界:切片なので治療前の状態と比べられない/この染色はグラム陽性菌を見つけやすく、グラム陰性菌を見落とした可能性がある/光学顕微鏡では細菌が生きているかは分からない(周りに好中球が見られ、生きていた可能性を示すとしている)。
(5)評価者がどちらの群の歯かを知っていたかは書かれていません。資金の記載は見当たらず、利益相反は無いと著者らは書いています。

今日のひとこと

歯髄が壊死して根尖性歯周炎があり、抜歯が決まっていた下顎大臼歯13本の切片では、1回法の6本すべてと、水酸化カルシウム1週間の2回法の7本中5本に、どこかに細菌が残っていました。主根管の周りの象牙細管と根尖分岐では2回法に細菌を認めた歯が少なかった一方、イスマスは2回法でも7本中4本でした。13本・検定なし・治癒は調べていない研究で、2回法には2回目の再形成と洗浄も加わっていることを頭に置き、「根管の奥には細菌が残りうる」という所見として読むのが、この論文に合った読み方です。

Vera J, Siqueira JF Jr, Ricucci D, Loghin S, Fernández N, Flores B, Cruz AG. One- versus two-visit endodontic treatment of teeth with apical periodontitis: a histobacteriologic study. J Endod. 2012;38(8):1040-1052. doi: 10.1016/j.joen.2012.04.010. PMID: 22794203
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。