1問1答 論文 エンド

ポストの下、根管充填は何mm残す?——透過像が写った根はポストあり16%・なし13%で有意差なし。残りが3mm未満の根では32%。298人・852根のX線写真の横断調査(1989年)

1問1答 論文 エンド

エンド|全顎X線写真298人分・根管治療済みの852根で、ポストの有無、ポストの下に残った根管充填の長さ、封鎖の質と、根尖部の透過像との関係を調べた横断調査(Kvist・Rydin・Reit 1989・Journal of Endodontics)。ある時点のX線写真の観察で、因果までは言えない

「ポストを入れた歯は根尖病変が多いのでは」。スウェーデン・イエテボリ大学のKvistらは1989年、298人の全顎X線写真で根管治療済みの852根(ポストあり424根)を調べました。根尖部に透過像が写っていた根は、ポストあり16%、ポストなし13%で有意差なし。一方、ポストの下に残った根管充填が3mm未満の根では32%で、透過像は3〜5mmの根と比べて有意に多く(p<0.01)、3mm以上の根は13%とポストなしの根と同じ値でした。封鎖が不十分と判定された根に限ると、ポストあり24%、ポストなし16%で、ポストありのほうが有意に多い結果でした(p<0.05)。著者らは、ポスト自体が治癒の見込みを下げるわけではなく、根管充填は少なくとも3mm残すべきだと示唆される、とまとめています。ある時点のX線写真を調べた横断調査で、治療からの年数や術前の状態は分かりません。因果ではなく関連として読む1本です。

論文
The Relative Frequency of Periapical Lesions in Teeth with Root Canal-Retained Posts
著者
Thomas Kvist, Eva Rydin, Claes Reit(イエテボリ大学歯学部 歯内療法学・口腔診断学講座・スウェーデン)
掲載
Journal of Endodontics 1989;15(12):578-580. doi:10.1016/S0099-2399(89)80153-0
種類
横断調査(X線写真の観察研究)。口腔放射線科のファイルから無作為に選んだ298人(17〜87歳)の全顎X線写真を、2人の観察者が読影。解析の単位は根(852根)。臨床情報はなく、治療からの年数は不明。病変は「絶対に確かなときだけ陽性」とする厳しい基準で判定しており、割合は群を比べるための相対的な値
資金・利益相反
原著に資金提供・利益相反の記載は見当たらない
PMID
2701001

①ポストの下、根管充填は何mm残す?

支台築造でポスト孔を形成するとき、根尖側のガッタパーチャをどれだけ残すか。保持を考えるとポストは長くしたい。でも掘り進めるほど、根尖側の根管充填は短くなります。「ポストを入れた歯は根尖病変が多いのでは」という不安も、よく耳にします。

スウェーデン・イエテボリ大学のKvistらは1989年、298人の全顎X線写真で、根管治療済みの852根を調べました。ポストの有無、ポストの下に残った根管充填の長さ、封鎖の質と、根尖部の透過像との関係を報告しています。

先に断っておきます。これはある時点のX線写真を調べた横断調査です。因果までは言えない研究だという前提で、数字を読んでいきます(詳しい限界は最後にまとめます)。

結論を先に書きます。
・根尖部に透過像が写っていた根は、ポストあり16%、ポストなし13%。有意差なし
・ポストの下に残った根管充填が3mm未満の根では32%。透過像は、3〜5mmの根と比べて有意に多かった(p<0.01)。3mm以上の根は13%で、ポストなしの根と同じ値
・封鎖が不十分と判定された根に限ると、透過像はポストあり24%、ポストなし16%で、ポストありのほうが有意に多かった(p<0.05)
・著者らの結論:この結果は、ポストを入れること自体が根尖の治癒の見込みを下げるわけではないことを示している。根管充填は少なくとも3mm残すべきだと示唆される

②どんな調査か

材料は、イエテボリ大学歯学部の口腔放射線科のファイルから無作為に選ばれた298人(17〜87歳、女性145人・男性153人)の全顎X線写真です。同学部で治療が始まる前に撮られたものでした。ここでの「無作為」は写真の選び方のことです。治療法を無作為に割り付けた試験ではありません。

調べ方(原著の方法)
・2人の観察者が別々に読影。意見が割れた例は、2人の合同評価で最終判定とした
・根尖病変は「絶対に確かなときだけ陽性」とする厳しい基準で判定した
・根尖部の根管充填が均一で、根管壁との間に空隙が見えなければ「封鎖は適切」とした
・根管充填の長さは、フィルムに透明な定規を当てて1mm単位で測った
・臨床情報はない(材料は全顎X線写真だけ)

根管治療の跡があったのは852根。そのうち424根(49.8%)にポストが入っていました。数える単位は「歯」ではなく「根」です。

③ポストの有無では、有意差なし

透過像が写っていた根は、ポストあり16%、ポストなし13%。著者らは「有意差はなかった」と書いています。歯種の間にも有意差はありませんでした。

歯種別の内訳(原著の表1の全3行。根の数と、病変ありの根の数)
・切歯(原著の表記はIncisors。犬歯の扱いは書かれていない):ポストあり163根中29根(18%)/ポストなし86根中16根(19%)
・小臼歯:ポストあり179根中25根(14%)/ポストなし123根中15根(12%)
・大臼歯:ポストあり82根中12根(15%)/ポストなし219根中26根(12%)

根管充填の先端が「根尖から2mm以内」に収まっていた根は、ポストありのほうが有意に多く見られました(p<0.01。考察では42% 対 32%と書かれています)。著者らは、多根歯ではまっすぐな根管がポスト用に選ばれやすく、根管治療の技術的な障害が少なかったためかもしれない、と推測しています。封鎖の質には、ポストの有無で有意差はありませんでした。

④差が出たのは「残った長さ」:3mm未満で32%

0 10% 20% 30% 40% 透過像が写っていた根の割合(%) 32% 13% 13% ポストあり残り3mm未満(63根) ポストあり残り3mm以上(361根) ポストなし(428根) 原著の考察に書かれた3つの割合(32%・13%・13%)。361根は図1の根数(38+61+56+206)を筆者が足した数。検定が示されているのは「3mm未満 対 3〜5mm」の比較(χ²=8.87、p<0.01)。ある時点のX線写真の調査で、病変は厳しい基準で判定した相対的な値
ポストの下に残った根管充填の長さと、根尖部に透過像が写っていた根の割合(原著の考察の値。361根は、図1の3mm以上の4群の根数を筆者が足した数で、原著には書かれていない。ある時点のX線写真の調査)

ポストが入っていた424根のうち、残った根管充填が6mm未満だったのは218根(51%)、3mm未満は63根(15%)でした。18根(4%)では、根管充填がまったく見えませんでした。

3mm未満の根と3〜5mmの根を比べると、3mm未満の根で透過像が有意に多く見られました(χ²=8.87、p<0.01)。考察では、3mm未満の根が32%、それより長い根が13%とまとめられています。この13%は、ポストなしの根と同じ値です。

原著の図1に書かれた根の数(残った長さ別・全7群)
・0mm(根管充填が見えない):18根
・1mm:18根
・2mm:27根
・3mm:38根
・4mm:61根
・5mm:56根
・6mm以上:206根
長さごとの割合は棒グラフで示されているだけで、数値は本文にありません。棒の高さを見るかぎり、0mmが最も高く、1mm・2mmが続き、3mm以上は低い位置で並んでいます(筆者の読み取り)

⑤もう1つの差:封鎖が不十分な根

0 10% 20% 30% 透過像が写っていた根の割合(%) 24% 16% 8% 11% 封鎖が不十分ポストあり(207根) 封鎖が不十分ポストなし(218根) 封鎖が適切ポストあり(217根) 封鎖が適切ポストなし(210根) 原著の表2の上2行(封鎖の質の行)。検定が示されているのは「封鎖が不十分な根どうしの、ポストあり24% 対なし16%」(χ²=4.35、p<0.05)。封鎖の質はX線写真での判定
封鎖の質とポストの有無でみた、根尖部に透過像が写っていた根の割合(原著の表2。封鎖の質はX線写真での判定)

X線写真で根尖部の封鎖が「適切」と判定されたのは、852根中427根(50%)でした。

封鎖が不十分な根どうしで比べると、透過像はポストあり24%、ポストなし16%。ポストありのほうが有意に多い結果でした(χ²=4.35、p<0.05)。ポストありの中で見ると、封鎖が不十分な根の24%に対して、適切な根は8%です。

著者らは、ポストを入れるまでの操作の間に、根管の封鎖が唾液由来の微生物にさらされうる、と考察しています。ポストで根管充填が短くなった根では封鎖の質がきわめて重要だ、というのが著者らの読みです。

原著の表2の全7行(根の数と、病変ありの割合。ポストあり/ポストなしの順)
・封鎖が不十分:207根・24%/218根・16%
・封鎖が適切:217根・8%/210根・11%
・根管充填の先端が根尖から2mmを超えて手前:164根・15%/225根・12%
・根尖から2mm以内:170根・10%/137根・9%
・根尖と同じ位置:23根・26%/23根・30%
・過剰充填:49根・22%/43根・26%
・根管充填の先に空いた根管が見える:33根・33%/28根・36%
表2は「封鎖の質」「根管充填の先端の位置」「空いた根管の有無」という別々の分類を縦に並べた表です。先端の位置の4行は、ポストありでは合計406根で、根管充填が見えない18根を除いた数にあたります(筆者の計算)

⑥明日の臨床へ

原著が述べていること(著者らの結語)
・この調査は、ポストを入れること自体が根尖の治癒や健康の維持の見込みを下げるわけではないことを示している
・ポストで根管充填が短くなる根では、封鎖の質がきわめて重要
・封鎖を保つために、根管充填は少なくとも3mm残すべきだと示唆される
ここからは筆者の読み(原著が述べたことではありません)
・ポスト孔を形成する前に、X線写真で根管充填の長さと緻密さを確かめておく。著者らが検定で差を示したのは、「残りが3mm未満の根(3〜5mmの根と比べて)」と「封鎖が不十分な根の中でのポストあり」でした
・「残り3mm」は、それを下回る根に透過像が多かった、という境目です。3mmあれば安全という保証ではありません。3mm以上の根でも13%に透過像が写っていました
・ポストの長さと根尖側の封鎖は取り合いになります。根が短い歯では、ポストを無理に長くしないという選択肢が見えてきます
・手間もコストもほとんどかかりません。形成の前にX線写真で長さを確かめ、形成中に残りの長さを測るだけです
ここだけ、冷静に補助線この研究は横断調査です。X線写真は1回分だけで、治療からの年数も、病変が治りかけなのか新しくできたのかも分かりません。著者らも、病変の治癒の経過は不明だと書いています。病変がもともとあった根にポストが入った可能性も区別できません。「3mm未満だと病変ができる」という因果ではなく、「3mm未満の根に透過像が多く写っていた」という関連として読む数字です。
著者らは、偽陽性を出さないために「絶対に確かなときだけ病変あり」とする厳しい基準を使いました。16%や13%は真の頻度ではなく、群どうしを比べるための相対的な値だと、著者ら自身が断っています。病変ありと判定された例について、2人が別々に読んだときの一致は70%で、合同評価のあとは78%になったと報告されています。
封鎖の質は、X線写真での判定です。著者らも、空隙は隣接面方向からの投影でしか見えないことがあり、その方向の撮影は臨床ではできないこと、X線での評価と色素浸透試験などとの相関は低いことを、限界として認めています。長さも、フィルムに定規を当てた1mm単位の計測です。
解析の単位は根で、同じ患者の複数の根が別々に数えられています。歯冠側の修復の状態、ポストの種類、術前の病変の有無などは調べられていません(ここは筆者の指摘)。
対象はスウェーデンの大学歯学部の患者で、X線写真の撮影時期は書かれていません。1989年の報告なので、当時の材料と術式が前提です。資金提供や利益相反の記載は、原著には見当たりません。
それでも、「ポストそのものより、その下に残る根管充填の長さと質を見る」という視点を、852根のデータで示した1本です。ポスト孔を掘り進める前に、残りの長さを測る理由になります。

今日のひとこと

この調査では、ポストの有無だけで比べると、根尖部の透過像の頻度に有意差はありませんでした(16% 対 13%)。有意差が示されたのは2か所です。ポストの下の根管充填が3mm未満の根(32%。3〜5mmの根と比べて)と、封鎖が不十分な根に限ったときのポストあり(24% 対 ポストなし16%)でした。著者らは、封鎖の質が重要で、根管充填は少なくとも3mm残すべきだと示唆される、とまとめています。ある時点のX線写真を調べた横断調査なので、因果までは言えません。「3mmあれば安全」という保証ではなく、ポスト孔を掘り進める前に残りの長さと封鎖の質を確かめる理由になる1本です。

Kvist T, Rydin E, Reit C. The relative frequency of periapical lesions in teeth with root canal-retained posts. J Endod. 1989;15(12):578-580. doi:10.1016/S0099-2399(89)80153-0. PMID: 2701001
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。