エンド|初めて根管治療をした歯で、温かいガッタパーチャ(GP)による充填と冷たいGPの側方加圧を比べた臨床研究10本(ランダム化比較試験と準ランダム化比較試験)を集め、術後の痛み・長期の成績・充填の質・過剰充填の4項目を合算したシステマティックレビューとメタ分析(Pengら 2007・Journal of Endodontics)
根管充填は、冷たいガッタパーチャ(GP)の側方加圧か、温めたGPか。Pengらは2007年、ヒトの歯で2つの方法を比べた臨床研究10本を集めて合算しました。根尖を越える充填(過剰充填)は、温かいGPの群で有意に多い結果でした(リスク比 1.98、95%信頼区間 1.33〜2.93)。術後の痛み(リスク比 1.10)、1年以上たってからの失敗(0.78)、充填の不良(1.31)は、どれも有意差が検出されませんでした。著者らはこの3つを「同程度」とまとめていますが、信頼区間は広く、同じであることを確かめた結果ではありません。項目ごとにデータがある研究は2〜7本で、結果を判定する人の盲検化は10本中2本だけでした。
①温かいGPと側方加圧、臨床の成績は違う?
根管充填は、冷たいガッタパーチャ(GP)の側方加圧で行うか、温めて軟らかくしたGPで行うか。温かいGPのほうが緻密に詰まりそうだが、根尖から押し出しそうで怖い。どちらの感覚も、臨床にいれば一度は持ったことがあるはずです。
この問いを、患者さんの歯で比べた臨床研究を集めて答えようとしたのが、Pengらが2007年に Journal of Endodontics に報告したシステマティックレビューとメタ分析です。温かいGPによる充填と、冷たいGPの側方加圧(cold lateral condensation、以下「側方加圧」)を比べた臨床研究10本を集め、術後の痛み、長期の成績、充填の質、根尖を越える充填(過剰充填)の4つを合算しました。
・根尖を越える充填(過剰充填)は、温かいGPの群で有意に多かった。温かいGP群の発生を側方加圧群と比べたリスク比は 1.98(95%信頼区間 1.33〜2.93、p=0.0007)
・術後の痛み(リスク比 1.10)、1年以上たってからの失敗(0.78)、充填の不良(1.31)は、どれも有意差は検出されなかった(95%信頼区間が1をまたぐ)
・著者らは、この3つは2つの方法で「同程度(similar)」だったと結論している。ただし、有意差が検出されなかったことは、同じであることの証明ではない
・合算したのは、ヒトの歯で初めて根管治療をした臨床研究10本(ランダム化比較試験と、それに準じる試験)。項目ごとにデータがある研究は2〜7本(原著の表1から筆者が数えた)
②なぜこの分析が必要だったか
著者らは序論で、2つの方法をこう整理しています。側方加圧は、GPを置く位置をコントロールしやすく費用も安いので、世界中で広く使われている。ただし、詰まっているのは多数のGPコーンを押し固めたもので、均一なGPの塊ではない。コーンどうしや根管壁とのあいだに空隙ができやすく、その場合はシーラーに頼ることになる。
温かいGPの垂直加圧は、密度の高い充填と、根管と歯周組織をつなぐ出入り口の封鎖に優れ、側枝も側方加圧より詰めやすいとされる。一方で、臨床では充填の長さをコントロールしにくい。速く入れると根尖を越え、ゆっくり入れると足りなくなる。ここまでは、著者らが引いた文献にもとづく整理です。
2つの方法を比べた研究の多くは、抜去歯や模型を使った実験室研究で、結論も一致していませんでした。そこで著者らは、患者さんの歯で比べた臨床研究だけを集めて合算した、という流れです。
③何をどう集めたか
MEDLINE(1966〜2006年)、Cochrane Library、EMBASE、SCI、中国の文献データベース CNKI を、2006年4月までの論文について検索しています。
・入れた研究:ヒトの歯で、温かいGPと側方加圧を比べたランダム化比較試験と、それに準じる試験(準ランダム化比較試験)。不可逆性の歯髄の病気か慢性根尖性歯周炎で、初めて根管治療をした歯。臨床症状かエックス線写真で成績を評価したもの
・除いた研究:実験室研究、再根管治療の症例、2つの方法を比べていないもの、治癒の割合が示されていないもの、全文が手に入らないもの
21本の論文を読み、11本を除いて、10本が残りました。研究の質は、Jadadのスケール(ランダム化・二重盲検・脱落の記載)で点数を付けています(10本は1〜4点)。
4つの項目の定義は次のとおりです。
・術後の痛み:治療後12〜48時間に始まり、48時間以上続いた中等度以上の痛みか腫れ(フレアアップ)
・長期の成績:1年以上たってからの失敗。抜歯した、症状がある、根尖性歯周炎がある、のどれかを失敗とした
・充填の質:充填の不良の数(何を不良としたかの定義は、原著に見当たりません)
・過剰充填:根尖を越えた充填。根尖から2mm未満の手前で終わる緻密な充填は「適正」とした
研究ごとに、温かいGPの群と側方加圧の群で、それぞれの出来事が起きた歯の数を数え、RevMan というソフトでリスク比(温かいGP群の割合を、側方加圧群の割合で割ったもの)と95%信頼区間を計算しています。研究のあいだのばらつき(異質性)はQ検定で調べ、ばらつきが小さければ固定効果モデル、大きければ感度分析かランダム効果モデルを使う、としています。
④結果:差が出たのは過剰充填だけ
過剰充填は、温かいGPの群で有意に多い結果でした。リスク比は 1.98(95%信頼区間 1.33〜2.93、p=0.0007)です。過剰充填のデータがある研究は7本です(原著の表1から筆者が数えた)。
ほかの3つは、有意差が検出されませんでした。術後の痛みはリスク比 1.10(0.71〜1.71、p=0.66。データがある研究2本)、1年以上たってからの失敗は 0.78(0.58〜1.05、p=0.10。6本、追跡1〜5年)、充填の不良は 1.31(0.98〜1.76、p=0.07。6本)です。どれも95%信頼区間が1をまたいでいます。
項目ごとに、データがある研究の数は違います。原著の表1から数えると、術後の痛みは2本、長期の成績は6本(追跡は1〜5年)、充填の質は6本、過剰充填は7本です(筆者が数えた)。
研究ごとに見ると、7本のうち5本では温かいGPの群のほうが過剰充填の割合が高く、2本では側方加圧の群のほうが高い数でした(Lipski 2000 は側方加圧 26/84本・温かいGP 7/78本、Qiao 2005 は側方加圧 5/62本・温かいGP 4/66本。割合の比較は筆者)。原著は、項目ごとにどの研究を合算したかと、異質性の検定の値を示していません。
⑤結果の読み方
著者らの結論はこうです。温かいGPの群では、側方加圧の群より過剰充填が多かった。充填の質、長期の成績、術後の痛みの頻度は、2つの群で同程度だった。
読むときに分けておきたいのは、「有意差が検出されなかった」と「同じだった」の違いです。たとえば、1年以上たってからの失敗のリスク比は 0.78 で、95%信頼区間は 0.58〜1.05 です。下限の 0.58 は温かいGPのほうが失敗が少ない側、上限の 1.05 はわずかに多い側で、この幅の中のどこに本当の値があるかは決まっていません。2つの方法が同じだと確かめた結果ではありません。充填の不良も、1.31(0.98〜1.76)と、温かいGPで多い側に寄っています。
過剰充填について、著者らは考察でこう書いています。作業長を正確に決めること、形成で根尖の狭窄部を壊さないこと、温かいGPを適切な速さで入れることで、温かいGPの過剰充填は減らせる、と示唆されている。これは著者らが引いた臨床研究にもとづく記述で、このメタ分析が確かめたことではありません。
また、過剰充填が起きた歯で、その後の成績が悪くなったかどうかは、この分析では調べていません。
⑥明日の臨床へ
ここからは筆者の読みです。原著の主張ではありません。
温かいGPを使うときに気をつけたいのは、充填の長さです。この分析で、2つの方法のあいだに有意差が出たのは過剰充填だけでした。作業長の決め方や、根尖の狭窄部を壊さない形成、GPを入れる速さは、温かいGPを選ぶならセットで考えたい点です。
一方で、「温かいGPでも側方加圧でも、成績は同じ」とまでは言えません。痛みのデータは2本の研究だけで、長期の成績も6本の研究、追跡は最長5年です。温かいGPの群には、キャリア付きのGP(Thermafil)や、注入式の熱可塑性GPなど、いくつもの方法が一緒に入っています。
どちらの方法を選ぶにしても、根尖を越えないように詰める工夫が要る。その確認として読みたい1本です。
(1)合算したのは臨床研究10本で、ランダム化比較試験のほかに、それに準じる試験も入っています。結果を判定する人が盲検化されていたのは2本だけ、割り付けの隠蔽を記載した研究は0本、例数の根拠を示した研究も0本、と著者ら自身が書いています。Jadadのスケールは10本で1〜4点でした。
(2)10本のうち6本は、中国の学術誌に載った研究です(参考文献の誌名から筆者が数えた)。
(3)温かいGPの群には、Thermafil(キャリア付きのGP)、注入式の熱可塑性GP、超音波で温めるGP、熱を使った機械的な加圧など、いくつもの方法が入っています。参考文献の表題に Thermafil とある研究は5本です(筆者が数えた)。著者らは、方法ごとに分けた分析は研究が少なくてできなかった、と書いています。
(4)術後の痛みのデータがあるのは2本、長期の成績は6本です。追跡期間は研究によって1〜5年です。
(5)充填の質の「不良」を何で判定したかの定義は、原著に見当たりません。
(6)原著は、項目ごとにどの研究を合算したかと、異質性の検定の値を示していません。表1で過剰充填のデータがある7本のうち、Lipski 2000 と Qiao 2005 の2本は、側方加圧の群のほうが割合が高い数でした(筆者が表1の数から比べた)。
(7)有意差が検出されなかった3つの項目について、著者らは「同程度」とまとめていますが、信頼区間の幅を見ると、同じであることを確かめた結果ではありません。
(8)過剰充填が、その後の痛みや治癒にどう響いたかは、調べられていません。
(9)資金と利益相反についての記載は、論文中に見当たりません。
温かいGPを選ぶなら、充填の長さの管理を一緒に考える。その出発点を臨床研究の数字で示してくれた1本、という位置づけで読むのがよさそうです。
今日のひとこと
このメタ分析で、2つの方法のあいだに有意差が出たのは、根尖を越える充填(過剰充填)が温かいGPの群で多かったことだけでした(リスク比 1.98)。術後の痛み、1年以上たってからの失敗、充填の不良は、有意差が検出されませんでした。ただし、痛みのデータは2本の研究だけ、盲検化された研究も少なく、信頼区間も広いので、「成績は同じ」と確かめた結果ではありません。温かいGPには、Thermafil など、いくつもの方法がまとめて入っています。温かいGPを選ぶなら、充填の長さの管理を一緒に考える。その出発点として読みたい1本です。


