1問1答 論文 保存修復

MOD窩洞をCRで直接修復、咬頭を覆わなくていい深さは?——抜去大臼歯の実験室研究では、深さ3mmの群は健全歯と有意差なし、5mm以上の群は有意に低かった

1問1答 論文 保存修復

保存修復|MOD窩洞の深さと壁の厚みを変えて、コンポジットレジン直接修復後の破折荷重を健全歯と比べた実験室研究(Forster ほか 2019・Journal of Prosthodontics)

大臼歯のMOD窩洞。CRで直接詰めるか、咬頭を覆うアンレーやクラウンにするか。迷うのは「どこまで削れていたら咬頭を覆うべきか」です。ハンガリー・セゲド大学のグループは、抜去した下顎第三大臼歯で、窩洞の深さ(3・5・7mm)と残った壁の厚み(3.5・2.5・1.5mm)を組み合わせた9群をつくり、CRで直接修復して割れるまで押しました。結果は、深さ3mmの3群は健全歯と有意差がなく、深さ5mmと7mmの6群は健全歯より有意に低い値でした。壁の厚みを変えても、同じ深さの中では有意差は出ませんでした。

論文
In Vitro Fracture Resistance of Adhesively Restored Molar Teeth with Different MOD Cavity Dimensions
著者
András Forster, Gábor Braunitzer, Máté Tóth, Balázs P. Szabó, Márk Fráter(ハンガリー・セゲド大学 歯学部 保存修復・審美歯科学講座 ほか)
掲載
Journal of Prosthodontics 2019;28(1):e325-e331. DOI: 10.1111/jopr.12777
種類
実験室研究(in vitro)。歯周病・矯正の理由で抜去した下顎第三大臼歯120本を10群(各12本)に分け、MOD窩洞の深さ3条件×壁の厚み3条件=9群をコンポジットレジンで直接修復(咬頭被覆なし)。500回の温度サイクル後に、直径6mmの鋼球で咬合面から押して最初に破折した荷重(N)を測定し、健全歯の群と比較
PMID
29508474

MOD窩洞、CRで詰めるか、咬頭を覆うか

大臼歯の古いアマルガムや二次う蝕を外したら、近心から遠心までつながるMOD窩洞になった。CRの直接修復で済ませるか、咬頭を覆うアンレーやクラウンに切り替えるか。毎回、なんとなくの経験で決めていないでしょうか。

この論文は、その線引きに実験室の数字を1つ置きます。抜去した下顎大臼歯で調べたところ、咬頭頂から測って深さ3mmの窩洞は、CRで直接修復すると健全歯と有意差がなく、深さ5mm以上では健全歯より有意に低かった。一方、残した壁の厚みを変えても、同じ深さの中では有意差は出ませんでした。

なぜ「深さ」と「壁の厚み」なのか

著者らは先行研究を引いて、臼歯が割れやすくなる主な理由は大きな窩洞と根管治療だと整理しています。引用された研究では、上顎小臼歯に標準的なMOD窩洞を形成すると、咬頭の相対的な硬さ(たわみにくさ)が平均63%失われ、その主な原因は辺縁隆線を失うことでした。

著者らが拠りどころにしたのは、窩洞をつくった後の咬頭を「片持ち梁(はり)」とみなす考え方です(Hood 1991の仮説の引用)。窩底が支点になり、窩洞が深いほど梁が長くなって、咬頭がたわみやすくなる。壁の厚みは残った歯質の量そのものなので、測りやすい目安になりうる。

どの深さ、どの壁の厚みまでなら咬頭を覆わずに修復できるのか。アンレーと接着インレーの境目は議論が分かれている、と著者らは述べています。

今回の実験:深さ3条件×壁の厚み3条件

実験の骨格:歯周病・矯正の理由で抜去した、目視でう蝕や歯根の亀裂がない下顎第三大臼歯120本を、10群(各12本)にランダムに分けた。
窩洞:咬頭頂から測った深さ3・5・7mm×残した壁の厚み3.5・2.5・1.5mmの9群。近遠心のボックスも咬合面部と同じ幅・深さの一続きのMOD窩洞。深さはペリオプローブ、壁の厚みはデジタルノギスで確認。
7mm群:根管治療をしてから、髄室にレジン添加型グラスアイオノマーを置き、深さ7mmに整えた。
修復:エナメル質のセレクティブエッチング→ボンド→フロアブルレジンを全壁に約0.5mm→コンポジットレジンを2mmずつ斜めに積層(咬頭被覆なし)。
評価:500回の温度サイクル(5℃と55℃)の後、直径6mmの鋼球で中心窩を押し、最初に破折した荷重(N)を記録。対照は健全歯12本。統計はKruskal-Wallis検定と多重比較。

結果:深さ5mmで、3mm・壁3.5mm群のおよそ半分に(著者ら)

0 1500 3000 4500 破折した荷重の中央値・概数 (N) 3450 3300 2550 2950 1500 1150 1300 1700 1150 850 健全歯 3mm壁3.5 3mm壁2.5 3mm壁1.5 5mm壁3.5 5mm壁2.5 5mm壁1.5 7mm壁3.5 7mm壁2.5 7mm壁1.5 論文の図2(中央値と25〜75%範囲)から筆者が目盛で読み取り50N単位に丸めた概数。原著に数値の表は無い。各群12本。3mm=深さ、壁=残した壁の厚み(mm)。7mm群は根管治療後に修復
破折した荷重の中央値(N)。原著は数値の表を載せていないため、図2の目盛から筆者が読み取った概数(50N単位)。灰=健全歯、ティール=深さ3mm、オレンジ=深さ5mm、濃いオレンジ=深さ7mm(根管治療あり)

図の読み取りでは、健全歯の中央値が約3,450N。深さ3mmの3群は約2,550〜3,300N、深さ5mmの3群は約1,150〜1,500N、深さ7mmの3群は約850〜1,700Nでした。深さ5mmにすると、深さ3mm・壁3.5mmの群のおよそ半分に下がった、と著者らは述べています。

統計の結果(表2の多重比較)
健全歯と有意差あり:深さ5mmと7mmの6群すべて
健全歯と有意差なし:深さ3mmの3群すべて
・深さ5mmの群と7mmの群の間:どの組み合わせも有意差なし
・同じ深さの中で壁の厚みを変えても:有意差なし

見落としたくないのは、3mm群と5mm以上の群の比較が「全部有意」ではないことです。壁が最も厚い3mm群(壁3.5mm)は5mm・7mmの6群すべてより有意に高かった一方、3mm・壁2.5mmの群は、5mm・壁3.5mmなど4群と有意差がなく、3mm・壁1.5mmの群も5mm・壁3.5mmと7mm・壁3.5mmの2群とは有意差がありませんでした。「3mmなら安全、5mmなら危険」はあくまで健全歯を基準にした線引きです。

なぜ深さが効いたのか(著者らの推察)

著者らは、考えられる説明として片持ち梁の考え方を挙げています。深さ3mmでは梁が短いので、壁が薄くなってもたわみにくく、破折荷重が保たれたのではないか。深さ5mmになると自由にたわめる咬頭が長くなり、たわみが増えて破折荷重が下がったのではないか、という読みです。この研究で咬頭のたわみそのものは測っていません。ただし、咬頭は単純な片持ち梁のようには変形しないという報告(Jantarat ほか 2001)もあり、一見この結果と矛盾する、と著者ら自身が書き添えています。

意外なのは、根管治療をした7mm群が、根管治療なしの5mm群と有意差がなかったことです。著者らは、深いMOD窩洞がすでにある状態で髄室を開けても、咬頭の相対的な硬さの低下は、開けない場合と有意な差がなかったという既存研究(Reeh ほか)と一致すると述べています。

壁の厚みについて、著者らは「窩洞の深さに比べれば二次的」とまとめました。別の研究では「2mmを超える厚みの壁は削って覆うべきではない」「十分な厚みは2.5mm」とされていますが、これらは今回の研究ではなく引用です。

明日の臨床へ

著者らの結論:この研究の範囲では、MOD窩洞の大臼歯で、深さ3mm以下はCRの直接修復で健全歯と有意差のない破折抵抗まで戻せた(著者らは「同じ」と表現。試した浅い条件は3mmのみ)が、深さ5mm以上は壁の厚みにかかわらず戻せなかった。壁の厚みは破折荷重に有意な影響を与えなかった。著者らは、深さ5mmはすでに咬頭被覆なしの直接修復では「危険域」とし、5mm以上では直接・間接の接着修復による咬頭被覆を安全策として検討してもよい、と提案している。
補足(筆者の読み):
・窩洞の深さは、咬頭頂からペリオプローブを当てれば、チェアサイドで数秒で測れます。修復法を決める前に「何mmあるか」を一度測る習慣は、この研究から持ち帰りやすい一手です。
・ただし咬頭を覆った群はこの実験に入っていないため、咬頭被覆でどれだけ破折荷重が戻るかは、この論文からはわかりません。著者らの提案は検証済みの推奨ではなく、今後の研究課題として書かれています。
・ファイバー強化レジンなどを使った場合には当てはめられない、と著者ら自身が述べています。
・深さ4mm前後の窩洞は条件に含まれていないので、境目がどこにあるかは示されていません。

ここだけ、冷静に補助線

読むときの補助線:まず、抜去歯を使った実験室研究です。荷重は鋼球で1回押して割る静的な試験で、咀嚼のような繰り返しの力とは違います。破折荷重は数千Nと実際の咬合力よりずっと大きく、材料や窩洞設計を比べる相対的な物差しとして使われている、と著者らは引用で述べています。臨床での破折率や長期の予後は調べていません。第二に、歯は下顎第三大臼歯で、各群12本です。「深さ3mmの群と健全歯に有意差がない」ことは、同等であることの証明ではありません。第三に、深さ7mmの群はすべて根管治療後で、深さと根管治療の影響を切り分けられません。破折の様式(修復できる割れ方か)も報告されていません。また結果は、この研究で使ったボンド(G-aenial Bond)・フロアブルレジン・CR(前歯用のGradia Direct Anterior)と、2mmずつ斜めに積む積層法でのものです。第四に、図2は凡例が「中央値と25〜75%範囲・n=13」、図の説明文が「平均と標準偏差」と食い違い、群の本数(12本)とも合いません。この記事の数値は凡例に従って中央値として読み、図の目盛から読み取った概数です。利益相反はないと記載され、資金の出どころは書かれていません。それでも、「窩洞は壁の厚みより深さを測る」という視点は、修復法を選ぶときの具体的な物差しになります。

今日のひとこと

著者らの結論:この研究の範囲では、深さ3mm以下のMOD窩洞はCRの直接修復で健全歯と有意差のない破折抵抗まで戻せたが、深さ5mm以上では壁の厚みにかかわらず戻せなかった(著者らは「同じ破折抵抗」と表現。試した浅い条件は3mmのみ)。壁の厚みは破折荷重に有意な影響を与えなかった。ただし抜去歯に1回だけ荷重をかけた実験室の結果で、「3mm群と健全歯に有意差がない」ことは同等を証明したものではなく、咬頭を覆った群との比較もしていない。

Forster A, Braunitzer G, Tóth M, Szabó BP, Fráter M. In Vitro Fracture Resistance of Adhesively Restored Molar Teeth with Different MOD Cavity Dimensions. J Prosthodont. 2019;28(1):e325-e331. PMID: 29508474. DOI: 10.1111/jopr.12777
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。