エンド|根管形成で削った象牙質の粉(硬組織デブリ)は、イスムスやフィンに押し込まれて残る。往復運動の1本系(Reciproc・WaveOne)と回転式の複数本系(BioRaCe)で、#25まで→#40までと同じ根管を順に広げ、デブリの量をマイクロCTで比べた抜去歯の実験研究(De-Deus 2015・Journal of Endodontics)
下顎大臼歯の近心根をどこまで広げるか——#25で止めるか、#40まで上げるかは、流派や好みで分かれるところです。著者らは、抜去した下顎第一大臼歯の近心根30本(中等度湾曲・独立した2根管)をReciproc・WaveOne・BioRaCeに10本ずつ割り付け、同じ根管を#25まで、続けて#40まで形成しました。形成前・#25後・#40後の3回マイクロCTで撮影し、元の根管の空間に押し込まれた硬組織デブリの割合を測っています。結果、デブリは#25後で平均18.84〜28.74%、#40後で3.46〜11.63%。拡大号数を上げると3群ともはっきり減り(P<.001)、ファイルの種類による差は見られませんでした(P=.236)。ただし#40まで広げても、デブリがゼロになった群はありませんでした。
①近心根、#25で止める?#40まで上げる?
下顎大臼歯の近心根。細くて湾曲していて、2本の根管のあいだにはイスムスがある。最終号数を#25で止めるか、#40まで上げるか——先生ごとに方針が分かれるところだと思います。
著者らも考察で、最適な最終号数を決める科学的なガイドラインは無いと書いています。大きく広げる派(スカンジナビア流)と、根尖は控えめに広げる派(Schilder流)がある、と。
結論を先に言います。この研究では、#25から#40まで広げると、根管に押し込まれた削りカス(硬組織デブリ)は3群とも減りました。そしてファイルの種類による差は見られませんでした。
②削った象牙質の粉は、どこへ行くのか
ファイルで象牙質を削ると、粉が出ます。これがイスムス・フィン・根管の凹凸に押し込まれて残ることを、Paqué先生らがマイクロCTで量として示したことで、この問題があらためて注目されました。
・押し込まれた粉の奥に細菌が残り、洗浄・消毒が届きにくくなるおそれがある(スメア層より臨床的に重要かもしれない、とも)
・根管充填材の接着や封鎖を邪魔するおそれがある
・これまでの研究では、今ある洗浄の方法では根管からデブリを取りきれないことが繰り返し示されてきた
そこで、洗浄ではなく形成のしかたでデブリを減らせないかという発想が出てきます。往復運動(レシプロ)の1本系ファイルが出てきて、「往復運動そのものがデブリの量を変えるのか」は議論が割れていました。そして最終号数を上げたときにデブリがどうなるかは、まだ分かっていなかった——これが今回の出発点です。
③今回の一手:同じ根管を#25→#40と広げ、マイクロCTで3回撮る
これを3群に10本ずつ無作為に割り付け(根の長さと湾曲の度合いは3群でそろっていることを確認)、1人の術者が形成しました。
・Reciproc:R25(25/.08)→ R40(40/.06)
・WaveOne:Primary(25/.08)→ Large(40/.08)
・BioRaCe:BR0〜BR3で#25まで → BR4・BR5(40/.04)
作業長は根管長の1mm手前。ステンレスの#15 Kファイルでグライドパスを作ってから始めています。
洗浄は、各ファイルの後に5.25%次亜塩素酸ナトリウム2mLを30Gのニードルで。#40まで形成した後に追加の次亜塩素酸ナトリウム、最後に17% EDTA 5mLと蒸留水5mLで流し、1根管あたり計40mL・25分に3群でそろえました。
ポイントは同じ根管を3回撮影したことです。形成前・#25後・#40後にマイクロCT(解像度14.16µm)で撮り、画像を重ね合わせて、もともと空気だった根管の空間に、象牙質と同じ密度のものが入り込んでいる部分をデブリとして数えています。単位は元の根管容積に対する%です。
④結果①:#25→#40で、3群ともデブリが減った
#25まで形成した時点のデブリは、Reciproc 19.01%(標準偏差15.39)、WaveOne 18.84%(13.26)、BioRaCe 28.74%(23.60)でした。
同じ根管を#40まで広げると、Reciproc 3.46%(4.21)、WaveOne 11.63%(11.71)、BioRaCe 10.46%(8.60)。3群とも下がっています。
代表例のマイクロCT断面像でも、#25後にはイスムスと主根管にデブリが詰まっていた部分が、#40後にははっきり減っている様子が示されています。
⑤結果②:ファイルの種類では差が出なかった
一方、Reciproc・WaveOne・BioRaCeの間にデブリ量の差は見られませんでした(P=.236)。グラフでは1群の#25が高めに見えますが、ばらつきが大きく、統計的に有意な差にはなっていません。
著者らは最初に「往復運動の1本系のほうが、回転式の複数本系よりデブリが少ないだろう」という仮説を立てていましたが、これは支持されませんでした。先行研究(Robinson 2013)では逆に、ProTaper(回転式)のほうがWaveOneよりデブリが少なかったと報告されています。著者らは、比べた回転式ファイルの刃の形の違い(BioRaCeは正のすくい角をもつ攻撃的な刃で、デブリを多く出しやすいかもしれない)が食い違いの一因かもしれないと考察しています。
⑥なぜ、広げるとデブリが減るのか
素直に考えると、ファイルを多く・大きく使うほど削る量が増え、デブリも増えそうです。ところが結果は逆でした。
著者らの説明は2つの組み合わせです。
・広げること自体で、デブリが詰まっていた部分の壁ごと削り取られる
・根管が太くなると、洗浄液が根尖側までよく流れるようになり、同じ洗浄でもデブリを押し流しやすくなる(流体シミュレーションの先行研究を引用)
つまり、「たくさん削る=デブリが増える」という単純な話ではなく、最終号数と洗浄の流れが組み合わさって効いている、という見立てです。この研究では、どちらがどれだけ効いたかは切り分けられていません。
⑦明日の臨床へ
・#40まで広げるとデブリは減った。最終号数を上げる選択肢に、実験室レベルの根拠が1つ加わった。
・ファイルの種類(往復か回転か)より最終号数。この研究では、システムを替えても差は出なかった。
・ただし著者ら自身が、歯根を弱くする・ストリップパーフォレーション(側壁穿孔)・器具破折のリスク、特に湾曲の強い根管でのリスクを評価してから勧めるべきだと書いている。「全部#40まで」と読まない。
・#40でもゼロにはならない。洗浄液を根管の中で動かす工夫(エネルギーを加える洗浄)の必要性も、著者らは強調している。
近心根のイスムスは、形成しただけでは「きれいになった」と言えない場所。拡大号数と洗浄の両方をセットで考えるきっかけになる研究です。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
この研究では、下顎大臼歯の近心根を#25から#40まで広げると、根管に押し込まれた硬組織デブリは3群とも減りました(#25後 18.84〜28.74% → #40後 3.46〜11.63%・P<.001)。往復運動の1本系(Reciproc・WaveOne)と回転式の複数本系(BioRaCe)の間に差は見られませんでした(P=.236)。効いていたのはファイルの種類より最終号数——ただし、#40でもデブリがゼロになった群はなく、拡大には歯根を弱くする・穿孔や器具破折のリスクもあると著者ら自身が書いています。抜去歯30根の実験で、治療の成績を見た研究ではありません。


