1問1答 論文 歯周病

骨の供給源は、口の中にあった

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase2 歯周外科

骨欠損を埋める自家骨を、腸骨から採らずに済ませられないか。1973年、HiattとSchallhornが上顎結節と治癒中の抜歯窩を供給源に166件の移植を行い、平均3.44mmの骨の増加を報告しました。ブロック切片には、新生セメント質・新生歯根膜・新生骨が写っています。

論文
Intraoral Transplants of Cancellous Bone and Marrow in Periodontal Lesions
著者
Hiatt WH, Schallhorn RG
掲載
Journal of Periodontology 1973;44(4):194-208
種類
臨床症例集積(40名・166件の移植・術中と再入時の骨計測・評価期間9か月〜7年)
PMID
4570483

骨の供給源は、口の中にあった

歯周治療の究極の目標は、疾患を排除し、失われた支持構造を回復させることこの目的のために、歯周骨欠損における歯槽骨の支持を再生させようと、過去50年にわたってかなりの努力が払われてきました

そのなかで有力な選択肢が腸骨稜由来の海綿骨と骨髄でした。従来の再生療法では難治とされてきた各種の骨欠損の消退に、有望な結果をもたらす供給源として記述されてきたのです。

ただし腸骨からの採取は、別の部位に外科を加えることを意味します。そこでこの研究では、上顎結節・無歯顎部・治癒中の抜歯窩を、歯周病変への海綿骨と骨髄の供給源として用いました腸骨を用いたときの結果と比較できるよう、症例は生体計測データとともに提示されています。

先に結論: 40名・166件の移植で、骨の高さの増加は一方の術者の78部位で平均3.35mm、もう一方の88部位で3.94mm、全部位で3.44mm供給源(上顎結節か抜歯窩か)による有意差はなく、同種の欠損に対する腸骨由来の材料とも同等でしたそしてブロック切片には、新生セメント質・新生歯根膜・新生骨が写っています

166件をどう作ったか

40名の患者に計166件の移植が行われました。年齢・性別のさまざまな19名を著者の一方が78部位、21名をもう一方が88部位で治療しています。上顎結節が供給源となったのは107件、下顎または上顎の治癒中の抜歯窩・無歯顎部が59件

症例は通常の歯周治療を求めて来院した患者から選ばれ、術前処置は細菌性プラークの沈着を制御する指導・スケーリング・キュレッタージュ・粗大な干渉に対する咬合調整初期準備から4〜12週後に、態度・プラークコントロールの能力・組織の反応で再評価されました。初期の反応が良くなければ術前処置の期間を延長し、ある症例では外科を提案するまでに5年を要しています。

患者が口腔衛生指導に協力的で、細菌性プラークの管理が炎症の臨床所見の軽減に成功していれば、追加の治療が必要かどうかを評価歯肉溝内の組織に向けた衛生手技だけでは反応が不十分で、プロービングとX線検査で骨欠損が存在すると判断された場合に、遊離骨移植が提案されました。

口腔内の供給源が十分にあると思われた患者がこの研究の対象。口腔内の供給材料が不足していると思われた患者には、腸骨の自家骨または同種骨が提案されています。

そして重要な限定がひとつ。頬側の骨頂部と根分岐部への口腔内自家骨移植は、以前の経験で反応が不良だったため、1壁性・2壁性・3壁性の骨欠損のみが評価対象となりました。

計測は術中に、セメント-エナメル境または修復物の歯肉縁といった固定の基準線から骨のチャートを作成。新しいチャートは再入手術時、または組み合わせプローブを用いて無傷の組織を通して作成術前後にロングコーンX線を、基準点ありとなしで撮影しました。結果の評価期間は9か月から7年です。

海綿骨だけを使い、過剰に詰めない

口の中のどこから、骨を採るか

上顎結節 107件 ・第三大臼歯があっても相当量の海綿骨がある ・第二・第三大臼歯が失われると採取量が増える ・皮質骨は卵殻ほどの薄さで、彎曲ロンジュールで採れる ・時に赤色骨髄の巣が見られる

治癒中の抜歯窩・無歯顎部 59件 ・抜歯窩は最低2か月治してから根尖側を採取する ・臼歯部は歯槽頂から、前歯部は根尖側の窓から ・前歯部は唇側の歯槽堤の形を保つ配慮が要る ・線維性結合組織で埋まった窩は使えない

どちらから採っても、扱い方は同じ 骨髄を含んだ海綿骨だけを使い、外側の皮質骨は捨てる。1〜6mmの断片にして綿ピンセットで軽く押さえる程度に適合させる。 過剰充填はしない。骨クレーターの縁は高さを削らず、移植材が骨と歯根膜の毛細血管床に接するように保つ。

2つの供給源と、共通する扱い方のルール

術式の記述が、この論文のいちばんの実用価値です。

骨は術者の好みに応じて、手技の最初か、あるいは受容部位の準備が終わったところで採取ほとんどの場合、供与骨は切片にするまで培養液中に保存されました。

使うのは骨髄を含んだ海綿骨のみ。皮質骨の外側の殻がある場合は、それを捨てるよう注意します。骨の切片は直径1〜6mmで、外科用ハサミで容易に切れる柔らかい硬さ。綿ピンセットで軽く押さえる程度の圧で骨欠損に適合させます。

供与骨の供給は一般に限られているため、病変は過剰充填しません全症例で全層弁を用い、辺縁の組織はすべて保存しつつ上皮化した肉芽組織を削ぎ、移植部位を完全に覆うよう再接合されました。

骨クレーターの縁は高さを削らず、むしろ移植材が骨と歯根膜の毛細血管床に接した状態を保つように残します骨整形(オステオプラスティ)は、厚い壁が張り出した欠損で形態を改善するために行われました

供給源ごとの要点上顎結節は、第三大臼歯が存在していても移植可能な相当量の海綿骨を含みます第三大臼歯が失われれば治癒した部位が広がって材料が増え、第二・第三大臼歯の両方が失われれば結節の大きさは大規模な移植に足りることもある時に赤色骨髄の巣が観察され、これは最適な骨形成能を提供しうるとされます。

採取は最後方臼歯から遠心へ延びる歯槽頂切開で行い、三角形の遠心楔状の軟組織を除去すると弁の再接合が容易に切開を遠心へ延ばしすぎて口蓋帆張筋の腱を切断しないよう注意が必要です。この領域の皮質骨は一般に卵殻ほどの厚みなので、彎曲した先端の切削ロンジュールで採ると、トレフィンや窓開けよりはるかに多くの材料が得られます結節は部分的に再生することがあり、将来さらに採取できる場合もある

無歯顎部が供与部位になる場合は、通常は窓開けのアプローチ抜歯窩は最低2か月治癒させてから根尖側の部分を供与材料に用います臼歯部では歯槽頂の入口から、前歯部では唇側の歯槽堤の形を保つために根尖側の窓または弁から進入ただし抜歯部位は個々に慎重な確認が必要で、線維性結合組織で満たされて長く残る部位は遊離骨移植の材料としては不適です。

3.44mmという数字と、ブロック切片

0 1.5mm 3.1mm 4.6mm 骨の高さの増加(平均・mm) 3.4mm 3.9mm 3.4mm 術者A(78部位) 術者B(88部位) 全部位(166件) 40名・166件の移植。供給源(上顎結節107件/治癒中の抜歯窩・無歯顎部59件)による有意差はなく、同種の欠損に対する腸骨由来の材料とも同等の結果だった。対象は1壁性・2壁性・3壁性の骨欠損に限定されている
骨の高さの増加(術者別と全部位の平均)

一方の著者が観察した78部位での平均の填塞は3.35mm、もう一方の著者が観察した88部位では3.94mm。全部位での骨の高さの増加の総平均は3.44mmでした。

治療部位は供与骨の種類で分けていません。結果に有意な差が存在しなかったためです。また同種の欠損に対して腸骨由来の材料で得られた結果とも同等でした

著者らは、その理由をこう考察しています。成人の下顎・上顎の骨髄は、腸骨の造血性のものと対照的に、主に脂肪性または線維性しかしすべての骨髄には、多分化能を持つ原始的な細網細胞が豊富に含まれる加えて海綿骨は、同じ体積の皮質骨に比べて表面積と骨芽細胞の数が桁違いに大きいこれらが、修復の予後が根分岐部欠損より良好な骨内欠損において、同等の結果をもたらしているのかもしれない

逆に言えば、根分岐部欠損での再生は、より高い誘導能を持つ造血性骨髄の移植で高まる可能性がある上顎骨に赤色骨髄の巣が生じることがあるため、供与標本にそうした巣が含まれていれば同等の反応が期待できるかもしれない——ただしその頻度に関する情報が欠けているため、事実に基づく相関づけはできないと、著者ら自身が留保しています。

そして本文中で示されている症例が印象的です。初回の外科から7年後(移植から4年後)の2度目の再入で、犬歯の近心面に10mm、側切歯の遠心根に6mmの新生骨形成が計測された症例上顎結節からの移植で大きな根分岐部(三根分岐)病変が2年後に新生骨で満たされた症例

さらにブロック切片で選ばれた症例下顎第一大臼歯の遠心面に歯石があってポケットが確認された部位を移植し、2年後にX線で新生骨の形成を確認光学顕微鏡写真には新生セメント質の形成が写り、新生の歯根膜と骨の形成も認められました鍍銀染色では、線維がセメント質から骨へ機能的な向きに配列していることが示されていますルートプレーニングは根の形が変わるほど広範に行われていましたが、それはセメント質の内側にとどまっていました

明日の臨床へ

①腸骨に行かなくても、口の中に供給源はある。 上顎結節と治癒中の抜歯窩。1壁性〜3壁性の骨内欠損なら、腸骨と同等の結果が報告されています

②使うのは海綿骨と骨髄。皮質骨の殻は捨てる。 表面積と骨芽細胞の数が違います。1〜6mmの断片にして、軽く押さえる程度に

③過剰に詰めない。クレーターの縁は削らない。 移植材が骨と歯根膜の毛細血管床に接する状態を保つことが、この術式の設計思想です。

④抜歯窩は2か月待ち、中身を確かめてから使う。 線維性結合組織で埋まった窩は材料になりません。

⑤適応は骨内欠損。頬側骨頂と根分岐部は、この報告の対象外。 著者ら自身が以前の経験から除外しています。

ここだけ、冷静に補助線。 これは対照群を置かない症例集積で、無作為化も盲検化もされていません2名の術者の平均値が3.35mmと3.94mmと差があること自体、術者要因の大きさを示唆します評価期間も9か月から7年と幅が広く、統計解析は行われていませんまた「填塞(fill)」はX線と再入時のプロービングによる骨の高さの計測であり、その全部が新付着を伴う再生とは限らない——ただしこの点については、ブロック切片で新生セメント質・新生歯根膜・新生骨と機能的な線維配列が示されているのが、この論文の強みです。50年前の報告ですが、「どこから採り、どう扱うか」の記述は、いま読んでもそのまま使える精度で書かれています

今日のひとこと

口腔内から採取した海綿骨と骨髄を、歯周骨欠損の移植材として用いた臨床報告40名・計166件の移植。うち1名の術者が19名78部位、もう1名が21名88部位を担当)。供給源は上顎結節が107件、下顎または上顎の治癒中の抜歯窩・無歯顎部が59件対象は1壁性・2壁性・3壁性の骨欠損に限定(頬側の骨頂部や根分岐部への口腔内自家骨移植は、以前の経験で反応が不良だったため除外)採取するのは骨髄を含んだ海綿骨のみで、外側の皮質骨は捨てる。1〜6mmの断片にして、綿ピンセットで軽く押さえる程度に適合させ、過剰充填はしない骨クレーターの縁は高さを削らず、移植材が骨と歯根膜の毛細血管床に接するよう保つ結果、一方の術者の78部位で平均3.35mm、もう一方の88部位で平均3.94mm、全部位の平均で3.44mmの骨の高さの増加供給源(上顎結節か抜歯窩か)による有意差はなく、同種の欠損に対する腸骨由来の材料と比べても同等の結果でしたブロック切片では、新生セメント質・新生歯根膜・新生骨の形成が確認され、鍍銀染色で線維がセメント質から骨へ機能的な向きに配列していることが示されています

出典:Hiatt WH, Schallhorn RG. Intraoral transplants of cancellous bone and marrow in periodontal lesions. J Periodontol 1973;44(4):194-208. PMID: 4570483
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。