1問1答 論文 歯周病

0〜3で点数を付ける指数は、なぜ臨床に根づかなかったのか——測り方を「%」に変えた提案

診査・診断

歯肉出血と目に見えるプラークを%で数える、その原典

歯肉炎指数は0〜3の4段階。プラーク指数も0〜3。全部位に付けて、平均を出す。——毎日の診療で、それを続けていますか。多くの医院で使われているのは、染め出して数える割合と、出血の有無です。つまり私たちはすでに「有無を%で数える」ほうを選んでいる。その選択の理由を、50年前に言葉にした論文があります。

論文
Problems and proposals for recording gingivitis and plaque
著者
Ainamo J, Bay I
掲載
Int Dent J. 1975
種類
指標のレビューと、記録法の提案
PMID
1058834

0〜3で点数を付ける指数を、毎日つけていますか

歯肉炎指数は0〜3の四段階。プラーク指数も0〜3。全部位に付けて、平均を出す。——学生時代に習ったその方法を、いま毎日の診療で続けている人は、どれくらいいるでしょうか。

多くの医院で実際に動いているのは、染め出して数えた割合と、出血したかどうかの丸印です。つまり私たちはすでに、「段階を付けて平均する」のをやめ、「あるか、ないかを%で数える」ほうを選んでいる。その選択には、50年前に書かれた理屈があります。

指標は、研究の感度を上げる方向へ進化した

AinamoとBayはまず、歯肉炎とプラークの指標がどこから来たのかを辿ります。そこで見えたのは、どの指標も、それぞれ特別な目的のために作られてきたということでした。

そして発展の向きは一貫していました。より繊細に、より細かく段階を分けるほうへ。

理由があります。新しい歯磨剤を数週間使わせて差を見るような短期の臨床試験では、感度が要る。あるかないかの二択では動かない差も、四段階の平均値なら動きます。感度を上げるほど、研究の道具としては優秀になるのです。

ところが、その感度は日常では実用的でなかった

二人はここで向きを変えます。細かく段階分けされた指標は科学的な目的には有利でも、公衆衛生の観点からは、必ずしも実用的ではない

開業医が予防のプログラムを回そうとするとき、必要なのは別のものでした。う蝕で処置歯面を数えるのと同じくらい、簡単で、定義のはっきりした記録法です。

つまり: 多段階指標の個人平均値を出すのをやめ、単一の所見について「それが出た部位の割合」を使う——これがこの論文の提案です。
同じ口を、二通りに記録する

段階を付けて、平均する 0・1・2・3 の四段階を全部位に 部位A2 部位B1 部位C0 部位D3 平均 1.5 短期の臨床試験には向く

あるか、ないか。それを%で 記録するのは「その所見が出た部位の数」 ●=あり ○=なし 12部位中3部位 25% 日常診療と患者への説明に向く

Ainamo & Bay は、後者を日常の記録法として提案した(Int Dent J. 1975)

同じ口を二通りに記録したときの違い。段階を付けて平均すると小数の値になり、有無で数えると割合になる(図は考え方を示すための模式で、論文中の症例ではありません)

二つの記録と、患者に手渡すひとつの目標

提案は具体的です。

歯肉炎については——圧をかけたときに出血する歯肉縁の数を、調べた部位に対する%で表す。

口腔衛生については——はっきり目に見えるプラークで覆われた歯面が、どれだけあるかを使う。

どちらも判断するのは「あるか、ないか」だけ。段階を刻む必要はありません。

二つの記録と、患者に手渡すひとつの目標

口腔衛生をみる はっきり目に見えるプラークで 覆われた歯面が、どれだけあるか 見えるかどうかで判断する

歯肉の炎症をみる 圧をかけたときに出血する歯肉縁が 調べた部位の何%あるか 出血するかどうかで判断する

見えるプラークと、歯肉の出血を遠ざけておく ——患者本人にも分かる、実践できる目標として

二つの記録は、そのまま患者本人への目標に翻訳できる

なぜ、この形が根づいたのか

この提案には、もうひとつの狙いが書き込まれています。目に見えるプラークと歯肉の出血を遠ざけておくこと——それを、患者本人への歯科保健教育の目標にできる、と二人は書きました。明確に理解でき、実践できる目標として。

「平均1.5」は、患者さんに何も語りません。「12か所のうち3か所、25%」は語ります。数字が本人の手に渡るかどうかが、記録法を分けていました。

明日の臨床へ

記録法を選ぶとき、先に決めておくべきことがあります。何のために測るのか。

研究のために測るなら、感度の高い多段階の指標に意味がある。日常の診療で、患者と一緒に見るために測るなら、簡単で、繰り返せて、本人に返せるもののほうがいい。

ひとつの指標で両方を賄おうとしない。AinamoとBayが「いまはいくつかの異なる種類の指標体系が必要だ」と書いたのは、その意味でした。

ここだけ、冷静に補助線 これは比較試験ではなく、既存の指標の来歴を辿ったうえでの提案です。どの記録法が病気の進行をよく予測するかを検証した論文ではありません。それでも、いま多くの医院が使っている記録の形は、この提案の延長線上にあります。「なぜこの形なのか」を知っておくと、測る目的が変わったときに、記録法も変えられる。

今日のひとこと

測り方を細かくするほど、研究は精密になり、臨床は続かなくなる。日常に要るのは、う蝕の記録と同じくらい簡単で、患者本人に返せる数字だった。

Ainamo J, Bay I. Problems and proposals for recording gingivitis and plaque. Int Dent J. 1975;25(4):229-235. PMID: 1058834
臨床判断は必ず原著をご確認ください。