1問1答 論文 歯周病

エムドゲインは、フラップ手術に何を足すか|Froum 2001

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エムドゲイン(EMD)を足すと、フラップ手術はどこまで変わるのか。エックス線やプロービングではなく、12か月後にもう一度開けて骨を実測した研究があります。同じ患者の口の中で、コイントスでEMDを使う欠損と使わない欠損に分けたスプリットマウス設計。骨欠損の充填率は、74%対22.7%でした。

論文
A Comparative Study Utilizing Open Flap Debridement With and Without Enamel Matrix Derivative in the Treatment of Periodontal Intrabony Defects: A 12-Month Re-Entry Study
著者
Froum SJ, Weinberg MA, Rosenberg E, Tarnow D(ニューヨーク大学歯学部)
掲載
Journal of Periodontology 2001;72(1):25-34
種類
スプリットマウス比較試験+12か月後の再開創(re-entry)/2つ以上の角状骨欠損をもつ患者23名、平均45.5歳(SD 15.9、19〜71歳)。EMD併用53部位・フラップ手術のみ31部位、計84部位
PMID
11210070

「本当に骨は埋まったのか」を、開けて確かめる

再生療法の成績は、たいていエックス線とプロービングで語られます。しかし「本当に骨が埋まったのか」を確かめる方法は、ひとつしかありません。もう一度開けることです

この研究の設計は明快です。23名の患者それぞれの口の中で、コイントスによってEMDを併用する骨欠損と、フラップ手術だけの骨欠損に分けました同じ患者、同じ術者、同じ日の手術。違うのはEMDを使うかどうかだけですそして約12か月後、全部位を再開創(re-entry)して骨を実測しました

「EMDについて、再開創データを伴う対照臨床試験の報告は、これまで文献上ない」——著者らはそう書いて、この研究の位置づけを説明しています。

先に結論: 12か月後の調整平均で、ポケット減少は2.24mm対4.94mm、CAL獲得は2.75mm対4.26mm、骨欠損の充填量は1.47mm対3.83mm(いずれもEMD併用が優位、P<0.0001)骨頂吸収を差し引いた欠損充填率は22.7%対74.0%で3倍以上歯肉退縮も骨頂の吸収も、EMD併用のほうが小さかった

ステントと0.01mm、そして盲検

対象はニューヨーク大学歯学部を受診した23名全員が2つ以上の角状骨欠損をエックス線で有し、全顎のスケーリング・ルートプレーニング、必要に応じた咬合調整、ホームケア指導を、スクリーニングの2か月以上前に完了しています抗菌薬の予防投与が必要な患者や、歯周外科の禁忌となる全身疾患をもつ患者はいません平均年齢45.5歳(SD 15.9、19〜71歳)

計測の精度に、この研究はかなりの手間をかけています

  • 術前に患者ごとにアクリルステントを作製し、模型上に保管して変形を防いだステントには咬合面から根尖方向へテーパーバーで溝を彫り、シルバーポイントが毎回同じ位置に戻るようにした
  • 歯肉退縮・PD・CALは、固定基準点(ステント)から、デジタルボーレーゲージ・シルバーポイント・ロッキングプライヤーを用いて0.01mm単位で記録
  • すべての計測は1名の調査者が担当し、この調査者は外科処置を行っていない
  • さらに、計測は治療を決めるコイントスの前に行われたため、計測者は行われた治療内容を知らされていない。これは再開創時の計測でも同様である

術式は両群とも、全層粘膜骨膜弁を翻転し、露出した根面と骨欠損を手用器具と超音波器具でデブライドメントフラップ手術のみの部位は、そのまま弁を復位して4-0絹糸で縫合しました

EMD部位はさらに、乾燥→クエン酸(pH=1)を綿球で根面に15秒→滅菌生理食塩水または水で60秒洗浄EMDを適用したあとに速やかに閉創できるよう、EMD適用より前に縫合を開始していますEMDは30mg粉末をプロピレングリコールアルギネート溶媒と混和して調製し、露出根面の最深部から歯冠側へゆっくりと、欠損が満たされるまで適用縫合後、歯と弁の接合部にEMDを追加し、両群とも湿らせたガーゼで5〜10分圧接しました

術後は、テトラサイクリン塩酸塩1g/日を2週間、0.12%クロルヘキシジン洗口を1日2回8週間縫合と保護材は10〜14日で除去し、術部のブラッシングとフロスは抜糸後6週間中止2週ごとに6週間、その後は月1回10か月間、専門的な縁上スケーリングとホームケア指導を継続術部は術後6か月まで一切プロービングしていません

統計は一般化推定方程式(GEE)を用い、部位間の非独立性を考慮しつつ、ベースラインの差を調整しています年齢と喫煙状況もモデルへの投入が検討されましたが、いずれもEMDの効果推定を実質的に変えなかったため除外されました

骨は、3倍以上埋まった

0 1.8mm 3.7mm 5.5mm 12か月後の変化量(mm) 2.2mm 4.9mm 2.8mm 4.3mm 1.5mm 3.8mm 1.3mm 0.5mm ポケット減少 CAL獲得 骨欠損の充填量 骨頂の吸収 薄い棒=フラップ手術のみ / 濃い棒=エムドゲイン併用。いずれもGEEによる調整平均でP<0.0001。骨頂の吸収だけは小さいほうが良い(オレンジ)
12か月後の調整平均変化量。ベースラインの計測値を共変量として調整(GEE)

ベースラインでは、プロービングデプス(対照7.32mm/EMD 7.99mm、P=0.125)、プラーク指数(P=0.244)、歯肉炎指数(P=0.931)に有意差はありませんでしたただし骨欠損の深さだけは、EMD群のほうが有意に深い(4.29mm対5.63mm、P<0.001)——この点は後述します。

12か月後の調整平均変化量は、すべての項目でEMD併用が上回りました

  • ポケット減少:対照2.24mm(95%CI 1.87–2.62)/EMD 4.94mm(4.76–5.13)
  • CAL獲得:対照2.75mm(2.36–3.13)/EMD 4.26mm(4.03–4.49)
  • 骨欠損の深さの減少:対照2.65mm(2.44–2.86)/EMD 4.28mm(4.03–4.54)
  • 骨欠損の充填量:対照1.47mm(1.17–1.76)/EMD 3.83mm(3.58–4.08)
  • 歯肉退縮:対照1.29mm(0.99–1.60)/EMD 0.61mm(0.46–0.76)——EMD併用のほうが退縮が小さい
  • 骨頂の吸収:対照1.29mm(1.16–1.43)/EMD 0.46mm(0.36–0.55)——こちらもEMD併用のほうが小さい

P値は、歯肉退縮がP=0.0001、それ以外はすべてP<0.0001です

0 30% 60% 90% 12か月後の骨欠損の改善率 (%) 22.7% 48.1% 74% 83.2% フラップ手術のみ エムドゲイン併用 薄い棒=欠損充填率 / 濃い棒=欠損解消率。いずれもP<0.0001。ベースラインの骨欠損はエムドゲイン群のほうが有意に深かった(5.63mm対4.29mm)
骨欠損の充填率と解消率。充填率は骨頂の吸収を差し引いた値

率で見ると、差はさらに際立ちます

  • 欠損充填率(骨頂の吸収を考慮):対照22.7%(17.8–27.6)/EMD 74.0%(69.2–78.7)
  • 欠損解消率:対照48.1%(43.3–52.8)/EMD 83.2%(78.5–87.9)

著者らは要約でこう書いています。「骨頂の骨吸収を調整したあとの平均欠損充填率は、EMDで治療した部位のほうが3倍以上大きかった(EMDで74%、EMDなしで23%)」

重要な補足がひとつ。再開創時のプラーク指数と歯肉炎指数に群間差はありませんでした(EMD群:PI 0.51・GI 0.71/対照群:PI 0.68・GI 0.71。それぞれP=0.51、P=1.00)「この事実は重要である。なぜならフラップ手術やメンブレンを用いた臨床研究は、PD減少・CAL獲得・骨欠損充填の量が、治療部位のプラークコントロールと相関しうることを示してきたからである」。両群で同じレベルのプラークコントロールが保たれていた——だからこの差はEMDによるものだ、という論理です。

もうひとつ。「本研究では、テスト群・対照群のいずれにおいても、臨床的なアタッチメント喪失を示した部位はなかった」「対照群の1部位が骨欠損の充填に増減を示さなかったことを除けば、両治療群のすべての部位が正のOF(骨欠損の充填)を示した」

なぜEMDが効くのか、そして何が引っかかるのか

メカニズムについての説明は、発生学に立ち返ります。

「EMDは主にアメロゲニンと、ブタの歯胚に由来する関連タンパクから構成される」「ヘルトウィッヒ上皮鞘(HERS)が細胞性・無細胞性の両方のセメント質形成に重要な役割を果たすことを示す証拠が増えている。HERSの細胞はエナメル基質タンパク(EMPs)と呼ばれる物質を合成する」「アメロゲニン、エナメリン、アメリンを含むEMPsの根面への沈着が、無細胞セメント質の形成に先行し、セメント芽細胞の発現に不可欠な表面を提供している可能性がある」

「したがって、再生療法におけるエナメルタンパクの補助的使用は、以前に疾患に罹患した根面を、セメント芽細胞の表現型を発現する細胞で再定着させるための、天然の細胞外マトリックスを提供しているのかもしれない」「身体は歯の発生の過程で通常このエナメル基質のタンパクに曝されているため、これらのタンパクはおそらく免疫系に”自己”として認識され、拒絶反応の報告はない」

ただし、この研究には自分たちで挙げた引っかかりがあります。

最大のものが、ベースラインの骨欠損の深さの差です。「本研究の初期プロービングデプスはテスト部位と対照部位で有意差がなかったが、初期骨欠損深さ(IOD)はテスト部位で有意に深かった」「テスト部位の有意に大きい骨充填は、テスト群における欠損の初期深さがより大きかったこと(5.63対4.29)に関係している可能性がある」

さらに「骨壁の数と欠損の幅(欠損の角度)は、骨充填と相関することが示されている他の2つの因子であるが、これらのパラメータは本研究では測定されなかった」「欠損の治療はコイントスで選ばれ、治療した欠損の幅・高さ・体積の計測は記録されていないため、これらの因子の一部あるいは全部が、テスト群と対照群の結果に等しく影響した可能性がある」

そのうえで著者らは「初期骨欠損深さを統計モデルの共変量に含めたことで、初期欠損サイズの違いに関連する反応の差は調整され、バイアスは除去された」と述べています

明日の臨床へ

第一に、比較の相手を間違えないこの研究が比べたのは「EMD併用フラップ手術」と「フラップ手術単独」です著者ら自身が「本研究で示した結果は、EMD治療部位をOFD対照と対比しただけである」と明記していますGTR(メンブレン)との比較については、先行する2つの研究が「PD減少とCAL獲得の改善に統計学的有意差なし」と報告していることも紹介されています「同等性の結論を出す前には、より大きなサンプルサイズとより多くの研究が必要である」

第二に、適応を骨内欠損に限る「本研究および前述の研究における欠損はすべて骨内型の欠損であったため、これらの結果を他の欠損型(根分岐部、水平性骨吸収、頬側骨欠損)へ外挿することは不適切である」

第三に、術後管理を含めて「一式」で考えるこの研究の術後プロトコルは、テトラサイクリン2週間、クロルヘキシジン8週間、術部のブラッシング中止6週間、2週ごと6週間+月1回10か月の専門的縁上清掃、そして6か月まで一切プロービングしない、というものですEMDを使えばこの成績が出る、のではなく、この管理とセットでこの成績が出た、と読むほうが安全です

ここだけ、冷静に補助線。23名・84部位の単施設研究で、観察は12か月です。最大の限界は著者ら自身が認めるとおり、ベースラインの骨欠損深さがEMD群で有意に深かったこと(5.63対4.29mm)。統計モデルで調整はされていますが、骨壁数や欠損の幅といった治癒を左右する因子は測定されていません。またスプリットマウス設計は同一患者内の比較という強みがある一方、EMDの効果が隣接部位へ及ぶ可能性は完全には否定できません。それでも、固定ステントによる0.01mm単位の計測、盲検化された評価者、そして何より「12か月後にもう一度開けて骨を直接見る」という手順は、当時としても現在としても、きわめて誠実な検証です。著者らが引用する編集論説の言葉を借りれば——PD減少4.94mm、CAL獲得4.26mm、骨充填4.28mm、欠損充填率74%という数字を前に、その臨床的意義を疑う臨床家はほとんどいないでしょう。

今日のひとこと

23名の患者それぞれの口の中で、コイントスによりEMDを併用する欠損と併用しない欠損を割り付けたスプリットマウス設計である。EMD併用53部位、フラップ手術のみ31部位患者ごとにアクリルステントを作製して固定基準点とし、デジタルボーレーゲージ・シルバーポイント・ロッキングプライヤーで0.01mm単位まで計測した計測は術者とは別の1名が担当し、割付を決めるコイントスの前に計測していたため、評価者は治療内容を知らされていない約12か月後に再開創(re-entry)して硬組織を再計測したベースラインではプロービングデプス(対照7.32mm/EMD 7.99mm、P=0.125)・プラーク指数(P=0.244)・歯肉炎指数(P=0.931)に有意差はなかったが、骨欠損の深さはEMD群のほうが有意に深かった(4.29mm対5.63mm、P<0.001)12か月後の調整平均では、ポケット減少が対照2.24mmに対しEMD 4.94mm、CAL獲得が2.75mmに対し4.26mm、骨欠損の減少が2.65mmに対し4.28mm、骨欠損の充填量が1.47mmに対し3.83mm(いずれもP<0.0001)歯肉退縮は対照1.29mmに対しEMD 0.61mmと小さく(P=0.0001)、骨頂の吸収も1.29mmに対し0.46mmと小さかった(P<0.0001)骨頂吸収を差し引いた欠損充填率は、対照22.7%に対しEMD 74.0%と3倍以上だった欠損の解消率は48.1%対83.2%再開創時のプラーク指数・歯肉炎指数に群間差はなく(P=0.51とP=1.00)、両群で同程度のプラークコントロールが保たれていた著者らの結論は「歯周骨内欠損のEMDによる治療は、評価したすべてのパラメータにおいてEMDを用いない治療(フラップ手術単独)より臨床的に優れている」

出典:Froum SJ, Weinberg MA, Rosenberg E, Tarnow D. A comparative study utilizing open flap debridement with and without enamel matrix derivative in the treatment of periodontal intrabony defects: a 12-month re-entry study. J Periodontol 2001;72(1):25-34. PMID: 11210070
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
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