1問1答 論文 虫歯

CPP-ACPは、フッ化物の上に足す価値があるのか

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|CPP-ACP・再石灰化・ホワイトスポット

MIペーストを勧めるとき、心のどこかに引っかかりがあります。「フッ化物入り歯磨剤をきちんと使っている人に、これを足す意味はあるのだろうか」。2014年のこのシステマティックレビューは、3か月以上のヒト試験8件・のべ2,367人を集めて、その問いに答えました。結論は歯切れがよくありません。プラセボと比べれば確かに効く。しかしフッ化物より優れているとは言えず、フッ化物に足す価値は不明である——ただし、この「不明」は「効かない」とは違います。

論文
Long-term Remineralizing Effect of Casein Phosphopeptide-Amorphous Calcium Phosphate (CPP-ACP) on Early Caries Lesions in vivo: A Systematic Review
著者
Li J, Xie X, Wang Y, Yin W, Antoun JS, Farella M, Mei L(南京大学・四川大学・オタゴ大学)
掲載
Journal of Dentistry 2014;42(7):769-777
種類
システマティックレビュー。3か月を超えるin vivo(ヒト)の無作為化/準無作為化試験に限定
主題
CPP-ACPの初期う蝕病変に対する長期の再石灰化効果と、フッ化物への上乗せ効果

問いは「効くか」ではなく「足す価値があるか」

CPP-ACPが再石灰化を促すこと自体は、実験室のデータで繰り返し示されてきました。牛乳のカゼイン由来のペプチドが、非晶質リン酸カルシウムを安定な形で歯面に運ぶ——理屈も通っています。

ですが臨床の問いは、そこから一歩先にあります。フッ化物入り歯磨剤を毎日使っている人に、これを追加する意味はあるのか。フッ化物の再石灰化は唾液由来のカルシウムとリン酸に依存する——だからそこを補ってやれば上乗せになるはずだ、という仮説が正しいのかどうか。

先に結論: プラセボ相手なら差は出る。フッ化物の上に足すと、結果が割れる——それが8件の答えでした。

3か月以上のヒト試験だけを集めた

このレビューの設計で重要なのは、3か月を超えるin vivo(ヒト)の試験に限定したことです。実験室の研究も、短期の試験も、あえて除きました。

  • 738件をスクリーニング → 83件を精読 → 8件を採用
  • 内訳:無作為化比較試験6件・比較臨床試験2件
  • 参加者:のべ2,367人。多くは11.5〜18歳(1試験のみ3.5〜4.5歳の就学前児)
  • 追跡:3〜24か月。臨床診査で評価した試験は1年超、蛍光測定など機器で評価した試験は6か月未満という傾向

製品は「GCムース」「MIペースト」「MIペーストプラス」「Topacal C-5」。CPP-ACP濃度は5〜10% w/wで、MIペーストプラスは900ppmのフッ化ナトリウムを含む組み合わせ製品です。

プラセボが相手なら、はっきり効いた

0 33.3% 66.7% 100% 2年間で新しいう蝕ができなかった子(%) 72.3% 53.2% 31.1% CPP-ACP2%ペースト SMFP歯磨剤 プラセボ 12〜15歳・24か月のランダム化比較試験(Rao 2009)。1日2回使用
12〜15歳を24か月追った無作為化比較試験(Rao 2009)——2年間で新しいう蝕ができなかった子の割合。同じ試験の主要アウトカムである平均DDSは CPP-ACP 0.22±0.44/SMFP 0.24±1.03/プラセボ 0.62±1.92 で、CPP-ACPとフッ化物歯磨剤はほぼ同値

数字が最も分かりやすいのが、この試験です。12〜15歳を24か月追い、2% w/w のCPP-ACPペーストを1日2回使った群、0.76% w/w のモノフルオロリン酸ナトリウム(SMFP)歯磨剤の群、プラセボの群を比べました。

  • CPP-ACP:34人(72.3%)が新しいう蝕なし
  • SMFP:25人(53.2%)
  • プラセボ:14人(31.1%)

ただし、この試験の主要アウトカムである平均DDS(新生う蝕面数)は CPP-ACP 0.22±0.44/SMFP 0.24±1.03/プラセボ 0.62±1.92——CPP-ACPとフッ化物歯磨剤のあいだにはほとんど差がありません。差がついているのはプラセボとのあいだです。原著自身も考察で、陽性所見を報告したこの試験について「プラセボという陰性対照とだけ比較しており、フッ化物歯磨剤のような陽性対照とは比べていない」と指摘しています。

もう1つ、2年間のガム試験(Morgan 2008、892人 vs 857人)も見ておきます。こちらは両群ともフッ化物入り歯磨剤を使っており、厳密には次章の「上乗せ」の話です3% w/w のCPP-ACPガムを1日3回+フッ化物入り歯磨剤と、対照ガム+フッ化物入り歯磨剤を比べたところ、レビューの表には面単位でオッズ比0.82(95%CI 0.74–0.91)、個人単位で0.80(95%CI 0.65–0.97)と記載され、本文は「プラセボガムと比べて隣接面う蝕の回復(regression)が有意に促進された」と述べています。

フッ化物に足すと、結果が割れる

ところが、話はここから変わります。矯正治療にともなうホワイトスポットを見た5つの試験のうち、3つで、フッ化物入り歯磨剤にCPP-ACPを上乗せする臨床的な利益は見出されませんでした

最も印象的なのが就学前児の試験です(これは矯正の5試験には含まれず、自然発生のう蝕を見た別枠の試験です)。GCムース+フッ化物入り歯磨剤プラセボペースト+フッ化物入り歯磨剤を12か月比べたところ、オッズ比1.002(95%CI 0.86–1.17)。差が「ほぼ無い」ではなく、ほぼ完全に1.0でした。

矯正後の白斑を見た別の試験でも、すべての白斑でオッズ比1.67(95%CI 0.81–3.45)——信頼区間が1をまたいでいます。ただし重症度2〜3の白斑に限ると2.33(95%CI 1.06–5.14)で、信頼区間が1をまたがず有意でした

そして利益ありとした2試験は、対照群の歯磨剤にフッ化物が含まれていたかどうかが明記されていませんでした。ここを著者らは見逃していません。フッ化物のない対照と比べたのなら、それは「CPP-ACP vs 何もなし」の比較であって、「上乗せの価値」の証明にはならないからです。

比較対照が何かで、答えは変わる: 同じ製品でも、プラセボと比べるか、フッ化物と比べるか、フッ化物に足すかで結論が違います。製品パンフレットの数字を読むときは、まず対照群を確認する——この習慣が効きます。

明日の臨床へ

  • フッ化物が使えない場面の代替として位置づけるのが、いまのところ最も無理がない
  • 矯正装置周囲の白斑には、まずフッ化物の徹底が先。上乗せはその後の選択肢
  • 試験で使われたCPP-ACP濃度は2〜10% w/wと幅がある(製品としてはTopacal C-5が5%、GCムース/MIペースト/MIペーストプラスが10%)。同じ「CPP-ACP配合」でも中身は違います
  • 副作用を評価した4試験では、重篤な副作用の報告はありません(悪心・頭痛・下痢の頻度に対照群との差なし。乳歯への歯石沈着の増加も確認されず)。ただし残る4試験は副作用の情報を報告していません
  • 患者さんの自己負担と手間に見合うか——ここは一緒に考えるところです

「上乗せの価値が不明である」ことは、「効かない」ことと同じではありません。質の高い試験がまだ足りない、というのが著者らの結論です。

ここだけ、冷静に補助線原著が最も重く扱っている限界は、記事の見た目より厳しいものです。8件のうちバイアスリスクが低いと判定されたのは1件だけで、残る7件は高いか不明バイアスリスクの高さと臨床的な異質性のために、メタ解析は実施できませんでした。さらに半数の試験がクラスタリング効果を考慮していません——歯面が個人の中で独立だと仮定すると、群間比較のp値が過大に評価されます(考慮していたのはMorganとBaileyの2件で、級内相関係数0.1〜0.12を報告しています)。副作用についても8件中4件は情報を報告していません。またオッズ比で報告された3試験(Morgan・Sitthisettapong・Bailey)は各群のイベント数が載っておらず、リスク比を計算できません——オッズ比は、アウトカムが多い集団では「何倍なりやすいか」より大きめの数字になります。対象の多くが11.5〜18歳に偏り、追跡も3〜24か月と幅があります。CPP-ACPは有望な再石灰化材である。ただし「フッ化物の上に足す一手」としての立ち位置は、まだ空席のまま——著者らは「決定的な推奨を出す前に、質の高い、よく設計された臨床研究がなお必要である」と結んでいます。

今日のひとこと

CPP-ACPは効く。ただし「フッ化物の上に足す価値」はまだ証明されていない。738件をふるいにかけ、8件(無作為化比較試験6件+比較臨床試験2件)・のべ2,367人が採用されました。追跡は3〜24か月。プラセボとの比較では明確です——12〜15歳を2年追った試験で、新しいう蝕ができなかった子の割合はCPP-ACP 72.3%、フッ化物入り歯磨剤53.2%、プラセボ31.1%——ただし同じ試験の主要アウトカムである平均DDSは0.22±0.44/0.24±1.03/0.62±1.92で、CPP-ACPとフッ化物歯磨剤はほぼ同値です。2年間のガム試験(両群ともフッ化物入り歯磨剤を使用=上乗せ試験)でも、原著本文はプラセボガムと比べて隣接面う蝕の回復(regression)が有意に促進されたと述べています(原著の表は「進行なし・面単位」にオッズ比0.82、95%CI 0.74–0.91、「進行・個人単位」に0.80、95%CI 0.65–0.97を載せています)。ところがフッ化物に上乗せしたときの結果は割れます。矯正治療後の白斑を見た5試験のうち3試験で上乗せの利益なし。就学前児ではオッズ比1.002(95%CI 0.86–1.17)——ほぼ完全に差がありませんでした。利益ありとした2試験は、対照群の歯磨剤にフッ化物が入っていたかどうかが不明です。副作用を評価した4試験では重篤な報告はなく、残る4試験は副作用の情報を報告していません。

出典:Li J, Xie X, Wang Y, et al. Long-term remineralizing effect of casein phosphopeptide-amorphous calcium phosphate (CPP-ACP) on early caries lesions in vivo: a systematic review. J Dent 2014;42(7):769-777. PMID: 24705069
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。