保存修復|CAD/CAMインレーの接着・直接CR vs デュアルキュアレジンセメント・高出力LED。抜去した第三大臼歯を使った実験室研究(Kameyama ほか 2015・Bio-Medical Materials and Engineering)
セラミックインレーの接着は、デュアルキュアのレジンセメントで。そう習った先生は多いと思います。光だけで固まるコンポジットレジンでは、厚いセラミックの下まで硬化しないのでは、という心配があるからです。ルーヴェン大学(KU Leuven)のグループが、抜去歯のI級窩洞に同じ形のCAD/CAMインレーを着け、光重合の直接CR(2ステップのセルフエッチ接着材+ペーストCR)と、従来のセメント法(リン酸エッチ+2ステップのエッチ&リンス接着材+デュアルキュアのレジンセメント)で窩底象牙質への接着強さを比べました。1週間の水中保管後、直接CRのほうが有意に高く、2人の術者のどちらでも同じ傾向でした。
①インレーの接着、直接CRではダメ?
CAD/CAMで削り出したセラミックインレー。接着にはデュアルキュアのレジンセメントを使う、というのが定番です。光が届きにくい深い部分でも、化学重合で固まってくれるからです。
一方で、セメントは粘りが低く、余剰の除去に気を使います。「いつも使っているペーストのCRで着けられたら楽なのに」と思ったことはないでしょうか。気になるのは、光だけで固まるCRが、厚いセラミックの下でちゃんと硬化するのか、という点です。
結論を先に言うと、この実験室研究では、光重合の直接CRで着けたインレーのほうが、窩底象牙質への接着強さが有意に高く、2人の術者のどちらでも同じ結果でした。
②今回の一手:同じインレーを、2通りの方法で着ける
抜去したヒトの第三大臼歯20本に、コンピュータ制御で箱形のI級窩洞(約4×4 mm・深さ2.5 mm)を形成。CEREC 3で設計した同一形状のリチウムダイシリケートインレー(IPS e.max CAD)を20個削り出し、次の2通りで接着しました。
直接CR法:2ステップのセルフエッチ接着材(クリアフィルSEボンド)・ボンド光照射10秒 → ペーストのCR(クリアフィルAP-X)を入れてインレーを装着 → 光照射40秒
共通の条件:インレー内面はフッ化水素酸60秒 → Monobond Plus → Heliobond(光照射せず)。最終の光照射は咬合面から、2000 mW/cm²以上を確認した高出力LED(Bluephase 20i)で40秒。光は厚さ約8 mmのセラミックを通って窩底に届く設定です(エンドクラウン程度の厚み)。
術者と評価:専門の卒後臨床コース最終年次の2名が、それぞれの方法で5歯ずつ担当(4群×5歯)。37℃の水に1週間保管したあと、1×1 mmの棒状試験片に切り出し、微小引張接着強さ(μTBS)を測りました。試験前に外れた試験片は0 MPaとして計算しています。
なお、直接CR法で使った接着材とCRには化学重合の開始剤が入っていないので、硬化は8 mmのセラミックを通った光だけが頼りです。
③結果:直接CRの平均接着強さは、セメント法の約6倍
全体の平均は、直接CR法 33.3 MPa、セメント法 5.7 MPa。著者らの言葉で「ほぼ6倍」の差で、方法の違いは統計的に有意でした(P<0.0001)。ただしこれは試験前に外れた試験片を0 MPaとして含めた平均で、術者Aだけで比べると約3倍(29.7÷9.0)です。
術者別に見ると、直接CR法は術者Aが29.7 MPa、術者Bが35.8 MPaで、両者に有意差はありません。一方セメント法は、術者Aが9.0 MPa、術者Bが1.0 MPaで、術者によって大きく結果が分かれました(方法と術者の交互作用は有意、P=0.0013)。どちらの術者でも、直接CR法のほうが有意に高い値でした。
差がさらにはっきり出たのが、試験の前に外れてしまった試験片です。セメント法では術者Aで21本中7本、術者Bでは20本中19本が外れました。直接CR法では、術者Aの17本・術者Bの26本とも、外れたものは0本でした。
④なぜ差が出たのか:壊れ方と著者らの考察
壊れた場所も対照的でした。セメント法では象牙質との接着界面での破壊が多く(術者Aで45%。術者Bは試験できた1本が界面で破壊)、電子顕微鏡では接着材の層に1 μmより小さい気泡のような粒が、ほぼすべての試験片に見られました。直接CR法では、界面での破壊は少なく(14%・9%)、CRの内部やCRとセラミックの境目で壊れたものがほとんどでした。
2群の差について、著者らが挙げたのはエッチ&リンス接着材の手技の難しさです。箱形のI級窩洞は、臨床に近づけるためにあえて窩底への接着が難しい形にしてあります。こうした窩洞では隅に水や接着材がたまりやすく、隅は濡れすぎ、中央は乾きすぎになりがちで、湿り具合をそろえられません。狭い窩洞から余分な水を除くのは難しく、接着材の中に残った水は、エタノールが飛ぶと水滴になります。電子顕微鏡で見えた粒はこれを裏づける、というのが著者らの説明です。象牙質の湿り具合・装着時の押す力・操作時間は術者によって変わるので、セメント法で術者差が大きかったこととも合います。これに対して直接CR法(セルフエッチ接着材)では、どちらの術者でも高い値で、術者の影響は見られませんでした。
ちなみにVariolink IIは、同じ研究室の先行研究(平らな象牙質面で測定)ではレジンセメントの中で最も良い成績の1つでした。今回それより低かった理由として著者らは、窩洞の形と光の届き方・接着材の違い(先行研究は3ステップ)・セラミックの違い・照射器の違いの4つを挙げ、界面での破壊が多かったことから、前の2つが最も有力だとしています。
⑤明日の臨床へ
著者らが挙げた、直接CRで着ける利点:化学重合がないので、光を当てるまで固まらず装着の時間に余裕がある。粘りのあるCRは余剰を除去しやすい。セルフエッチ接着材と組み合わせれば、操作ミスが起きにくい可能性がある。
取り入れるなら押さえたい前提:この実験の結果は、出力を実測して2000 mW/cm²以上を確かめたLEDで、40秒照射した条件でのものです。光だけで固まる材料を使う以上、照射器の出力と照射時間が結果の土台になります。
⑥ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
抜去歯のI級窩洞にCAD/CAMのリチウムダイシリケートインレーを着けた実験で、光重合の直接CR(クリアフィルSEボンド+クリアフィルAP-X)の窩底象牙質への平均接着強さは33.3 MPaで、セメント法(エッチ&リンス接着材ExciTE F DSC+デュアルキュアセメントVariolink II)の5.7 MPaより有意に高かった(試験前に外れた試験片を0 MPaとして含めた平均)。セメント法では試験前に外れる試験片が多く、術者による差も大きかったのに対し、直接CR法では外れた試験片がなく、2人の術者のあいだに有意差はなかった。著者らは、2000 mW/cm²を超える高出力LEDで硬化させる直接CRは、I級窩洞のCAD/CAM修復の合着の選択肢になりうると結論している。ただし1週間の水中保管だけの実験室研究で、接着材とペーストの両方が群ごとに違うため、どちらが差を生んだかは切り分けられていない。


