ペリオ|ペリオ論文100選
歯周外科の術式には、いくつも流派があります。根尖側移動フラップか、ウィドマンフラップか、歯肉切除か。骨を削るか、削らないか。では、その選択はどれくらい結果を左右するのでしょうか。1977年のこの試験は、5つの術式を無作為に割り付け、リコールを行わないまま2年間追跡しました。5群すべてが、同じところへ行き着いています。
①術式の流派より、先に効くもの
歯周外科には流派があります。根尖側移動フラップか、ウィドマンフラップか、歯肉切除か。骨を削るか、削らないか。著者らは論文の冒頭で、「異なる学派が、しばしば偏りをもって、ある術式を推奨し他を戒める。その選択はいわゆる臨床経験に基づいていることが多い」と書いています。
この試験は、その5つを無作為に割り付けました。ただし条件が一つ、特殊です。口腔清掃指導を「1回だけ」行い、その後はメインテナンスのリコールを行わなかった。
実際の診療でしばしば起きる状況を、意図的に作ったわけです。
②5つの術式を、くじ引きで割り当てる
- 対象は25名(28〜64歳、平均47.8歳)。進行した歯周疾患のため、開業医から大学の歯周病科へ紹介された患者です
- 初期検査でプラーク指数・歯肉指数・ポケット深さ・付着レベルを評価。調べたのはすべての切歯・犬歯・小臼歯と、下顎第一大臼歯の近心面で、解析対象は初期ポケット深さ3mm以上の部位のみです
- 全員に術前治療。プラークコントロールの動機づけと、バス法のブラッシング・歯間清掃(トゥースピック、デンタルフロス、歯間ブラシ)の指導を行いました——ただし「1回だけ」
- 5名ずつ5群に無作為配分し、それぞれ別の術式を実施しました
- ①AFB:根尖側移動フラップ+骨欠損の除去
- ②AF:根尖側移動フラップ+骨欠損の掻爬(骨は削らない)
- ③WFB:ウィドマンフラップ+骨欠損の除去
- ④WF:ウィドマンフラップ+骨欠損の掻爬(骨は削らない)
- ⑤G:歯肉切除+骨欠損の掻爬(骨は削らない)
- 術後14日は0.2%クロルヘキシジン洗口を1日2回。パックを用いた場合は、それと縫合糸を2週後に除去しています
- その後はメインテナンスのリコールを行わず、2・6・12・24か月後に再検査しました
③2か月で下がり、6か月で戻った
まずプラークの推移です。
初期検査での平均プラーク指数は1.1〜1.3。術後2か月の時点では0.2〜0.4まで下がっていました。丁寧な指導と、術後のクロルヘキシジンが効いています。
ところが6か月・12か月・24か月の再検査では、すべての群で術前の水準に戻っていました。
部位別に見ると、様相が分かれます。頬側面は2年を通じて比較的清潔に保たれた一方、舌側面と隣接面は保たれませんでした。歯ブラシが届きやすい場所だけが維持され、それ以外は元に戻った、ということです。
歯肉の状態も同様でした。初期の平均歯肉指数は1.5〜1.8で、スコア2+3の頻度は33%〜79%。フォローアップでも、全般的な歯肉炎が持続していました(頬側の歯肉ユニットだけは、スコア2・3の頻度が低いままでした)。
④ポケットは浅くなり、そして戻った
ポケット深さの推移は、この試験のいちばん残酷な部分です。
- 初期検査:検査対象とした歯面の平均で約5〜6mm
- 6か月・12か月:2.6〜3.3mm——術式にかかわらず、手術は確かにポケットを浅くしました
- 24か月:約4mm——戻り始めています
そして付着レベルです。24か月時点で、舌側面と隣接面では5群すべてに統計的に有意な付着の喪失が認められました。舌側で1.2〜1.6mm、隣接面で1.5〜1.9mm。
頬側面で有意な喪失が見られたのは、骨切除を伴う根尖側移動フラップ(AFB)の群だけでした。ただしこれはAFB群の内部で、初期から24か月にかけての変化が有意だったという意味であって、AFB群と他の4群を比べて差がついたという結果ではありません(骨を削ったのはAFBとWFBの2群です)。1群5名という規模も踏まえて、慎重に読むべき箇所です。
著者らはこう書いています。歯肉炎の徴候と付着の喪失は、プラークコントロールが最も不十分だった部位、すなわち隣接面で最も顕著だった。逆にプラークコントロールがまずまず良好だった頬側面では、歯周炎の再発の徴候はごくわずかだった。
⑤「1回の指導」では足りなかった
著者らの考察は、今読んでも骨身にこたえます。
25名全員が、開業医から専門治療のために紹介されてきた患者でした。つまり治療前から、自分に進行する歯周病があると自覚している。しかも症例提示の段階で、治癒や進行の停止は自分自身の口腔衛生習慣の獲得にかかっている、と大きな努力を払って説明されていたのです。
それでも、丁寧な症例提示と動機づけにもかかわらず、患者は適切な口腔衛生を確立できませんでした。
著者らは念を押しています。これは「すべての患者が、1回の指導のあと自力で適切なプラークコントロールを維持できない」ということを必ずしも意味しない。むしろ、適切な口腔衛生習慣を身につけるよう動機づけることが容易な患者もいる、と。
ただし——外科を含む包括的な歯周治療を受け、再発を避けるために口腔衛生が必要だと承知している患者においてすら、プラーク感染が再び起きる明白なリスクがある。この事実は動かせません。
⑥明日の臨床へ
- 術式の選択より、清掃の維持が上位にある。5つの術式に差がつかなかったという結果は、そう読むのが素直です
- 「1回の指導」を、指導したことにしない。この試験の患者たちは、動機づけも説明も受けていました。それでも2か月後には戻り始めています
- 維持できる場所と、できない場所を分けて考える。頬側は保たれ、舌側と隣接面は保たれませんでした。指導の重点をどこに置くかの示唆になります
- 外科の適応判断に、清掃の実績を入れる。著者らは「適切な口腔衛生条件を確立できない患者において、歯周炎の外科治療は意味をなさない」と書いています
- 清掃が保たれた面でも、変化が出た群がある。頬側で群内の付着喪失が有意に達したのはAFB群だけでした(ただし群間比較の結果ではありません)
⑦ここだけ、冷静に補助線
⑧今日のひとこと
どの術式でも、清掃が戻らなければ病気も戻る。逆に言えば、清掃が保たれた頬側面では、ほとんど再発しなかった。この研究がいちばん強く伝えているのは、術式論争の結論ではなく、手術の前後にある日々の仕事の重さです。
今日のひとこと
初期検査の平均プラーク指数は1.1〜1.3で、術後2か月には0.2〜0.4まで下がったが、6・12・24か月の再検査ではすべての群で術前の水準へ戻っていた。頬側面は2年を通じて比較的清潔に保たれた一方、舌側面と隣接面は保たれなかった。ポケット深さは初期の約5〜6mmから6か月・12か月で2.6〜3.3mmに浅くなったが、24か月では約4mmへ戻った。24か月時点で、舌側面と隣接面では5群すべてに統計的に有意な付着の喪失が認められた(舌側1.2〜1.6mm、隣接面1.5〜1.9mm)。頬側面で群内の有意な喪失が見られたのは、骨切除を伴う根尖側移動フラップ(AFB)の群だけだった(群間比較の結果ではない)。著者らは「適切な口腔衛生条件を確立できない患者において、歯周炎の外科治療は意味をなさない」「5つの外科的ポケット除去法はすべて、破壊性歯周炎の再発を防ぐ点で等しく無効だった」と結論している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


