1問1答 論文 歯周病

勧めた道具は、3年後どれだけ残るか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

初期治療の最後に、つまようじ・歯間ブラシ・フロス・タフトブラシと一式を勧める。あの説明は、3年後にどれだけ生き残っているのでしょうか。そして守られなかったとき、歯周組織はどうなるのか。1984年、44名を3年追いかけて「実行率」と「歯周状態」を並べた研究があります。

論文
Evaluation of cause-related periodontal therapy and compliance with maintenance care recommendations
著者
Johansson LÅ, Öster B, Hamp SE
掲載
Journal of Clinical Periodontology 1984;11(10):689-699
種類
縦断研究(44名・3年間の追跡と構造化面接)
PMID
6594355

「専門家の手を離れたあと」を、誰も測っていなかった

原因除去療法(コーズリレイテッド・セラピー)だけでも大きな効果が得られることは、1980年代前半までに確立していました。プラークと歯石の停滞因子を徹底的に除去すれば、進行性の歯周疾患は停止させ、制御できる。だからこそ治療を受けた患者は、定期的で頻回な来院からなる支援プログラムに組み込まれるべきだという考えが定着します。

ただし著者らは、そこに欠けているものを指摘します。「歯周の健康を維持するうえで、患者本人の役割と専門家の役割の相対的な重要性については、我々の情報は不完全である」。長期研究の多く(2週〜3か月間隔のプロフェッショナルケア)は専門家側の貢献を強調してきました。しかしそのような手厚いルーチンは、一般歯科では実施が難しいという報告もある。専門家の手が限られるとき、治療後の歯周の健康は、患者と紹介元の一般歯科医の信頼できる協力に依存することになります。

そこで本研究の目的は2つ。①歯科衛生士学生による集中的な原因除去療法の長期的な臨床効果を調べること ②積極的治療のあいだに受けたメインテナンスの推奨事項が、どれだけ守られたかを評価すること。

先に結論: プラークは3年で50.9%→12.8%→32.6%と戻った補助具はほとんど続かなかった。それでも出血は保たれ、ポケットは悪化しなかった

治して、手放して、3年後に呼び戻す

1978年、リンショーピングの歯科衛生士学校に紹介された191名から無作為に選ばれた75名が対象です。高度な根分岐部病変など外科が必要と判断された18名を除外、脱落13名(3年後の再検査に興味なし6名、転居6名、疾病1名)を経て、最終的に44名(女性23名・男性21名、平均44歳・22〜70歳)が解析されました。

治療は学生8名が指導者2名の監督下で実施。内容はスケーリング・ルートプレーニング、不適合修復物の調整、フッ化物入りペーストでの専門的清掃が中心で、各回0.05%フッ化ナトリウム洗口と最後にフッ化物バーニッシュ塗布、さらに毎日の0.05%フッ化ナトリウム洗口の処方も出しています。平均8.8回のセッションで、積極的治療はどの症例でも6か月を超えていません

口腔衛生指導は個別に。使われた補助具は多毛のやわらかい歯ブラシ、三角つまようじ、歯間ブラシ、タフトブラシ、デンタルフロス、染色錠1回の指導で導入する補助具は2つまでという配慮もされています。

積極的治療が終わると、各患者は紹介元の歯科医に戻され、その歯科医には診断と行った治療、どの補助具を指定したか、推奨したメインテナンスの専門家側の部分を自分の診療で行うことが伝えられました。専門チームによる監督は意図的に行っていません

3年後の再検査では、染色後に歯頸部で連続した帯状のプラークがある歯面数でプラークを、プロービングで出血したポケット数で歯肉の状態を評価。あわせてメインテナンスについての8項目の構造化面接と、う蝕・歯周病の原因と予防についての記述式4問にも答えてもらいました。

プラークは戻った。それでも歯肉は戻らなかった

0 20% 40% 60% 該当した割合 (%) 50.9% 50.5% 12.8% 15% 32.6% 17.6% 開始時 治療直後 3年後 淡い棒=プロービング時の出血。プラークは3年で有意に戻ったが、出血はほぼ保たれた(44名)
プラークと出血の推移(開始時・治療直後・3年後)

数字を並べると、この研究の面白さが立ち上がります。

プラークは開始時50.9%から、積極的治療の終了時に12.8%(p<0.001)。ここまでは想定どおり。ところが3年後には32.6%まで戻り、この増加も有意(p<0.001)でした。3年後にプラークがついていた歯面の約4分の3は隣接面です。

ところが出血は50.5%→15.0%(p<0.001)→17.6%プラークが2.5倍に戻ったのに、出血はほとんど戻っていません出血していたポケットの約4分の3も隣接面でした。

ポケットも同じです。頬舌側で3mm以上のポケットは1人あたり13.0個→5.8個(p<0.001)→3.6個と、3年のあいだにさらに減少しています(p<0.05)隣接面で4mm以上は21.7個→8.7個→9.3個で、いずれも開始時より有意に少ないまま。

歯の喪失もわずかでした。開始時24.5歯が3年後23.7歯失われた歯の40%は第三大臼歯で、30%(10歯)は1名の総義歯治療にともなう抜歯44名中30名は、観察期間中に1本も歯を失っていません

勧めた道具は、どこへ行ったのか

0 30% 60% 90% 患者の割合 (%) 84% 45% 80% 14% 39% 7% 25% 9% つまようじ タフトブラシ デンタルフロス 歯間ブラシ 淡い棒=3年後の実行率。3種類を勧められた15名のうち、3種類とも続けていた人は0名だった
補助具ごとの「毎日使うよう勧められた割合」と「3年後も毎日使っていた割合」

ここがこの論文の白眉です。毎日の使用を勧められた割合と、3年後も実際に毎日使っていた割合を並べると——

つまようじ:84%を勧めて、45%が継続タフトブラシ:80%を勧めて、14%デンタルフロス:39%を勧めて、7%歯間ブラシ:25%を勧めて、9%

とくに厳しいのがタフトブラシで、59%が「まったく使っていない」と答えています。フロスも20%がまったく使用なし

数を増やすほど崩れることも、はっきり出ました。1種類だけを勧められた3名は、3名とも3年後も続けていました2種類を勧められた26名のうち、守れたのは7名だけ。そして3種類を勧められた15名のうち、3種類とも続けていた人は0名——6名は1つも使っていません。著者らの表現では「患者のおよそ半数は、追加の口腔衛生補助具をいっさい使わなくなっていた」

メインテナンスの頻度も現実的です。32名(73%)が紹介元の歯科医を年1回訪問、9名(20%)が年2回。それでも29名(66%)は、来院頻度にかかわらず出血が20%未満でした。歯科医から口腔衛生について助言を受けたのは23名(52%)、再指導を受けたのは17名(39%)ですが、助言・再指導を受けた人と受けていない人のあいだで、プラークにも出血にも有意差はありませんでした

知識も十分ではありません。う蝕の原因に完全に正しく答えられたのは3分の1未満。ただし知識スコアが高い群は低い群より出血が少なく、この差は有意(p<0.05)でした(プラークには有意差なし)。処方された0.05%フッ化物洗口を3年間毎日続けたのは、わずか2名です。

ここが要点: 補助具は「増やすほど守られない」。1つなら3/3、2つなら7/26、3つなら0/15。それでも歯周状態は悪化しなかった

明日の臨床へ

1つ目。渡す道具を、1つに絞る勇気をもつ。 1種類だけを勧められた人は全員が続け、3種類を勧められた人は誰も続けませんでした。あれもこれも渡した結果が「半数が全部やめる」なら、いちばん効く1つを選び切る方が現実的です。著者らも「見かけ上どうでもよい補助具や手段への強調が少なければ、隣接面の口腔衛生はむしろ改善したかもしれない」と書いています。

2つ目。プラークスコアの戻りだけで、失敗と判断しない。 プラークが12.8%から32.6%へ戻っても、出血もポケットも悪化しませんでした。再評価で数字が戻っていたとき、歯肉の反応を先に見る——それがこの論文の使い方です。

3つ目。年1回でも成立する層がいると知っておく。 73%が年1回の来院で、それでも66%は出血20%未満すべての患者に高頻度のメインテナンスが必要とは限らない——著者らは「再発性の歯周疾患をもつ患者が、あらためて集中的な歯周治療を受ける必要性を否定するものではない」と釘を刺したうえで、この可能性に触れています。

ここだけ、冷静に補助線。 対象は「中等度に進行した歯周炎」に限られており、外科が必要な高度症例は最初から除外されています。この結論を重度症例に広げることはできません。また44名・3年という規模と期間で、対照群のない縦断観察です(「補助具を守った群 vs 守らなかった群」を無作為に割り付けたわけではありません)。コンプライアンスは3年後の自己申告(構造化面接)によるもので、実際の使用とずれる可能性もあります。紹介元の一般歯科医の多くが歯周病学の継続教育を受けていたというスウェーデン特有の前提も見逃せません。そして治療そのものは平均8.8回という、かなり手厚い初期治療でした。「維持に手間がかからなかった」のは、入口を丁寧にやり切ったから——この順序は取り違えないでおきたいところです。

今日のひとこと

中等度に進行した歯周炎の患者を歯科衛生士学生8名(指導者2名の監督下)が非外科的に治療し(平均8.8回・6か月以内)、その後は専門チームの監督なしで紹介元の一般歯科医に戻して3年追跡しました(最終44名・平均44歳)。プラークは50.9%→12.8%まで下がり、3年後には32.6%へ有意に戻りました(p<0.001)。ところが出血は50.5%→15.0%→17.6%とほぼ保たれ頬舌側で3mm以上のポケットは1人あたり13.0→5.8→3.6個とさらに減り隣接面で4mm以上は21.7→8.7→9.3個歯周状態のそれ以上の悪化は観察されませんでした。一方で補助具の実行率は厳しいものでした。毎日使うよう勧められた割合/3年後も毎日使っていた割合は、つまようじ84%/45%、タフトブラシ80%/14%、フロス39%/7%、歯間ブラシ25%/9%3種類を勧められた15名のうち、3種類とも続けていた人は0名約半数は補助具の使用を完全にやめていました。メインテナンスも73%が年1回のみ。著者らは「この患者群では、従来推奨されてきたよりも少ない個人的・専門的努力で、歯周治療の成功した効果を維持できる可能性がある」と結論しています。

出典:Johansson LÅ, Öster B, Hamp SE. Evaluation of cause-related periodontal therapy and compliance with maintenance care recommendations. J Clin Periodontol 1984;11(10):689-699. PMID: 6594355
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。