ペリオ|Phase1 初期治療
「洗口剤も使ってください」と勧めるとき、どれだけの上乗せを期待していいのでしょうか。しかも洗口剤には、クロルヘキシジン・エッセンシャルオイル・CPC・プロバイオティクス・ハーブと種類があります。2016年、「歯磨きの“あと”に洗口した」研究だけを集めたレビューが、その差を並べました。
①機械的に落としたあとにも、薄い歯垢は残る
プラークコントロールには機械的アプローチと化学的アプローチがあります。機械的な方が一般的で費用対効果も高い。ただし著者らは、その弱点をこう書きます——個人の器用さと丁寧さ、そしてコンプライアンスに依存するため、常に信頼できるわけではない。
そして事実として、プラークの大部分は機械的に除去されるが、薄い歯垢はそのあとも残る。この残った分は化学的な手段で容易に減らせる。だから化学と機械を組み合わせた方法が、最も高いプラークコントロールの効力を提供する——これが化学的補助剤を使う理屈です。
とくに歯間の隣接面のような、歯ブラシが届きにくい場所では補助剤の役割が大きい。実際、ADAの科学問題評議会(Council on Scientific Affairs)が歯肉炎とプラークの予防・減少の補助として承認しているのは、エッセンシャルオイル(EO)含有洗口剤と0.12%クロルヘキシジン洗口剤の2つの処方だけです。
ではその上乗せは、どれくらいなのか。著者らは「歯磨きのあとの洗口」だけに絞って文献を集めました(歯磨きの“前”に洗口した研究は除外)。
②10本の試験を並べる
検索はPubMed・PubMed Central・Cochrane・Embase・Google Scholarで、1990年〜2015年2月、英語の原著(in vivoのランダム化比較試験)。ナラティブレビューと、歯磨き前の洗口を報告した研究は除外されました。
56件がヒットして8件が基準を満たし、手検索1件とメールで得た1件を加えて計10本。規模は12名から766名、期間は7日から6か月。評価はプラーク指数(Silness & Löe、またはTuresky変法のQuigley-Hein)と歯肉炎指数(Löe & Silness)のベースラインからの変化です。
バイアスのリスクも評価されています。不完全なアウトカムデータについては4件が高リスク、ランダム化の順序生成で2件が高リスク、一方で割り付けの隠蔽は5件、アウトカム評価の盲検化は7件、選択的報告は9件が低リスクでした。
③洗口を足すと、下がり方が変わる
分かりやすいのが45名の3ウェイクロスオーバー試験(Arora 2014)です。①歯ブラシ+フロス ②歯ブラシ+0.12%クロルヘキシジン洗口 ③歯ブラシ単独を21日間比べたところ、②のプラーク指数は0.67→0.21。①(0.68→0.40)と③(0.68→0.40)より有意に大きく減りました(p<0.001)。歯肉指数でも同じ順序で、②は0.63→0.18。興味深いのは①と③——フロスを足した群と歯ブラシ単独の群のあいだに、2回目・3回目の追跡で有意差がなかったことです。
規模のある検討も示されています。766名が、磨いた直後に20mlのエッセンシャルオイル洗口を30秒・1日2回続けた3か月後、プラークは51.9%、歯肉炎は45.7%減少(p<0.001)。
併用の上乗せも数字で出ています。246名の6か月試験(Sharma 2004)では、ブラッシング+フロス+EO洗口の群が、ブラッシング+対照洗口の群およびブラッシング+フロス+対照洗口の群より、修正歯肉指数とプラーク指数が有意に低かった(p<0.001)。考察では「エッセンシャルオイル洗口の補助的使用は歯肉炎を21%さらに減らし、歯間の歯肉炎を15.8%さらに減らした。この機械的・化学療法的な組み合わせは、相加ではなく相乗の効果をもたらすように見える」と述べられています。
④薬剤ごとに、顔つきが違う
クロルヘキシジン。最も成功しており、他の抗プラーク薬に対するゴールドスタンダードと見なされる。ただし局所的な副作用——とくに外因性の着色と味覚異常が長期使用を制限します。用量の話も出ています。60名の14日試験(Najafi 2012)では、0.2%は0.12%より歯肉出血をより減らした一方、着色は0.2%が0.12%とプラセボより有意に多かった。
エッセンシャルオイル。ADA承認の処方で、アルコールフリーの選択肢もあり、長期の予防目的に合う。160名の3・6か月試験(Mythri 2011)では、EO洗口群と0.2%CHX群だけが有意な減少を示し、そのうちCHX群がEO群より有効でした。
CPC(塩化セチルピリジニウム)。細菌の細胞膜に浸透して成分の漏出・代謝の破壊・増殖の阻害を起こします。151名の6か月試験(Albert-Kiszely 2007)では、全体の歯肉炎状態とプラーク蓄積にEOとの有意差はなかったが、出血部位の減少はCPCの方が有意に大きかった(p<0.05)。
プロバイオティクス。健康な口に多く見つかる有益な細菌を使う考え方です。6〜8歳の小児45名の14日試験(Harini 2010)では、プラークの量にクロルヘキシジンとの有意差はなかったものの、歯肉炎指数では有意差があり、プロバイオティクスの方が良好(0.2300 vs 0.6805、p=0.009)でした。
ハーブ。Baccharis dracunculifolia 抽出物の洗口を使った12名の7日試験(Pedrazzi 2015)では、活性成分を含む処方が、トリクロサン・Gantrez・エッセンシャルオイルと同じレベルでバイオフィルムの割合を減らしました(p<0.001)。
⑤明日の臨床へ
1つ目。期間で使い分ける。短期の集中管理(初期治療の炎症コントロール、外科後)にはクロルヘキシジン。毎日の長期使用にはエッセンシャルオイル。この線引きを持っておくと、勧め方が変わります。
2つ目。「置き換え」にはならないと明言する。この論文が集めたのはすべて「磨いたあと」の洗口です。洗口剤は機械的清掃の補助であって、代わりではありません。ここを曖昧にすると、患者さんは楽な方を選びます。
3つ目。副作用を先に伝える。クロルヘキシジンの着色と味覚異常は、事前に伝えておけば「効いている証拠の裏側」として受け止められます。伝えていないと、それが中断の理由になります。
今日のひとこと
1990年〜2015年2月の文献から「歯磨きの“あと”に洗口した」臨床試験10件(12名〜766名、7日〜6か月)を集めたレビューです。洗口剤を対照と比べると、プラークと歯肉炎の減少は統計学的に有意(p<0.05)でした。ただし薬剤ごとに顔つきが違います。クロルヘキシジンは最も優れた抗プラーク・抗歯肉炎薬(ゴールドスタンダード)だが、着色と味覚異常という副作用のため長期使用には向かない。歯肉炎症の減少ではプロバイオティクス洗口がクロルヘキシジンを上回りました(GI 0.2300 vs 0.6805、p=0.009)。エッセンシャルオイル洗口では、766名の検討で3か月後にプラーク51.9%減・歯肉炎45.7%減(p<0.001)、またブラッシングとフロスに追加して歯肉炎を21%、歯間の歯肉炎を15.8%さらに減らし、著者らはこれを相加ではなく相乗(synergistic)と表現しています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


