1問1答 論文 エンド

根尖の細い溝に残るバイオフィルム、XP-endo Finisherで落とせる?——抜去した小臼歯48本の実験室研究で、溝の中に菌が残った面積の割合(平均)は洗浄針で約27%、超音波で約6%、XP-endo Finisherで2.94%(90秒続けて洗う手順)と1.04%(3回に分ける)で、XP-endo Finisherは3回に分ける手順のほうが有意に少なかった(Bao 2017)

1問1答 論文 エンド

エンド|縦に割った抜去小臼歯の根尖側に人工の細い溝(幅0.2mm・深さ0.8mm)を作り、4週間育てたバイオフィルムを、通常の洗浄針・超音波(PUI)・XP-endo Finisher(XPF)の3方法×2手順(90秒続けて洗う/30秒ずつ3回に分ける)で洗い、電子顕微鏡の画像で残った菌の面積を比べた実験室研究(Bao・Shen・Lin・Haapasalo 2017・Journal of Endodontics)

根管の細いフィンやイスムスは、ファイルが当たらず、洗浄液だけが頼りになる場所です。Bao らは2017年、縦に割った抜去小臼歯の根尖側に細い人工の溝を作ってバイオフィルムを育て、最終洗浄の方法で残り方が変わるかを比べました。溝の中に菌が残った面積の割合(平均)は、通常の洗浄針で約27%、超音波(PUI)で約6%、XP-endo Finisher(XPF)で2.94%(90秒続けて洗う手順)と1.04%(20秒かき混ぜ+10秒の洗浄を3回)でした。XPF は、3回に分ける手順のほうが連続より有意に少なく、洗浄針と超音波では手順による有意差を認めませんでした。ただし抜去歯の実験室研究(各群8本)で、測ったのは電子顕微鏡で見た表面の菌の面積だけ。治癒などの臨床の結果は調べておらず、XPF は製造元から提供されていました。

論文
In Vitro Efficacy of XP-endo Finisher with 2 Different Protocols on Biofilm Removal from Apical Root Canals
著者
Pingping Bao、Ya Shen、James Lin、Markus Haapasalo(中国 南開大学 天津口腔病院 歯内療法科、カナダ ブリティッシュコロンビア大学歯学部 歯内療法学)
掲載
Journal of Endodontics 2017;43(2):321-325(Basic Research—Technology)
種類
実験室研究(in vitro)。抜去した単根の小臼歯54本を縦に2つに割り、根尖から2mmの位置から長さ3mm・幅0.2mm・深さ0.8mmの溝を根管の壁に作った。成人1人の歯肉縁下プラークの菌で4週間バイオフィルムを育て、合わせ直して #40/.06 まで拡大。48本を6群(各8本)に無作為に分け、通常の洗浄針(30G・側方開口)・超音波(PUI)・XP-endo Finisher(800rpm)を、それぞれ「90秒続けて洗う」と「30秒ずつ3回に分ける」手順で、3%次亜塩素酸ナトリウムを使って最終洗浄した。電子顕微鏡の画像1,728枚で、溝の中と溝の外に菌が残った面積の割合を2人の評価者が測り、二元配置分散分析で比べた
資金・利益相反
XP-endo Finisher は製造元の FKG Dentaire SA から提供された(謝辞に記載)。研究の一部は Canada Foundation for Innovation の資金。著者らは利益相反を否定している
PMID
27939826

①ファイルが届かない根尖のフィン、最終洗浄で何を変えれば菌が減る?

根管の拡大を丁寧にしても、フィンやイスムスのような細いすき間にはファイルが当たりません。そこに残る菌の層(バイオフィルム)を減らす手段は、ほぼ洗浄だけです。では最終洗浄は、ふつうの洗浄針で流すのか、超音波で液を動かすのか、XP-endo Finisher のような器具でかき混ぜるのか。そして同じ90秒を、続けて使うのか、区切って使うのか。

この2つを、細い人工の溝を作った抜去歯で比べたのが、Bao・Haapasalo らが2017年に Journal of Endodontics に出した実験室研究です。

結論を先に書きます。
・抜去した単根の小臼歯を縦に割り、根尖側に細い人工の溝(幅0.2mm・深さ0.8mm)を作って4週間育てたバイオフィルムを、最終洗浄の方法を変えて洗った実験室研究。解析は48本(各群8本)。電子顕微鏡の画像で、菌が残った面積の割合を測った
・溝の中:菌が残った面積の割合(平均)は、通常の洗浄針で約27%、超音波(PUI)で約6%、XP-endo Finisher(XPF)で2.94%(90秒続けて洗う手順)と1.04%(3回に分ける)。XPF 2群が最も少なく、次いで超音波、洗浄針の順だった(有意差あり)
・XPF は、3回に分ける手順のほうが連続より溝の中の残りの平均が有意に少なかった。洗浄針どうし・超音波どうしでは、手順による有意差を認めなかった
・溝の外(主根管の壁):どの群も残りの平均は2%未満(0.80〜1.58%)。差は小さいが、XPF・超音波・洗浄針の順で有意差があった
・測ったのは表面の菌の面積だけで、治癒などの臨床の結果は調べていない

②なぜこの研究が必要だったか

著者らは序論で、現代のファイルで丁寧に拡大しても、根管の壁の30〜50%はフィンやイスムス、側枝などのために器具が触れず、バイオフィルムに覆われたまま残りうると、引用文献をもとに書いています。またバイオフィルムの中の菌は、浮遊している菌より100〜1000倍、処置に強いとも紹介しています(引用された研究)。だから、器具が届かない場所に働きかけられるのは洗浄だけ、という立場です。

洗浄液を動かす方法では、超音波(PUI)が洗浄針より液の浸透やスメア層の除去で優れるという報告がありました。一方、XP-endo Finisher は、ISO 25/.00 の細い器具で、製造元の説明では、冷やすとまっすぐ、体温になると先端10mmの範囲が深さ1.5mmのスプーンのような形に変わり、800rpmで根管の拡大後(#25以上)に洗浄液と一緒に使うとされています。ただ、これまでの洗浄の研究はスメア層や削りくずの除去を見たものが多く、器具の届かない場所のバイオフィルムを除くことこそ、さらに大きな課題かもしれない、と著者らは書いています。XPF のバイオフィルムへの効果を調べた研究は、発表済みのものが1本だけだったとも紹介しています(考察)。

③何をどう比べたか

・歯:抜去した単根の小臼歯54本(長さ19mm以上・根尖が閉じたもの)。作業長は18mm
・人工の溝:歯を縦に2つに割り、根管の壁に、根尖から2mmの位置から長さ3mm・幅0.2mm・深さ0.8mmの溝を作った(深く細いフィンのつもり)。割った2片がきちんと合わさる歯だけを使った
・バイオフィルム:成人1人の歯肉縁下プラークの菌を使い、割った歯の片を培養液に入れて、嫌気の条件で4週間育てた
・拡大:合わせ直した歯を Vortex Blue で #40/.06 まで拡大。ファイルごとに3%次亜塩素酸ナトリウム1mL、計6mL
・6群(各8本・無作為に割り付け):通常の洗浄針(30Gの側方開口針・作業長の1mm手前)、超音波(PUI・#20のUファイル・作業長の1mm手前)、XPF(800rpm・7〜8mmの上下の動き)の3方法を、それぞれ2つの手順で行った
 -連続:90秒続けて洗う(超音波・XPFは、液を足しながら1分かき混ぜた後、0.5mLで30秒すすぐ)
 -3回に分ける:「20秒かき混ぜる+10秒で0.5mLを流す」を3回くり返す(洗浄針は0.5mLを30秒ずつ3回)
・共通:どの群も、実験の洗浄の前に3%次亜塩素酸ナトリウム3.5mLで洗い、最後に滅菌水1mL・17%EDTA 4mLで仕上げた
・測り方:歯を開いて電子顕微鏡(2000倍)で、溝の中と溝の外(すぐ隣の主根管の壁)を根尖側・中央・歯冠側に分けて撮影。48本・計1,728枚の画像を符号化して、2人の評価者が別々に、菌が覆っている面積の割合を画像処理ソフトで測った
・比べ方:二元配置分散分析(有意水準5%)

④結果1:溝の中では、方法で残り方が大きく違った

溝の中に菌が残った面積の割合(3区画の平均)を、6群で並べました。低いほど、多く除けています。

0 10% 20% 30% 溝の中に菌が残った面積の割合(平均%) 27.00% 26.81% 6.00% 5.72% 2.94% 1.04% 洗浄針連続 洗浄針3回 超音波連続 超音波3回 XPF連続 XPF3回 抜去した単根の小臼歯・各群8本の実験室研究。根尖側の人工の溝(幅0.2mm・深さ0.8mm)に4週間育てたバイオフィルムを、電子顕微鏡の画像で残った菌の面積として測った(低いほど多く除けている)。有意差は図の下の説明を参照
図:溝の中に菌が残った面積の割合(平均%)。原著の表1の各群の合計の値。抜去した小臼歯・各群8本の実験室研究。有意差:洗浄針2群・超音波2群・XPF連続・XPF 3回の順に有意差あり(P<.05)。洗浄針どうし・超音波どうしは有意差を認めず。

溝の中の平均は、洗浄針が27.00%(連続)と26.81%(3回)、超音波が6.00%と5.72%、XPF が2.94%と1.04%でした。XPF 2群が最も少なく、次いで超音波2群、洗浄針2群の順で、この順の差は有意でした。

手順の違いでは、XPF だけ、3回に分けた群(1.04%)が連続の群(2.94%)より有意に少なくなりました。洗浄針どうし、超音波どうしでは、手順による有意差を認めませんでした。

⑤結果2:溝の外では、どの群も残りはわずか

溝の外(すぐ隣の主根管の壁)は、どの群でも残りの平均が2%未満でした。洗浄針1.58%と1.53%、超音波1.16%と1.13%、XPF 0.82%と0.80%。差は小さいものの、XPF・超音波・洗浄針の順で有意差があり、XPF の2つの手順の間には有意差を認めませんでした。

表:各群の、溝の中と溝の外に菌が残った面積の割合(平均±標準偏差、%) 方法・手順(各群8本) 溝の中 溝の外(主根管の壁) 通常の洗浄針・連続 27.00 ± 9.33(c) 1.58 ± 1.39(g) 通常の洗浄針・3回 26.81 ± 8.61(c) 1.53 ± 1.08(g) 超音波(PUI)・連続 6.00 ± 2.91(d) 1.16 ± 0.86(f) 超音波(PUI)・3回 5.72 ± 2.65(d) 1.13 ± 0.84(f) XP-endo Finisher・連続 2.94 ± 2.16(e) 0.82 ± 0.46(h) XP-endo Finisher・3回 1.04 ± 0.59(f) 0.80 ± 0.42(h) 抜去した単根の小臼歯の実験室研究。原著の表1から、各群の合計(根尖側・中央・歯冠側の3区画の平均)の値を抜粋し た。区画の間には有意差を認めなかった 括弧の記号は原著の表1のまま。同じ列の中で記号が違う群どうしに有意差がある(P<.05)。溝の中の列と溝の外の列は 別々に読む 連続=90秒続けて洗う(超音波・XPFは液を足しながら1分かき混ぜ、0.5mLで30秒すすぐ)。3回=20秒かき混ぜ+10秒 で0.5mLを流す、を3回(洗浄針は0.5mLを30秒ずつ3回)。洗浄液は3%次亜塩素酸ナトリウム
表:各群の、溝の中と溝の外に菌が残った面積の割合(平均±標準偏差、%)と有意差の記号。原著の表1から各群の合計の値を抜粋(区画ごとの値は省いた)。

このほか、どの群でも溝の外のほうが溝の中より有意に多く菌が除かれていました。根尖側・中央・歯冠側の区画の間には、溝の中でも外でも有意差を認めませんでした。2人の評価者の一致度(重み付きκ)は0.90、同じ評価者のくり返しは0.95でした。

⑥著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、XPF は器具の届きにくい場所のバイオフィルムの除去に役立ちうる、XPF を使う時は3回に分ける手順が連続より効果的だった、と結論しています。ただし手順による有意差が出たのは溝の中だけで、溝の外では XPF の2つの手順に有意差を認めていません。

面白いのは、著者らが当初、溝の中では超音波が最もよいだろうと予想していた点です。ところが予備実験では、XPF は溝が細すぎて溝の中に入らなかったと書いています(データは示されていない)。そこで、非対称の形の器具を800rpmで回すことで局所的に強い液の流れが生まれ、溝のバイオフィルムをはがしたのではないか、と推測しています。3回に分ける手順がよかった理由についても、汚れた液が出て新しい液に入れ替わるためではないか、という推測です。どちらも、この研究で確かめた仕組みではありません。

また、この研究で測ったのは「電子顕微鏡で見た表面を菌が覆っている面積」です。菌が生きているか、象牙細管の中の菌がどうなったかは見ていません。

⑦明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・主根管の壁は、どの方法でもかなり除けていた:主根管の壁でも有意差はあったが小さく、大きな差が出たのは、ファイルが届かない細い溝の中。フィンやイスムスを意識する歯ほど、最終洗浄で液を動かす工夫の意味が大きくなりうる
・XPF を使うなら、時間を区切って液を入れ替える手順も選択肢:この模型では、同じ90秒でも「20秒かき混ぜ+10秒で洗浄液を足す」を3回にしたほうが、溝の中の残りの平均が有意に少なかった(溝の外では有意差なし)
・超音波と洗浄針では、手順を変えても有意差は出なかった:「区切ればよい」は、この研究では XPF での結果

XPF は専用の器具とコントラアングル(800rpm)が要ります。導入を考える時は、この模型の結果だけでなく、根尖からの液の押し出し、器具の破折、実際の根管での成績など、別の観点の研究も合わせて判断したいところです。

ここだけ、冷静に補助線(1)抜去した単根の小臼歯の実験室研究で、各群8本です。治癒や痛みなど、患者さんの結果は調べていません。
(2)溝は人工的に作った、まっすぐで形のそろったフィンです。実際のフィンやイスムス、曲がった根管、大臼歯での結果は分かりません。
(3)バイオフィルムは成人1人のプラークの菌を4週間育てたもので、測ったのは表面を菌が覆う面積です。菌が生きているか、象牙細管の中までは見ていません。
(4)超音波の出力や XPF の回転数などの設定は1通りに固定し、同じ90秒の中で2つの時間配分(続けて/3回に分けて)を比べています。どの群も最後に EDTA で仕上げた後に測っています。
(5)XPF は製造元(FKG Dentaire SA)から提供されたと謝辞に書かれています。研究費の一部は Canada Foundation for Innovation で、著者らは利益相反を否定しています。
届きにくい場所のバイオフィルムを「同じ条件の溝」で比べた点が面白い報告です。実際の根管での研究と並べて読むと、XPF の位置づけが見えてきます。

今日のひとこと

この抜去歯の実験では、根尖側の細い人工の溝の中に菌が残った面積の割合の平均は、洗浄針で約27%、超音波で約6%、XP-endo Finisher で2.94%(連続)と1.04%(3回に分ける)で、XP-endo Finisher は溝の中で3回に分ける手順のほうが有意に少なかった。ただし各群8本の実験室研究で、測ったのは電子顕微鏡で見た表面の菌の面積だけ。治癒や痛みなどの臨床の結果は調べていません。「届きにくい場所では、液をどう動かし、どう入れ替えるかで残り方が変わりうることを示した模型の結果」と読むのが、この論文に合った読み方です。

Bao P, Shen Y, Lin J, Haapasalo M. In Vitro Efficacy of XP-endo Finisher with 2 Different Protocols on Biofilm Removal from Apical Root Canals. J Endod. 2017;43(2):321-325. doi: 10.1016/j.joen.2016.09.021. PMID: 27939826
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。