1問1答 論文 エンド

抜髄後の痛みは、根管充填のはみ出しと関連する?——生活歯髄の抜髄256人を1回法と水酸化カルシウム貼薬の2回法に無作為に分けた試験で、最終根管充填の1週後の痛みは、オーバーフィルの歯で30.7%(75人中23人)、X線上の根尖から0〜2mm手前で終わった歯で5.3%(169人中9人。割合は筆者の計算)。治療群の間に差は認められず、1〜3年後の根尖病変は1回法9人・2回法8人だった(Gesi 2006)

1問1答 論文 エンド

エンド|生活歯髄の抜髄256人を、コインで1回法と水酸化カルシウム貼薬の2回法に割り付け、術後の痛みと1〜3年後のX線写真の根尖病変を比べた無作為化比較試験(Gesi・Hakeberg・Warfvinge・Bergenholtz 2006・Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod)

生活歯髄の抜髄は、1回で根管充填まで終えてよいか。根管充填のあとの痛みは何と関係しているのか。Gesi らは2006年、生活歯髄の抜髄256人(1人1歯)をコインで1回法と水酸化カルシウム貼薬の2回法に分け、術者1人が同じ手順で治療して、術後の痛みと1〜3年後のX線写真を調べました。最終根管充填の1週後に痛みがあったのは、根管充填材がはみ出した歯(オーバーフィル)で30.7%(75人中23人)、X線上の根尖から0〜2mm手前で終わった歯で5.3%(169人中9人)で、オーバーフィルは有意に痛みと関連していました(割合は表の人数から筆者が計算)。最終根管充填の1週後の痛みについて治療群の間に差は認められず、最後の再診での根尖病変は追跡できた244人中17人(1回法9人・2回法8人)でした。オーバーフィルと根尖病変の間に有意な関連は認められていません。

論文
Incidence of periapical lesions and clinical symptoms after pulpectomy—A clinical and radiographic evaluation of 1- versus 2-session treatment
著者
Andrea Gesi、Magnus Hakeberg、Johan Warfvinge、Gunnar Bergenholtz(イタリア シエナ大学、スウェーデン ヨーテボリ大学・ヨンショーピン大学)
掲載
Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontology 2006;101(3):379-388
種類
無作為化比較試験(コインで2群に割り付け)。イタリアの開業医2か所で、生活歯髄の抜髄が必要な256人(1人1歯)を1回法130人・2回法126人に分けた。術者1人。ラバーダムを消毒し、ステンレスの手用ファイルでX線上の根尖から0.5〜2mm手前まで拡大、3%次亜塩素酸ナトリウムで洗浄、酸化亜鉛ユージノール系シーラーとガッタパーチャの側方加圧で根管充填。2回法は水酸化カルシウムを入れて1週以内に根管充填。痛みは0〜3の4段階で本人が答え、X線写真は群を知らされていない2人の歯内療法医が評価した。追跡は根管充填の1週後と1〜3年(最後の再診で244人)。根管充填の長さ(オーバーフィルなど)は割り付けたものではない
資金・利益相反
資金と利益相反の記載は見当たらない
PMID
16504873

①抜髄のあとの痛み、何と関係していた?

生活歯髄の抜髄。拡大まで終えたところで、その日に根管充填するか、水酸化カルシウムを入れて次回にするか。そして、根管充填のあとに「噛むと痛い」と言われた時、それは1回で終えたせいなのか。迷う場面は少なくありません。

この問いに手がかりをくれるのが、Gesi・Hakeberg・Warfvinge・Bergenholtz が2006年に Oral Surgery, Oral Medicine, Oral Pathology, Oral Radiology, and Endodontology に出した無作為化比較試験です。生活歯髄の抜髄256人を1回法と2回法に分け、術後の痛みと、1〜3年後のX線写真の根尖病変を追いました。

結論を先に書きます。
・生活歯髄の抜髄256人(1人1歯)を、コインで1回法(130人)と水酸化カルシウム貼薬の2回法(126人)に割り付けた。術者は1人
・最終根管充填の1週後の痛みは、根管充填材がはみ出した歯(オーバーフィル)で30.7%(75人中23人)、X線上の根尖から0〜2mm手前で終わった歯で5.3%(169人中9人)。オーバーフィルは有意に痛みと関連していた(割合は表IIIの人数から筆者が計算)
・最終根管充填の1週後の痛みについて、1回法と2回法の間に差は認められなかった(抄録)
・1〜3年の最後の再診で根尖病変があったのは追跡できた244人中17人(7%)で、1回法9人・2回法8人。オーバーフィルと根尖病変の間に有意な関連は認められなかった
・著者らは、無菌的な手順と適切な拡大・根管充填を守れば、水酸化カルシウムの貼薬は結果に影響しないようだと結論した

②なぜこの比較が必要だったか

著者らによると、根管治療は2回以上に分けて行うのが通例でしたが、根管充填まで1回で終える方法が広まりつつありました。特に生活歯髄の抜髄は1回法に向くと考えられていました。う蝕にさらされた歯髄でも、感染は表層にとどまり、根尖側まで及ぶことはまれだとする研究が多いからです(引用文献の結果)。

一方で2回法には、根管の形成を仕上げ直せる利点があります。根管壁に歯髄組織が残ると、根管充填の密着を妨げるかもしれません。水酸化カルシウムは組織を壊死させて次亜塩素酸ナトリウムで溶けやすくし、根尖部での硬組織の形成を促すとも報告されていました(いずれも引用文献の結果)。それでも、抜髄を1回で行うか2回で行うかを無作為化比較試験で調べた研究は乏しく、感染根管で行われた3つの無作為化比較試験では、貼薬の有無にかかわらず同じように高い割合で治っていた、と著者らは書いています。

③何をどう比べたか

・対象:イタリアの開業医2か所(著者の一人が運営)で、24か月の間に抜髄が必要と判断された生活歯髄の歯。温度・機械の刺激に反応し、髄腔を開けた時に出血がある歯に限った。痛みのある歯も、痛みのない歯も含めた。痛み止めや抗菌薬を飲んでいる人などを除いて256人(男性115人・女性141人)。2本以上の候補がある人は1本だけを選んだ
・割り付け:コインを投げて、1回法130人・2回法126人に分けた。その日に時間が足りない時は、断髄して仮封し、1週以内に割り付けた手順を行った(5人:1回法3人・2回法2人)
・共通の手順:術者1人。ラバーダムを30%過酸化水素と5%ヨードチンキで消毒。Gates-Glidden バーで歯冠側を広げ、ステンレスの手用ファイル(balanced force 法)で、X線上の根尖から0.5〜2mm手前の作業長まで ISO 30〜60 に拡大。3%次亜塩素酸ナトリウムで繰り返し洗浄。根管充填は酸化亜鉛ユージノール系シーラーとガッタパーチャの側方加圧
・1回法:拡大と根管充填を同じ日に
・2回法:1回目に拡大を終え、水酸化カルシウムをレンツロで入れて仮封。1週以内に除去して根管充填
・評価:痛みは0〜3の4段階(なし・軽い・中等度・強い)で本人が答えた。根管充填の1週後に再診し、その後は年1回、3年まで。X線写真は、術者ではない2人の歯内療法医が、どちらの群かを知らされずに評価した。根尖の透過像(根尖病変)の有無、根管充填の長さ(0〜2mm手前/2mmより手前/オーバーフィル)を判定した。オーバーフィルは、少しでも根管充填材がはみ出していればそう判定し、複根歯はどれか1根でもはみ出していればオーバーフィルとした

④結果1:最終根管充填の1週後の痛みは、オーバーフィルの歯で多かった

術直後のX線写真では、256本中75本(29%)が1根以上でオーバーフィルでした。多くはわずかなはみ出しで、シーラーだった可能性もある、と著者らは書いています。オーバーフィルの歯は2つの群に似た割合で分かれていました。

0 10% 20% 30% 40% 最終根管充填の1週後に痛みがあった割合 5.3% 16.7% 30.7% X線上の根尖から0〜2mm手前(169人中9人) 2mmより手前・短い(12人中2人) オーバーフィル(75人中23人) 図の上の数字は原著の表IIIの人数から筆者が計算した割合(小数第2位を四捨五入し、第1位まで表示)。生活歯髄の抜髄256人(1人1歯)を1回法と2回法に無作為に割り付けた試験。根管充填の長さは割り付けたものではなく、術直後のX線写真で分けた区分(根尖はX線上の根尖)。オーバーフィルは他の2区分と有意に異なった(表IIIの表記はP=.000、抄録は P=.001)。短い区分は12人と少ない
図1:根管充填の長さ別に見た、最終根管充填の1週後に痛みがあった人の割合(原著の表IIIの人数から筆者が計算)。根管充填の長さは割り付けたものではない。

最終根管充填の1週後に痛みがあったのは256人中34人でした。根管充填の長さで分けると(図1)、X線上の根尖から0〜2mm手前で終わった歯で169人中9人(5.3%)、2mmより手前で終わった短い歯で12人中2人(16.7%)、オーバーフィルの歯で75人中23人(30.7%)。オーバーフィルは他の2区分と有意に異なっていました(表IIIと本文では P=.000、抄録では P=.001 と表記)。

参考までに、オーバーフィルと0〜2mm手前の歯の痛みの割合の比(粗リスク比)を表IIIから筆者が計算すると、約5.8(23/75 ÷ 9/169)です。原著が示した値ではなく、ほかの要因をそろえた比較でもありません。

打診に過敏な歯も、オーバーフィルと有意に関連していました(P<.001)。また、2回法で水酸化カルシウムを入れていた間は痛みのなかった13人が、最終根管充填のあとに痛みを訴え、そのうち11人にオーバーフィルがありました。

痛みの程度は全体に軽く、最初の再診(1週後)で痛みがあった25人のうち、中くらいの痛みは1人だけで、残りは軽い痛みでした。痛みを理由に受診した204人のうち181人(89%)は、1週後には痛みがなくなっていました。

⑤結果2:1回法と2回法で、術後1週の痛みに差は認められず、根尖病変は9人と8人

図2:1回法と2回法の結果(生活歯髄の抜髄・原著の本文から) 結果 1回法 2回法(水酸化カルシウム) 群の比較 割り付けた人数 130人 126人 — 1回目の再診(1週後)に痛みがあった人 16人 9人 有意差を検出せず 最終根管充填の1週後に痛みがあった人 16人 18人 差を認めず(抄録) 1回目の再診で打診に過敏だった人 28% 19% 有意差を検出せず 術直後のオーバーフィル 記載なし 記載なし 似た分布(著者ら) 最後の再診での根尖病変 9人 8人 均等(著者ら) 1回法=拡大と根管充填を同じ日に。2回法=1回目に拡大を終え、水酸化カルシウムを入れて1週以内に根管充填。術者 1人・コインで割り付けた無作為化試験。 1回法は術後の再診が1回だけなので、痛みの2行の16人は同じ時点(根管充填の1週後)の値。2回法の9人は貼薬の1週後、 18人は最終根管充填の1週後。オーバーフィルは全体で256人中75人(29%)。 根尖病変は1〜3年の再診のうち最後の回のX線写真。追跡できた244人の合計17人(7%)。再診に一度も来なかったのは 1回法7人・2回法5人。年ごとの群別の追跡人数・その後の脱落の群別の内訳と、この比較の検定の値は原著に無い。 「有意差を検出せず」「差を認めず」は検定で有意差が出なかったこと、「均等」は著者らの記述(evenly distributed)で、同じであることの証明ではない。
図2:1回法と2回法の結果(原著の本文から)。「有意差を検出せず」「差を認めず」は同じであることの証明ではない。

最初の再診(1週後)で痛みがあったのは、1回法16人、2回法9人。数には違いがありましたが、有意差は検出されませんでした(図2)。2回法では最終根管充填のあとに痛みを訴える人が18人に増えましたが、抄録では、最終根管充填の1週後の痛みについて治療群の間に差は認められなかったとしています。1週後に打診に過敏だった人も、1回法28%・2回法19%で有意差は検出されませんでした。

1〜3年の再診に一度も来なかったのは12人(5%)で、90%の人は2年か3年、またはその両方の再診で確認できました。最後の再診で根尖病変があったのは追跡できた244人中17人(7%)で、1回法9人・2回法8人と均等に分かれていました(著者らの記述。この比較の検定の値は示されていません)。

オーバーフィルは、根尖病変とは有意な関連を示しませんでした。術直後に見えたはみ出しは、75人中23人(31%)でその後のX線写真から消えていました。根尖病変は大臼歯に多く、18か所の病変のうち12か所は下顎大臼歯の近心根(5か所)か上顎大臼歯の近心頬側根(7か所)でした。

⑥著者らの結論と、結果の読み方

著者らは、次のように考察しています。

・抜髄の成績:1回法でも2回法でも、抜髄は高い成功率で行える。両群とも93%の人で治療の目的を達した(著者らの総括。痛みが取れたことと、根尖病変の発生が少なかったことを踏まえたもの。最後の再診で根尖病変があったのは追跡できた244人中17人=7%)。無菌的な手順と適切な拡大・根管充填を守れば、水酸化カルシウムの貼薬を加える利点はないようだ(著者ら)
・術後の痛み:両群に共通して、続く痛み・新たな痛みに関わっていたのはオーバーフィルだった。根管充填の時に根管の内容物が押し出されることと、充填材の刺激が、少なくとも一時的に術後の不快感を起こしうる。だから、拡大と根管充填をX線上の根尖から1〜2mm手前にとどめる安全域は妥当だと思われる(著者ら)
・長期の成績:オーバーフィルは術後すぐの痛みとは関連したが、長期の成績を左右する要因としては残らなかった(著者ら)

読み方として大事なのは2点です。1つは、オーバーフィルと痛みの関係は、割り付けて比べたものではなく、同じ試験の中で見つかった関連だということ。オーバーフィルになった歯には、根管の形や拡大の難しさなど、ほかの違いがあったかもしれません。もう1つは、1回法と2回法で「有意差が検出されなかった」ことは、「同じ」の証明ではないことです。この試験は、同等であることを確かめる設計にはなっていません。

⑦明日の臨床へ

この研究から持ち帰れるのは、次のような読み方です(筆者の読み)。

・根管充填のあとの痛みを、まず回数のせいにしない:この試験では、最終根管充填の1週後の痛みは1回法か2回法かで差が認められず、オーバーフィルの歯で多かった。痛みを訴えられたら、術直後のX線写真で根管充填の長さを見直す
・作業長と根管充填の位置を根尖の手前にとどめる:著者らは、X線上の根尖から1〜2mm手前の安全域を妥当とした。わずかなはみ出し(シーラーも含む)でもオーバーフィルと判定されていた点に注意
・はみ出しても、すぐに失敗とは限らない:この試験では、オーバーフィルは1〜3年後の根尖病変と有意な関連を示さず、オーバーフィルの人の31%(75人中23人)ではX線写真から消えていた。ただし痛みとは関連していた
・1回法を選ぶ条件:この試験の1回法は、ラバーダムの消毒、術者1人による手順の統一など、無菌的な手順を守った上での成績。生活歯髄の抜髄に限った結果で、感染根管にはそのまま当てはめない

なお、この研究の拡大はステンレスの手用ファイルで、著者らは、根尖病変が大臼歯の近心根に多かったのは手用ファイルでの形成の難しさによる可能性があると述べています。

ここだけ、冷静に補助線(1)オーバーフィルと痛みは関連であって因果ではありません。根管充填の長さは割り付けておらず、この関連について、ほかの要因を調整した結果も示されていません。短い区分は12人だけです。
(2)術者は1人で、開業医2か所の患者です。著者らも、内的妥当性は高いが一般化には注意が要るとしています。共変量での層別もしていません。
(3)1回法と2回法は、術後1週の痛みで「有意差を検出しなかった」までです。根尖病変は著者らが「均等」と書くだけで、検定の値は示されていません。必要な人数の計算は書かれておらず、同等性を示す設計ではありません。1〜3年の再診に一度も来なかった人は1回法7人・2回法5人と書かれていますが、年ごとの群別の追跡人数や、その後の抜歯・転居などによる脱落の群別の内訳は示されていません。
(4)原典の中の表記の違い:痛みとオーバーフィルの関連のP値は、表IIIと本文では P=.000、抄録では P=.001。短い根管充填の区分は、方法の節では「X線上の根尖から2mmを超えて手前」、表IIIの注記では「<2 mm」と書かれています。
(5)痛みは本人の答える4段階の尺度で、評価は術後1週と1〜3年のX線写真です。資金と利益相反の記載は見当たりませんでした。

今日のひとこと

生活歯髄の抜髄では、根管充填の1週後の痛みは、1回法か2回法かでは差が認められず、根管充填材がはみ出した歯(オーバーフィル)で多く見られました(表の人数から筆者が計算した割合で、オーバーフィル30.7%対、X線上の根尖から0〜2mm手前で終わった歯5.3%)。ただしこれは割り付けて比べたものではない関連で、オーバーフィルは1〜3年後の根尖病変とは有意な関連を示しませんでした。術後に痛みを訴えられたら、まず回数ではなく根管充填の長さを見直す。根尖の手前にとどめる。そう読むのが、この論文に合った使い方です。

Gesi A, Hakeberg M, Warfvinge J, Bergenholtz G. Incidence of periapical lesions and clinical symptoms after pulpectomy—a clinical and radiographic evaluation of 1- versus 2-session treatment. Oral Surg Oral Med Oral Pathol Oral Radiol Endod. 2006;101(3):379-388. doi: 10.1016/j.tripleo.2005.05.073. PMID: 16504873
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。