1問1答 論文 エンド

見逃した根管と根尖病変は、どれほど関係する?——82.8%と52.5%から読むCBCT研究

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Karabucak 2016|大学の歯内療法科への紹介患者を対象にした、根管治療済み臼歯1,137歯のCBCT調査

根管充填は見えるのに、根尖には透過像がある。再治療を考えるとき、見逃した根管はどの程度気にすべきでしょうか。Karabucakらの研究では、CBCT上で未処置根管がある歯の82.8%に根尖病変が認められました。一方、未処置根管を認めない歯でも52.5%。この差を読む鍵は、「どんな患者の、いつの画像か」にあります。

論文
Prevalence of Apical Periodontitis in Endodontically Treated Premolars and Molars with Untreated Canal: A Cone-beam Computed Tomography Study
著者
Bekir Karabucak, Alf Bunes, Christel Chehoud, Meetu R. Kohli, Frank Setzer
掲載
Journal of Endodontics. 2016;42(4):538–541. DOI: 10.1016/j.joen.2015.12.026
対象
ペンシルベニア大学歯内療法科への紹介患者。2013年1月〜2015年7月のCBCT 1,397件を調べ、655件に含まれる根管治療済み小臼歯・大臼歯1,137歯を解析
研究の種類
既存CBCT画像を用いた観察研究。原著は後ろ向きコホート研究と表記するが、今回の比較は撮影時点の有病状況であり、新規発症や治癒を追跡した比較ではない
利益相反
著者らは本研究に関する利益相反なしと申告
PMID
26873567

① 根管充填が見えても、すべての根管を処置したとは限らない

デンタルエックス線写真で根管充填が確認できると、その長さや密度に目が向きます。ただ、歯根の中には別の根管が重なっていることもあります。今回の研究が調べたのは、CBCTで認めた未処置根管と、根尖病変の存在との関係です。

ここでいう「未処置根管」は、CBCTの複数方向の画像で根管充填材のない根管空間を確認したもの。主根管から途中で分岐するものも含めています。実際の感染の有無を採取検査したわけではありません。

② 対象は、歯内療法科に紹介されてCBCTを撮影した患者

調査場所はペンシルベニア大学の歯内療法科です。2013年1月から2015年7月までのCBCT 1,397件から、条件に合う655件を選び、そこに写る根管治療済みの小臼歯・大臼歯1,137歯を評価しました。655は患者数ではなく、画像検査の件数です。

対象は撮影の原因になった歯だけではなく、画像に含まれる条件に合った治療済みの歯です。前歯部の画像、穿孔・著しい歯根吸収・歯根端切除の既往・C字形態の歯、画質不良などは除外されました。紹介理由や依頼された治療の種類は解析していないため、「全員が再治療患者」とは言えません。

根尖病変は、歯槽硬線の途絶があり、根尖に関連する低濃度域が歯根膜腔幅の少なくとも2倍という画像基準で判定されています。

③ 未処置根管あり82.8%、認めない歯52.5%

未処置根管は262歯で認められ、そのうち217歯に根尖病変がありました。未処置根管を認めない群は875歯、そのうち病変ありが459歯です。後者の実数は、原著の全体集計から未処置根管あり群を差し引いて計算しています。

0 33.3% 66.7% 100% 根尖病変の有病率(%) 82.8% 52.5% 未処置根管あり 未処置根管を認めない 217/262歯 と 459/875歯。後者は原著の全体集計から算出。撮影時点の比較。
図1|撮影時点で根尖病変を認めた割合。未処置根管あり217/262歯=82.8%、認めない歯459/875歯=52.5%。後者は原著の全体1,137歯・病変あり676歯から算出。群間差は原著でP<.05。治療前後の変化を表す図ではありません。

原著が報告したオッズ比は4.38です。一方、両群の実数から有病率を直接比較すると、(217/262)÷(459/875)=有病率比1.58となります。オッズ比と有病率比は計算方法が違うため、同じ数字にはなりません。

この研究で示されたのは、未処置根管のある歯で病変を多く認めたという関連です。「将来の病変の発症リスクが4.38倍」と読み替えることはできません。

④ CBCTで未処置根管を認めなくても、半数以上に病変があるのはなぜ?

まず、これは一般の根管治療患者を無作為に集めた調査ではありません。歯内療法科に紹介されてCBCTを撮影した集団です。著者らも、こうした患者選択によって病変の有病率が高くなった可能性を挙げています。ただし、紹介理由を解析していないため、その影響の大きさは分かりません。

また、CBCT上の未処置根管がないことと、治療全体が良好であることは別です。感染の残存、根管充填や歯冠修復の状態、治療からの経過時間などが関係し得ます。この研究ではそれらを十分に把握しておらず、52.5%の病変を原因別に分けることはできません。

治療時期が分からなければ、治癒途中の透過像と持続する病変も区別できません。さらにCBCTは小さな骨の変化を拾う一方、充填材や金属による画像の乱れで細い根管が見えにくくなることもあります。したがって「未処置根管なし」は、正確には「この画像で未処置根管を認めなかった」という分類です。

52.5%は、一般的な根管治療の失敗率ではありません。紹介患者の画像を、その時点で評価した有病割合です。

⑤ 未処置根管だけで、病変のすべては説明できない

別の角度から、根尖病変があった676歯全体を見てみます。未処置根管を認めたのは217歯、認めなかったのは459歯でした。

0 33.3% 66.7% 100% 病変のある676歯の内訳(%) 32.1% 67.9% 未処置根管あり 未処置根管を認めない 217/676歯 と 459/676歯。原著の実数から計算。病変の原因別割合ではない。
図2|根尖病変がある676歯の内訳。未処置根管あり217歯=32.1%、認めない歯459歯=67.9%。原著の実数から計算。未処置根管が病変を「引き起こした割合」を示すものではありません。

つまり、未処置根管は確認すべき重要な項目ですが、病変のある歯のすべてで見つかるわけではありません。未処置根管に感染源が残り得るという説明は生物学的に理解できますが、この研究は根管内の細菌を直接調べていません。再治療の評価を、根管の本数だけで完結させないことが大切です。

⑥ 明日の臨床では「何を確認したいか」を先に決める

この結果を診療に引き寄せるなら、根尖病変のある既根管治療歯について、治療時期と症状・経過を確認し、画像上の根管充填と歯根の位置関係を見直す、という読み方ができます。根管充填が歯根の中央から偏って見えることは、原著でも別の根管を疑う手掛かりとして論じられています。

著者らは再治療前の小照射野CBCTを推奨しています。同時に、得られる情報と被ばくを比較して臨床判断を行う必要性も述べています。この記事からの実務的な提案は、「別の根管を確認できたら、治療計画のどこが変わるか」を撮影前に言葉にすることです。今回の研究が、CBCT撮影や追加根管の処置による治癒率の改善を検証したわけではありません。

⑦ ここだけ、冷静に補助線

単一大学の紹介患者を対象にした、既存CBCT画像の観察研究です。原著は後ろ向きコホート研究と呼んでいますが、比較しているのは撮影時点の有病状況です。治療時期・治療や修復の質・治癒経過を把握していないため、因果関係や将来の発症率、一般患者の治療成功率までは判断できません。

そのうえで、再治療前の評価に「未処置根管の有無」を組み込み、ほかの原因候補や経過も一緒に考える根拠として読むと、臨床の問いが具体的になります。

今日のひとこと

根尖病変が残る歯では、処置されていない根管がないかを確認する。ただし、見つからないことだけで感染の制御や治癒を判断しない。82.8%と52.5%は、紹介患者のCBCTで観察された有病割合です。

Karabucak B, Bunes A, Chehoud C, Kohli MR, Setzer F. Prevalence of Apical Periodontitis in Endodontically Treated Premolars and Molars with Untreated Canal: A Cone-beam Computed Tomography Study. J Endod. 2016;42(4):538–541. DOI: 10.1016/j.joen.2015.12.026. PMID: 26873567
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。