1問1答 論文 歯周病

「限局型」の30%、何を数えていますか——新分類をつくった当人たちが出した2つの答え

1問1答 論文 歯周病

新しい歯周炎分類の使い方に関する明確化(Sanz 2020・J Periodontol ゲストエディトリアル)

ステージとグレードの分類が広まるにつれ、現場から2つの質問が上がりました。「限局型(30%未満)は、どの歯を数えた割合なのか」「明らかに保存不可能な歯が口の中に残っているとき、それは喪失歯として数えるのか」。分類の枠組みを作った当人たちが、短いエディトリアルで答えています。どちらも、ステージがIIIかIVかを分ける判断に直結します。

論文
Guest Editorial: Clarifications on the use of the new classification of Periodontitis
著者
Sanz M, Papapanou PN, Tonetti MS, Greenwell H, Kornman K
掲載
Journal of Periodontology 2020;91(11):1379-1381
種類
ゲストエディトリアル(2017年新分類の策定に関わった著者による適用上の明確化)
PMID
32246767

「限局型か、広汎型か」で手が止まったことはありませんか

2017年の新分類が広まって、カルテにはステージとグレードが並ぶようになりました。ところが記入しようとすると、毎回ひっかかる場所があります。

「限局型(30%未満)」の30%は、どの歯を数えた割合なのか。

アタッチメントロスが少しでもある歯を全部数えるのか。それとも、この患者をステージIIIだと判断させた「あの重症の歯」だけを数えるのか。どちらを数えるかひとつで、限局型が広汎型に変わります。

もうひとつ、同じくらい迷う場面があります。明らかに保存できない歯が、まだ口の中に残っているとき。歯周炎による喪失歯として数えるのか、それとも「まだあるから0本」なのか。ステージIIIとIVを分けるのは喪失歯の数ですから、これも判定を左右します。

この2つに、分類の枠組みを作った当人たちが短い文章で答えたのが、今回のエディトリアルです。

これは研究ではなく「使い方の明確化」

著者は Sanz、Papapanou、Tonetti、Greenwell、Kornman——2017年世界ワークショップのワークグループ2でステージ・グレード分類をまとめた面々です。

この文書の性格: ランダム化比較試験でも系統的レビューでもなく、ゲストエディトリアル。新分類の適用について現場から上がった2つの疑問に、策定側が公式に線を引いたもの。資金提供は無く、著者は本稿に関連する利益相反は無いと申告している。

だからこの記事に統計はありません。読むべきは、「どちらの解釈が正しいと決めたか」の1点です。

答え1:範囲が数えるのは「ステージを決めた重症度の歯」

「範囲(extent)」は、何を分子に置くのか

原著が採らなかった解釈 アタッチメントロスのある歯 を全部数えて、割合を出す 軽度の歯も含まれるので、割合は大きく出やすい → 重症度と結びつかない割合になる

明確化された数え方 そのステージを決めた 重症度レベルにある歯 を数えて、割合を出す → 重度に侵された歯の割合=複雑な治療を要する歯の割合

順番が決まっている:まずステージを決める → そのあとで範囲を記述する 範囲は、症例全体の重症度と複雑さをとらえた「ステージ」に対して付ける記述である

範囲の3区分 限局型:30%未満の歯 広汎型(閾値の記載なし) 大臼歯・切歯パターン

範囲(extent)の数え方。分子に置くのは「アタッチメントロスのある歯」ではなく「そのステージを決めた重症度レベルにある歯」

著者らは、コンセンサス論文(Papapanou・Sanz ら 2018)に書かれた基準をそのまま支持しました。原文の指定はこうです——「各ステージについて、範囲を限局型(歯の30%未満が該当)、広汎型、または大臼歯・切歯パターンとして記述する」

ここで決定的なのは順番です。まずステージを決める。そのあとで範囲を記述する。範囲は、症例全体の重症度と複雑さをとらえた「ステージ」に対して付けられる記述である、と明言されています。

したがって、ステージを決定したあとで数えるのは「そのステージを決めた重症度レベルにある歯」の割合になります。著者らはその意味も添えています——この数え方だと、割合は重度に侵された歯の割合を表し、それはすなわちより複雑な治療を要する可能性のある歯の割合として、臨床家に意味のある情報を伝える。

逆に「アタッチメントロスが少しでもある歯」を全部数えてしまうと、軽度の歯まで分子に入るので割合は大きく出ます。この数え方では、割合が重症度と結びつかなくなります(もっとも、著者らが書いているのは支持した側の利点までで、もう一方の解釈の弊害を明示しているわけではありません)。

答え2:保存不可能な歯は、抜く前から喪失歯に数える

まだ抜いていない歯を、喪失歯として数える条件

「明らかに保存不可能な歯(治療することが不合理な歯)」の定義——2つを同時に満たすもの

条件① アタッチメントロスが 全周にわたって根尖に迫っている

条件② 高度の動揺を伴っている 動揺度 III

口の中に残っていても、歯周炎による喪失歯として数に入れる この数え方は、ステージ III と ステージ IV を分けるときに使う

著者らは「含めるべき」という立場を支持したうえで、何を保存不可能とするかを適切に定義することが重要だと述べている
「明らかに保存不可能な歯」の定義。2つの条件を同時に満たす歯は、まだ口の中にあっても喪失歯として数える

2つめの答えは、「含める」でした。明らかに予後が絶望的な歯は、歯周炎による喪失歯の数に含めて、ステージIIIとIVを区別する——著者らはこの立場を支持しています。

そのうえで、「何をもって保存不可能とするか」を適切に定義することが重要だと釘を刺し、定義を示しました。

明らかに保存不可能な歯(irrational to treat=治療することが不合理な歯)とは、アタッチメントロスが全周にわたって根尖に迫っており、かつ高度の動揺(動揺度III)を伴っているもの。

この2条件は、どちらも診療室で確かめられる所見です(どう確認するかまでは原著に書かれていません)。曖昧な「予後不良感」ではなく、2つの所見の同時存在で線を引いた点が実務的です。

明日の臨床へ

診断を書く手順を、この順番に固定します。

1)まずステージを決める。判断材料は2018年のステージ・グレード分類の枠組み(Tonetti ら 2018)にある——アタッチメントロスの最大値、骨吸収、喪失歯数、そして複雑さの要因。今回のエディトリアル自体はこれらを列挙していないので、基準は原典で確認してください。

2)そのとき、明らかに保存不可能な歯があれば喪失歯に数える。全周の付着喪失が根尖に迫り、かつ動揺度III。この2つが揃っていれば、まだ抜いていなくても1本と数える。ステージIIIとIVの境目はここで動きます。

3)ステージが決まってから、範囲を記述する。そのステージを決めた重症度レベルにある歯が、全体の30%未満なら限局型。そうでなければ広汎型か、大臼歯と切歯に集中していれば大臼歯・切歯パターン(原著が数値で定義しているのは限局型の30%未満だけで、広汎型の閾値は示されていません)。

この順番で書くと、「ステージIII・限局型」という記述が、そのまま治療計画の重さを表すようになります。重度の歯が3割未満に留まっているのか、口全体に広がっているのか——同じステージIIIでも、必要な複雑さがまるで違うことが一目で伝わる。分類が診断名ではなく、計画のための道具になります。

ここだけ、冷静に補助線

ここだけ、冷静に補助線。 これはエディトリアルであり、新しいデータを提示した研究ではありません。「この解釈が正しい」という結論も、比較研究で検証されたものではなく、分類を作った当事者による意図の説明です。とはいえ、分類は共通言語であることに価値がありますから、策定側が示した使い方に揃えること自体に実務的な意味があります。なお、保存不可能な歯を喪失歯に数えるという判断は、ステージを1段階上げる方向に働きます。ステージIVがどういう段階かはこのエディトリアルには書かれていません(それを定義しているのは2018年のステージ・グレード分類の枠組みのほうです)。それでも1段階の差が治療の複雑さを大きく変える以上、動揺度IIIと全周の付着喪失という2条件は、印象ではなく所見として確認しておきたいところです。数え方が変われば診断が変わり、診断が変われば計画が変わる——短い文章ですが、効き目は小さくありません。

今日のひとこと

「範囲」が数えるのは、アタッチメントロスのある歯ではなく、そのステージを決めた重症度に達している歯である。そして明らかに保存不可能な歯は、まだ口の中にあっても喪失歯として数える——アタッチメントロスが全周にわたって根尖に迫り、かつ動揺度IIIであるものを指す。この2つで、ステージIIIとIVの線引きが変わる。

Sanz M, Papapanou PN, Tonetti MS, Greenwell H, Kornman K. Guest Editorial: Clarifications on the use of the new classification of Periodontitis. J Periodontol. 2020;91(11):1379-1381. doi:10.1002/JPER.20-0166 PMID: 32246767
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。