エンド|CBCT・再治療の意思決定
再根管治療か、外科か、抜歯か——デンタルまでの情報で立てた計画は、CBCTを見た後もそのままでしょうか。一般開業医80名と歯内療法専門医40名に、同じ8症例を4週間あけて2度見せた研究です。延べ960の判断のうち、約半分が入れ替わりました。しかも増えたのは「抜歯」。ただし決断の難しさは全体としては変わらず、重くなったのは「抜歯する」という判断だけでした。
①再治療の相談——その計画、CTを見ても同じですか
根管治療がうまくいかなかった歯。再根管治療か、歯根端切除か、意図的再植か、それとも抜歯か。デンタル数枚とバイトウィング、そして患者さんの症状。この材料で、僕らは毎日、方針を決めています。
では、同じ症例のCBCTをその後に見たら——立てた計画は、そのままでしょうか。バルセロナのグループは、この素朴な問いをそのまま実験にしました。結果は、およそ半分が入れ替わる。しかもこの研究が測ったのは診断名ではなく、「次に何をするか」という方針そのものです。
②120人の術者に、同じ8症例を2度見せた
集められたのは臨床経験2〜20年の術者120名。内訳は一般開業医80名と、2年以上の卒後研修を修了して歯内療法に限定した診療を行う専門医40名です。
症例は、既に根管治療を受けた歯8本。症状のある根尖性歯周炎・急性根尖膿瘍・慢性根尖膿瘍のいずれかで、補綴装置が適切なものに限定されています(歯冠・歯根破折の所見、二次う蝕や不適切な修復、歯根長の3分の2未満しか歯周組織の支持がないものは除外)。無症状の根尖性歯周炎も、「経過観察」という別の選択肢が混ざるのを避けるために外されました。
1回目のセッションでは、臨床写真2枚以上・視差法のデンタル2枚・(臼歯ならバイトウィング)・病歴・臨床症状を提示します。CBCTだけは伏せます。術者は4つの選択肢——①非外科的再治療 ②歯根端切除術 ③意図的再植 ④抜歯——から1つを選び(原著は①〜③を「歯を残す」、④を「抜く」と区分しています)、あわせて決断の難しさを1〜5で自己申告しました。
そして4週間後、同じ8症例を、今度はCBCT付きでもう一度。撮影はPlanmeca 3Ds、可能な限り小さい照射野(5×8 cm)です。症例の提示順はどちらのセッションもランダムで、術者は自分のペースでボリュームを自由にスクロールできました。
③結果:延べ判断の49.8%で、計画が入れ替わった
CBCTを見た後、術者は49.8%で治療計画を変更していました。
ここは分母に注意が要ります。原著の文言は「49.8% of the cases」ですが、Table 1の合計は960——これは検者120名×8症例の延べ判断数です。一般開業医52.2%(640件のうち)と専門医45%(320件のうち)を人数で加重すると478件となり、960件の49.8%にぴったり一致します。つまり「8症例の半分が変わった」ではなく、「延べ960の判断のうち、約478が入れ替わった」という意味です(478という実数は原著に記載がなく、本文の割合から計算した値です)。
そして変更率は、一般開業医のほうが有意に高い(52.2% 対 45%・P<.05)。著者らはこの差を、専門医のほうが日頃からCBCTで歯内療法の問題を評価することに慣れているためだろう、と説明しています。
④どこへ動いたか——増えたのは「意図的再植」と「抜歯」
960件の判断の内訳を並べると、CBCT前後で選択の重心がはっきり移動しています。非外科的再治療は482件から392件へ、歯根端切除術は238件から216件へ。逆に意図的再植は128件から170件へ、抜歯は112件から192件へ増えました。
抜歯の割合でいえば11.67%から20%(P<.05)。群別でも、専門医が5.63%から13.13%、一般開業医が14.69%から23.44%と、どちらも有意に増えています。
CBCT後(淡い棒)
ここで一つ、注記を入れておきます。CBCT後の4つの値を足すと970になり、同じ表に記された合計960と合いません。Fig 1の群別割合を人数で加重して逆算すると、非外科的再治療は382件(専門医38.13%×320+一般開業医40.63%×640)となり、残る3つはTable 1と完全に一致して合計はちょうど960に収まります。Table 1の392は誤植の可能性が高い——ただし断定はできないので、図には表の値をそのまま載せ、食い違いを開示するに留めます。減少の向きと、抜歯・意図的再植が増えたという結論は、どちらの数字でも変わりません。
⑤なぜ動くのか。そして「決めやすさ」は変わらなかった
著者らの説明はシンプルです。デンタルは3次元の解剖を2次元へ押し潰した像であり、CBCTなら決められた既定の方向ではなく任意の断面で1歯を観察できる。歯根破折・根尖性歯周炎・吸収・穿孔・根管形態といった、早期でわずかな所見を拾える可能性が高い——だから「残せる」という見立てが覆ることがある。
面白いのはここからです。CBCTを足しても、術者が自己申告した決断の難しさは全体として変わりませんでした(P=.0524)。情報が増えれば迷いが減る、とはならなかった。それどころか「抜歯する」という決断に限れば、CBCTを見た後のほうが両群とも有意に難しく感じられていました(P<.05)。著者らは、CBCTから得られる情報の読み取りは容易ではなく、相応のトレーニングを要するのではないかと考察しています。
⑥明日の臨床へ——撮る症例を絞ったうえで、方針を決める前に撮る
第一に、再治療の相談を受けた段階でCBCTの適応を検討する。この研究が示したのは、CBCTが診断の解像度を上げるだけでなく、方針の結論を半分近く書き換えうるということです。方針を患者さんに伝えてから撮れば、説明のやり直しになります。
第二に、撮る条件は緩めない。著者らはSignificance欄で、CBCTはデンタルで異常所見がある場合、あるいは中〜高難度の症例に限って考慮すべきだと明言しています。本研究でも可能な限り小さい照射野(5×8 cm)が用いられ、その実効線量は標準的なデンタル2〜3枚と同じオーダーだとするQuらの報告が引かれています。ALARAの原則は動きません。
第三に、抜歯の説明には時間を確保する。CBCTを見た後は抜歯の選択が増え、しかもその決断は「難しい」と感じられていました。難しい決断ほど、患者さんへの説明も長くなります。
第四に、変更率が低かったのは専門医のほうだったという事実を覚えておく。著者らはこの差を「専門医のほうがCBCTで歯内療法の問題を評価することに慣れているからではないか」と推測しています。あくまで2群を比べただけで、慣れの量と変更率の関係が確かめられたわけではありません。それでも、装置を入れて終わりではなく読影に慣れるまでが導入だと考えたくなる結果です。
1施設のアーカイブから選ばれた8症例で、無症状の根尖性歯周炎は除外=症状のある症例に寄っています。判断もスライド上のもので、費用や患者さんの希望は入っていません。そして肝心なのは、この研究が測ったのは「変わったか」であって「正しくなったか」ではないこと——治癒や歯の生存といった転帰は評価されていませんし、Table 1も選択の合計であって、誰がどの計画へ乗り換えたかの追跡ではありません。著者ら自身、全員を再招集できず検者内・検者間の信頼性を検証できなかったと書いています。それでも「CBCTは意思決定を動かす」という向きは、Eeら(2014)やMota de Almeidaら(2015)の報告とも一致します。光と影を両方見せてくれる、正直な一本。
今日のひとこと
CBCTは見える情報を増やすだけでなく、残すか抜くかという結論そのものを動かす——延べ960の判断のうち約半分が入れ替わり、抜歯は11.67%から20%へ。ただし「変わった」と「正しくなった」は別。だからこそ、方針を決める前に、条件を絞って撮る。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


