1問1答 論文 虫歯

リスク評価は当たった。では、当てたあとに何をすれば減ったのか——CAMBRA14年分の答え合わせ

1問1答 論文 虫歯

カリオロジー|CAMBRA・カリエスリスク評価の妥当性・化学療法(フッ化物+抗菌)

カリエスリスク評価には、いつも同じ疑問がついて回ります。「分類して、それで何が変わるのか」。UCSFがCAMBRAを14年間まわし、延べ数万人のカルテで検証した総説があります。答えは2段構えでした。リスク評価は当たる——低リスクの76%は追跡時にう蝕が無く、極高リスクの88%にはあった。そして、当てたあとに化学療法を足すと、DFTの増加量が約20%下がった。ただし、それを実際に使い続けた患者は、高リスク2,724名のうち323名でした。

論文
The Evidence for Caries Management by Risk Assessment (CAMBRA®)
著者
J.D.B. Featherstone, B.W. Chaffee(カリフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部 予防・修復歯科学講座)
掲載
Advances in Dental Research 2018;29(1):9-14
種類
総説(UCSFにおける14年の実装と、RCT2本・延べ数万人の成績評価をまとめたもの)
PMID
29355423

「リスクを分類して、それで何が変わるのか」

カリエスリスク評価の話をすると、必ずこの疑問に行き当たります。高リスク・低リスクと分けるのはいい。で、分けたあと何をするのか。分けたことで、本当に虫歯は減るのか

この総説は、その問いに14年分のデータで答えています。UCSF歯学部がCAMBRA(Caries Management by Risk Assessment)を2003年から診療に組み込み、RCT2本と、延べ数万人分のカルテを使った成績評価3本を積み上げてきた、その総まとめです。

先に結論: 予測は当たった——追跡時に新規う蝕があったのは低リスクで24%、高リスクで約70%、極高リスクで88%介入も効いた——化学療法を受け取り続けた群のDFT増加量は 1.82 → 1.47(約20%減)。ただし受け取り続けた患者は、高リスク2,724名のうち323名だった。

まず、RCTが示したこと(1999〜2005年)

CAMBRAの土台には、「カリエスバランス」という考え方があります。病的因子(う蝕原性細菌・発酵性糖質・唾液の機能低下)と、防御因子(十分な唾液・再石灰化に必要なカルシウム/リン酸/フッ化物・抗菌剤)の綱引きで、う蝕は進みも戻りもする。この綱引きを人為的に動かせるか——それを確かめたのが最初のRCTです。

  • 対象:UCSFの学生診療室に通う18〜65歳の成人で、1〜7か所のう窩を持つ患者
  • 介入群:フッ化物洗口+フッ化物歯磨剤+0.12%グルコン酸クロルヘキシジン洗口対照群:従来どおりの修復治療
  • 主要な結果:もともと高リスクだった患者で、2年間のう蝕増加量が24%減少(統計学的に有意)

ここからが面白いところで、付随して分かったことのほうが臨床に効きます

詰めても、菌は減らなかった。修復治療を行っても、口腔全体の平均的な細菌レベルには統計学的に有意な変化が無かった——治療直後も、2年間の追跡でも。そして対照群では約70%が2年以内に新しいう窩を持って戻ってきた

もうひとつ重要なのがクロルヘキシジンの使い方です。この試験で使ったのは「1日1回・月に1週間」という間欠的なレジメンでした。予備研究で細菌学的に詰めた結果、この使い方に決めたと書かれています。

「クロルヘキシジンはう蝕に効かない」という報告は、まったく違うレジメン(3か月ごとに2週間、毎日洗口など)を使っている——著者らはそう指摘しています。効かなかったのではなく、使い方が違った可能性がある。抗菌薬は「使うかどうか」ではなく「どう使うか」で結果が変わるということです。

なお2015年の再解析では、う蝕の減少は唾液中の細菌レベルの変化とフッ化物濃度の変化の組み合わせ、および測定していない要因によって媒介されていた、とされています。

リスク評価は、当たっていた

0 33.3% 66.7% 100% 追跡時に新規う蝕があった割合 (%) 24% 70% 88% 低リスク 高リスク 極高リスク 2011年の成績評価。ベースライン12,954名のうち再来した2,571名。高リスクは原著の「close to 70%(70%近く)」を70%として図示。中等度リスクの数値は本文に記載がない
ベースラインのリスク階層と、追跡時に新規う蝕があった割合(2011年の成績評価)
  • 2011年の成績評価:ベースライン12,954名、追跡できた2,571名
  • 低リスク:追跡時に窩洞形成またはう蝕があったのは24%=76%には無かった(原著は低リスクについてのみ「had cavities at follow-up」と書き、高・極高では「new cavities」としています)
  • 高リスク70%近くに新規う蝕
  • 極高リスク88%に新規う蝕
  • リスク階層は低・中等度・高・極高の4段階。極高=高リスク+唾液分泌低下(hyposalivation)と定義され、この診療室では患者の約5%が該当した
  • 0〜5歳向けのCRAツールでも同様の結果で、高リスクの約70%に追跡時の新規う蝕があった(ベースライン3,810名・追跡1,315名)

低リスクの24%という数字を、著者らは正直に扱っています。「低リスクと判定した4人に1人には、追跡時にう蝕があった」——だから「チェアサイドで正確な細菌学的検査を加えれば、低リスク判定の陰性的中率をさらに上げられるかもしれない」と、改善の余地として書いている。当たっていることと、完璧であることは違う

項目の重みは、別コホートでも再現された

0 4.7 9.3 14 オッズ比 13.6 8.2 3.3 2.8 2.8 2.6 1.9 1.8 0.67 0.81 隣接面エナメル質病変 白斑 見える多量のプラーク 間食の頻度 フッ化物歯磨剤 同じ項目を、別コホートで測り直した結果。順位は保たれているが、隣接面病変は 13.6 → 8.2 と大きく縮んだ。1未満(フッ化物歯磨剤)は守る側を意味する
2006年(2,351名)と2011年(12,954名)で測り直したオッズ比。順位は保たれたが、値は縮んだ

リスク評価票の項目は①疾患指標(臨床所見)②生物学的リスク因子(病的因子)③防御因子の3群に整理されています。それぞれのオッズ比を、2つの独立したコホートで測り直したのがこの表です。

  • 疾患指標:隣接面エナメル質病変 13.6 → 8.2/白斑 3.3 → 2.8/過去3年の修復 1.6 → 1.5
  • リスク因子:見える多量のプラーク 2.8 → 2.6/間食の頻度 1.9 → 1.8/深い小窩裂溝 1.9 → 1.8/唾液不足 1.4 → 1.3/レクリエーショナルドラッグ使用 2.0 → 2.0
  • 防御因子:フッ化物歯磨剤 0.67 → 0.81/フッ化物洗口 0.74 → 0.80/水道水フッ化物化 0.81(有意でない)→ 0.85

順位はほぼ完全に保たれています。同じものが上位に来て、同じものが1を下回る。再現されたという事実そのものが、この表のいちばんの価値です。

ただし値は全体的に1へ寄っています。隣接面病変は13.6から8.2へ。防御因子側も0.67から0.81へ。サンプルが5.5倍になって、効果はやや小さく出た——小さい研究のほうが効果を大きく見積もりがちだという、一般的な傾向どおりです。引用するなら、サンプルの大きい2011年の値のほう(=小さいほうの数字)を採るほうが安全でしょう。

では、当てたあとに何をしたら減ったのか

0 0.7 1.5 2.2 18か月後のDFT増加量(調整済み) 1.82 1.78 1.47 一度も受け取らず 1回だけ受け取り 2回以上受け取り 高リスクと判定された成人のうち、18か月後に再診査できた2,724名(各群 1,501名・900名・323名)。左2群に有意差はなく、右の群だけが両群より約20%低かった(統計学的に有意)
高リスク成人における、化学療法の受け取り回数別のDFT増加量(18か月後・調整済み)

ここが実務のいちばん知りたいところです。2007〜2012年の18,004名の記録から、初診時に高リスクと判定された成人11,900名、そのうち平均18か月後に再診査できた2,724名を、製品を受け取った回数で3群に分けています。

高リスク患者に推奨された化学療法は次の4点です。

  • フッ化物バーニッシュ(初診時に塗布)
  • 5,000 ppm F の処方用フッ化物歯磨剤を1日2回
  • 0.12% グルコン酸クロルヘキシジン洗口を、1日1回・月に1週間(リスクレベルが1年下がるまで継続)
  • キシリトールのガムまたはタブレットを毎日

18か月後のDFT増加量(調整済み)は次のとおりでした。

  • 一度も受け取らなかった群(1,501名)1.82
  • 1回だけ受け取り、補充に来なかった群(900名)1.78
  • 2回以上受け取りに来た群(323名)1.47

前2群のあいだに有意差はなく、3群目だけが両群より約20%低かった(統計学的に有意)。「1回だけ受け取った」は「受け取らなかった」と同じだった——これは効き方の性質をよく表しています。渡すことではなく、使い続けることが効いている

数字の並びで、いちばん重い比率。高リスクと判定された成人11,900名のうち、18か月後まで追えたのが2,724名、そのうち製品を継続して受け取ったのは323名。リスク評価の精度ではなく、ここが最大の律速である。

明日の臨床へ

「詰めても菌は減らない」を出発点にする。RCTで、修復治療は口腔全体の細菌レベルを有意に動かさなかった。だから修復と化学療法は、代替ではなく併用である。原著によれば、このRCTの対照群では約70%が2年以内に新しいう窩を持って戻ってきた。
  • クロルヘキシジンは「月に1週間」で使う。この間欠レジメンが、RCTで細菌レベルを持続的に下げた形です。連日使い続ける設計ではありません(ただし日本では、この濃度の製剤を口腔内洗口用として入手・処方することができません——この点は次項へ)
  • 高濃度フッ化物は「1日2回」で。回数が仕様に含まれています
  • 「渡した」で満足しない。1回だけ渡した群は、渡さなかった群と結果が同じでした。補充のために再来する動線——次回の予約時に在庫を確認する、といった仕掛けのほうが、渡す行為そのものより効きます
  • 「過去3年の修復」の扱いを変えたという改訂は、参考になります。新患には「過去3年の修復」、かかりつけ患者には「過去12か月の新規う蝕による修復」を使う。治療を受けた患者が3年間ずっと高リスクの箱に入れられたままにならないようにするための変更で、著者らはこれを「ペナルティボックスから出る」と表現しています。患者の動機づけにもなる、と
  • 極高リスク=高リスク+唾液分泌低下という定義は、そのまま真似できます。服薬内容の確認が、そのままリスク判定に効く
ここだけ、冷静に補助線
まずこれは総説であり、著者らは評価している当のシステムの開発者本人です。CAMBRAは登録商標(CAMBRA®)でもあります。数字は一次文献に基づいていますが、選び方と語り口には開発者の視点が入っていると見ておくのが公平でしょう。
次に「20%〜38%減」という抄録の書き方には注意が要ります。20%減は統計学的に有意ですが、38%減は、製品が公費で無償だった小集団(335名・238名・167名)での値で、著者ら自身が「症例数が比較的少ないため統計学的に有意ではなかった」と明記しています。抄録だけを読むと「20〜38%減る」と受け取ってしまいます。使ってよいのは20%のほうです。
成績評価の中心は後ろ向き研究で、著者らも「無作為化比較試験ではない」と断っています。「製品を2回以上受け取りに来た人」は、そもそも通院を続けられる人——時間・費用・意欲において有利な人です。効いたのは薬なのか、それとも続けられる人だったのかは、この設計では切り分けられません。
そして日本へ持ってくるときの現実的な壁が2つあります(以下は原著には書かれていない、日本の事情についての補足です)。5,000 ppm F の歯磨剤は日本では市販されておらず(国内の上限は1,500 ppm)、0.12%グルコン酸クロルヘキシジンの口腔内洗口も、日本ではアナフィラキシーの報告を受けて口腔粘膜への適用が制限されていますこのレジメンを国内でそのまま実施することはできません。使えるのは「化学療法と修復は併用する」「渡すのではなく続けさせる」という設計思想のほうだと思います。
それでも、14年やって、当たったところと当たらなかったところを両方書いている——この姿勢が、この総説を読む値打ちです。低リスクの24%を隠さず、38%減が有意でないことを本文に書いている。

今日のひとこと

CAMBRAのリスク評価は、追跡時の新規う蝕をよく当てた——低リスク24%・高リスク約70%・極高リスク88%(2011年・追跡2,571名)。そして修復治療に化学療法(5,000 ppm Fの歯磨剤1日2回+0.12%クロルヘキシジン洗口を月1週)を足すと、DFT増加量は 1.82 → 1.47 と約20%下がった。ただし高リスク2,724名のうち、製品を受け取って再来まで至ったのは323名。抄録が併記する「38%減」は、公費で無償だった小集団(167名)での値で、統計学的に有意ではない。予測は成立している。届けるところが、いまも解けていない。

Featherstone JDB, Chaffee BW. The Evidence for Caries Management by Risk Assessment (CAMBRA®). Adv Dent Res. 2018;29(1):9-14. PMID: 29355423. DOI: 10.1177/0022034517736500
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。