1問1答 論文 歯周病

その超音波、何度で当てていますか——根面を削っていたのは、パワーではなく角度だった

非外科治療

圧電式超音波スケーラーの作業パラメータ(in vitro)

「パワーを上げすぎない」——超音波スケーラーで気をつけることと言えば、まずこれが浮かびます。ところが、根面がどれだけ深く削れるかを最も強く決めていたのは、出力でも側方圧でもなく、チップを当てる角度でした。0°から外した瞬間に、削れ方は3倍以上に跳ね上がります。

論文
The effect of working parameters on root substance removal using a piezoelectric ultrasonic scaler in vitro
著者
Flemmig TF, Petersilka GJ, Mehl A, Hickel R, Klaiber B
掲載
J Clin Periodontol. 1998;25(2):158-163
種類
in vitro(抜去歯・3次元光学レーザースキャナで欠損を定量)
PMID
9495615

「パワー、絞ってますか」だけでいいのか

超音波スケーラーの使い方で、後輩に最初に伝えることは何でしょうか。おそらく「パワーを上げすぎない」。次に「強く押し付けない」。ここまでは、たいていの診療室で共有されています。

では、角度はどうでしょう。何度で当てているか、意識して答えられるでしょうか。1998年のこの研究は、その問いに数字で答えます——そして答えは、少し意外なところにありました。

それまで:削れることは知られていたが、何が効くかは分かっていなかった

超音波が根面を削ることは、以前から分かっていました。手用キュレットより削除量が少ないことも、繰り返し示されています。

ただし、それは「器具の種類」の比較でした。同じ超音波を使っていても、術者によって当て方は違います。出力の設定、押し付ける力、チップを当てる角度、当てている時間——この4つのどれが、どれだけ効いているのか。そこが空白でした。

今回の一手:4つのつまみを、全部の組み合わせで回す

著者らは、圧電式(ピエゾ)超音波スケーラーの細いチップで、次の組み合わせをすべて試しました。

側方圧 0.5 N・1 N・2 N / チップの角度 0°・45°・90° / 出力 低・中・高 / 時間 10秒・20秒・40秒・80秒

できた欠損は3次元光学レーザースキャナで深さと体積を測定。そのうえで、4つのパラメータそれぞれが結果にどれだけ効いているかを、回帰係数(β重み)で比べています。「なんとなく削れる」ではなく、どのつまみを回すと何が起きるかを分解した設計です。

結果その1:深さを決めていたのは、角度だった

0 66.7 133.3 200 欠損の深さ (μm) 26.4 96.3 76.5 45° 90° チップの当てる角度別の欠損の深さ(全時間・全側方圧・全出力をプールした平均)。0°から外すと深さは3倍以上になり、最も深く削れたのは90°ではなく45°だった(Flemmig 1998・圧電式)

欠損の深さへの影響力は、角度(β 0.48)> 側方圧(β 0.34)> 出力(β 0.25)。いちばん気にしていた出力が、いちばん効いていませんでした。

そして数字の並びを、もう一度見てください。0°で26.4 μm、45°で96.3 μm、90°で76.5 μm。最も深く削れたのは90°ではなく、45°です。「直角はさすがにまずい」という感覚は正しいのですが、その手前の、いかにも当たりそうな45°のほうが深く掘る

どの出力でも、最も深い欠損が出た組み合わせは同じでした——45°+2 Nです。

結果その2:削り取られる量を決めていたのは、側方圧だった

0 0.2 0.3 0.5 欠損の体積 (mm³) 0.1 0.1 0.4 0.5 N 1 N 2 N 側方圧別の欠損の体積(全時間・全角度・全出力をプール)。深さを決めるのは角度だが、削り取られる量そのものを決めるのは側方圧だった(Flemmig 1998・圧電式)

一方、欠損の体積で見ると順番が入れ替わります。側方圧(β 0.49)> 出力(β 0.25)> 角度(β 0.14)。0.5 Nで0.071 mm³、2 Nで0.41 mm³——押し付ける力を4倍にすると、削り取られる量はおよそ6倍になりました。

つまり、角度は「どれだけ深く掘るか」を、側方圧は「どれだけ持っていくか」を決めている。役割が違うので、どちらか一方を守れば安心、とはなりません。

40秒で、どこまで許されるのか

著者らは、ここから臨床の物差しを作ります。SPTを年4回・1歯4根面として、1根面あたり年40秒の器具操作。10年続けて根面の喪失が0.5 mmまでなら臨床的に許容できると仮定すると、年あたりの欠損の深さは50 μmを超えてはいけない——という基準です。

この50 μmを、40秒で超えなかった組み合わせは、次だけでした。

……側方圧・出力を問わずすべて安全 / 45°……0.5 Nか1 Nで低出力、または0.5 Nで中出力 / 90°……0.5 Nで低出力のみ

これ以外のすべての組み合わせで、40秒以内に50 μmを超えました。そして最悪の組み合わせ——2 N・45°・高出力——では、40秒で226.8 μm。さらにこの条件では、40秒で1歯、80秒で2歯の根管が穿孔しています。抜去歯とはいえ、器具が根を貫いた、ということです。

もうひとつ、見落とせない注記があります。ストロークの折り返し地点での最大欠損深さ(90パーセンタイル)は、報告された平均のおよそ1.5〜2倍でした。手を返すところが、いちばん深い。

明日の臨床へ:つまみは3つ、優先順位はこの順

① 角度を0°に寄せる。 チップの側面を根面に沿わせる。0°ならば、側方圧も出力も問わず基準を下回りました。逆に言えば、角度さえ外さなければ、他の2つには余裕が生まれます。
② 圧を抜く。 0.5 Nは、指先で軽く触れる程度の力です。取れないときに押し付けたくなりますが、増えるのは削除量のほうでした。
③ 出力は最後。 影響がいちばん小さいとはいえ、45°や90°と組み合わさると一気に効いてきます。単独では効かないが、悪い角度を増幅する。

そして、チップを返すところで一拍おく。折り返しでいちばん深く掘るなら、そこだけでも意識して力を抜く価値があります。

ここだけ、冷静に補助線 これはin vitroの研究です。抜去歯を固定して、決まった角度・決まった力で当て続けた条件であり、実際の口の中ではポケットの壁にチップが拘束され、術者の手も一定ではありません。50 μmという基準そのものも、「10年で0.5 mmまでは許容」という仮定から逆算した値であって、その仮定が正しいかは別の話です。またこの研究が扱ったのは圧電式1機種の細いチップ1本。同じ著者らは磁歪式でも同じ設計の研究を行っており、機種やチップ形状が変われば数字は動きます。それでも「深さは角度、体積は圧」という役割分担は、明日の手元をかなり具体的に変えてくれます。

今日のひとこと

深さを決めるのは角度、体積を決めるのは側方圧。0°に近づけて軽く当てる——この手元の一手が、10年分の根面を守る。

Flemmig TF, Petersilka GJ, Mehl A, Hickel R, Klaiber B. The effect of working parameters on root substance removal using a piezoelectric ultrasonic scaler in vitro. J Clin Periodontol. 1998;25(2):158-163. PMID: 9495615
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。