ペリオ|Phase2 歯周外科
垂直性の骨欠損を見つけたら、整えたくなります。凹凸をならせば、生理的な形態になって清掃もしやすくなる——長くそう教えられてきました。1976年、Roslingらは50名を5つの術式に振り分け、2週間おきのプロフェッショナルクリーニングで2年間プラークをほぼゼロに保ったまま、その常識を検証しています。
①「整えれば清掃しやすくなる」という前提
骨欠損を見つけたときの反射は、たいてい同じ方向を向いています。クレーターや垂直性の欠損をならして「生理的な歯肉形態」に近づければ、患者さんが磨きやすくなり、結果も良くなる——「form and function go hand in hand」という言葉で語られてきた考え方です。
一方で、粘膜骨膜弁を挙上すること自体が歯槽骨の吸収を招くという報告も1960年代から積み重なっていました。そのためBjörn(1967)は、骨の露出を避けられる歯肉切除のほうが好ましいと述べています。
ここに大きな落とし穴があります。術式を比べた過去の研究の多くは、術後のプラークコントロールがきちんと評価されていませんでした。Nymanら(1975)は、治癒部位にプラークがあるかないかで歯周外科の成否が決まることを示しています——口腔衛生の水準が高い患者では2年間、炎症も付着の喪失も起きなかった一方、プラークが溜まった患者では慢性歯肉炎が再発し、付着を失った。
つまりプラークが制御されていない比較は、術式の優劣を語る材料にならない。ならばプラークをほぼゼロに保った条件で、5つの術式を並べたらどうなるか。それがこの試験です。
②5つの術式に、10人ずつ
対象はヨーテボリ大学歯周病科に紹介された進行歯周病患者50名(26〜66歳・平均46.3歳)。切歯・犬歯・小臼歯と下顎第一大臼歯の近心面が観察部位で、初診時にポケット3mm以上あった部位だけを解析しています。
初期治療(繰り返しの口腔衛生指導を含む)を終えてから、無作為に5群へ10名ずつ割り付けました。
①AFB=根尖側移動弁+骨欠損の除去(骨を削る)
②AF=根尖側移動弁、骨は削らず欠損を掻爬するのみ
③WFB=Widmanフラップ+骨欠損の除去(骨を削る)
④WF=Widmanフラップ、骨は削らず掻爬のみ
⑤G=歯肉切除、骨は削らず掻爬のみ
フラップ4群はいずれも逆斜切開で全層弁を頬舌両側に挙上し、ポケットと肉芽組織を除去、根面を丁寧にデブライドメント・プレーニング。AF群とAFB群は骨頂の高さで縫合し、テフロンフォイルとパックで被覆。WF群とWFB群は骨を完全に覆うように縫合し、パックは使用しません。
そしてこの試験の心臓部——術後、全患者が2週間に1回のプロフェッショナル・トゥースクリーニングに通いました。毎回エリスロシンで染め出し、Bass法とフロス・歯間ブラシ・トゥースピックの指導を個別に行い、ラバーカップとモノフルオロリン酸5%の研磨ペースト、隣接面はデンタルテープとインタープロキシマルチップで清掃。これを2年間です。測定は1人の歯科医師が単独で担当し、骨レベルはX線写真から計測(1枚の測定の標準偏差0.056mm)しています。
③まず、ポケットは全群で浅くなった
初診時の平均ポケット深さは、5群で4.6〜6.0mm。6・12・24か月の再評価では、いずれも3mm未満になりました。初診時から6か月の間に全群で有意に減少し、群間にも群内にも、その後の維持期に有意な変化はありません。
プラーク指数はどの追跡時点でもほぼ0。清掃された歯面の割合は全群で75〜90%。歯肉炎指数2+3(重度の炎症)の頻度は一貫してゼロでした。術後2年間、5群すべてが「臨床的に健康な歯肉」を保っていたということです。
ここまでなら「どの術式でも同じ」で話は終わります。実際、著者らも「至適な口腔衛生が確立できれば、ポケット除去にどの術式を使っても歯肉の健康は達成できる」と明記しています。
④骨は、正直だった
骨縁下欠損の中に新しく得られた骨(bone fill)は、術式で大きく分かれました。最も大きかったのはWF群(Widmanフラップ・骨を削らない)の3.1mm。次いでAF群(根尖側移動弁・骨を削らない)の1.9mm。骨を削ったWFB群は1.1mm、AFB群は0.9mm、歯肉切除群は0.5mmです。
辺縁の骨頂も同じ向きを示しています。2年間の骨頂の吸収は0.3〜2.7mmの幅がありました。骨を切除した2群では、AFB 1.8mm・WFB 1.9mm。切除しなかった2群では、AF 0.8mm・WF 0.3mm。歯肉切除群の水平的な骨吸収は2.7mm——最も大きな損失でした。
そして最も印象的な数字。2年後、歯肉切除群を除くすべての群で、レントゲン上に検出できる骨縁下欠損は1つも残っていませんでした。AFB群の44欠損、AF群の34欠損、WFB群の27欠損、WF群の36欠損——すべて消失。歯肉切除群だけは39欠損のうち9つが残り、そのうち5つはむしろ深くなっています(平均0.7mm根尖側へ移動)。
⑤なぜ「覆う」ことが効いたのか
この研究が直接検証したわけではありませんが、結果の並び方は「創の環境」で説明がつきます。
成績が最も良かったWF群は、骨を完全に被覆するように縫合した群です。逆に成績が最も悪かった歯肉切除群は、骨欠損の周囲の組織を切除して骨を露出させた群。その中間に、骨頂の高さで縫合した根尖側移動弁の群が並びます。
骨が軟組織で覆われている時間が長いほど、欠損内で再生が起こる余地がある——この観察が、のちの組織付着療法やGTR、そして現在の低侵襲な弁のデザインへとつながっていきます。1976年の時点で、方向はすでに示されていたということです。
⑥明日の臨床へ
1つ目。骨整形の適応を、もう一度考える。 この試験では、骨を削った群のほうが再生量が少なく、辺縁骨の喪失も大きい。「形を整えれば結果が良くなる」という前提は、少なくとも骨縁下欠損については支持されていません。
2つ目。弁は骨を覆う位置で閉じる。 最も良い結果は、骨の切除を避け、歯槽骨を完全に被覆したときに得られました。縫合の位置は、術式の名前より結果を左右するかもしれません。
3つ目。歯肉切除で骨欠損は治らない。 唯一、欠損が残り、しかも一部は深くなった群です。骨縁下欠損のある部位に歯肉切除を選ぶ根拠は、この研究からは見つかりません。
4つ目。そしてこの結果は「2週間に1回」の上に立っている。 2年間、2週おきの染め出しとプロフェッショナルクリーニング。この管理があって初めて、術式の違いが観察できる土俵ができました。順序が逆にならないよう注意したいところです。
今日のひとこと
進行した歯周病の患者50名(26〜66歳・平均46.3歳)を、5つの術式に10名ずつ割り付け——①根尖側移動弁+骨切除(AFB)②根尖側移動弁・骨は削らず掻爬のみ(AF)③Widmanフラップ+骨切除(WFB)④Widmanフラップ・骨は削らず(WF)⑤歯肉切除(G)。術後は2週間に1回のプロフェッショナルな歯面清掃と口腔衛生指導を2年間続け、全群でプラーク指数をほぼ0、歯肉炎のない状態を維持しました。結果、ポケットは全群で3mm未満まで減少し、群間に有意差なし。景色が変わるのは骨です。骨縁下欠損の骨再生量は、骨を削らなかったWF群が3.1mm、AF群が1.9mm。一方、骨を削ったWFB群は1.1mm、AFB群は0.9mm、歯肉切除群は0.5mm。辺縁骨頂の吸収も、骨を削った群で大きく(AFB 1.8mm・WFB 1.9mm)、削らなかった群で小さい(AF 0.8mm・WF 0.3mm)。歯肉切除群は2.7mm。2年後、歯肉切除群を除くすべての群で、レントゲン上の骨縁下欠損は消失しました。著者らの結論は「プラークコントロールが徹底されていれば、どの術式でも歯周病は治せる。ただし再生の程度は術式で変わり、最も良い治癒は骨の切除を避け、歯槽骨を完全に被覆したときに得られた」。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


