エンド|単一ファイルシステム F360(4サイズ)と Reciproc(3サイズ)の、ファイルと専用ガッタパーチャポイントの直径とテーパーを、各サイズ20本ずつ顕微鏡の写真で測った実験室研究(Hauptら 2018・Journal of Endodontics)
単一ファイルで形成して、同じサイズ表示の専用ポイントで充填する。そのポイントは、本当にファイルと同じ太さなのか。Hauptらは2018年、F360 と Reciproc の全7サイズについて、ファイルと専用ポイントを各20本ずつ顕微鏡の写真で測りました。測った値の多くは規格の許容範囲に入っていましたが、ファイルとポイントの直径には有意な食い違いがありました。F360 では、有意差が出た所ではいつもファイルの方が太く(ポイントが細い)、Reciproc ではサイズによって太い側が入れ替わり、#25 と #50 では歯冠側(先端から14〜16mm)でポイントの方が太くなりました。器具の寸法を測った研究で、根管の中での適合や治療の成績は調べていません。
①専用ポイントは、ファイルと同じ太さ?
単一ファイルで根管を形成し、同じサイズ表示の専用ガッタパーチャポイントで充填する。手順がシンプルになるのが、このシステムの良さです。では、その専用ポイントは、本当にファイルと同じ太さなのでしょうか。
この問いを実験室で確かめたのが、Hauptらが2018年に Journal of Endodontics に報告した研究です。単一ファイルシステムの F360 と Reciproc の全7サイズについて、ファイルと専用ポイントを各20本ずつ、顕微鏡の写真で測りました。
・測った値の多くは、規格の許容範囲に入っていた
・それでも、ファイルとポイントの直径には有意な食い違いがあった
・F360 では、有意差が出た所ではいつもファイルの方が太かった(ポイントが細い)
・Reciproc ではサイズによって太い側が入れ替わり、#25 と #50 では歯冠側(先端から14〜16mm)でポイントの方が太かった
・著者らは「単一ファイルで形成した後、充填の前にポイントの適合を確かめるべき」と提言している。ただし、器具の寸法を測った研究で、根管の中での適合や治療の成績は調べていない
②なぜこの研究が必要だったか
ファイルとポイントの寸法には、国際規格(ISO)や米国の規格(ANSI/ADA)があります。著者らによると、規格が認める直径の誤差は、ファイルで ±0.02mm(#60まで)、ポイントではサイズによって ±0.05〜0.07mm です。つまり、両方が規格どおりに作られていても、ファイルとポイントの太さがずれる余地が残ります。
F360 と Reciproc には、メーカーが専用のポイントを用意しており、メーカーはファイルとポイントの直径とテーパーが一致するとしています。一方で、これまでの研究では、ファイルやポイントの寸法がブランドによってばらつくことが報告されてきました。
ところが、単一ファイルシステムの全サイズについて、ファイルとポイントの寸法を比べた研究は無かった、と著者らは書いています。ここまでは、原著の序論と、著者らが引いた規格・文献にもとづく整理です。
③何をどう測ったか
・対象:F360(#25・#35・#45・#55、テーパー.04で一定)と Reciproc(#25・#40・#50、テーパーが途中で変わる)
・本数:各サイズについて、ファイル20本と専用ポイント20本
・測り方:試料を水平に固定し、光学顕微鏡32倍で写真を撮って、画像ソフトで直径を測った。測定は1人が行った
・測った位置:F360 は先端から1mm・3mm・16mm(D1・D3・D16)。Reciproc はテーパーが途中で変わるので、先端から1mmごとに16か所の直径を測り、テーパーも1mmごとに計算した
規格では直径の基準点は先端(D0)ですが、D0 は確実に測れなかったため、D1 で代わりに測ったと書かれています。
比べたのは2つです。1つはファイルとポイントが一致しているか(精密さ)で、同じサイズのファイルとポイントの直径・テーパーを統計で比べました(P<0.05)。もう1つは表示の寸法とどれだけずれているか(正確さ)で、測った値から表示の値を引いて調べました。
④結果1:ファイルとポイントは一致していたか
まず直径です。原著の表1から、有意差が出た位置をまとめたのが図1です。
F360 は、4サイズの D1・D3・D16 の計12か所のうち9か所で有意差があり、その9か所すべてでファイルの方が太かった。ポイントの方が有意に太かった所はありませんでした(9か所は表1から筆者が数えた)。
Reciproc は、サイズで向きが変わりました。#40 は D2〜D11 の10か所(表1から筆者が数えた)でファイルの方が太く(ポイントが細い)、#25 と #50 は、歯冠側の D14〜D16 でポイントの方が太くなりました。#50 は先端の D1 でもポイントの方が太く、#25 は D3 でファイルの方が太い、という結果です。
テーパーでも食い違いがありました。原著の表2では、F360 の #45 と #55 はファイルの方がテーパーが小さく、#25 はファイルの方が大きい、という有意差でした。Reciproc はサイズと位置によって、ファイルの方が大きい所と小さい所が混在していました。
⑤結果2:表示の寸法と合っていたか
次に、表示の寸法との差です。許容範囲に入った割合を、原著の本文からまとめたのが図2です。
F360 のファイルは、表示に最も近かったのが D3 で、81%が許容範囲(表示±20µm)に入りました。D1 は70%、D16 は50%に満たず、D16 のばらつきが最も大きかった。D16 の平均は、#25 で 918.2µm(表示890µm)、#55 で 1149.5µm(表示1190µm)でした。ポイントは99%が許容範囲に入り、表示よりやや細い傾向でした。ただし、この許容範囲を原著の本文は「表示±70µm」と書いていますが、図1Aでは #25 のポイントの許容範囲の線が±50µm(#35・#45・#55 は±70µm)で、本文と図が食い違っています。99%は本文の値をそのまま載せました。
Reciproc のファイルは D3 で表示に近く(91%が許容範囲内)、D16 で許容範囲に入ったのは21.7%でした。ポイントは D1 で100%が許容範囲内でしたが、D16 では63.3%に下がり、#25 のポイントは D16 で20本すべてが規格を外れていました。ただし、ファイルの許容範囲を原著の本文は「表示±20µm」と書いていますが、図1Bではファイルの許容範囲の線が約±25µmの位置にあり、本文と図が一致しません。ポイントの許容範囲は、本文に数値が書かれておらず、図1Bの線は #25 で約±50µm、#40・#50 で上が約+80µm、下が約−72〜−75µmの位置です(図の目盛りから筆者が読んだ値)。割合はどれも本文の値をそのまま載せ、計算し直してはいません。
テーパーは、F360 はファイル・ポイントとも表示にごく近く、Reciproc もほぼすべてが許容範囲内でした。
⑥結果の読み方
著者らの結論は「標準化が求められているにもかかわらず、単一ファイルシステムのファイルと専用ポイントの直径・テーパーには、ばらつきがあると考えておくべき」というものです。
そのうえで著者らは、食い違いが臨床で何を起こしうるかを推測しています。ポイントの方が細い場合(著者らは F360 について述べ、Reciproc でもポイントが細い所があったとしています)は、作業長までは入っても、根管壁とポイントの間の封鎖が損なわれ、隙間がシーラーで埋まることになる。細くテーパーの小さいポイントでは、根尖からの押し出しも起こりうる。反対に、歯冠側でポイントの方が太い場合(Reciproc #25・#50)は、根管口の近くで先に当たって、根尖側の適合が不十分になりうる。
ただし著者らは、別の研究のCBCTによる歯根の長さ(切歯・犬歯・小臼歯で平均11〜15.8mm)を引いて、先端から14〜16mmの差が臨床で問題になるのは、犬歯など歯根の長い歯に限られうるとも書いています。いずれも、この研究で根管に入れて確かめた結果ではなく、著者らの推測です。
⑦明日の臨床へ
著者らの提言は、はっきりしています。単一ファイルで形成した後、充填の前に、ポイントの適合を確かめること。そして、根管の解剖の知識、シーラーの使い方、加圧の手技が、メーカーの誤差を補うと述べています。
筆者の読みとしては、「同じサイズ表示の専用ポイントだから、そのまま入れれば合う」とは考えないほうがよい、ということです。試適で作業長まで入るかだけでなく、入りすぎていないか、途中で当たっていないかも見て、合わなければ別のポイントに替える、という当たり前の手順の裏付けになる研究です。どのシステムのどのサイズで、どちらにずれたかは、この研究で測った2システムの結果で、ほかのシステムや別の製造時期の器具に、そのまま当てはまるとは限りません。
(2)対象は2つのシステムで、各サイズ20本、測定は1人でした。
(3)規格の基準点(先端 D0)は測れず、D1 で代わりに測っています。Reciproc の表示値との差は、原著では D1・D3・D16 の直径と D3 のテーパーに絞って示されています。
(4)器具は VDW 社と Komet Dental 社から寄贈されました(著者らは利益相反を否定)。
寸法のばらつきが根管の中でどれだけ問題になるかは、著者らもマイクロCTでの研究が必要としています。「専用だから大丈夫」を一度立ち止まって確かめる、そのきっかけになる論文です。
今日のひとこと
専用ポイントでも、ファイルと同じ寸法とは限らない。この実験室研究では、測った値の多くは規格の範囲内でしたが、ファイルとポイントの直径には有意な食い違いがあり、F360 では有意差が出た所でポイントの方が細く、Reciproc ではサイズによって太い側が入れ替わりました。著者らは「単一ファイルで形成した後、充填の前にポイントの適合を確かめるべき」と提言しています。ただし、これは器具そのものを顕微鏡で測った研究で、根管の中での適合や治療の成績を比べたものではありません。「同じサイズ表示だから合うはず」を前提にせず、マスターポイントの試適を省かない理由として読みたい1本です。


