天然歯とインプラント、どちらが揺れるか
プロービングに誤差があることは、40年前から知られています。では器具も教育も整った今、経験を積んだ者どうしなら数字は揃うのか。8人の熟練検者が同じ部位を測り直した2023年の研究は、正直な数字を返してきました。
①「前回は3mmでしたよ」と言われて
担当が替わったメインテナンスで、前回の記録と今日の数字が1mm違う。悪くなったのか、測り方が違うのか。判断がつかないまま、とりあえず「経過を見ましょう」と伝える——覚えのある場面ではないでしょうか。
プロービングに誤差があることは、1984年のBaderstenらの仕事以来よく知られています。では、経験を積んだ者どうしなら揃うのか。
②それまで:誤差は「±1mm以内に9割」とされてきた
古典的な数字では、反復測定の約90%が±1mm以内に収まる、とされます。裏を返せば1割は1mm以上ずれる。しかもこの水準は、同じ人が測っても別の人が測っても大きく変わりませんでした。
ただ、これは40年前のデータです。プローブの精度も、教育も、当時とは違う。加えて今はインプラント周囲という新しい測定対象があります。上部構造が張り出し、粘膜の性状も天然歯の歯肉とは違う。ここでの再現性は、まだよく分かっていませんでした。
③今回の一手:熟練者8人が、同じ部位を二度ずつ
患者5名が持つインプラント21本と、歯周的に健康な天然歯を対象に、経験を積んだ8人の検者が同じ部位を二度ずつ測定しました。
評価したのは二つ。同じ人が二度測ったときの一致(検者内)と、基準となる検者と比べたときの一致(検者間)です。指標には級内相関係数を使い、1に近いほどよく揃っていることを示します。
④結果:検者どうしで、下は0.197まで落ちた
同じ人が二度測る分には、天然歯で0.759〜0.863とまずまず揃います。ところが検者どうしを比べると、天然歯で0.197〜0.791。組み合わせによっては、ほとんど一致しないペアが出ました。
インプラントでは検者内が0.712〜0.841、検者間が0.576〜0.794。総じて天然歯のほうが再現性は高い傾向でした。
⑤なぜインプラント周囲は揺れるのか
理由は構造にあります。上部構造の張り出しでプローブを入れる角度が制限され、まっすぐ挿入できない。さらにインプラント周囲の粘膜は、天然歯の歯肉のような線維の走行を持ちません。プローブがどこで止まるかを決める抵抗そのものが違うのです。
つまり、天然歯で議論してきた「先端は付着の底で止まるのか」という問題が、より条件の悪い場所で起きている、と読むことができます。
⑥明日の臨床へ:比べるなら、まず自分の前回と
今日のひとこと
同じ人が二度測る分にはよく揃う。ところが検者どうしを比べると、組み合わせによってはほとんど一致しない。比べるなら、まず自分の前回と。


