1問1答 論文 歯周病

ベテランが測れば、数字は揃うのか——熟練者8人の答え合わせ

歯周病の診査

天然歯とインプラント、どちらが揺れるか

プロービングに誤差があることは、40年前から知られています。では器具も教育も整った今、経験を積んだ者どうしなら数字は揃うのか。8人の熟練検者が同じ部位を測り直した2023年の研究は、正直な数字を返してきました。

論文
Reliability of probing depth assessments at healthy implant sites and natural teeth
著者
Ramanauskaite A, Obreja K, Schwarz F, ほか
掲載
Clin Oral Investig. 2023;27(6):2533-2545
種類
反復測定研究(患者5名・インプラント21本・熟練検者8名)
PMID
36462039

「前回は3mmでしたよ」と言われて

担当が替わったメインテナンスで、前回の記録と今日の数字が1mm違う。悪くなったのか、測り方が違うのか。判断がつかないまま、とりあえず「経過を見ましょう」と伝える——覚えのある場面ではないでしょうか。

プロービングに誤差があることは、1984年のBaderstenらの仕事以来よく知られています。では、経験を積んだ者どうしなら揃うのか。

それまで:誤差は「±1mm以内に9割」とされてきた

古典的な数字では、反復測定の約90%が±1mm以内に収まる、とされます。裏を返せば1割は1mm以上ずれる。しかもこの水準は、同じ人が測っても別の人が測っても大きく変わりませんでした。

ただ、これは40年前のデータです。プローブの精度も、教育も、当時とは違う。加えて今はインプラント周囲という新しい測定対象があります。上部構造が張り出し、粘膜の性状も天然歯の歯肉とは違う。ここでの再現性は、まだよく分かっていませんでした。

今回の一手:熟練者8人が、同じ部位を二度ずつ

患者5名が持つインプラント21本と、歯周的に健康な天然歯を対象に、経験を積んだ8人の検者が同じ部位を二度ずつ測定しました。

評価したのは二つ。同じ人が二度測ったときの一致(検者内)と、基準となる検者と比べたときの一致(検者間)です。指標には級内相関係数を使い、1に近いほどよく揃っていることを示します。

結果:検者どうしで、下は0.197まで落ちた

0 0.3 0.7 1 プロービング深さの一致(級内相関係数・最も低かった組み合わせ) 0.8 0.2 0.7 0.6 天然歯・同じ人が二度 天然歯・検者どうし インプラント・同じ人が二度 インプラント・検者どうし 熟練者8人でも、検者どうしの一致は組み合わせによって大きく割れた(Ramanauskaite 2023・各区分の下限値)

同じ人が二度測る分には、天然歯で0.759〜0.863とまずまず揃います。ところが検者どうしを比べると、天然歯で0.197〜0.791。組み合わせによっては、ほとんど一致しないペアが出ました。

インプラントでは検者内が0.712〜0.841、検者間が0.576〜0.794。総じて天然歯のほうが再現性は高い傾向でした。

つまり: 熟練しても「自分の中では安定する」だけで、「他人と揃う」保証にはならない。

なぜインプラント周囲は揺れるのか

理由は構造にあります。上部構造の張り出しでプローブを入れる角度が制限され、まっすぐ挿入できない。さらにインプラント周囲の粘膜は、天然歯の歯肉のような線維の走行を持ちません。プローブがどこで止まるかを決める抵抗そのものが違うのです。

つまり、天然歯で議論してきた「先端は付着の底で止まるのか」という問題が、より条件の悪い場所で起きている、と読むことができます。

明日の臨床へ:比べるなら、まず自分の前回と

① 前回と1mm違ったとき、まず「誰が測ったか」を見る。 前回が別の人の記録なら、動いたのは病気ではなく検者かもしれません。
② 院内で測り方を揃える努力はする。ただし完全には揃わない前提で経過を読む。 目盛りの読み方(近い方か、切り上げか)、プローブのメーカー、圧——揃えられるものは揃える。それでも残る揺れは、時間軸で吸収する。
③ インプラント周囲は、より慎重に。 数字の変化だけで判断せず、出血・排膿・エックス線と合わせて読む。
ここだけ、冷静に補助線 患者5名・インプラント21本という小さな規模の研究です。また対象は「健康な」部位で、深いポケットや炎症のある部位での再現性はまた別の話になります。基準となる検者を1人決めて比較する設計なので、その検者の癖が結果に影響する余地もあります。それでも、熟練者を8人集めてなお検者間が0.2台まで落ちる組み合わせが出た、という事実は重い。数字を疑うためではなく、数字の使い方を決めるために知っておきたい一本です。

今日のひとこと

同じ人が二度測る分にはよく揃う。ところが検者どうしを比べると、組み合わせによってはほとんど一致しない。比べるなら、まず自分の前回と。

Ramanauskaite A, Obreja K, Schwarz F, et al. Reliability of probing depth assessments at healthy implant sites and natural teeth. Clin Oral Investig. 2023;27(6):2533-2545. PMID: 36462039
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。