1問1答 論文 歯周病

健康・歯肉炎・歯周炎——実際は、何を見て分けているのか

歯周病の診断

分類が新しくなっても、手元の仕事は変わらない

2018年に分類が変わり、ステージとグレードで語るようになりました。では、その二軸に入れる数字は何から作られているのか。2024年の総説が並べたのは、驚くほど地味な4つの診査でした。

論文
Conventional diagnostic criteria for periodontal diseases (plaque-induced gingivitis and periodontitis)
著者
Heitz-Mayfield LJA
掲載
Periodontol 2000. 2024;95(1):10-19
種類
ナラティブレビュー(従来型の診断基準の整理)
PMID
38831568

「ステージⅢのグレードB」と書く、その手前で

新分類が定着して、カルテには二軸の診断名が並ぶようになりました。研修会でもステージとグレードの付け方を学びます。

ところで——その二軸に入れる数字は、どこから来ているのでしょうか。分類の話に入る前の、もっと手前の作業です。

それまで:診査の中身は「当たり前」として飛ばされてきた

分類が変わるたびに、僕たちは新しい枠組みの使い方を学びます。一方で、その枠に入れる情報をどう集めるかは「基本」として扱われ、あらためて検討される機会が多くありません。

けれど、第1章で見たようにプロービングには誤差があり、エックス線には時間の遅れがある。入力が揺れれば、どんなに精緻な分類でも出力は揺れます。

今回の一手:診断を作っているものを、並べ直す

この総説は、日常臨床で歯周の健康・歯肉炎・歯周炎を見分けるために使われている従来型の診断基準を整理したものです。新しい技術の話ではなく、いま僕たちが実際に使っている手順の棚卸しにあたります。

結果:4つだけだった

健康・歯肉炎・歯周炎を分けている4つの診査① 視診歯周組織の色と性状を見る② プラークの評価付着の量と分布を確かめる③ プロービングPPD・CAL・BOP・分岐部の4情報④ 画像診断骨破壊の程度・広がり・欠損の形態限界を承知で使い続ける現在の標準。精度を決めるのは器具ではなく訓練された人(Heitz-Mayfield 2024)

並んだのは、歯周組織の色と性状を目で見ること。プラークの付着を評価すること。プロービングで測ること。そして画像診断。この四つを集めて診断名を付け、治療計画に進む。

中でもプローブは必須の診断器具だと位置づけられます。ポケットの深さ、臨床的アタッチメントレベル、プロービング時の出血、そして複根歯の分岐部の状態——一本の器具が四つの情報を運んでいる。

歯周炎の徴候が見つかったときに画像診断が加わり、骨破壊の程度と広がり、欠損の形態が評価される。順序としても、まずプローブが先です。

総説がはっきり書いていること

この総説の誠実なところは、これらの指標に限界があると認めたうえで、なお現在の standard of care であると明言している点です。より良い方法が確立するまでの暫定策ではなく、いまの標準として扱う。

そしてもう一つ、実務的な指摘があります。評価し、記録し、解釈するには訓練が要る。器具ではなく人が精度を決める、という当たり前のことを、あらためて書いています。

つまり: 分類が新しくなっても、手元の仕事は変わっていない。変わったのは、集めた情報の並べ方だけ。

明日の臨床へ:4つのうち、どれが弱いか

自院の診査を、この四つで点検してみると弱点が見えます。

① 視診は言語化されているか。 「発赤」「腫脹」「ブヨブヨしている」——記録に残る言葉になっているか。写真は撮れているか。
② プラークの評価は毎回か。 染め出しをしない日が続くと、この一項目が抜け落ちます。
③ プロービングは揃っているか。 目盛りの読み方、圧、部位数。院内で統一されているか。
④ 画像は比較できる形で残っているか。 規格化されていない一枚は、次に比べる相手になりません。
ここだけ、冷静に補助線 ナラティブレビューであり、新しいデータを出した研究ではありません。また「従来型」を扱う総説なので、バイオマーカーや新しい画像技術の可能性については踏み込んでいません。それでも、分類の議論が先行しがちな今、入力側を点検し直す教材として使いやすい一本です。器具ではなく人が精度を決める——スタッフ教育の軸をどこに置くかを考えるときに、静かに効いてきます。

今日のひとこと

診断を作るのは、視診・プラーク・プロービング・画像の四つ。限界を承知で使い続ける現在の標準であり、精度を決めるのは器具ではなく訓練された人。

Heitz-Mayfield LJA. Conventional diagnostic criteria for periodontal diseases (plaque-induced gingivitis and periodontitis). Periodontol 2000. 2024;95(1):10-19. PMID: 38831568
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。