新しい歯周炎分類の使い方に関する明確化(Sanz 2020・J Periodontol ゲストエディトリアル)
ステージとグレードの分類が広まるにつれ、現場から2つの質問が上がりました。「限局型(30%未満)は、どの歯を数えた割合なのか」「明らかに保存不可能な歯が口の中に残っているとき、それは喪失歯として数えるのか」。分類の枠組みを作った当人たちが、短いエディトリアルで答えています。どちらも、ステージがIIIかIVかを分ける判断に直結します。
①「限局型か、広汎型か」で手が止まったことはありませんか
2017年の新分類が広まって、カルテにはステージとグレードが並ぶようになりました。ところが記入しようとすると、毎回ひっかかる場所があります。
「限局型(30%未満)」の30%は、どの歯を数えた割合なのか。
アタッチメントロスが少しでもある歯を全部数えるのか。それとも、この患者をステージIIIだと判断させた「あの重症の歯」だけを数えるのか。どちらを数えるかひとつで、限局型が広汎型に変わります。
もうひとつ、同じくらい迷う場面があります。明らかに保存できない歯が、まだ口の中に残っているとき。歯周炎による喪失歯として数えるのか、それとも「まだあるから0本」なのか。ステージIIIとIVを分けるのは喪失歯の数ですから、これも判定を左右します。
この2つに、分類の枠組みを作った当人たちが短い文章で答えたのが、今回のエディトリアルです。
②これは研究ではなく「使い方の明確化」
著者は Sanz、Papapanou、Tonetti、Greenwell、Kornman——2017年世界ワークショップのワークグループ2でステージ・グレード分類をまとめた面々です。
だからこの記事に統計はありません。読むべきは、「どちらの解釈が正しいと決めたか」の1点です。
③答え1:範囲が数えるのは「ステージを決めた重症度の歯」
著者らは、コンセンサス論文(Papapanou・Sanz ら 2018)に書かれた基準をそのまま支持しました。原文の指定はこうです——「各ステージについて、範囲を限局型(歯の30%未満が該当)、広汎型、または大臼歯・切歯パターンとして記述する」。
ここで決定的なのは順番です。まずステージを決める。そのあとで範囲を記述する。範囲は、症例全体の重症度と複雑さをとらえた「ステージ」に対して付けられる記述である、と明言されています。
したがって、ステージを決定したあとで数えるのは「そのステージを決めた重症度レベルにある歯」の割合になります。著者らはその意味も添えています——この数え方だと、割合は重度に侵された歯の割合を表し、それはすなわちより複雑な治療を要する可能性のある歯の割合として、臨床家に意味のある情報を伝える。
逆に「アタッチメントロスが少しでもある歯」を全部数えてしまうと、軽度の歯まで分子に入るので割合は大きく出ます。この数え方では、割合が重症度と結びつかなくなります(もっとも、著者らが書いているのは支持した側の利点までで、もう一方の解釈の弊害を明示しているわけではありません)。
④答え2:保存不可能な歯は、抜く前から喪失歯に数える
2つめの答えは、「含める」でした。明らかに予後が絶望的な歯は、歯周炎による喪失歯の数に含めて、ステージIIIとIVを区別する——著者らはこの立場を支持しています。
そのうえで、「何をもって保存不可能とするか」を適切に定義することが重要だと釘を刺し、定義を示しました。
明らかに保存不可能な歯(irrational to treat=治療することが不合理な歯)とは、アタッチメントロスが全周にわたって根尖に迫っており、かつ高度の動揺(動揺度III)を伴っているもの。
この2条件は、どちらも診療室で確かめられる所見です(どう確認するかまでは原著に書かれていません)。曖昧な「予後不良感」ではなく、2つの所見の同時存在で線を引いた点が実務的です。
⑤明日の臨床へ
診断を書く手順を、この順番に固定します。
1)まずステージを決める。判断材料は2018年のステージ・グレード分類の枠組み(Tonetti ら 2018)にある——アタッチメントロスの最大値、骨吸収、喪失歯数、そして複雑さの要因。今回のエディトリアル自体はこれらを列挙していないので、基準は原典で確認してください。
2)そのとき、明らかに保存不可能な歯があれば喪失歯に数える。全周の付着喪失が根尖に迫り、かつ動揺度III。この2つが揃っていれば、まだ抜いていなくても1本と数える。ステージIIIとIVの境目はここで動きます。
3)ステージが決まってから、範囲を記述する。そのステージを決めた重症度レベルにある歯が、全体の30%未満なら限局型。そうでなければ広汎型か、大臼歯と切歯に集中していれば大臼歯・切歯パターン(原著が数値で定義しているのは限局型の30%未満だけで、広汎型の閾値は示されていません)。
この順番で書くと、「ステージIII・限局型」という記述が、そのまま治療計画の重さを表すようになります。重度の歯が3割未満に留まっているのか、口全体に広がっているのか——同じステージIIIでも、必要な複雑さがまるで違うことが一目で伝わる。分類が診断名ではなく、計画のための道具になります。
⑥ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
「範囲」が数えるのは、アタッチメントロスのある歯ではなく、そのステージを決めた重症度に達している歯である。そして明らかに保存不可能な歯は、まだ口の中にあっても喪失歯として数える——アタッチメントロスが全周にわたって根尖に迫り、かつ動揺度IIIであるものを指す。この2つで、ステージIIIとIVの線引きが変わる。


