ペリオ|⑥Phase4 メインテナンス
メインテナンスの予約枠を何分で組むか。これは、どの医院でも一度は悩む問題です。1981年、SchallhornとSniderは、歯周専門医院からランダムに選んだ100名について、メインテナンス来院の中身を工程ごとにストップウォッチで測りました。合計は52.61分。1時間枠がちょうど収まる数字です。
①「メインテナンスは何分枠か」に、数字で答える
メインテナンスの予約を何分で組むか。30分か、45分か、1時間か。医院によってバラバラで、根拠を聞かれると答えに詰まります。
1981年、コロラドで歯周専門医院を開いていたSchallhornと歯科衛生士のSniderは、この問いに実測で答えました。自院からランダムに選んだ患者100名について、メインテナンス来院を工程ごとに分解し、それぞれ何分かかっているかを測っています。合計は52.61分。
著者らは「これは典型的な歯周患者に1時間の予約枠を組むことに適しており、患者間の準備時間も十分に確保できる」と書いています。ただし、と続きます。「残存歯数、溝の深さ、歯石と着色の量、その他の要因によって必要な時間は変わる。したがって、適切な治療を行うために、短くも長くも個別化されるべきである」。
②メインテナンスは、4種類ある
この論文の骨格は、メインテナンスを一括りにしない点にあります。著者らはPMT(periodontal maintenance therapy)を4つに分けました。
- 予防的PMT:歯周疾患のない人に、発症そのものを防ぐ目的で行う
- 試行的PMT:境界的な歯周状態を一定期間維持しながら、付着歯肉の不足・歯肉の形態的欠損・ポケット・根分岐部病変といった問題に対して補正治療が必要かどうかを、さらに見極める。その間、口腔内の他の部位の歯周の健康は維持しておく
- 妥協的PMT:補正治療が適応であるにもかかわらず、経済的理由・不十分な口腔衛生・その他の事情で実施できない場合、あるいは補正治療後も難治性の欠損が残る場合に、進行を遅らせる目的で行う
- 治療後PMT:治療によって得られた歯周の健康を維持し、再発を防ぐ。口腔衛生指導・スケーリングといった非外科的手段から、広範な多段階の外科手技まで、行われた治療の内容にかかわらず、治療後に再評価して疾患が停止し歯周組織が健康であることを確認する
この4分類のうち、著者らが特に釘を刺しているのが妥協的PMTです。「妥協的歯周メインテナンス療法で実際に行われる治療は、他のメインテナンス法と同等かそれ以上に広範であるにもかかわらず、結果は予測できない」。「このカテゴリーに割り当てられた理由が変わって適切な補正治療へ移行できない限り、特定の歯あるいは歯列全体で疾患は進行し、最終的に喪失に至ると予想される」。そして「将来の管理上の問題を回避するため、患者が妥協的アプローチの意味するところを完全に理解していることが重要である」と続けます。
「とりあえずクリーニングで様子を見ましょう」という言い方が、どのカテゴリーに当たるのか。それを患者と共有できているか、という問いです。
③52.61分の中身
実測の内訳は次のとおりです(患者100名の平均。予防的カテゴリーを除く全カテゴリーを対象とし、全員が上下顎に複数歯を有していた)。
- 挨拶と健康歴:8.50分。カルテとエックス線を確認したうえで、会話を通じて既往を更新する。治療に影響する変化があれば歯科医師に相談する
- 歯科スクリーニング:1.12分。顔面・口唇・頸部の視診と、口腔粘膜・舌・口底・咽頭・扁桃部・口蓋の口腔内診査。癌やその他の異常の徴候を簡潔に、しかし十分に確認する
- 歯周組織の評価:3.47分(色調と形態、滲出、ポケット・歯肉溝、退縮で3.25分+フレミタス0.22分)
- プラーク指数:3.04分(アシスタントがいない場合は5分)
- 口腔衛生の確認:4.20分
- 研磨とフロス:10.90分
- 超音波によるスケーリング・ルートプレーニング:6.83分(アシスタント併用)
- 手用器具によるスケーリング・ルートプレーニングと器具の研ぎ:10.05分
- う蝕と不適合修復物の確認:1分
- 化学的療法:1.50分
- フッ化物洗口:1分
- 終了と次回予約:1分
この配分から、いくつかの実務的な指示が読み取れます。
第一に、研磨とフロスは縁下の器具操作より前に行う。「深い歯肉溝やポケットがある患者では、縁下のスケーリングやルートプレーニングを行う前に研磨とフロスを済ませておくのが望ましい」。理由は「器具操作した歯肉溝に研磨剤が埋め込まれ、組織の治癒を妨げる可能性を最小化するため」。また「残った研磨剤を除去する前にフロスをかけておくと、隣接面の着色除去を助ける」。順番に意味があります。
第二に、超音波と手用は役割が違う。「超音波は粗大な歯石と着色を効果的に除去し、縁下のデブリを洗い流す。ただしセラミッククラウンや保持の乏しい修復物のマージンに当てる際には注意を要する」。一方で「根面からエンドトキシンを除去する点では、手用によるルートプレーニングが超音波より優れていることが研究で示されている。深い溝の適切なデブライドメントには、綿密な手用器具操作が必要である」。
第三に、器具は患者を座らせる前に研ぐ。「滅菌済みのストーンを各トレイに用意し、患者が座る前、あるいは手用器具操作を始める前にキュレットを研いでおくのが適切である」。「細かいスケーリングとルートプレーニングは刃を急速に鈍らせるため、処置中の研ぎもある程度は避けられない」。
フッ化物洗口には2つの理由が挙げられています。「歯面を酸に溶けにくくしてう蝕コントロールを高めること」と「露出根面の知覚過敏を和らげること」。
④3か月という間隔の、置きどころ
著者らは「予防的メインテナンスのカテゴリーでプラークコントロールが優れ歯石が少ない患者には、半年・年1回、あるいはそれ以上の間隔でもよいかもしれない」としたうえで、「複数の研究が、歯周疾患を持っていた患者はおよそ3か月ごとに診るべきだと示している」と書いています。
その根拠として挙げられているのが、歯周外科の後に半年ごとのリコール・プロフィラキシスを受けた患者群を、短間隔リコールの患者群と比べた研究です。前者では2年間にわたって歯周炎が加速的に再発しました。「この比較研究は、歯周患者に対する恣意的な”年2回のクリーニング”の誤りを明確に示した」。
そのうえで「一部の患者は3か月ごとのメインテナンスを必要としないかもしれないが、他の患者、とくに妥協的プログラムにある患者は、より短い間隔を必要とするかもしれない」。「原則として、3か月のプログラムを患者個別のニーズに合わせて修正し、4週間から6か月の幅で変えてよい」。
調整の仕方も具体的です。「患者の状態が安定し、炎症がなく、歯石の沈着が少なく、プラークコントロールが優れていれば、頭打ちに達するまで間隔を延ばしてよい。悪化の所見があれば、その患者にとって最適なリコール時期が決まるまで間隔を短くする」。
間隔を決める要因として挙がっているのは、歯周問題の性質と広がり、行われた治療の種類、メインテナンスのカテゴリー、治癒の程度、プラークコントロールの効果と頻度と過剰(歯の摩耗や組織の刺激)、歯石形成の速度、患者の全身的な素因、プロービング時の出血や滲出、そして位相差顕微鏡による病原性縁下プラークの評価です。
⑤明日の臨床へ
第一に、枠を実測に合わせる。52.61分という数字は、1時間枠の妥当性を裏づけます。逆に言えば、30分枠でこの内容を全部やるのは物理的に無理だということでもあります。何を削っているのかを自覚したうえで枠を決めたいところです。
第二に、順番を守る。研磨とフロス → 縁下のスケーリング・ルートプレーニング。器具の研ぎは着席前に。プラーク指数の記録は、患者が「いつもの清掃を済ませてから」来院した状態で取る(「患者には、その効果を正確に評価するため、来院直前に普段どおりの清掃を完了しておくよう依頼する」)。どれも時間を増やさずに質を上げる工夫です。
第三に、この来院がどのカテゴリーかを、患者と共有する。治療後PMTなのか、それとも妥協的PMTなのか。後者であれば、結果は予測できず、疾患は進行しうる——そのことを患者が理解しているかどうかで、あとの信頼関係が変わります。
今日のひとこと
著者らは歯周メインテナンス療法(PMT)を4つに分類した。予防的PMT(歯周疾患のない人の発症予防)、試行的PMT(境界的な状態を経過観察して補正治療の要否を見極める)、妥協的PMT(補正治療が適応でも経済・口腔衛生・その他の理由で実施できない場合に進行を遅らせる)、治療後PMT(治療で得た健康を維持し再発を防ぐ)。妥協的PMTについては「実際に行う治療は他のメインテナンス法と同等かそれ以上に広範であるにもかかわらず、結果は予測できない」と明記されている。患者100名の実測による1回の来院時間は合計52.61分で、内訳は挨拶・健康歴8.50分、歯科スクリーニング1.12分、歯周組織の評価3.47分、プラーク指数3.04分(アシスタントなしでは5分)、口腔衛生の確認4.20分、研磨とフロス10.90分、超音波によるSRP 6.83分、手用器具によるSRPと器具の研ぎ10.05分、う蝕と不適合修復物の確認1分、化学的療法1.50分、フッ化物洗口1分、終了と次回予約1分。研磨とフロスは縁下のスケーリングやルートプレーニングの前に行う(研磨剤を器具操作した溝に埋め込み治癒を妨げるのを避けるため)。間隔は原則3か月を基本に、患者ごとに4週間から6か月まで調整する。安定していれば頭打ちになるまで延ばし、悪化の兆候があれば短くする。著者らは、歯周外科後に半年ごとのリコールを受けた患者群で2年間にわたり歯周炎が加速的に再発したという比較研究を引き、「年2回という恣意的なクリーニングの誤り」を指摘している。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


