1問1答 論文 歯周病

再生療法の成否を分けるのは、材料ではなかった

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|ペリオ論文100選

骨縁下欠損の再生療法を前に、まず考えるのは「何を使うか」でしょう。GTRか、骨移植材か、エムドゲインか、rhPDGF-BBか。2015年、AAPの再生ワークショップから出たこのシステマティックレビューは、1,414件の文献を絞り込んだうえで、材料の比較とは別のところに結論の重心を置きました。臨床成績をいちばん動かしていたのは、材料ではなかったのです。

論文
Periodontal Regeneration – Intrabony Defects: A Systematic Review From the AAP Regeneration Workshop
著者
Kao RT, Nares S, Reynolds MA
掲載
Journal of Periodontology 2015;86(Suppl.):S77-S104
種類
システマティックレビュー(米国歯周病学会・再生ワークショップ/PRISMA準拠/PubMedとCochraneを検索し、1,414件から124件を解析に採用/ヒトでの組織学的な再生の証拠がある臨床利用可能な再生法に限定/文献の乏しい主題では非無作為化の観察研究と動物実験も参照/SORT(Strength of Recommendation Taxonomy)で推奨の強さを格付け/2002年のコンセンサスレポートの更新版)
PMID
25216204

「何を使うか」の前に

骨縁下欠損の再生療法を前に、まず考えるのは材料の選択でしょう。GTRか、骨移植材か、エムドゲイン(EMD)か、rhPDGF-BBか。学会でもメーカーの説明でも、話題の中心はいつもそこです。

2015年、AAPの再生ワークショップから出たこのシステマティックレビューは、1,414件の文献を絞り込み、124件を解析したうえで、4つの結論を出しました。そのうちの1つが、材料の議論とは別のところを指しています。

先に結論: バイオロジクス(EMD、rhPDGF-BB+β-TCP)はDFDBAやGTRと概ね同等で、フラップ単独より優れるただし臨床アウトカムは、歯や欠損の特性よりも、患者の行動と外科的アプローチにより顕著に影響されるように見えるそして重度に障害された歯でも、改善は10年まで維持されうる

1,414件から、124件

0 500 1000 1500 文献の件数 1414 680 269 124 データベース検索 抄録の査読 全文の解析 解析に採用 採用124件のうち、58研究が患者・歯・術野の要因、45の対照研究がバイオロジクスのアウトカムを扱う
PubMedとCochraneから絞り込み、124件が解析に採用された

採用の基準がはっきりしています。ヒトでの組織学的な「原理の証明(proof of principle)」がある、臨床で利用可能な再生法に限定。対象は自家骨・DFDBA・GTR・EMD・rhPDGF-BB・Nd:YAGレーザーです。

124件のうち、58研究が患者・歯・術野に関わる要因を、45の対照研究がバイオロジクスのアウトカムを扱っています。推奨の強さはSORT(A・B・C)で格付けされました。

材料の順位づけは、ほぼ決着している

材料についての結論は、意外なほど落ち着いた書きぶりです。

  • バイオロジクス(EMD、rhPDGF-BB+β-TCP)は、DFDBAおよびGTRと概ね同等であり、フラップ単独(OFD)よりは優れている
  • GTRがOFDより優れることは、複数のシステマティックレビューが支持している(SORT level A)
  • 吸収性メンブレンと非吸収性メンブレンで、再生アウトカムは同等
  • レーザー療法(LAR/LANAP)では、Yuknaが6歯すべてに新生セメント質と挿入する歯根膜線維の証拠を報告し、Nevinsは10標本中5歯に歯周組織再生の証拠を認めた。ただし4歯は長い接合上皮で治癒しており、臨床的な予測性を定義した報告はまだない(SORT level C)

つまり「どれを選ぶか」で大きく差がつく段階は、すでに過ぎている——このレビューが暗に示しているのはそこです。

成否を分けていたもの

0 26.7 53.3 80 オッズ比(大きいほどリスクが高い) 10.4 58.8 76.9 非支持性の解剖 (主に1壁欠損) 1壁が2壁に隣接 薄いスキャロップ型 の歯肉バイオタイプ 左は失敗のリスク因子、右2つは退縮増加のリスク因子。ロジスティック回帰解析による(Cosynら)
ロジスティック回帰で抽出されたリスク因子。数値はオッズ比

では何が結果を分けるのか。レビューが具体的に挙げているのは次のものです。

喫煙(SORT level A)——喫煙者は非喫煙者と比べ、ポケット減少が小さく、付着獲得が小さく、退縮が増え、骨のfillと獲得が有意に少なく、メンブレン露出の発生率が高く、65%以上の欠損解消を達成しにくい。ここだけレベルAで、最も強い証拠がついています。

プラークコントロール——術前の許容される口腔衛生の水準として、全顎プラークスコアおよび全顎出血スコアで15%以下・20%以下・25%以下という基準が報告されている不良なプラークコントロールと残存する歯周感染は、再生外科後の不良なアウトカムと関連する

欠損の解剖——Cosynらのロジスティック回帰では、非支持性の解剖(主に1壁欠損)が失敗のリスク因子(オッズ比 10.4以上)1壁が2壁に隣接する形態(オッズ比 58.8)薄いスキャロップ型の歯肉バイオタイプ(オッズ比 76.9)が退縮増加のリスク因子として同定されました。

ただし他の研究とシステマティックレビューは、幅広い深さ・幅・骨壁数の欠損で再生療法は有効だと結論しており(SORT level B)、著者らは欠損形態を絶対的な選択基準とはしていません。Tonettiは、欠損の総深さよりも「メンブレン下に利用できる空間の量」が最も有意な予測因子だと報告しています

動揺していても、諦めない

動揺歯についての記述は、臨床の判断を後押しします。

  • Trejo と Weltman は、術前にMiller Class 1または2の動揺がある歯でも良好な再生アウトカムが得られたと結論した。1年後、非動揺歯(Class 0)と動揺歯(Class 1/2)でポケット深さと付着レベルに差はなかった。ただし参加者は低いプラーク・歯肉指数を維持し、2〜3か月のメインテナンスに組み込まれていた
  • Cortelliniらは、重度動揺(Class 3)の「予後不良」とされた25歯にGTRを行った。22歯は術前に固定され、患者はホームケアと専門的ケアへの高いコンプライアンスを有していた。5年後、92%(25歯中23歯)が機能しており、1年で平均7.7mmの付着獲得を得て、それが5年間維持された
  • Schulzらは、動揺歯を術前に固定して骨移植材を用いると、非固定の移植歯と比べて1年後のポケットが有意に浅くなったと報告した。動揺による移植材の脱落が、その差の説明として挙げられている

明日の臨床へ

  • 材料選びに時間をかけるより、条件を整えるほうが結果を動かす。喫煙・プラークコントロール・術式が、このレビューが挙げた主要因
  • 禁煙は「望ましい」ではなく「アウトカムに直結する」。SORT level A——このレビューで最も強い証拠がついた項目
  • 再生外科の前に、全顎のプラーク・出血スコアを数字で確認する。15〜25%以下という基準が報告されている
  • 「動揺しているから諦める」の前に、固定とメインテナンスを検討する。Class 3の予後不良歯でも5年で92%が機能した報告がある
  • 1壁欠損と薄いバイオタイプでは、リスクを事前に説明する。退縮のリスク因子として同定されている
  • 低侵襲アプローチ(MIS・MIST・M-MIST・SFA)が選択肢に入っている。創の安定・一次閉鎖・スペース維持を重視する術式群で、良好な臨床成績が報告されている

ここだけ、冷静に補助線

これは各主題の証拠の質がばらつくレビューで、SORTのレベルもAからCまで混在しています(喫煙はA、欠損形態はB、レーザーはC)。オッズ比の数値については、アウトカムが稀でない集団では「何倍起きやすいか」より大きめの数字になる性質があり、リスク比が報告されていないため、そのまま倍率として読まないほうが安全です。また文献が乏しい主題では非無作為化の観察研究や動物実験も参照されています。それでも、材料の議論に偏りがちな再生療法の話を、「患者の行動と外科的アプローチ」という土台に引き戻した点に、このレビューの価値があります。

今日のひとこと

成否を分けていたのは、材料ではなかった。喫煙とプラークコントロールと術式——どれも新しい話ではありませんが、124件を並べたうえでそこに戻ってくるという事実に、重みがあります。そして「予後不良」と判断した歯でも、条件を整えれば10年もつことがある。この2つを持っておきたい1本です。

今日のひとこと

1,414件の文献から、抄録680件・全文269件を経て124件が解析に採用されたそのうち58研究が患者・歯・術野に関わる要因を、45の対照研究がバイオロジクスのアウトカムを扱っている結論①:バイオロジクス(エナメルマトリックスデリバティブ=EMD、およびrhPDGF-BB+β-TCP)は、脱灰凍結乾燥骨同種移植(DFDBA)およびGTRと概ね同等で、フラップ単独(OFD)より優れている結論②:レーザー療法では組織学的な再生の証拠が示されたが、臨床的な予測性と有効性のデータは限られる結論③:臨床アウトカムは、歯や欠損の特性よりも、患者の行動と外科的アプローチによってより顕著に影響されるように見える結論④:長期研究は、重度に障害された歯であっても、臨床パラメータの改善が10年まで維持されうることを示している喫煙者はポケット減少が小さく、付着獲得が小さく、退縮が増え、骨のfillと獲得が有意に少なく、メンブレン露出の発生率が高く、65%以上の欠損解消を達成しにくい(SORT level A)Cortelliniらは、重度動揺(Class 3)の「予後不良」とされた25歯にGTRを行い、5年後も92%(23/25)が機能しており、1年で平均7.7mmの付着獲得を得て5年維持したと報告している

出典:Kao RT, Nares S, Reynolds MA. Periodontal regeneration – intrabony defects: a systematic review from the AAP Regeneration Workshop. J Periodontol 2015;86(Suppl.):S77-S104. PMID: 25216204
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。