ペリオ|Phase2 歯周外科
脱灰した骨は新しい骨をよくつくる。けれど足場としては頼りない。非脱灰の骨は足場として優れるが、自分の骨に置き換わるのが遅い。ならば混ぜればいいのではないか——製品としては既にあったこの発想を、2015年、BorgとMealeyが42名のランダム化試験で検証しました。
①いいとこ取りは、できるのか
抜歯窩の保存に使う同種骨(アログラフト)には、性格の違う2つがあります。非脱灰の凍結乾燥骨(FDBA)は、骨伝導性の足場として優れ、移植片が吸収されるまでのあいだ空間を保ちます。一方、脱灰した凍結乾燥骨(DFDBA)は、骨形成タンパク(BMP)が処理の段階で表に出ているので、骨誘導能をもちます。
それぞれに短所もあります。DFDBA単独は「新生骨の足場としての骨伝導性が足りない」と批判されてきました。加えてX線的に透過性が高く、術後の評価が難しい——移植してからかなり経っても、レントゲンでは「入っているのかどうか分からない」状態になります。逆にFDBAは、破骨細胞が脱灰してくれるまでBMPが基質に閉じ込められたままなので、置換が遅れます。
だとすれば、混ぜればよいのではないか。製品としては既に混合品が存在していましたが、「混ぜたほうが優れている」という証拠は、2015年の時点でありませんでした。
②変数を、混合比だけに絞る
設計は前作(同じ研究室のWood & Mealey 2012)を踏襲しています。単根の非大臼歯を抜歯してインプラントを希望した44名を登録し、抜歯後に封筒法で2群にランダム割り付け。対照群は非脱灰FDBA 100%、試験群は非脱灰70%+脱灰30%の混合です。
骨材はすべて同一の64歳男性ドナー由来、粒径は250〜1000μmに統一。そして脱灰骨のロットは、骨誘導能を2通りで事前検証しています——in vitroのBMP-2測定で7,521pg/g、ヌードマウスの筋肉内埋植で4段階中3(視野の51〜75%に新生骨)。前作で使われたDFDBAが4段階中1だったことを思うと、今回は誘導能の高いロットということになります。
術式にも特徴があります。頬舌の骨頂から2〜3mmだけ粘膜骨膜弁を挙上(3mmを超えて剥離しない)し、低侵襲に抜歯して掻爬・洗浄。移植材は既存の骨頂を越えないように填入し、孔径0.3μm未満の高密度PTFE(d-PTFE)膜で被覆します。一次閉鎖は目標としないので減張切開はせず、膜は抜歯窩の入口で露出させたまま水平マットレス縫合で乳頭を寄せる——膜は4週後に、麻酔なしで除去できました。頬側骨壁の裂開が50%を超える症例は除外されています。
計測はカスタムのアクリルステントを使い、抜歯時と埋入時の同じ点で測定。平均19週(17〜21週)でトレフィンによる8mm以上のコア生検を採取し、盲検の1名が新生骨・残存移植片・非石灰化結合組織の3つに分けて面積比を計測しました。42名が完了(15男性・27女性、20〜89歳、平均52歳)、全員が非喫煙者です。
③3割を替えるだけで、届いた
新生骨は混合群36.16%に対し、FDBA群24.69%(p=0.0116)。残存する移植片は混合群18.24%に対し、FDBA群27.04%(p=0.0350)。結合組織などの非骨成分に有意差はありません。骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合は混合群67.48%(残存移植片32.52%)、FDBA群46.17%(残存53.83%)で、この差も有意(p=0.003)でした。
ここで面白いのは、同じ大学・同じプロトコル・同じ生検手法で行われた先行研究(Wood & Mealey 2012)との一致です。先行研究のFDBA群の新生骨は24.63%、今回のFDBA群は24.69%——ほぼ完全に再現されています。そして先行研究の脱灰100%群は38.42%、今回の混合群は36.16%。つまり「3割だけ脱灰に替える」ことで、脱灰100%とほぼ同じ新生骨量に届いたことになります。
一方、臨床的な歯槽堤の寸法変化には差がありませんでした。両群とも幅の減少は1.19〜1.63mm、高さの減少は1mm未満。抜歯時の頬側骨壁の厚さ(両群とも平均0.77mm)と、抜歯前の歯槽堤幅(9.07mm・9.02mm)にも差はありません。42名全員が、理想的な補綴主導の位置にインプラントを埋入できる骨量と骨質を得ています。
④「薄い骨壁だけ」ではない、という示唆
この研究には、材料比較とは別に、もうひとつ重要な観察があります。術前の頬側骨壁の厚みと、18〜20週後の歯槽堤幅の減少量に、有意な相関はありませんでした。
「頬側骨壁が薄い症例にこそリッジプリザベーションを」というのは、よく語られる指針です。しかしこのデータは、その線引きを支持しませんでした。著者らは「将来インプラントを埋入する可能性があるすべての部位で、頬側骨壁の厚さにかかわらずリッジプリザベーションを検討すべきだ」と述べています。
もう1点、d-PTFE膜の使い方も注目に値します。コラーゲン膜で抜歯窩の入口を塞ぐ方法と比べ、この研究では寸法変化がわずかに良好で、全例でインプラント埋入に十分な骨が得られました。同じ研究室の、コラーゲン膜を使った同一プロトコルの研究では、ここまで良好な結果は出ていません。膜を露出させたまま4週間置き、麻酔なしで外す——手間とコストの増加はわずかで、結果の予知性が上がる可能性があるという位置づけです。
⑤明日の臨床へ
1つ目。混合は「妥協」ではなく「両取り」。 新生骨は脱灰100%とほぼ同じ、寸法の維持は非脱灰100%と同じ。この2点が同時に成り立つなら、混合を第一選択にする理由があります。
2つ目。X線で見えることの実務的価値。 7割が非脱灰なので、移植部位はX線で不透過に写ります。術後の評価やインプラントの計画時に、デンタルやCTで状態を確認しやすい——脱灰100%では長期にわたって透過像のままなので、この差は現場で効きます。
3つ目。頬側骨壁が厚くても、保存する価値はある。 厚みと吸収量に相関がなかったという結果は、適応の線引きを緩める方向に働きます。
4つ目。ロットの誘導能は、材料選択の隠れた変数。 この研究の脱灰骨は誘導能4段階中3、前作は1。「脱灰骨」という名前だけでは中身が決まらないことを、2つの研究が並んで示しています。
今日のひとこと
単根の非大臼歯を抜歯し、抜歯窩を「非脱灰凍結乾燥骨100%(FDBA)」または「非脱灰70%+脱灰30%の混合同種骨」で保存した42名のランダム化比較試験。骨材はすべて同一の64歳男性ドナー由来で粒径250〜1000μmに統一し、使用した脱灰骨のロットは骨誘導能を事前検証済み(in vitroのBMP-2は7,521pg/g、ヌードマウス埋植で4段階中3=視野の51〜75%に新生骨)。d-PTFE膜で被覆し、平均19週(17〜21週)でインプラント埋入時にコア生検しました。結果、新生骨は混合群36.16%に対しFDBA群24.69%(p=0.0116)、残存する移植片は混合群18.24%に対しFDBA群27.04%(p=0.0350)。結合組織などの非骨成分に差はありません。骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合は混合群67.48%・FDBA群46.17%(p=0.003)。一方で歯槽堤の寸法変化には差がなく、両群とも幅の減少は1.19〜1.63mm、高さの減少は1mm未満でした。興味深いことに、術前の頬側骨壁の厚みと、その後の幅の減少量に相関はありませんでした——著者らは「薄い頬側骨壁の症例に限ってリッジプリザベーションを勧める」という考え方に疑問を投げかけています。同じ大学の同一プロトコルで脱灰100%を用いた先行研究(Wood 2012)の新生骨38.42%と比べても、混合の36.16%はほぼ同等です。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


