動揺と歯周炎の進行速度(ビーグル犬)
動揺度2の歯を前にすると、どうしても身構えます。揺れているから危ない、早めに固定を、抜歯も視野に——そう考えたくなる。ですが「揺れていること自体が、歯周炎の進行を速めるのか」を正面から確かめた実験があります。答えは、少し意外でした。
①動揺度2を見たときの、あの身構え
初診の検査。ポケットは6mm、そして動揺度2。——この「2」を書いた瞬間、頭の中で予後の見込みが一段下がる感覚があります。
揺れているから危ない。早めに固定したほうがいい。場合によっては抜歯も。ですが、その「揺れているから危ない」は、何を根拠にしているでしょうか。
②それまで:問いが2つ、混ざっていた
動揺をめぐる問いは、実は2つあります。
この2つは似ていますが、別のことを聞いています。そして臨床では、しばしば区別されないまま扱われてきました。「揺れている歯は治りにくい」という実感が、いつのまにか「揺れているから進行が速い」に読み替えられてしまう。
この研究が答えたのは、問い1のほうです。
③今回の一手:ふつうと逆の順番で組む
設計が巧みです。先に揺らしてから、歯周炎を起こしました。
ビーグル犬6頭に、ジグリング型(揺さぶり型)の咬合性外傷を加え、永続的に増大した動揺と歯根膜腔の拡大を作ります。4か月後、その歯と、動揺度が正常な対照の歯の両方に、歯頸部へ綿糸のリガチャーを巻いてプラークを溜め、実験的歯周炎を誘発しました。リガチャーは4週ごとに交換し、4か月続けています。
観察はDay 0から300まで計8回。動揺度測定とエックス線検査を行い、屠殺後はホルマリン固定・脱灰・パラフィン包埋のうえ、近遠心方向に4μmの薄切で組織を評価しました。
④結果:差は、なかった
結論は簡潔です。リガチャーとプラーク蓄積によって引き起こされ維持された歯周破壊の程度は、歯根膜腔の広い歯でも、歯根膜腔の幅が正常な歯でも、同様だった。
著者らは言い換えています——プラーク関連病変の進行は、歯根膜腔の幅、すなわち水平的な動揺度とは無関係であるように見えた。
あらかじめ揺らしておいても、歯周炎は速く進まなかった。動揺は、進行のアクセルではありませんでした。
⑤「治りにくい」とは、矛盾しない
ここで混乱しないことが大切です。人の8年間の縦断研究(Fleszar 1980)は、初診時に動揺している歯のポケットは、同じ深さでも治療に反応しにくいことを示しています。この2つは矛盾しません。別のことを言っています。
「進行が速い」わけではないが、「治療への反応は鈍い」。——つまり動揺は、病気を進めるアクセルではなく、治りの天井を下げる要因として読むのが、2本を並べたときの姿です。
そしてこの区別は、判断を変えます。「揺れているから、進行を止めるために予防的に固定する」という理屈は、この実験からは支持されません。固定を検討する理由は別のところ——患者さんが噛みにくいと訴えている、外科の足場として必要、といった実際的な理由——にあります。
⑥明日の臨床へ:動揺は、独立した敵ではない
今日のひとこと
歯根膜腔が広い歯も、正常な幅の歯も、歯周破壊の程度は同じだった。進行の速さは、動揺度とは無関係だった。


