1問1答 論文 エンド

根管治療後の小臼歯にクラウンをかぶせるとき、ポストは要る? 残った壁は何枚あればいい?——345人・小臼歯360本を6年追った試験で、6年後に失敗が1つもなかった歯の割合は、ポストなし42.1%・既製ファイバーポスト76.6%・カスタムファイバーポスト61.3%。歯冠の壁が1枚でも残っていた歯は、壁もフェルールもない歯より失敗の危険が有意に低かった(Ferrari 2012)

1問1答 論文 エンド

エンド|根管治療後にメタルセラミッククラウンで修復した小臼歯を、支台築造の前に残っていた歯冠の壁の数で6群に分け、各群の中でポストなし・既製ファイバーポスト・カスタムファイバーポストに無作為に割り付けて6年追った臨床試験(Ferrari・Vichi・Fadda・Cagidiaco・Tay・Breschi・Polimeni・Goracci 2012・Journal of Dental Research)。無作為に割り付けたのはポストの種類だけで、壁の数は治療前の状態で決まる。1人の術者・1つの開業医院・小臼歯の単冠だけの成績

根管治療を終えた小臼歯にクラウンをかぶせる。そのとき、ポストを入れるか入れないか。残った歯質が少ないとき、どこまで期待してよいか。Ferrariらは、345人の小臼歯360本を、支台築造の前に残っていた歯冠の壁の数で6群に分け、それぞれの群の中でポストなし・既製ファイバーポスト・カスタムファイバーポストに無作為に割り付けました。全部の歯をメタルセラミッククラウンで修復し、6年後まで追っています。6年後に診られた316本のうち、失敗が1つもなかった歯(成功)は60%、歯根破折で抜歯にならなかった歯(生存)は94.1%でした。成功率はポストなし42.1%、既製ポスト76.6%、カスタムポスト61.3%です。壁が4枚残っていた歯は、ポストの有無にかかわらず失敗がありませんでした。壁が1枚・2枚・3枚残っていた歯は、壁もフェルールもない歯より失敗の危険が有意に低く、壁のない歯ではフェルールの有無で有意差は検出されませんでした(p=0.151)。無作為に割り付けたのはポストの種類だけで、壁の数の比較は、治療前の状態が違う歯どうしの比較です。

論文
A Randomized Controlled Trial of Endodontically Treated and Restored Premolars
著者
M. Ferrari, A. Vichi, G.M. Fadda, M.C. Cagidiaco, F.R. Tay, L. Breschi, A. Polimeni, C. Goracci(シエナ大学 歯科材料・固定性補綴学講座ほか・イタリア/ジョージア健康科学大学・米国)
掲載
Journal of Dental Research 2012;91(7 Suppl):72S-78S(JDR Clinical Research Supplement)
種類
前向きの臨床試験(6年の追跡)。1つの開業歯科医院を続けて受診し、小臼歯の根管治療と修復が必要だった345人から、小臼歯360本(1人2本まで)。根管治療のあと・支台築造の前に残っていた歯冠の象牙質の量で6群(各60本)に分けた:壁が4枚/3枚/2枚/1枚/壁なし・フェルールあり(全周に高さ2mm以上の象牙質)/壁なし・フェルールなし(全周の象牙質が2mmに満たない)。各群の中で、A:ポストなし、B:既製ファイバーポスト(DT Light Post)、C:カスタムファイバーポスト(EverStick)の3つに無作為に割り付けた(各20本)。全部の歯を単冠のメタルセラミッククラウンで修復。修復は同じ1人の術者が2003年1月〜6月に行った。1・6・12・24・36・72か月後に、術者とは別の2人が臨床診査とデンタルX線で評価(ポストの有無はX線で分かるため盲検化はできなかった)。歯根破折で抜歯になったものを「絶対的失敗」、それ以外(ポストの脱離、ポストやコアの破折、クラウンの脱離、再根管治療が必要な根尖の状態など)を「相対的失敗」とし、どちらもないものを成功、絶対的失敗がないものを生存とした。カプラン・マイヤー曲線とコックス回帰で解析
資金・利益相反
著者らは、資金提供を受けておらず、利益相反はないと申告している(謝辞)
PMID
22699672

①ポストは要る? 残った壁は何枚あればいい?

根管治療を終えた小臼歯に、クラウンをかぶせる。残った歯質を見て、ポストを入れるかどうかを決める。毎日のように出会う場面です。「クラウンでおおうのだから、ポストはなくてもよいのでは」「フェルールさえ取れれば大丈夫では」。迷うところだと思います。

Ferrariらは、345人の小臼歯360本を、支台築造の前に残っていた歯冠の壁の数で6群に分けました。そして、それぞれの群の中で、ポストなし・既製ファイバーポスト・カスタムファイバーポストに無作為に割り付け、6年後まで追いました。

結論を先に書きます(6年後に診られたのは360本のうち316本)。
・失敗が1つもなかった歯(成功)は60%。歯根破折で抜歯にならなかった歯(生存)は94.1%
・成功率は、ポストなし42.1%、既製ファイバーポスト76.6%、カスタムファイバーポスト61.3%
・壁が4枚残っていた歯は、ポストの有無にかかわらず失敗がなかった
・壁が1枚・2枚・3枚残っていた歯は、壁もフェルールもない歯より、失敗の危険が有意に低かった
・壁のない歯どうしでは、フェルールの有無で有意差は検出されなかった(p=0.151)
・無作為に割り付けたのはポストの種類だけ。壁の数は治療前の状態で決まっている

②なぜこの試験が必要だったか

ファイバーポストは、メタルポストの代わりとして広く使われてきました。ただ、根管治療後の修復の失敗率は、報告によってばらつきます。著者らは序論で、成績に影響する要因として、歯の種類と歯列の中での位置、隣接面の接触の有無、最終修復の種類、そして歯冠の歯質がどれだけ残っているか(いわゆるフェルール効果)を挙げています。

著者らが引いているコクランのシステマティックレビューは、ポストを使った修復の臨床試験について、残った歯冠の壁の数をはっきり決めて対象を選ぶこと、3年より長く観察することを求めていました。

著者らのグループは、同じ患者さんたちの3年後の成績を2008年に報告しています。今回の論文は、その人たちを6年後にもう一度呼んで診た、続きの報告です。

③試験の組み立て:壁の数で6群、その中でポストを3通りに

対象は、1つの開業歯科医院を続けて受診し、小臼歯の根管治療と修復が必要だった345人です。1人あたり2本までとして、小臼歯360本が集められました。

残っていた歯冠の象牙質の量で6群(各60本)。根管治療のあと、支台築造の前に判定
・1群:歯冠の壁が4枚すべて残っている
・2群:壁が3枚
・3群:壁が2枚
・4群:壁が1枚
・5群:壁なし・フェルールあり(歯周プローブで測って、全周に高さ2mm以上の象牙質がある)
・6群:壁なし・フェルールなし(全周の象牙質が2mmに満たない)
各群の中で、ポストを3通りに無作為に割り付け(各20本)
・A:ポストなし
・B:既製ファイバーポスト(DT Light Post)
・C:カスタムファイバーポスト(EverStickのファイバー)

最終修復は、全部の歯で単冠のメタルセラミッククラウンです。修復は同じ1人の術者が、2003年1月から6月の間に行いました。材料と手順の細かい部分は、2008年の3年報告に書かれている、とされています。

患者さんは1・6・12・24・36・72か月後に呼ばれ、術者とは別の2人が、臨床診査とデンタルX線で評価しました。ポストが入っているかどうかはX線で分かってしまうので、評価者を盲検化することはできなかった、と著者らは書いています。

失敗の数え方(原著の定義)
・絶対的失敗:歯根破折で、抜歯になったもの
・相対的失敗:それ以外の失敗。原著の表1には、ポストの脱離、ポストの破折、新しい修復が必要になるコアの破損、クラウンの脱離、再根管治療が必要な根管・根尖の状態が挙がっている
・成功:絶対的失敗も相対的失敗もない
・生存:絶対的失敗がない(相対的失敗があっても、やり直して使えている歯は生存に入る)

解析は、カプラン・マイヤー曲線とコックス回帰です。6年後に来院しなかった人は、電話でもメールでも連絡がつかず、打ち切りとして扱われています。6年後の脱落は、患者さんで11.9%、修復物で12.3%でした。

④結果(1):ポストを入れた歯の方が、失敗の危険が低かった

ポストの種類ごとの6年後の成績(原著の表3の合計の行)
・A ポストなし(107本):成功率 42.1%、生存率 85.9%
・B 既製ファイバーポスト(107本):成功率 76.6%、生存率 99.1%
・C カスタムファイバーポスト(102本):成功率 61.3%、生存率 97.2%
・全体(316本):成功率 60%、生存率 94.1%

コックス回帰では、根管内にポストを入れたかどうかが、有意な要因でした(p<0.001)。失敗のハザード比は、既製ファイバーポストで0.3(95%信頼区間0.1〜0.6、p=0.001)、カスタムファイバーポストで0.4(95%信頼区間0.2〜0.8、p=0.009)です。原著は基準にした群を書いていませんが、ポストなしの群と比べた値と読めます。

著者らは、既製ポストの方がカスタムポストより失敗の危険の下がり方が大きかった、と書いています。ただ、2つの信頼区間は重なっていて、既製とカスタムを直接比べた検定の結果は示されていません。

⑤結果(2):壁が多く残るほど成功率が高く、4枚なら失敗なし

6年後の成功率(失敗が1つもなかった歯の割合。かっこ内は6年後に診られた本数) ポストなし 既製ファイバーポスト カスタムファイバーポスト 壁が4枚 100%(17本) 100%(18本) 100%(18本) 壁が3枚 66.7%(18本) 94.1%(17本) 76.5%(17本) 壁が2枚 52.9%(17本) 88.9%(18本) 66.7%(18本) 壁が1枚 29.4%(17本) 77.8%(18本) 50%(16本) 壁なし・フェルールあり 11.1%(18本) 61.1%(18本) 28.5%(14本) 壁なし・フェルールなし 0%(20本) 38.9%(18本) 31.6%(19本) 原著の表3の全18マス。成功=歯根破折(絶対的失敗)も、それ以外の失敗(相対的失敗)もなかった歯。壁の数は支台築造の前の状態で、無作為に割り付けたのは各群の中のポストの種類だけ。360本のうち6年後に診られたのは316本。1人の術者・小臼歯のメタルセラミック単冠の成績。
支台築造の前に残っていた歯冠の壁の数と、ポストの種類ごとの、6年後の成功率(原著の表3の全18マス。かっこ内は6年後に診られた本数。壁の数は治療前の状態で、無作為に割り付けたのはポストの種類だけ)

壁が4枚残っていた1群は、ポストの有無にかかわらず、6年間で失敗がありませんでした。失敗がないとハザード比を計算できないので、この群はコックス回帰から外されています。

群ごとの6年後の成功率と生存率(原著の表3の群の合計)
・1群 壁4枚(53本):成功率 100%
・2群 壁3枚(52本):成功率 78.8%、生存率 100%
・3群 壁2枚(53本):成功率 69.8%、生存率 91.2%
・4群 壁1枚(51本):成功率 52.9%、生存率 94.1%
・5群 壁なし・フェルールあり(50本):成功率 34%、生存率 92.6%
・6群 壁なし・フェルールなし(57本):成功率 22.8%、生存率 80.7%
失敗のハザード比と95%信頼区間(1より小さいほど、失敗の危険が低い) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 ハザード比(1=基準の群と同じ) ポストの種類(原著は基準の群を明記していない。ポストなしが基準と読める) 既製ファイバーポスト 0.3(0.1〜0.6) p=0.001 カスタムファイバーポスト 0.4(0.2〜0.8) p=0.009 残った壁の数(基準=壁なし・フェルールなしの歯) 壁が1枚 0.3(0.2〜0.7) p=0.004 壁が2枚 0.2(0.1〜0.5) p<0.001 壁が3枚 0.1(0.05〜0.3) p<0.001 原著の結果の本文にあるハザード比の全5つ(コックス回帰)。壁が4枚の群は失敗がなく解析の対象外。壁なしの歯では、フェルールの有無で有意差は検出されず(p=0.151。ハザード比の記載はない)。ポストの種類と壁の数の交互作用は有意でなかった(p>0.05)。年齢・性別・小臼歯の種類は調整していない。
コックス回帰で示された失敗のハザード比と95%信頼区間(原著の結果の本文に書かれた全5つ。1より小さいほど失敗の危険が低い。壁の数は、壁なし・フェルールなしの歯を基準にした値)

壁もフェルールもない歯を基準にすると、失敗のハザード比は、壁が1枚で0.3(95%信頼区間0.2〜0.7、p=0.004)、2枚で0.2(0.1〜0.5、p<0.001)、3枚で0.1(0.05〜0.3、p<0.001)でした。

一方、壁がない歯どうしでは、フェルールがあってもなくても、失敗の危険に有意差は検出されませんでした(p=0.151)。ポストの種類と壁の数の交互作用も、有意ではありません(p>0.05)。

壁が3枚残っていても、ポストなしの歯とカスタムポストの歯では、6年で20%を超える歯に何らかの失敗が起きていました(成功率は66.7%と76.5%)。

⑥結果(3):どんな失敗が起きたか

6年間の失敗の内訳(原著の表3の全マスを、ポストの種類ごとに筆者が足したもの)
・A ポストなし(107本):歯根破折 15件、クラウンの脱離 32件、根管治療の失敗 15件
・B 既製ファイバーポスト(107本):歯根破折 1件、ポストの脱離 12件、ポストやコアの破折 5件、根管治療の失敗 7件、クラウンの脱離 0件
・C カスタムファイバーポスト(102本):歯根破折 3件、ポストやコアの破折 13件、クラウンの脱離 14件、根管治療の失敗 11件

歯根破折は、抜歯につながる「絶対的失敗」です。合わせて19件のうち、15件がポストなしの群で起きていました。群で見ると、壁が4枚と3枚の歯では0件、2枚で1件、1枚で3件、壁なし・フェルールありで4件、壁なし・フェルールなしで11件です(表3から筆者が集計)。

既製ポストの群では、クラウンの脱離がなく、失敗でいちばん多かったのはポストの脱離(12件)でした。著者らによると、ポストの脱離は歯冠の象牙質が少ない群(4〜6群)で多く見られています。

根管治療の失敗は、原著の本文でも、A・B・Cの順に15件・7件・11件と書かれています。すべて、症状のない根尖性歯周炎でした。

⑦なぜこうなったのか(著者らの考察)

著者らが挙げた説明(この試験で確かめたものではありません)
・既製ポストの方が成績が良かったのは、ファイバーの束を根管に合わせて作るカスタムポストより、既製ポストの方が機械的な性質が強いためではないか
・歯冠の歯質が少ないと失敗が増えるのは、クラウンをかぶせた歯の力のかかり方の問題に加えて、根管内の象牙質への接着が、歯冠の象牙質への接着より当てにならないためではないか
・フェルールの有無で差が出なかったのは、これまでの多くの研究と合わない。群分けを支台歯形成の前に行ったので、フィニッシュラインや軸面の形成で失われる歯質が数に入っていない。5群の多くの歯で、フェルールは多めに見積もられていた可能性が高い

著者らは、歯冠に残った歯質の量は、支台歯形成のあとに評価する方が正確だろう、と述べています。フェルールは、高さと、全周のうちどこまであるかで評価するべきだ、とも書いています。

⑧明日の臨床へ

著者らの主張(原著に書かれていること)
・6年の観察で、既製またはカスタムのファイバーポストを入れることは、根管治療後に修復した小臼歯の生存に有意に役立った。その効果は既製ポストの方が大きかった
・修復の方法にかかわらず、歯冠の壁を少なくとも1枚残すことで、失敗の危険が有意に下がった
・既製ファイバーポストで維持した単冠は、90%を超える歯が6年後も使われていた。ただし、歯冠の壁が1枚もないと、失敗のなかった歯の割合は大きく下がった。カスタムポストやポストなしでは、その下がり方がさらに大きかった
・そうした条件では、歯冠長延長術やインプラントへの置き換えといった別の方法も検討すべきである
ここからは筆者の読み(原著が述べたことではありません)
・根管治療のアクセスや古い修復物の除去のとき、残せる壁を残すこと。その重みを、数字で確かめさせてくれる試験です。壁が4枚残っていた歯は、ポストなしでも6年間失敗がありませんでした
・壁が減ってきた小臼歯にクラウンをかぶせるなら、ポストを省かない。この試験の結果は、その判断を後押しします。ポストなしの歯では、クラウンの脱離と歯根破折が多く起きていました
・「フェルールはあってもなくても同じ」とは読めません。フェルールを測ったのは形成の前で、形成のあとに2mmが残っていたかは分かりません。著者ら自身がそう書いています
・「生存率94.1%」は、歯根破折で抜歯にならなかった歯の割合です。ポストの脱離やクラウンの脱離、再根管治療が必要になった歯も、生存に入っています。患者さんに説明するときは、成功率と分けて考える必要があります
・調べたのは小臼歯の単冠だけです。大臼歯、前歯、ブリッジの支台歯に、そのまま当てはめることはできません
ここだけ、冷静に補助線題名は「ランダム化比較試験」ですが、無作為に割り付けたのは、各群の中のポストの種類だけです。残った壁の数は、治療の前から決まっている歯の状態です。壁の数による違いは、条件の違う歯どうしを観察して比べた結果で、壁の数そのものの効果だと言い切ることはできません。割り付けの方法や、割り付けを隠す手順は、この論文には書かれていません。
評価した2人は、ポストの有無を知ることができました。修復は1人の術者が、1つの開業医院で行っています。年齢・性別・小臼歯の種類は調整されておらず、必要な症例数の計算もしていません。どちらも、著者ら自身が限界として挙げています。1人から2本まで入っていますが、同じ人の歯であることを考えに入れた解析かどうかは、書かれていません。
定期の診査は36か月の次が72か月です。その間に受診があったかどうか、それぞれの失敗がいつ分かったかは、本文からは確かめられません。6年後に診られなかった歯は360本のうち44本(原著の記載では12.3%)で、打ち切りとして扱われています。
原著の中で、気をつけて読みたい箇所があります。(1)抄録と結果は、ポストが「生存」を改善したと書いていますが、コックス回帰の「失敗」が、歯根破折だけなのか、相対的失敗も含むのかは、はっきり書かれていません。(2)ポストの種類のハザード比は、基準にした群が書かれていません。既製とカスタムを直接比べた検定もありません。(3)結果の本文は、歯根破折はすべて壁が1〜2枚に減った歯で起きた、と読める書き方ですが、表3では19件のうち15件が壁のない5群と6群です。(4)表の数字に、合わない箇所があります。3群の生存率は合計で91.2%と書かれていますが、3群の歯根破折は53本のうち1件です。カスタムポスト群の成功率は、各群の成功率と本数から数え直すと102本のうち61本(59.8%)になり、表の61.3%と少し合いません(どちらも筆者の計算)。6年後の来院の数も、表2(患者さんの数)と表3(歯の数)で数え方が違います。
材料の名前は出てきますが、著者らは資金提供を受けておらず、利益相反はないと申告しています。
それでも、残った壁の数をあらかじめ決めて群を作り、同じ術者・同じクラウンで、6年まで追った臨床試験です。ファイバーポストの臨床研究の中で、当時いちばん長い追跡だと著者らは書いています。「歯質をどれだけ残せたか」と「ポストを入れたか」。この2つが6年後にどう効いてくるかを、1本ずつの失敗の内訳まで見せてくれる1本です。

今日のひとこと

この試験が示したのは、根管治療後にクラウンで修復した小臼歯では、ファイバーポストを入れた歯の方が6年間の失敗の危険が低く、歯冠の壁が1枚でも残っていた歯は、壁もフェルールもない歯より失敗の危険が低かったということです。壁が4枚残っていた歯は、ポストの有無にかかわらず6年間失敗がありませんでした。一方、壁のない歯では、フェルールがあってもなくても有意差は検出されていません(p=0.151)。ただし著者ら自身が、フェルールは支台歯形成の前に測ったので多めに見積もられた可能性が高い、と書いています。「フェルールに意味がない」と読める結果ではありません。無作為に割り付けたのはポストの種類だけで、壁の数は治療前の状態です。1人の術者による小臼歯の単冠の成績で、大臼歯や前歯、ブリッジの支台歯は調べていません。筆者の読みでは、「歯冠の壁を1枚でも多く残すこと」の重みを、6年の追跡で確かめさせてくれる1本です。

Ferrari M, Vichi A, Fadda GM, Cagidiaco MC, Tay FR, Breschi L, Polimeni A, Goracci C. A randomized controlled trial of endodontically treated and restored premolars. J Dent Res. 2012;91(7 Suppl):72S-78S. doi: 10.1177/0022034512447949. PMID: 22699672
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。