ペリオ|Phase2 歯周外科
骨縁下欠損のデンタルで、私たちが数えるのは深さと壁数でしょう。では、根面と骨欠損面がつくる「角度」はどうでしょうか。1989年、SteffensenとWeberは規格化したデンタルを術前と15〜18か月後で重ね合わせ、この角度と骨の変化の関係を測りました。45度を境に、治り方は明確に分かれていました。
①そのデンタル、角度を見ていますか
骨縁下欠損のデンタルを前にして、私たちが数えるのは深さと壁数でしょう。「3壁性で5mm」——たしかにこの2つは予後を左右します。では、欠損の”傾き”はどうでしょうか。
根面と骨欠損面がつくる角度。狭い(急峻な)欠損と、広く開いた(浅い皿状の)欠損では、同じ深さでも治り方が違うのではないか。1989年、SteffensenとWeberは、規格化したデンタルを術前と15〜18か月後で重ね合わせ、この角度と骨の変化の関係を数値で確かめました。
②同じ角度で撮った2枚を、重ねて測る
ミシガン大学の歯周治療研究に参加していた11名から、小臼歯・大臼歯部のデンタル2枚組を集めました。全員がスケーリング・ルートプレーニングと再評価を経たうえで、骨整形を伴わない改良ウィドマンフラップを受け、剥離した弁で骨を完全に被覆。その後は3か月ごとのプロフェッショナルケアで管理されています。
1枚目は歯周外科の直前、2枚目は15〜18か月後。個々の患者用バイトブロックと同一の現像条件で、同じ像が得られるよう規格化して撮影されました。両者の骨と歯の輪郭を拡大トレースし、重ね合わせて、デジタイザで計測しています。
欠損角は、術前の形態から2本の線で定義されました。1本は根面に沿った線、もう1本は欠損の最も根尖側の点から、隣在歯に接する最も歯冠側の点へ引いた線。この2線がなす角です。
対象は11名の113部位(根分岐部のない根面80部位+根分岐部のある面33部位)。再現性は10回反復で、距離のSDが0.02〜0.03mm、面積が0.12〜0.18mm²、角度が0.20度——変動幅にして約1%という精度です。
③45度を境に、治り方が変わった
根分岐部のない歯では、欠損角がおよそ45度未満の部位は、他とはっきり区別できる治り方を示しました。一貫して骨の獲得があったのです。45度を超えると、獲得は小さくなり、やがて変化なし、さらに角度が開くと喪失へと傾いていきます。
数字で見ると、根分岐部のない歯では、0〜45度が+1.22mm、45〜90度が+0.05mm、90度超が−0.05mm。根分岐部のある歯では、0〜45度が+0.06mm、45〜90度が−0.09mm、90度超が−0.61mm。根の長さに対する比で見ても同じ傾向で、0〜45度・根分岐部なしは+7.8%、90度超・根分岐部ありは−5.0%でした。
分散分析では、欠損角・根分岐部の有無・両者の交互作用のいずれも有意(p<0.05)である一方、患者による差は有意ではありませんでした。つまり「誰の口か」より「どんな形の欠損か」が効いていた、ということです。
④ミリで見るか、面積で見るか
この論文には、もうひとつ面白い視点があります。欠損角45度未満の18部位について、著者らは距離だけでなく「面積」も測りました。平均1.8mm²の獲得で、これは元の欠損面積の31.3%にあたります。
ここが示唆的です。同じ部位を根長比で見れば約5%の改善にすぎませんが、面積比で見れば31%が埋まっている。1次元の表現と2次元の表現では、印象がまったく変わるのです。著者らは、角度の狭い欠損については実際の欠損サイズに対する変化を表せる面積のほうが望ましいとしています(ただし角度の広い欠損では面積計測は実用的でない、とも)。
歯種別に見ると、上顎小臼歯51.7%・下顎小臼歯48.8%・下顎大臼歯38.0%に対し、上顎大臼歯はわずか1.2%。骨レベルの変化でも、上顎大臼歯だけが平均−0.20mmと唯一の喪失を示し、他の歯種と有意差がありました。
⑤なぜ根分岐部で治りにくいのか
著者らはデータをさらに掘り下げています。根分岐部を含む欠損では、セメントエナメル境から骨レベルまでの平均距離が4.3mm(SD 1.67)で、50%を超える部位が4.8mm以上でした。
先行研究によれば、この程度の距離では既に根分岐部に到達しており、根間領域が病変に侵されていることが多い。根分岐部の治癒が臨床的に不良であることは以前から知られており、この形態的な事実が、今回の差を説明しうるというのが著者らの読みです。
⑥明日の臨床へ
この研究が臨床に渡してくれるものは、シンプルです。
①術前のデンタルで、深さと壁数に加えて「角度」を見る。 45度未満の狭い欠損なら、骨整形を避けて完全被覆する術式で、骨の獲得が期待できる位置づけです。
②根分岐部が絡む広い欠損には、期待値を置きすぎない。 90度超かつ根分岐部ありは、平均で骨を失っていました。
③管理は3か月ごとで成り立った。 隔週リコールほどの資源を使わずとも、この結果が得られています。著者らも「臨床の実際に合った設計」と述べています。
今日のひとこと
改良ウィドマンフラップ(骨整形なし・弁で骨を完全被覆)を受け、3か月ごとに管理された11名の113部位について、術前と15〜18か月後の規格化デンタルを重ね合わせ、骨欠損の角度と骨レベル変化の関係を調べた研究。欠損角は根面に沿う線と、欠損の最根尖点から隣在歯に接する最歯冠点へ引いた線がなす角と定義されました。結果、根分岐部のない歯では0〜45度が+1.22mm、45〜90度が+0.05mm、90度超が−0.05mm。根分岐部のある歯では0〜45度が+0.06mm、45〜90度が−0.09mm、90度超が−0.61mmでした。0〜45度かつ根分岐部なしの群と、90度超かつ根分岐部ありの群は、他のどのカテゴリとも有意差があります(p<0.05)。分散分析では欠損角・根分岐部の有無・両者の交互作用がいずれも有意だった一方、患者による差は有意ではありませんでした。欠損角45度未満の18部位を面積で見ると、平均1.8mm²=元の欠損面積の31.3%が充填されており、同じ部位を根長比で見た約5%とは印象が大きく変わります。歯種別の面積充填率は上顎小臼歯51.7%・下顎小臼歯48.8%・下顎大臼歯38.0%に対し、上顎大臼歯はわずか1.2%。根分岐部を含む欠損はCEJから骨レベルまでが平均4.3mmで、50%超が4.8mm以上と、既に根分岐部に到達している形態でした。著者ら自身が、個々の欠損の予測には慎重であるべきと明記しています。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


