一般の成人47人が、ふだんの磨き方のまま手用歯ブラシで30・45・60・120・180秒と決められた時間だけ磨き、前後のプラーク量(Turesky指数)を比べた無作為化6期クロスオーバー試験(Gallagher, Creeth ほか 2009・Journal of Dental Hygiene)
「歯みがきは2分以上」と指導する一方で、一般の人の実際の歯みがき時間は平均45秒前後と見積もられています。では、45秒を2分に延ばすと、プラークはどれだけ多く取れるのか。歯みがきの指導を受けていない一般の成人で、時間だけを変えて1回ずつ測った研究です。あわせて、歯磨剤を使うかどうかでも差が出るかを60秒で調べています。
①「2分みがいて」の根拠、数字で言えますか
「歯みがきは少なくとも2分、1日2回」。歯科医療者のあいだでは広く共有された目安です。一方、著者らがまとめた過去の報告では、実際の歯みがき時間は30秒強から60秒強で、米国成人173人の家庭での研究では平均46秒でした。著者らは「約45秒」を一般的な値とみなしています。
では、45秒を2分に延ばすと、どれだけ多くプラークが取れるのか。時間とプラーク除去の関係を調べた研究は結果が揃っていませんでしたが、同じ人の中で比べた研究では時間の効果が出ていました。ただ著者らは、指導を受けていない一般の人で、ふだんの磨き方のまま時間だけを変えた研究は見つからなかった、と述べています。
②同じ人が、時間を変えて6回磨いた
無作為化・6期クロスオーバー:同じ人が、30秒・45秒・60秒・120秒・180秒(歯磨剤1.5 g)と60秒(歯磨剤なし)の6条件を、3週間のあいだに順不同で1回ずつ行った。条件の間は72時間以上あけ、毎回、約24時間歯みがきを控えて来院した。
道具は手用の軟毛歯ブラシ(Aquafresh Flex)とフッ化ナトリウム1100 ppmの歯磨剤(Aquafresh Advanced)。施設で監督下に、ふだんの磨き方で磨いた。磨く時間は直前に伝え、4ブロックに均等に割り振った。時間はタイマーで測り、4ブロックの切り替えは合図した。
磨く前と後に歯垢染色し、Turesky指数(Quigley-Hein指数の改良版。0〜5点、1歯6部位の平均)で評価。前後の差を「除去されたプラーク」とし、磨く前の値を共変量にした共分散分析で比べた。
③結果その一——時間が長いほど取れた。ただし頭打ちに近づく
除去量は時間とともに増えました。原著の主要な比較は2つです。2分は45秒より26%多く除去(p=0.0002)、3分は30秒より55%多く除去(p<0.0001)。
増え方は一直線ではありません。著者らの表現では曲線は「おおむね双曲線」で、短い時間では時間に強く左右され、長い時間では最大値に近づいていきました。それでも3分の時点で、まだ少しずつ取れ続けているように見えた、と著者らは書いています。
隣り合う時間どうしの差(原著Table 1、調整後の差)は次のとおりです。30秒と45秒 p=0.0838、45秒と60秒 p=0.0721、60秒と2分 p=0.0454、2分と3分 p=0.1715。有意だったのは60秒と2分の間だけで、著者らも「隣り合う時間の差を見分けるには、もっと大きな集団が要るだろう」と述べています。
④結果その二——3分でもプラークは残った。歯磨剤は60秒で差なし
磨く前のTuresky指数は、どの条件も2.95〜3.00でした。磨いた後は、30秒で2.31、45秒で2.26、60秒で2.14、2分で2.06、3分で2.01。いちばん長い3分でも平均3.0から2.0までしか下がっていません。著者らは、指数2(1部位の評点)は歯頸部に沿った細い連続した帯状のプラークに当たる、と説明しています。
もう1つの問いの答えは「差なし」です。60秒で、歯磨剤1.5 gありの除去量は0.82、なしは0.84(調整後の平均)で、有意差はありませんでした(p=0.5675)。磨いた後の値も2.14と2.13でほぼ同じです。
⑤著者らの読み——取りやすいプラークから先に取れる
著者らは、頭打ちに近づく曲線を次のように説明しています。歯面にはブラシが届きやすいプラークと、だんだん届きにくくなるプラークがある。届きやすい分は短時間で素早く取れるが、残りは遅いペースでしか取れない。さらに長く磨くと、すでに磨いた場所をなぞるだけになる可能性もある——というものです。
歯磨剤で差が出なかったことについては、プラーク除去の効き目は、研磨剤よりも毛先がそこに届くかどうかで決まるという見方を支持する、と述べています。
ただし結果は研究によって揃っていません。歯学部生(Bass法)や電動歯ブラシでの研究は同じような曲線を示した一方、いつ止められるか知らされていなかった研究(Klukowska)や、子どもを対象にした研究(Hodges)では、1分を超えて磨いても除去量は増えなかったと著者ら自身が紹介しています。本研究は時間を事前に伝え、4ブロックへの割り振りも合図していた点が違います。
⑥明日の臨床へ
②時間だけでは取り切れない。3分でもTuresky指数は平均2.0残った(著者らは、指数2は1部位の評点でいえば歯頸部に沿った細い帯状のプラークに当たると説明)。時間の指導と、歯頸部に毛先を当てる指導は別に要る(この点は筆者の読み。本研究は磨き方を測っていない)。
③曲線は、短い時間ほど延ばしたときの増え方が大きい形だった。30秒から1〜2分への延長の方が、2分から3分への延長より差が出やすい(筆者の読み。ふだんの歯みがき時間で分けた解析ではなく、隣り合う時間の差の多くは有意ではない)。
④歯磨剤は、60秒・1回では除去量を増やさなかった。フッ化物を届ける役割を否定した結果ではない(本研究はう蝕を評価していない)。
⑦ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
一般の成人が監督下で1回磨いたとき、2分では45秒より除去されたプラークが26%多く(p=0.0002)、3分では30秒より55%多かった(p<0.0001)。除去量は短い時間ほど時間に強く左右され、長くなるほど頭打ちに近づいた。隣り合う時間どうしの差は、60秒と2分の間(p=0.0454)以外は有意ではなかった。3分磨いてもTuresky指数は平均3.0から2.0までしか下がらず、著者らは、指数2(1部位の評点)は歯頸部に沿った細い連続した帯状のプラークに当たると説明している。60秒では、歯磨剤ありとなしで除去量に有意差はなかった(p=0.5675)。著者らは少なくとも2分の歯みがきを勧めるべきだとしているが、評価したのは1回のブラッシングのプラーク除去だけで、歯肉炎やう蝕への効果は調べていない。


