同じ日に二度測ったら、BOPはどれだけ再現したか
BOPの丸が消えていると、つい「良くなりましたね」と言いたくなります。ところが1986年、歯周組織が変わりようのない100分という間隔で同じ部位を二度測った研究は、その丸の当てにならなさが深さによって真逆になることを示しました。
①その丸が消えたのは、治ったからか
メインテナンスでチャートを開く。前回プラスだった部位が、今日はマイナス。「良くなっていますね」と伝えたくなる場面です。
でも、ほんとうに治ったのでしょうか。それとも、今日はたまたま出なかっただけでしょうか。これを確かめるには、病状が変わりようのない条件で二度測るしかありません。
②それまで:BOPは「出ないこと」に強い、とされていた
BOPの評価は、陰性の価値が高いことで知られています。出血しない部位は、その後も安定している——この性質があるから、僕たちは「出ていない場所は手放す」判断ができます。
では陽性のほうはどうか。1回の丸は、どれくらい信用していいのか。ここがはっきりしないまま、日々の記録は積み上がっていきます。
③今回の一手:100分あけて、同じ703部位をもう一度測る
対象は初期治療を終えた成人歯周炎13名。1人の検者が隣接面703ポケットを記録し、100分の間隔をあけて同じ部位をもう一度測りました。
100分では歯周組織は変化しません。差が出れば、それは測定のばらつきそのものです。しかもプローブは定圧型(32±2gf)、先端はWilliams型のフラット形状(直径0.42mm)。押し加減という最大の変数を、器具で消したうえでの再現性を見ています。
④結果:浅いポケットでは、真逆に割れた
4mm以下の浅いポケットでは、こうなりました。
「出血しなかった」は86%が再現。一度目に出血しなければ、二度目もほぼ出血しません。ところが「出血した」は36%しか再現しませんでした。浅いところで出た出血の三分の二は、100分後には出ないのです。
⑤ところが深いポケットでは、関係が逆転する
ポケットが深くなるにつれて、この関係はきれいに反転しました。「出血しなかった」の一致率は有意に低下し(p<0.001)、逆に「出血した」の一致率は有意に上昇します(p<0.001)。
患者単位で見ると、浅いポケットしか持たない人では出血の一致率が42%だったのに対し、さまざまな深さを持つ人では84%。全体を加重平均すると、出血なし78%・出血あり64%でした。
⑥著者が出した、もうひとつの答え
この研究のうまいところは、再現性の値から確率分布を計算したことです。二度の検査で出血部位数がいくつ違えば「本当に変わった」と言えるのか、を数字で出しました。
結論は控えめです。個々の患者で本当の変化を示せるのは、出血部位数の差が大きいときだけ。そして——ここが実務に効くのですが——記録する部位を増やすほど、口腔全体の出血スコアの感度は上がると述べています。
⑦明日の臨床へ:3つ、持ち帰れる
今日のひとこと
浅いポケットの「出血あり」は、100分後に測り直すと三分の一しか再現しない。深いポケットでは逆に再現する。同じ丸でも、深さによって重みが違う。


