1問1答 論文 歯周病

超音波か手用か、9つの試験の答え

1問1答 論文 歯周病

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SRPを手用スケーラーでやるか、超音波でやるか。さらに縁下洗浄を足すべきか。どれも毎日の判断なのに、根拠を聞かれると答えに詰まります。2003年、米国歯周病学会のワークショップの一環として行われたシステマティックレビューが、896本の抄録から9本の臨床試験を絞り込み、この問いに答えを出しました。結論は、少し拍子抜けするほど明快です。

論文
Local Anti-Infective Therapy: Mechanical and Physical Approaches. A Systematic Review
著者
Hallmon WW, Rees TD
掲載
Annals of Periodontology 2003;8(1):99-114
種類
システマティックレビュー(MEDLINE・Cochrane Oral Health Group登録試験+4誌のハンドサーチ/2002年4月まで/896抄録から9試験・被験者129名を採用/異質性のためメタアナリシスは実施せず)
PMID
14971251

手用か、超音波か。毎日決めているのに根拠が薄い

SRPを手用スケーラーでやるか、超音波でやるか。仕上げに縁下洗浄を足すか。毎日決めていることなのに、「なぜそちらを選ぶのか」を根拠つきで説明しようとすると、意外に言葉に詰まります。

2003年、米国歯周病学会のワークショップの一環として、このテーマだけを扱ったシステマティックレビューが行われました。フォーカスクエスチョンは「歯周炎患者において、機械駆動器具や縁下洗浄を手用器具に加える/置き換えることは、手用器具単独と比べてどうか」。答えは、少し拍子抜けするほど明快でした。

先に結論: 単根歯において、手用器具と機械駆動器具の臨床成績は同等だった縁下洗浄や縁下組織処理を手用器具に足しても、上乗せ効果はなかった施術時間も概ね同等で、超音波が有意に短かったのは9試験中1試験だけ

896本から、残ったのは9本

選び方が厳格です。

  • MEDLINE(1966年〜2002年4月)とCochrane Oral Health Groupの登録試験に加え、4誌のハンドサーチ、研究グループへのデータ請求、未発表データの照会、器具メーカー6社への問い合わせまで行っている
  • 採用基準:3か月以上の期間をもつRCT・コホート研究・症例対照研究で、手用器具(SRP)単独を対照に含むもの
  • 除外:レーザー、内視鏡下の器具操作、局所・全身抗菌薬の併用、外科的介入、in vitro研究、フルマウスディスインフェクション
  • 2名の評価者が独立してスクリーニング(κ=0.870)。896抄録のうち99本を全文評価し、基準を満たしたのは9本だけ
  • 方法論的な質を、ベースライン記載・無作為化・割付の隠蔽・検査者の盲検化・追跡の完全性の5項目で採点(最大9点)。実際のスコアは1〜7で中央値4.3

採用された9試験の被験者は合計129名うち5試験が手用器具と機械駆動器具(超音波3・音波1・電動キュレット1)の比較、4試験が手用器具単独と手用器具+縁下洗浄(クロルヘキシジン・生食・過酸化水素)または縁下組織処理の比較でした。

手用と超音波:差は見当たらなかった

0 0.5mm 0.9mm 1.4mm プロービングデプスの減少量 (mm) 1.1mm 0.9mm 1mm 1mm 0.8mm 0.7mm Badersten 1981 Badersten 1984 Copulos 1993 淡い棒=手用器具/濃い棒=機械駆動。3試験とも実質的な差はなかった
手用器具と機械駆動器具のプロービングデプス減少量。3試験とも実質的な差はない

超音波と手用器具を比べた3試験(Badersten 1981・Badersten 1984・Copulos 1993)では、BOP・臨床的付着レベルの獲得・プロービングデプスの減少のいずれにも有意差は報告されませんでした1試験で手用器具後のBOPがわずかに増加したという報告があるのみです。

音波スケーラーと手用器具を比べたKocher 2001では、両者は同等に有効でしたが、6mm以上のポケットでは手用器具のほうが有意に効果的でした(減少量2.28mm vs 1.56mm)ただし、どちらの器具操作も、試験内の未治療対照(同深度で0.56mm)と比べれば明らかに優れていました

興味深い所見も一つ。同じKocher 2001では、3mm未満の浅い部位を器具操作すると付着が失われており、その程度は未治療対照と同等でした。浅い部位への器具操作の是非を考えるうえで、押さえておきたい数字です。

電動キュレットと手用器具を比べたRühling 2003でも、PD減少・付着獲得・BOP減少は良好かつ同等でした

縁下洗浄の上乗せ効果は、認められなかった

0 1mm 2mm 3mm プロービングデプスの減少量 (mm) 2.5mm 2.4mm 1.4mm 1.3mm 1.9mm 1.9mm Southard 1989 Wennström 1987 Tseng 1991 淡い棒=手用単独/濃い棒=縁下洗浄を追加。上乗せ効果は認められなかった
手用器具単独と、クロルヘキシジンによる縁下洗浄を追加した場合のPD減少量

手用器具単独と、手用器具+縁下洗浄を比べた3試験(Southard 1989・Wennström 1987・Tseng & Newcomb 1991)では、PD減少・付着獲得・BOP減少のいずれにも、著者らの報告するかぎり有意差はありませんでした。洗浄液がクロルヘキシジンでも生理食塩水でも過酸化水素でも、結果は変わっていません。

4試験目のForgas & Gound 1987は、手用器具にアンチフォルミン+クエン酸による縁下組織処理を加えたものですが、これも同等の結果でした(PD減少 1.22mm vs 0.86mm)

ただし、ここで見落とせない点があります。これらの試験に置かれた未治療対照群と比べると、どちらの群も明確に優れていました(例:Southard 1989ではPD減少2.5mm・2.4mmに対し、未治療対照は0.4mm)「洗浄を足しても変わらない」であって、「器具操作が効かない」ではありません

時間と、有害事象

患者側のアウトカムも見ています。施術時間を報告した4試験のうち、有意差が出たのは1試験だけで、そこでは超音波が手用器具より有意に短時間でした(Copulos 1993)残る試験では差がありません

報告された有害事象は、辺縁歯肉の退縮のみ。9試験中3試験が退縮を記録していますが、器具の種類による差として整理できるデータはありませんでした。

明日の臨床へ

  • 単根歯のSRPでは、手用か超音波かを「効果」で選ぶ理由は乏しい。術者の熟練度、患者の快適さ、施術時間、器具の届きやすさで選んでよい
  • 深いポケット(6mm以上)では手用器具が上回った試験がある。仕上げに手用器具を併用する運用は、この結果と矛盾しない
  • 縁下洗浄をルーチンで足す根拠は、このレビューの範囲では見つからなかった。時間とコストを別の工程に回すほうが合理的かもしれない
  • 浅い部位(3mm未満)への器具操作は、付着を失わせうる。触るべき部位を選ぶ意識を持つ

ここだけ、冷静に補助線

最大の弱点は、9試験・被験者129名という小ささです。しかも4試験はグラフや図から数値を読み取る必要があり、著者ら自身が「非常に手間がかかり、精度に疑問の残る作業だった」と書いています。方法論的な質のスコアは中央値4.3で、無作為化の方法を明記していた試験は1本のみ、割付の隠蔽を明確に定義した試験はゼロ。異質性のためメタアナリシスも行われていません。この結論は「差がないことが証明された」ではなく、「差があるという証拠は見つからなかった」と読むのが正確です。著者らも「今後、詳細で標準化された研究デザインが開発され、臨床試験で一貫して用いられる必要がある」と締めくくっています。それでも、日々の器具選択に「どちらでも成績は変わらない」という土台を与えてくれる1本です。

今日のひとこと

効果で選べないなら、術者と患者の都合で選んでよい。手用か超音波かで悩む時間より、深いポケットを取り残さないこと、浅い部位を無闇に触らないこと、そしてメインテナンスを続けることのほうが、結果に効いてきます。

今日のひとこと

フォーカスクエスチョンは「歯周炎患者において、機械駆動器具や縁下洗浄を手用器具に加える/置き換えることは、手用器具単独と比べてどうか」896抄録をスクリーニングし、3か月以上の期間をもつRCT・コホート研究・症例対照研究のみを採用した結果、9試験(被験者129名)が残ったうち5試験が手用器具と機械駆動器具(超音波3・音波1・電動キュレット1)の比較、4試験が手用器具単独と手用器具+縁下洗浄/縁下組織処理の比較患者集団・治療・アウトカムの異質性が大きく、メタアナリシスは適切でないと判断された結果は、①単根歯の治療において手用器具と機械駆動器具の効果は同等 ②縁下洗浄や縁下組織処理を手用器具に追加しても、手用器具単独に対する上乗せ効果はなかった ③施術時間も概ね同等で、1試験のみ超音波が有意に短かったただし9試験のうち4試験はグラフや図から数値を読み取る必要があり、精度に疑問が残る報告された有害事象は辺縁歯肉の退縮のみだった著者らの結論は「手用器具と機械駆動器具は、臨床成績の改善において同等と考えられる」

出典:Hallmon WW, Rees TD. Local anti-infective therapy: mechanical and physical approaches. A systematic review. Ann Periodontol 2003;8(1):99-114. PMID: 14971251
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。