ペリオ|ペリオ論文100選
6mm以上のポケットが12本以上残る進行した歯周炎。SRPで攻めるか、フラップを開けるか。2001年、スウェーデンのグループが64名を無作為に2群へ分け、13年間のメインテナンスとともに追跡しました。1年目の数字は外科に軍配が上がります。ただしこの研究の価値は、そこから12年間、何が起きたかを見ている点にあります。
①基本治療で止まらなかったポケットを、どうするか
6mm以上のポケットが12本以上。骨吸収も6mm以上。ここまで進んだ歯周炎を前にしたとき、SRPを繰り返して粘るか、フラップを開けるか。判断が分かれる場面です。
1979〜1985年にスウェーデン・ヘルシンボリの歯周病科へ紹介された患者から64名を選び、外科群(SU)32名と非外科群(SRP)32名へ無作為に割り付けた研究があります。この論文が特別なのは、その後13年間、年3〜4回の支持療法を続けながら追い続けた点です。
②両群とも、まず徹底的に整えている
読むときに外せないのは、両群とも同じ土台の上に立っていることです。
- 全例にケースプレゼンテーションと口腔衛生指導。歯ブラシ・歯磨剤・歯間ブラシ・トゥースピックの使い方まで訓練している
- 外科群:モディファイドウィドマンフラップを4〜6回のセッションで、2か月以内に完了
- 非外科群:SRPを4〜6回、同じく2か月以内に完了。1回のセッションは60〜90分で、超音波スケーラーによる機械的デブライドメントを局所麻酔下で実施
- 両群とも、初回処置の直後から0.2%クロルヘキシジン洗口を1日2回・2か月
- その後13年間、年3〜4回のSPT。リコール時に軽い探針で出血し、かつPPDが5mm以上の部位は麻酔をして再び縁下器具操作を行った
評価は非大臼歯のみ。PPDは1mm単位、PALは個々に作製したステントを基準点として1mm単位で6面計測。年に1回、各患者4歯を再計測して術者間・術者内のばらつきを検証しています(重複計測のSDは0.4mm、±1mm以内一致が98%)。ここまで管理された長期RCTは多くありません。
ベースラインは両群でそろっていました。平均PPD 4.2mm、骨レベルはCEJから根尖側7.4mm(SRP)・7.3mm(SU)、BOP陽性67%(SRP)・57%(SU)。
③1年目:深いポケットの閉じ方が違った
1年後の平均PPDは、SRP 3.1mm に対し SU 2.6mm(p<0.01)。ベースラインからの減少量は1.1mm(SRP)と1.6mm(SU)で、どちらも有意に減っていますが、減り方は外科のほうが有意に大きい。
もっとはっきり差が出たのは、深いポケットの行き先です。ベースラインで6mm以上だった部位のうち、1年後に4mm以下になったのはSU 56%・SRP 28%。4〜5mmにとどまったのはSU 35%・SRP 47%。1年時点で4mm未満の部位は、SU 72%に対しSRP 55%でした。
付着レベルの動きは、深さによって逆向きでした。ベースラインで浅かった部位(3mm以下)では両群とも付着を失い、SRP −0.28mm・SU −0.61mm(p<0.05)。一方、6mm以上の深い部位では付着を獲得し、SRP +0.95mm・SU +1.07mm。全部位を合わせた1年間のPAL変化は、SRP +0.28mm・SU +0.16mm。外科のほうが浅い部位での付着喪失が大きいぶん、全体の獲得量では上回っていません。
④13年後:差は消えなかった
13年後の平均PPDは、SRP 3.7mm(SD0.6)・SU 3.2mm(SD0.9)で、群間差は有意(p<0.05)。1年から13年のあいだに両群とも平均PPDは0.6mm増えていますが、1年時点でついた差はそのまま残りました。
より重要なのは、「治療が必要になった人」の数です。1〜3年の間に複数部位で著明な疾患進行(4歯以上で2mm以上の付着喪失)を示し、追加治療のため試験を離脱したのは、SU 4名(14%)に対しSRP 8名(29%)。13年間の歯の喪失は、SRP 1.6本・SU 0.6本でした。
一方で、維持期の年間付着喪失そのものには群間差がありませんでした。両群とも約0.07mm/年で、これは他の長期研究の報告と一致します。SPT中も浅い部位(4mm未満)は平均0.1mm/年の付着を失い、深い部位では逆に獲得する——この傾向は13年を通じて変わりませんでした。
⑤なぜ差がついたのか
著者らの読みはシンプルです。「SRP群で再発が多かった理由は完全には分かっていないが、能動的治療の後に残った深いポケットの数が多かったことと関係しているかもしれない」。
実際、1年・3年の再評価で6mm以上のポケットが残っていた部位の割合は、SRP群で約10%・13%あったのに対し、SU群では約3%。SU群では全部位の約75%が4mm未満でした。残った深いポケットは縁下バイオフィルムの温床になり、そこから新たな炎症と組織破壊が始まりうる——BaderstenらやClaffey & Egelbergの報告とも一致する解釈です。
そして著者らは、目標をこう言い切っています。「治療の目的が浅いポケットを獲得することであるなら、外科療法のほうが非外科療法よりはるかに効果的であるように思われる」。
⑥明日の臨床へ
- 「進行した歯周炎で、基本治療後も深いポケットが多数残る」ケースでは、外科を選択肢から外さない。1年後の深いポケットの閉じ方に、2倍の差がついた
- ただし外科は万能ではない。浅い部位では外科のほうが付着を失っており(−0.61mm vs −0.28mm)、全部位を平均した付着獲得ではむしろ非外科が上回った。深いポケットが多いかどうかで使い分ける
- どちらを選んでも、勝負を決めるのはSPT。この研究では両群とも13年間プラークスコア15%以下を維持し、年間付着喪失は0.07mmに抑えられている。外科の優位は「良いSPTの上に乗った差」である
⑦ここだけ、冷静に補助線
⑧今日のひとこと
13年後の差は、1年目についていた。深いポケットを残したまま維持期に入るか、閉じてから入るか。その分かれ目が、10年以上あとの平均PPDと、追加治療を要する患者の数に効いてきます。SPTを整えることと、能動的治療で深いポケットを減らし切ることは、どちらも必要な仕事です。
今日のひとこと
進行した歯周炎(全顎的な歯肉の炎症、6mm以上のポケットと6mm以上の骨吸収をもつ非大臼歯が12本以上)の64名を、外科群(SU・モディファイドウィドマンフラップ)32名と非外科群(SRP)32名へ無作為に割り付けた。全例に口腔衛生指導を行い、その後13年間、年3〜4回の支持療法(SPT)を継続。リコール時にBOP陽性かつPPD5mm以上の部位は再度縁下器具操作を行った。1年後の平均PPDはSRP 3.1mm・SU 2.6mm(p<0.01)で、外科のほうが大きく減少した。ベースラインで6mm以上だった深いポケットのうち、1年後に4mm以下になったのはSU 56%・SRP 28%。13年後の平均PPDもSRP 3.7mm・SU 3.2mm(p<0.05)で差は保たれた。1〜3年の間に著明な疾患進行を示して追加治療のため試験を離脱したのは、SU 4名(14%)に対しSRP 8名(29%)。13年間の年間付着喪失は両群とも約0.07mm/年で差はなく、浅い部位(4mm未満)では年0.1mmの付着喪失、深い部位では付着の獲得が見られた。著者らの結論は「進行した歯周病では、外科治療のほうが短期にも長期にもポケットをよく減らし、追加治療を要する患者を減らしうる」。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


