ペリオ|ペリオ論文100選
成人性歯周炎、早期発症型歯周炎、若年性歯周炎、急速進行性歯周炎、難治性歯周炎。かつて使われていたこれらの病名は、1999年を境に姿を消しました。1999年10月30日から11月2日にかけて開かれた国際ワークショップで、歯周疾患の分類が全面的に組み替えられたためです。何が問題で、何をどう変えたのか。委員長を務めたArmitageによる、その報告です。
①病名が変わると、何が変わるのか
成人性歯周炎。早期発症型歯周炎。若年性歯周炎。急速進行性歯周炎。難治性歯周炎。
これらの病名は、1999年を境に姿を消しました。1999年10月30日から11月2日にかけて開かれた International Workshop for a Classification of Periodontal Diseases and Conditions で、新しい分類が合意されたためです。
この論文は、その委員長を務めたArmitageによる報告です。「分類体系は、疾患の病因・病態・治療を秩序立てて科学的に研究するための枠組みを提供するために必要である。加えて、そうした体系は、臨床家が患者のヘルスケア上のニーズを整理する方法を与える」。
そして冒頭で、1989年分類の4つの問題が列挙されます。「(1)疾患カテゴリー間の重複が大きい、(2)歯肉疾患の構成要素が欠けている、(3)発症年齢と進行速度に不適切な重みが置かれている、(4)分類基準が不十分または不明確である」。「1993年のヨーロッパ分類は、臨床で遭遇する歯周疾患の広い範囲を十分に特徴づけるだけの詳細さを欠いていた」。
②年齢を、分類の軸から外す
最初の大きな変更が「成人性歯周炎(Adult Periodontitis)」の廃止です。
「当初から、”成人性歯周炎”という用語は臨床家に診断上のジレンマをつくり出していた。疫学データと臨床経験は、成人でよく見られる型の歯周炎が青年期にも見られうることを示唆する」。「もしそうなら、非成人(たとえば青年)でこの型の歯周炎をもつ者を、どうして”成人性歯周炎”と言えるのか」。
代替案として「Periodontitis—Common Form」や「Type II Periodontitis」も検討されましたが、多数によって退けられました。「慢性歯周炎(Chronic Periodontitis)」も一部から「”慢性”は”治らない”と解釈されうる」と批判されましたが、「この疾患が治療に反応しないことを含意しない、と理解される限りにおいて」最終的に合意されています。
ここで重要な注意も添えられました。「伝統的に、この型の歯周炎はゆっくり進行する疾患として特徴づけられてきた」。実際「多くの情報源からのデータが、この型の歯周炎をもつ患者は通常、遅い進行速度を示すことを裏づける」。「しかし、一部の患者が短期間の急速な進行を経験しうることを示すデータもある。したがってワークショップ参加者は、進行速度を理由に慢性歯周炎の診断から人を除外すべきではないと結論した」。
同じ論理が「早期発症型歯周炎(Early-Onset Periodontitis, EOP)」にも適用されました。「”早期発症”という呼称は、疾患がいつ始まったかについての時間的知識を持っていることを含意する。しかし臨床実践においても、その他のほとんどの場面においても、それが分かることはまれである」。
そして具体例が挙げられます。「21歳の患者が、限局型若年性歯周炎(LJP)の古典的な切歯-第一大臼歯パターンを示すとき、その歯周疾患をどう分類するのか。この患者はもはや若年者ではないのだから、年齢を無視してLJPと分類すべきなのか」。「同様の問題は、広汎型の歯周組織破壊をもつ21歳の患者に1989年分類を当てはめるときにも生じる。この患者は”急速進行性歯周炎(RPP)”なのか、”広汎型若年性歯周炎(GJP)”なのか。どちらの呼称も受け入れられない、と論じることができる。RPPの診断は進行速度が分かっていないため適切でないかもしれないし、GJPの呼称はこの患者がもはや若年者でないため受け入れられない」。
結論はこうです。「これらの問題のため、ワークショップ参加者は、年齢に依存する、あるいは進行速度の知識を要する分類用語を捨てるのが賢明であると判断した」。「したがって、かつて”早期発症型歯周炎”の傘の下にあった高度に破壊的な型の歯周炎は、”侵襲性歯周炎(Aggressive Periodontitis)”の用語を用いて改名された」。
ただし、機械的な読み替えは戒められています。「旧い文献でGJPと分類されていた一部の患者は、一次的・二次的な特徴の多様性に応じて、新分類では慢性歯周炎か広汎型侵襲性歯周炎のどちらのカテゴリーにも適切に置かれうる」。「旧分類から新分類へ情報を移すとき、一貫した一対一の関係があると仮定するのは不適切である」。
③消えたカテゴリー、生まれたカテゴリー
廃止されたものが3つあります。
- 急速進行性歯周炎(RPP):呼称は廃止。「かつてRPPと分類されていた患者は、他のさまざまな臨床基準に応じて、広汎型侵襲性歯周炎か慢性歯周炎のいずれかに割り当てられる」。「急速に進行する型の歯周炎をもつ患者が存在することは強調されるべきである。ただし彼らは均質な集団を成してはいない」
- 思春期前歯周炎:カテゴリーを削除。「広汎型思春期前歯周炎と診断されていた患者のほとんどが、実際には細菌感染への抵抗性を妨げる何らかの全身状態をもっていたことが、いまや知られている」(白血球接着不全、先天性原発性免疫不全、低ホスファターゼ症、慢性好中球機能異常、周期性好中球減少症など)。「新分類では、そうした患者は”全身疾患の症状としての歯周炎”の項に置かれる」。「修飾する全身状態を伴わずに歯周組織破壊をきたす思春期前の小児は、二次的特徴に応じて慢性歯周炎または侵襲性歯周炎に収まる」
- 難治性歯周炎:独立カテゴリーから削除。「歯周治療が歯周炎の進行を止めることに失敗する臨床状況と治療が多様であるため、ワークショップ参加者は”難治性歯周炎”が単一の疾患実体ではないという見解をとった」。「実際、すべての型の歯周炎のうち少数の症例が治療に反応しない可能性は考えられた」。「そこで、単一の疾患カテゴリーとするのではなく、”難治性”という呼称を新分類のすべての型の歯周炎に適用しうるものとした(例:難治性慢性歯周炎、難治性侵襲性歯周炎)」
新設されたものは4つです。
- 歯肉疾患:プラーク性歯肉疾患と、主にプラークと関連しない歯肉病変に分けて詳細に分類。「プラーク性歯肉疾患の項の重要な特徴は、歯肉炎の臨床的表現が(1)内分泌系の変動などの全身因子、(2)薬剤、(3)栄養不良によって実質的に修飾されうることを認めた点にある」
- 歯周膿瘍:主に発生部位(歯肉膿瘍・歯周膿瘍・智歯周囲膿瘍)に基づく簡潔な分類。「歯周膿瘍は多くの型の歯周炎の臨床経過の一部だと論じることもできる。しかしワークショップ参加者の見解では、歯周膿瘍は特別な診断上・治療上の課題を提示するため、他の歯周疾患と分けて分類されるに値する」
- 歯周-歯内病変:「1989年分類には歯周炎と歯内病変のつながりに関する項がなかった。そこで、この領域を扱う簡潔な分類が追加された」
- 発育性または後天性の異常と状態:「この項に挙げられた異常と状態は個別の疾患ではないが、歯周疾患への感受性の重要な修飾因子であり、治療の結果を劇的に左右しうる。加えて、歯周病専門医はこれらの状態の多くを治療するよう日常的に求められているため、新分類のなかに位置を与えられた」
「壊死性潰瘍性歯周炎」は「壊死性歯周疾患」に置き換えられ、NUG(壊死性潰瘍性歯肉炎)とNUP(壊死性潰瘍性歯周炎)が同じカテゴリーに収められました。「これらが単一の疾患過程の一部なのか、それとも真に別個の疾患なのかを解決するデータが不十分であるため」。「将来の研究がNUGとNUPを根本的に異なる疾患だと示せば、その後の改訂で分けることができる」。
④糖尿病と喫煙は、なぜ独立していないのか
臨床家がよく引っかかる点にも、この論文は答えています。
「全身疾患の症状としての歯周炎」の項には、歯周炎が高頻度に発現する全身疾患のリストが載っています。ところが、そこに糖尿病は含まれていません。
「ワークショップ参加者の総意では、糖尿病はすべての型の歯周炎の重要な修飾因子でありうるが、糖尿病に特異的に関連する歯周炎の型があると結論するにはデータが不十分である」。「たとえば、コントロール不良の糖尿病の存在は、慢性および侵襲性歯周炎の臨床経過と表現を変化させうる」。「同様に、新分類には喫煙が歯周炎に及ぼす影響に対する独立した疾患カテゴリーも含まれない。喫煙は複数の型の歯周炎の重要な修飾因子と考えられた」。
そのうえで、著者自身が体系の矛盾を認めます。「新体系の見かけ上の不整合のひとつは、分類の”プラーク性歯肉疾患”の部分に、全身因子によって修飾されうる歯肉疾患のリストが含まれていることである。このリストには”糖尿病関連歯肉炎”がある」。「糖尿病関連歯肉炎のカテゴリーを入れておきながら、並行する歯周炎のカテゴリーを意図的に除外することを、どう正当化できるのか」。
その答えはこうです。「この決定の理由は、プラーク性歯肉炎がワークショップ参加者によって単一の実体と考えられたことにある。歯周炎ではそうではなく、明確に異なる臨床型が存在する」。「新分類に”糖尿病関連慢性歯周炎”や”糖尿病関連侵襲性歯周炎”といった下位分類を加えることは可能だっただろう。しかしこのグループは、それが不必要に複雑であり、裏づけるデータによってまだ正当化されないと判断した」。
そして範囲と重症度です。慢性歯周炎・侵襲性歯周炎はいずれも、範囲と重症度でさらに分類できます。範囲は「関与部位が30%以下を限局型、30%超を広汎型」。重症度は臨床的アタッチメントロス(CAL)で「軽度=1〜2mm、中等度=3〜4mm、重度=5mm以上」。
⑤明日の臨床へ
第一に、古い文献を読むときの換算表として使う。1999年より前の論文には「成人性歯周炎」「若年性歯周炎」「急速進行性歯周炎」が当たり前に出てきます。その対応関係を知らないまま読むと、対象集団を取り違えます。ただし著者自身が釘を刺したとおり、一対一の読み替えはできません。旧分類の集団は、新分類では複数のカテゴリーに分かれて入ります。
第二に、「診断名を進行速度で決めない」という原則を持つ。この論文がいちばん強く主張したのは、年齢と進行速度を分類の軸から外すことでした。「速く進んでいるから侵襲性」「遅いから慢性」という判断は、この改訂が明確に否定した読み方です。
第三に、範囲と重症度は別々に記録する。限局型か広汎型か(30%を境に)、そしてCALで軽度・中等度・重度。この2軸を分けて書く習慣は、いまの分類にもそのまま引き継がれています。
今日のひとこと
1989年分類の問題は4つとされた。(1)疾患カテゴリー間の重複が大きい、(2)歯肉疾患の項目がない、(3)発症年齢と進行速度に不適切な重みが置かれている、(4)分類基準が不十分または不明確である。1993年のヨーロッパ分類は、臨床で遭遇する歯周疾患の広い範囲を十分に特徴づけるだけの詳細さを欠いていた。新分類では歯肉疾患の項目が追加され、プラーク性歯肉疾患と非プラーク性歯肉病変に分けられた。「成人性歯周炎」は「慢性歯周炎」へ置き換えられた。成人でよく見られる型が青年期にも見られる以上、年齢に依存した名称は成り立たないためである。進行速度を理由に慢性歯周炎の診断から除外してはならない、とも明記された。「早期発症型歯周炎」は「侵襲性歯周炎」へ置き換えられた。「早期発症」という語は発症時期を知っていることを前提とするが、臨床でそれが分かることはまれだからである。限局型若年性歯周炎(LJP)は限局型侵襲性歯周炎、広汎型若年性歯周炎(GJP)は広汎型侵襲性歯周炎に対応するが、旧分類との一対一の対応を前提にすべきではないとされた。「急速進行性歯周炎(RPP)」の呼称は廃止された。「思春期前歯周炎」のカテゴリーは削除され、該当患者の多くは「全身疾患の症状としての歯周炎」に置かれることになった。「難治性歯周炎」も独立した疾患カテゴリーから外され、「難治性」はすべての歯周炎に付けうる修飾語となった(難治性慢性歯周炎・難治性侵襲性歯周炎など)。「壊死性潰瘍性歯周炎」は「壊死性歯周疾患」となり、NUGとNUPが同じカテゴリーに置かれた。歯周膿瘍、歯周-歯内病変、発育性または後天性の異常と状態の3カテゴリーが新設された。糖尿病は「全身疾患の症状としての歯周炎」のリストに入らなかった。糖尿病はすべての型の歯周炎の重要な修飾因子だが、糖尿病に特異的な歯周炎の型があると結論するにはデータが不十分とされたためである。喫煙も同様に、独立したカテゴリーではなく複数の型の重要な修飾因子と位置づけられた。範囲は関与部位が30%以下を限局型、30%超を広汎型とし、重症度は臨床的アタッチメントロス(CAL)で軽度1〜2mm・中等度3〜4mm・重度5mm以上と定義された。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


