ペリオ|Phase2 歯周外科
骨縁下欠損に再生療法を選ぶとき、エムドゲインとリグロスのどちらを使うか。よく似た使い方をする2剤ですが、多施設・盲検・ランダム化で直接比べた試験は長らくありませんでした。2016年、Kitamuraらは全国の大学病院を巻き込んだ第III相試験を2本立てで組み、プラセボとエムドゲインの両方に問いを立てました。
①リグロスは、エムドゲインより効くのか
骨縁下欠損に再生療法を選ぶとき、多くの先生が一度は迷う問いでしょう。エムドゲイン(EMD)とリグロス(rhFGF-2)、どちらを使うか。両者はゲル状で、フラップを開けて欠損部に置くという使い方までよく似ています。
ところが、この手の比較は長いあいだ「なんとなくの印象」で語られてきました。再生療法の生物学的製剤同士を、多施設・盲検・ランダム化・実薬対照で直接比べた試験が存在しなかったからです。2016年、Kitamuraらが報告した第III相試験は、その空白を埋めるために組まれました。試験Aでプラセボと比べ、試験Bでエムドゲインと直接比べる——2本立ての設計です。
②プラセボ対照とエムドゲイン対照、2本立てで問う
試験Aは、全国23大学病院の24施設で行われた多施設・ランダム化・二重盲検・プラセボ対照試験です。初期治療後のポケット4mm以上かつX線で3mm以上の垂直性骨欠損を持つ患者328名を2:1で割り付け、323名が0.3% rhFGF-2またはプラセボ(基剤のヒドロキシプロピルセルロース)の投与を受けました。
試験Bは、15大学病院の15施設で行われた多施設・ランダム化・実薬対照試験(患者とX線評価者に盲検)。より重度の症例——ポケット6mm以上かつ骨欠損4mm以上——274名を5:5:2でrhFGF-2、EMD、フラップ手術単独に割り付け、267名が治療を受けました。
術式はどちらも共通で、改良ウィドマンフラップに準じて剥離し、不良肉芽をすべて除去、ルートプレーニングの後に薬剤を骨欠損部へ投与します。評価は36週後。X線はコーンインジケータで幾何学的に規格化し、東北大学の歯科放射線専門医5名が独立して計測、5つの計測値の中央値を採用するという念の入れようです。
ここは強調しておきたいところです。再生療法の生物学的製剤同士を、多施設・盲検・ランダム化・実薬対照で直接比較したのは、著者らの知る限りこれが最初。両試験を通じてrhFGF-2の投与を受けたのは計600名で、歯周組織再生療法の臨床試験としては最大規模です。
③骨は増えた。ただしアタッチメントは
試験Bの主要評価項目である36週後の線状骨増加量は、rhFGF-2群1.927mm(95%CI 1.662–2.192、n=108)に対し、EMD群1.359mm(95%CI 1.068–1.650、n=109)。群間差は0.568mm(95%CI 0.176–0.959)で、あらかじめ定めた非劣性マージン0.3mmを満たしただけでなく、95%CIの下限が0を上回ったため、EMDに対する優越性まで示されました。
この試験には、比較が成立していることを確かめるための第3群(フラップ手術単独、n=43)が置かれています。EMD群とフラップ単独群の差は約0.7mmで、これは過去のEMD試験から推定されていた効果量0.81mmとよく一致していました。つまり「今回EMDが弱く出たから差がついた」わけではない、ということです。
試験Aの主要評価項目のひとつ、36週後の骨充填率は、rhFGF-2群37.131%(95%CI 32.75–41.51、n=208)に対しプラセボ群21.579%(95%CI 16.36–26.80、n=100)で、有意差あり(p<0.001)。群間差は12週の時点ではわずかで、24週・36週と時間とともに開いていきました。
そして、率直に書いておくべき結果があります。試験Aのもう一つの主要評価項目であるCAL獲得量は、rhFGF-2群2.1mm・プラセボ群2.0mmで、有意差がありませんでした(p=0.541)。試験Bでは3群それぞれ2.7mm・2.3mm・1.7mmと序列は保たれましたが、試験Aで差が出なかったことは押さえておきたい点です。
著者らはこれを、CALという指標そのものの性質で説明しています。CALは根面への結合組織性付着の位置を正確に測っているわけではなく、炎症の消退や長い上皮性付着でも数値が改善しうる——だからこそ、骨の再生をX線で捉える指標と、必ずしも同じ動きをしないというわけです。rhPDGFの二重盲検試験でも、24週時点のCAL獲得に有意差は示されていません。動物実験のレベルでは、rhFGF-2がシャーピー線維を伴う新生セメント質・機能的に配列した新生歯根膜線維・新生歯槽骨を、基剤群や無処置群より多く形成することが確認されています。
④明日の臨床へ——どんな症例に、何を期待して使うか
安全性については、両試験とも問題は検出されませんでした。有害事象の多くは軽度で、群との関連は認められず、抗FGF-2抗体の産生は1例も観察されていません。
そのうえで、著者らが自ら書いている注意点があります。rhFGF-2の分裂促進作用は、理論上は腫瘍の増殖・転移のリスクになりうるという点です。600名中4名に悪性腫瘍関連の有害事象が観察されましたが、すべて口腔外の発生で、局所投与されたrhFGF-2が全身へ移行することはほとんどないことから、因果関係は否定されています。それでも著者らは「口腔内に腫瘍のある患者には使用すべきでない」と明記し、市販後調査を計画すると述べています。
適応の広さも確認されました。喫煙は骨再生に不利に働くことが知られていますが、本試験では喫煙者でもrhFGF-2の骨増加効果が認められました。また年齢・性別・歯種・歯髄の生死・骨欠損の壁数(2壁性・3壁性・2/3壁性)による効果の差も認められていません。
選択の材料としては、EMDがブタ胎仔の歯胚から抽出・半精製されたものであり、由来を気にする患者がいること、作用機序が完全には解明されていないことを著者らは挙げています。組換えヒトタンパクであるrhFGF-2にはその論点がありません。逆に、GTRのような術式はテクニックセンシティブである、という整理です。
今日のひとこと
骨縁下欠損に対するrhFGF-2(トラフェルミン)の効果を、プラセボ対照(試験A・24施設・328名を2:1で割り付け)と実薬対照(試験B・15施設・274名をrhFGF-2/EMD/フラップ単独に5:5:2で割り付け)の2本立てで検証した第III相試験。試験Bの主要評価項目である36週後の線状骨増加量は、rhFGF-2群1.927mm(95%CI 1.662–2.192)に対しEMD群1.359mm(95%CI 1.068–1.650)で、群間差0.568mm(95%CI 0.176–0.959)。あらかじめ定めた非劣性マージン0.3mmを満たしたうえ、95%CIの下限が0を上回ったためEMDに対する優越性も示されました。フラップ手術単独群は0.676mmで、EMDとの差約0.7mmは過去のEMD試験の推定効果量0.81mmとよく一致しており、比較の妥当性が担保されています。試験Aの36週後の骨充填率は、rhFGF-2群37.131%に対しプラセボ群21.579%(p<0.001)で、群間差は12週ではわずかで24週・36週と時間とともに拡大しました。一方、もう一つの主要評価項目であるCAL獲得量は、rhFGF-2群2.1mm・プラセボ群2.0mmで有意差なし(p=0.541)。著者らはCALが根面への結合組織性付着を正確に測る指標ではなく、炎症の消退や長い上皮性付着でも改善しうることを理由に挙げています。安全性の問題は両試験で検出されず、抗FGF-2抗体の産生も1例もありませんでした。喫煙者でも骨増加効果が認められ、年齢・性別・歯種・歯髄の生死・骨欠損の壁数による効果の差もありませんでした。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


