1問1答 論文 歯周病

脱灰するかしないかだけで、新生骨は1.6倍違った

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase2 歯周外科

抜歯窩に骨を入れる。そのとき、脱灰骨(DFDBA)と非脱灰骨(FDBA)のどちらを選ぶかで、結果は変わるのでしょうか。2012年、WoodとMealeyは同じ1人のドナーから採った骨を使い、粒径まで揃えて、違いを「脱灰の有無」だけに絞りました。19週後、歯槽堤の形は同じ。中身が違いました。

論文
Histologic Comparison of Healing After Tooth Extraction With Ridge Preservation Using Mineralized Versus Demineralized Freeze-Dried Bone Allograft
著者
Wood RA, Mealey BL
掲載
Journal of Periodontology 2012;83(3):329-336
種類
ランダム化比較試験(40名を2群・33名完了・32検体の組織形態計測)
PMID
21749166

その骨、脱灰されているかどうかを見ていますか

抜歯窩を保存するとき、同種骨(アログラフト)は定番の選択肢です。棚には脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)と非脱灰凍結乾燥骨(FDBA)が並んでいて、どちらも「効く」とされています。では、どちらを選ぶべきなのか。この問いに答える直接比較は、2012年まで存在しませんでした

理屈のうえでは、違いははっきりしています。どちらも骨伝導性(足場になる性質)はあるただし骨誘導性(間葉系細胞を骨芽細胞へ分化させる性質)が証明されているのはDFDBAだけです。その源は、骨基質に含まれる骨形成タンパク(BMP)FDBAにも同じBMPは入っていますが、石灰化した基質に閉じ込められているため、破骨細胞が脱灰してくれるまで出てきませんDFDBAは、その工程が済んだ状態で植えられる——というわけです。

ただし話はそう単純でもありません。FDBAのほうが足場としての形態維持に優れ、骨伝導性が高い可能性が指摘されていますまた、破骨細胞による分解に時間がかかるぶん、BMPの放出が長く続くという見方もできます脱灰しすぎればカルシウムが失われ、新生骨基質の石灰化に必要な核が減る(最大の骨誘導能は残存カルシウム約2%とされます)どこかに折り合いがあるはずですが、ヒトの抜歯窩でどちらが多く骨をつくるかは分かっていませんでした

先に結論: 歯槽堤の寸法は同じただし19週後の新生骨は、脱灰骨のほうが1.6倍多かった

違いを、脱灰の有無だけに絞る

この研究の設計が周到です。対象は、単根の非大臼歯を抜歯してインプラントを希望した40名封筒法で2群にランダム割り付けされました。大臼歯を外したのは、根間中隔の骨がコア生検に混じるのを避けるため10mm以上の骨支持があり、根の方向がインプラント埋入の方向に近い歯だけを選んで、生検が確実に「移植した部分」から採れるようにしています

そして材料です。DFDBAもFDBAも、すべて同一の47歳女性ドナーから採取した骨で作られました粒径はどちらも250〜750μmに統一DFDBAの残存カルシウムは3.3%つまり2つの材料の違いは、最終製品の石灰化率だけです。ドナーの年齢・性別・処理工程といった交絡が、設計の段階で消してあります

さらに、使用したDFDBAの骨誘導能を、ヌードマウスの筋肉内に埋植する試験で事前に確認しています。結果は4段階中1(誘導能は0より大きく25%未満)=低いが存在するこの確認があるおかげで、結果の解釈が一段深くなります(後述)。

抜歯はペリオトームで低侵襲に行い、必要な場合のみ最小限の弁を挙上骨を骨頂かやや冠側まで填入し、吸収性コラーゲン膜で覆って非吸収糸で固定しました。18〜20週後、インプラント埋入時に内径2.0mmのトレフィンで約8mmのコアを採取し、切片を新生骨・残存移植片・結合組織その他の3つに分けて、ピクセル単位で面積比を計測しています。33名が完了し、32検体(各群16)が解析されました

形は同じ、中身が違う

0 20% 40% 60% 生検組織に占める割合 (%) 38.4% 24.6% 8.9% 25.4% 新生骨 残存移植片 19週後のコア生検。新生骨 p=0.010/残存移植片 p=0.004。結合組織などの非骨成分は両群とも約50%で差なし
19週後のコア生検。新生骨も残存移植片も、群間で有意差が出た

生検組織に占める新生骨は、DFDBAが38.42±14.48%、FDBAが24.63±13.65%(p=0.010)残存する移植片は、DFDBAが8.88±12.83%、FDBAが25.42±17.01%(p=0.004)結合組織などの非骨成分は、DFDBA 52.71%・FDBA 49.94%と、両群ともほぼ半分を占めて差がありません

ここが読みどころです。非骨成分の割合が両群で同じということは、「移植片が吸収された分だけ、そこが新生骨に置き換わっていた」ことを意味します実際、新生骨の割合と残存移植片の割合は強く逆相関していました(DFDBAでr=−0.837、FDBAでr=−0.761)骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合はDFDBAで81.26%、FDBAで50.63%(p=0.005)——FDBAでは、19週の時点でも骨の半分が「まだ移植片のまま」だったことになります。

0 1.7mm 3.3mm 5mm 抜歯後に失われた歯槽堤の幅 (mm) 2.2mm 2.1mm 3.9mm 脱灰骨で保存 非脱灰骨で保存 保存しない場合 2群間に有意差なし(p>0.05)。「保存しない場合」は抜歯後の寸法変化を扱った系統的レビューの報告値(参考)
臨床的な歯槽堤の幅の減少。2群に差はなく、どちらも「保存しない場合」よりは明らかに小さい

一方で、臨床的な寸法変化には差が出ませんでした幅の減少はDFDBAが2.18±1.62mm(−22.8%)、FDBAが2.09±1.71mm(−20.9%)高さの減少は両群とも1mm未満です。抜歯後に何もしない場合の報告値(高さ1.67mm・幅3.87mm)と比べれば、どちらの材料でも保存の効果は明らかですが、2つの材料のあいだに差はありません

「誘導能が低くても差が出た」の意味

著者らが事前に骨誘導能を測っておいた意図は、ここで効いてきます。もしFDBAのほうが多く骨をつくっていたら、「使ったDFDBAのロットに誘導能が無かっただけ」と説明できてしまう逆にDFDBAが圧勝しても、「たまたま誘導能の高いロットだった」と言われかねません実際に使われたDFDBAの誘導能は4段階中1=低いほうでした。それでも新生骨に有意差が出た——だからこの結果は、「たまたま良いロットだった」では説明できないことになります。

DFDBAのロット差は、以前から知られた問題です。6つのボーンバンクの製品を調べた研究では、大半のロットが異所性の骨形成を誘導した一方、まったく誘導しないロットもありましたBMPは処理工程やドナーの条件で失活しうるためです。この研究は「誘導能の下限に近い製品でも、非脱灰骨より速く自家骨に置き換わった」ことを示したと読めます。

ここが要点: 寸法の維持=どちらでも同じ差が出るのは「19週時点で、どれだけ自分の骨になっているか」

明日の臨床へ

1つ目。目的が「形の維持」なら、どちらでもよい。 インプラントを植えられる幅と高さを残すという目的に限れば、この研究は2つの材料を区別しませんでした入手性やコストで選んでも、寸法の結果は変わらないということです。

2つ目。目的が「自家骨への置換」なら、脱灰骨に分がある。 19週で新生骨38%対25%、残存移植片9%対25%埋入時のドリリングで触れる骨質の感触も、この差を反映している可能性がありますただし著者ら自身、それが臨床的にどう効くかは今後の課題だと述べています)。

3つ目。ロットの誘導能は、こちらからは見えない。 DFDBAの効果はBMPの残存量に依存し、製品によって幅があります「脱灰骨だから必ず誘導能がある」とは言い切れない——この前提を持っておくと、結果が振れたときの解釈が変わります。

4つ目。19週という時間軸を意識する。 この研究は18〜20週の一時点だけを見ていますFDBAの残存粒子がその後さらに分解されて、いずれ追いつくのかどうかは、この研究では分かりません

ここだけ、冷静に補助線。 対象は単根の非大臼歯だけで、大臼歯の抜歯窩には外挿できません頬側骨壁の欠損が窩の50%を超える症例は除外されており、難症例は含まれていません寸法計測にステントを使っていないため、術前と術後で完全に同じ点を測れた保証はなく、標準偏差が大きいのも著者らが認める弱点です。そして最大の未解決点は、「新生骨が多いほどインプラントの予後が良いのか」が検証されていないこと。著者らは「どれだけの新生骨があればインプラントを支えられるのか」という問いを、そのまま今後の課題として残しています。それでも、ドナーも粒径も揃えて変数を1つに絞った設計は美しく、材料選択の議論を「印象」から「数字」に移した一本です。

今日のひとこと

単根の非大臼歯を抜歯し、抜歯窩を脱灰凍結乾燥骨(DFDBA)か非脱灰凍結乾燥骨(FDBA)で保存した40名をランダムに2群へ割り付け19週後(18〜20週)にインプラント埋入と同時に直径2mmのコア生検を採り、組織を計測した研究。骨材はすべて同一の47歳女性ドナーから採取し、粒径も250〜750μmに揃えたので、2群の違いは「最終製品の石灰化率」だけです。結果は明快でした。生検組織に占める新生骨はDFDBAが38.42±14.48%、FDBAが24.63±13.65%(p=0.010)残存する移植片はDFDBAが8.88±12.83%、FDBAが25.42±17.01%(p=0.004)結合組織などの非骨成分は両群とも約50%で差がありません骨組織だけを分母にすると、新生骨の割合はDFDBAで81.26%、FDBAで50.63%(p=0.005)。一方で臨床的な歯槽堤の寸法変化には、まったく差が出ませんでした——幅の減少はDFDBA 2.18mm・FDBA 2.09mm、高さの減少は両群とも1mm未満移植しない場合の報告値は幅3.87mm・高さ1.67mm)。使用したDFDBAの骨誘導能は4段階中1(低いが存在する)と事前に確認済みで、著者らは「その程度の誘導能でも有意差が出た」点を強調しています。

出典:Wood RA, Mealey BL. Histologic comparison of healing after tooth extraction with ridge preservation using mineralized versus demineralized freeze-dried bone allograft. J Periodontol 2012;83(3):329-336. PMID: 21749166
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。