1問1答 論文 歯周病

歯みがきは、1日1回で足りるのか

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

「1日2回は磨いてください」——毎日そう伝えています。ただ、その根拠を突き詰めると意外に薄い。しかも既存の研究は、歯周炎にかかったことがない人を対象にしたものばかりでした。一度かかった人は、どこまで間隔を空けられるのか。2020年、Maierらが3つの間隔に無作為に割り付けて確かめました。

論文
Effect of self-performed mechanical plaque control frequency on gingival health in subjects with a history of periodontitis: A Randomized Clinical Trial
著者
Maier J, Reiniger APP, Sfreddo CS, Wikesjö UME, Kantorski KZ, Moreira CHC
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2020;47(7):834-841
種類
単盲検・並行群間・3群ランダム化比較試験(42名・90日)
PMID
32315448

「1日2回」の根拠は、意外と薄い

米国歯科医師会(ADA)は、う蝕と歯肉炎の予防のために1日2回のブラッシングを推奨しています。私たちも当然のように、そう伝えています。

ところが著者らは、そこに疑問符を打ちます——「その推奨が歯肉の健康を維持するのに十分かどうかについては、エビデンスが限られている」

実際、24時間や48時間の間隔でも歯肉の健康と両立するという1970年代の研究はあります(Kelner 1974、Lang 1973)。ただ方法論の制約から、そのまま一般化はできません最近の研究(Pinto 2013、de Freitas 2016)でも12時間・24時間の間隔は歯肉の健康と両立すると報告されています。

そして決定的な空白がありましたこれらのRCTはすべて、歯周炎の既往がない人を対象にしているのです。一度かかった人=歯周炎への感受性が証明されている人については、データがありませんでした

先に結論: 12時間ごとでも24時間ごとでも、歯肉の健康は保たれたところが48時間ごとにすると、15日目にはもう炎症が増え始めていた

42人を、3つの間隔に割り付ける

対象はブラジル・サンタマリア連邦大学の歯周メインテナンス・プログラム(リコール間隔4〜6か月)に参加している歯周炎既往者42名35歳以上、12歯以上で、組み入れ時点で出血のある部位(GI=2)が7.5%以下、BOPが25%以下——つまり「すでに良好に管理できている人たち」です。

喫煙者・妊婦・糖尿病・口腔乾燥症・固定式矯正装置・抗菌薬の予防投与が必要な人などは除外3群に14名ずつ無作為割付し、SPCの日時を書いたカレンダーを配布しました。

道具は全員同じです。ソフトの多束毛歯ブラシ、ワックス付きフロス、歯間ブラシ、歯磨剤、0.05%フッ化物洗口歯磨剤は「ブラシの幅いっぱいに1点」=約0.5gと指定され、試験終了時にチューブの重さを量ってコンプライアンスを確認しています。

評価はベースライン・15日・30日・90日診査はすべてSPCの前に行い2名の盲検化された検者が担当(PDの級内一致は重み付きκ=0.98、CALは0.96)。試験期間中はプロフェッショナルケアを行っていません

結果:48時間だけ、歯肉が負けた

0 8% 16% 24% 歯肉に出血がある部位の割合 (%) 5% 10.7% 4.2% 8.1% 5.5% 18.8% 12時間ごと 24時間ごと 48時間ごと 組み入れ時の「歯肉の健康」の基準は7.5%以下。90日後にこの線を大きく超えたのは48時間ごとの群だけ
出血のある部位の割合。48時間ごとの群だけが、健康の基準線を大きく超えた

歯肉炎指数(GI)が90日間を通じて変化しなかったのは、12時間ごとの群だけでした(0.7±0.1 → 0.9±0.1)。24時間ごとの群は30日と90日で、48時間ごとの群は15日の時点ですでに、ベースラインから有意に悪化しています。90日時点では、12時間 vs 48時間、24時間 vs 48時間のあいだに有意差がありました。

出血のある部位の割合で見ると、さらに分かりやすくなります90日後、12時間ごとの群は10.7%、24時間ごとの群は8.1%ところが48時間ごとの群は18.8%——およそ2倍です。組み入れ基準だった「7.5%以下=歯肉の健康」を大きく超えたのは、この群だけでした。

この差は、頬舌側でも隣接面でも同じパターンで現れています。

0 0.5 0.9 1.4 プラーク指数(Silness & Löe) 0.3 0.2 0.3 0.5 0.4 0.8 0.5 0.4 0.7 0.5 0.5 1.1 開始時 15日 30日 90日 12時間・24時間ごとの群は15日でわずかに増えたあと横ばい。48時間ごとの群だけが増え続けた
プラーク指数の推移。48時間ごとの群だけが増え続けている

プラーク指数も同じ形でした。12時間ごと・24時間ごとの群は15日でわずかに増えたあと横ばい(0.5前後)48時間ごとの群は15日で0.8に跳ね、90日には1.1まで上がっています。

いっぽう、ポケット深さ・付着レベル・BOPには、群間でも群内でも有意な変化がありませんでした。90日という期間は、こうした指標が動くには短いということです。

「回数」ではなく「間隔」の話である

この研究の設計で味わい深いのは、「1日何回磨くか」ではなく「何時間あけるか」で割り付けている点です。

12時間ごと=1日2回、24時間ごと=1日1回、48時間ごと=2日に1回同じ「1日1回」でも、朝と翌日の夜では30時間以上あく——そこを揃えたのがこの試験です。

そして分かれ目は、24時間と48時間のあいだにありましたバイオフィルムが炎症を起こす閾値まで成熟するのに、それくらいの時間がかかるという読み方ができます。Rambergらが示した「持続する歯肉炎症は、新たなプラーク形成に有利な条件を作る」という悪循環も、著者らは引いています。

興味深い副次的な観察もあります。試験終了時に量った歯磨剤の使用量は、12時間群92g・24時間群50g・48時間群55g48時間群が予想より多く使っている——指示より多く磨いたか、1回に多く使ったか。著者らは「それでも結果に影響しなかった」と述べていますが、裏を返せば「間隔を守れなかった人がいてなお、この差が出た」とも読めます。

ここが要点: 1日1回でも、きちんと24時間ごとなら間に合うけれど「昨日は疲れて磨けなかった」が1回入ると、そこは48時間になる

明日の臨床へ

1つ目。忙しい患者さんに、現実的な最低ラインを示せる。 「毎日1回、必ず丁寧に」——歯周炎の既往がある人でも、24時間ごとなら歯肉の健康が保たれたという数字は、「2回できない」と諦めかけている人への具体的な提案になります。

2つ目。「1日空ける」の重さを伝えられる。 48時間群は15日目にはもう悪化していました2週間で分かるほど早い「今日は疲れたから明日まとめて」が、思っているより高くつくという説明に使えます。

3つ目。歯周炎の既往がある人ほど、間隔を守る。 この研究の対象は「歯周炎にかかったことが証明されている=感受性が高い人たち」です。しかも定期管理下で、もともとよく磨けている人たちその条件でさえ48時間では追いつかなかった——感受性の高さは、間隔の余裕を削ると読めます。

4つ目。指導の言葉を「回数」から「間隔」へ変えてみる。 「1日2回」より「12時間から24時間に1回、必ず」のほうが、この研究に忠実です。朝晩の生活リズムに落とし込みやすいという利点もあります。

ここだけ、冷静に補助線。 42名(各群14名)と小規模で、観察は90日ポケットや付着レベルの変化を語れる長さではありません(実際、有意な変化は出ていません)。最大の限界はコンプライアンスの確認で、著者ら自身「被験者が実際にその頻度でSPCを行ったかを評価するのは難しい」と書いています。組み入れ基準が「GI=2の部位が7.5%以下」と厳しく、口腔衛生水準の高い人だけを集めているため、外的妥当性も限定されます(磨けていない人にそのまま当てはめられません)。また12時間群はベースラインのGIが最も高く、そのまま90日維持したという解釈も可能で、12時間と24時間のあいだに差がなかった理由の一つかもしれません。それでも、「歯周炎の既往がある人」を対象にこの問いを直接検証した最初のRCTであり、「1日1回で間に合う/2日に1回では間に合わない」という線引きは、明日からの指導室でそのまま使えます

今日のひとこと

定期的な歯周メインテナンス(リコール4〜6か月)を受けている歯周炎既往者42名を、自分で行う機械的プラークコントロール(SPC)を12時間ごと・24時間ごと・48時間ごとに行う3群へ無作為に割り付け、90日間追跡したRCT。全員に同じ歯ブラシ・フロス・歯間ブラシ・歯磨剤・フッ化物洗口を配布し、ベースライン・15日・30日・90日でプラーク指数と歯肉炎指数を評価しました。結果、90日を通じて歯肉炎指数が変化しなかったのは12時間ごとの群だけ(0.7±0.1 → 0.9±0.1)24時間ごとの群は30日・90日でベースラインから有意に変化し、48時間ごとの群は15日の時点ですでに有意に悪化していました。出血のある部位(GI=2)の割合は、90日時点で12時間ごと10.7%、24時間ごと8.1%に対し、48時間ごとは18.8%——組み入れ基準だった「7.5%以下」を大きく超えたのは48時間ごとの群だけです。プラーク指数も、48時間ごとの群だけが増え続けました(0.3 → 1.1)ポケット深さ・付着レベル・BOPには、90日では群間差も群内変化もありません。結論は「12時間または24時間ごとのSPCで歯肉の炎症はコントロールできるが、48時間ごとでは維持できない」

出典:Maier J, Reiniger APP, Sfreddo CS, Wikesjö UME, Kantorski KZ, Moreira CHC. Effect of self-performed mechanical plaque control frequency on gingival health in subjects with a history of periodontitis: A Randomized Clinical Trial. J Clin Periodontol 2020;47(7):834-841. PMID: 32315448
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。