1問1答 論文 歯周病

ふつうに磨いている10代の歯肉に、裂け目ができていた

1問1答 論文 歯周病

ペリオ|Phase1 初期治療

外傷性のブラッシングが歯肉退縮を招く——臨床では常識のように語られますが、実は症例報告の積み上げが主で、前向きに追った研究はほとんどありませんでした。ブラジル・南リオグランデ連邦大学のグループは、14〜18歳の35名に2種類の歯ブラシを28日ずつ使ってもらい、2〜3日おきに染め出して写真を撮り続けました。何が起きていたのか、本人たちは気づいていませんでした。

論文
The incidence of gingival fissures associated with toothbrushing: crossover 28-day randomized trial
著者
Greggianin BF, Oliveira SC, Haas AN, Oppermann RV
掲載
Journal of Clinical Periodontology 2013;40(4):319-326
種類
ランダム化クロスオーバー試験(35名・単盲検・28日×2期)
PMID
23425194

「歯ブラシで歯肉が下がる」は、どこまで本当か

若い患者の頬側に、局所的な歯肉退縮。まだ歯周炎ではありません。ここで私たちはよく、こう説明します——「強く磨きすぎですね」

この説明には、それなりの根拠があります。硬い毛、強い力、毛先の形状、歯磨剤の研磨性。どれも歯肉の擦過傷と関係するとされてきました。ですが2007年のシステマティックレビューは、「観察研究の多くはブラッシングと歯肉退縮の関連を確認しているが、そのデータは関連を支持するにも否定するにも決定的でない」と結論しています。

症例報告は山ほどあります。Stillmanのクレフト、McCallのフェストゥーン。ですがこれらが「自己破壊的な習慣のある人だけの現象」なのか、それとも「ふつうに磨いている集団にも存在する」のかは、分かっていませんでした

2013年、ブラジルのグループが、この空白を前向きに埋めました。

先に結論: ふつうに毎日磨いている14〜18歳の35名中9名(25.7%)に、28日のどこかで歯肉の裂け目が観察された。ミディアムハードはソフトの約2倍のリスク。ただし最大の因子は歯ブラシではなく、すでに1mmの付着喪失がある部位(5.19倍)だった。

2〜3日おきに、染め出して撮る

被験者はブラジル・ポルトアレグレの州立高校の生徒。14〜18歳(平均15.2歳)、20歯以上あり、破壊性歯周疾患の既往なし、歯肉出血なし、大臼歯と小臼歯の頬側に2mm以上の付着喪失・退縮がないこと。喫煙者、妊娠中、矯正治療中、歯頸部の実質欠損・修復物・う蝕がある人は除外。41名から36名が組み入れられ、35名(男20・女15)が完遂しました。

デザインはクロスオーバーです。ソフトまたはミディアムハードの歯ブラシを28日間使用 → 10日間のウォッシュアウト → もう一方を28日間。歯ブラシは市販品で、ソフトは25タフト・53本・毛の直径0.18mm、ミディアムは25タフト・33本・0.25mm。どちらも毛先は丸めてあります。歯磨剤も統一し、洗口液は使用中止。参加者のふだんの磨き方は一切変更していません

評価が丁寧です。第一大臼歯から第一小臼歯までの領域で擦過傷を数え、最も病変の多い1/4顎を実験部位に選定。28日のあいだ2〜3日おきに計11回、染め出し液(2Tone)を30秒作用させて洗口し、チンレスト付きの固定装置に載せたNikonカメラで同一条件の写真を撮影します。

写真を判定する検者は、どちらの歯ブラシか・何回目のセッションかを知りません。歯肉の裂け目は「歯肉辺縁から根尖方向へ走る垂直性の病変で、染め出し後に濃い青に染まるもの」と定義され、角化歯肉全体に広がる表在性のびらんとは区別されました。

結果——4人に1人に、裂け目があった

0 3% 6% 9% 裂け目が観察された検査回の割合 (%) 2.9% 7.9% ソフト ミディアムハード 28日間・11回の検査セッションを通じた累積。群間差あり(p=0.002)
裂け目が観察された検査回の割合(%)。ミディアムハードで有意に多い

35名中9名(25.7%)が、28日間のいずれかの回に、いずれかの歯で裂け目を示しました。内訳は両方の歯ブラシで3名(8.6%)、ミディアムのみ4名(11.4%)、ソフトのみ2名(5.7%)。ただし「1つでも裂け目を持った人の割合」としては、歯ブラシ間に有意差はありません(McNemar p=0.69)。

差が出たのは、歯単位・検査回単位で数えたときです。裂け目が見つかった検査回は、ミディアムで7.9%、ソフトで2.9%(p=0.002)。全体では28日間の検査回の7.5%で裂け目が観察され、87.1%の回では何も見つかりませんでした

時間経過のパターンも違いました。どちらの歯ブラシでも、最初の検査(使用開始2〜3日)ですでに裂け目が検出されています。ソフトでは28日を通じてほぼ一定(6回目にピーク、9回目以降は減少)。ミディアムでは2回目から6〜7回目にかけて直線的に増加し、その後は横ばいになりました。

0 2 4 6 裂け目の発生率比(1.0が基準) 5.2 2 0.1 頬側に付着喪失あり ミディアムハードの歯ブラシ 女性であること 多変量GEEモデル3。基準は「付着喪失なし」「ソフトブラシ」「男性」。1.0を超えるとリスクが高い
多変量モデルによる発生率比(IRR)。1.0が基準

そして多変量解析が、この研究のいちばん重要な部分です。

ミディアムハードの歯ブラシは、ソフトの2.05倍(95%CI 1.23–3.35、p=0.006)。検査回数が1つ増えるごとに1.09倍——つまり28日の観察期間中に、リスクは約10%ずつ積み上がっていました

ですが最大の因子は別にありました。頬側に1mmの付着喪失がある部位は、ない部位の5.19倍(95%CI 2.3–11.7、p<0.001)。歯ブラシの2倍を、大きく上回ります。

一方、女性は男性より93%リスクが低く(IRR 0.06)、これは多変量モデルで有意性の境界にありました(p=0.053)。そして年齢・自己申告のブラッシング頻度・頬側のプラーク量は、いずれも有意な関連を示しませんでした(p>0.20)。

気づかれない、そして治る

この論文には、印象的な事実が2つあります。

1つ目。誰も痛みを訴えていません。著者らは明記しています——「病変の存在に基づく痛みや不快感の報告はなく、参加者は全員、病変の存在に気づいていなかった」。染め出して拡大写真を撮って、はじめて見えるものだったということです。

2つ目。治ります。論文の図2は、7回目のセッションで確認された裂け目が、10回目には消えている様子を示しています。裂け目は現れ、消え、また別の場所に現れる。だからこそ2〜3日おきという高頻度の観察でなければ、そもそも捉えられなかったのです(著者らも、観察の合間に生じて消えた病変は見逃されている可能性を認めています)。

読み替えると: 歯肉の裂け目は「事故」ではなく、日常のブラッシングに伴って繰り返し起きている微小な出来事である。単発では治癒するが、時間とともに累積し、その累積が退縮という不可逆な結果に結びついていく可能性がある。

明日の臨床へ

まず、すでに下がっている部位を最優先で守る。5.19倍という数字は、この論文で最も臨床的な数字です。付着喪失がある=歯肉が薄い・角化歯肉が少ない部位ほど、裂けやすい。退縮のある患者に「もっと磨いて」と言う前に、その部位にどう当てるかを先に決める必要があります。

次に、毛の硬さを指導の変数として扱う。2倍という差は、患者に伝えられる大きさです。とくに男性・すでに退縮がある人には、ソフトを明示的に指定する価値があります。

そして、「痛くないから大丈夫」を根拠にしない。本人の自覚は、まったく当てにならないことが示されました。裂け目の有無は、こちらが染め出して見るしかありません。

逆に、この研究が否定した通説にも触れておきます。自己申告のブラッシング頻度は、裂け目と関連しませんでした(平均3.3回/日、日誌では2.8回)。著者らは、参加者間で頻度のばらつきが小さかったことを理由に挙げていますが、少なくとも「回数を減らせ」という指導の根拠にはならないということです。プラーク量も関連しませんでした(そもそも検査部位のプラークが非常に少なかったため)。

ここだけ、冷静に補助線

ここだけ、冷静に補助線。35名・28日・14〜18歳の軍学校生という、かなり特殊な集団です。全顎ではなくあらかじめ選んだ1/4顎の頬側のみを見ており、部分的な検査は有病率を過小評価する傾向があります(著者ら自身が指摘)。また裂け目の数だけを数え、大きさは測っていません。そして最も重要な制約——この研究は裂け目までしか見ておらず、それが実際に歯肉退縮へ進むかどうかは追跡していません。裂け目と退縮のつながりは、あくまで既存の疫学データとの整合性から推論されているにすぎません。それでも、症例報告でしか語られてこなかった現象を、ふつうに磨いている集団の中で、前向きに、盲検で数えた初めての試験であり、「4人に1人」「2倍」「5.19倍」という3つの数字は、明日の指導の言葉を変えるだけの重さがあります。

今日のひとこと

35名中9名(25.7%)に、28日のどこかで歯肉の裂け目(gingival fissure)が観察されました。検査回ベースで見ると、ミディアムハードの歯ブラシでは7.9%の回で裂け目が見つかり、ソフトでは2.9%(p=0.002)。多変量解析では、ミディアムハードはソフトの約2倍のリスク(IRR 2.05)。ただし最大の因子は歯ブラシではありません——頬側に1mmの付着喪失がある部位は、5.19倍でした。女性は男性より93%リスクが低く、そして誰ひとり痛みを訴えていません。

出典:Greggianin BF, Oliveira SC, Haas AN, Oppermann RV. The incidence of gingival fissures associated with toothbrushing: crossover 28-day randomized trial. J Clin Periodontol 2013;40(4):319-326. PMID: 23425194
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。