今日の1本 — エビデンスを臨床に
治療後に残った深いポケット、様子見でいい?──残存6mm以上の抜歯リスク
歯周治療のあと「だいぶ良くなった」で様子見にする残存ポケット。でも残った深さ次第で、その歯を失う確率は跳ね上がります。ベルン大の11年データ(最長27年)を読み解きます。
①「残存ポケット」を様子見にしていないか
歯周基本治療(SRP)のゴールは、付着の喪失を止めて浅いポケットにすること。でも実際には、深いまま浅くしきれずに残るポケット——残存ポケットが出ます。「炎症は引いたし、メンテで様子を見よう」と判断しがちな、あの部位です。
その”様子見”、本当に大丈夫?——残った深さと、その後の抜歯・進行の関係を長期データで検証したのがこの研究です。
②今回の一手——11年メンテの172人を追跡
スイス・ベルン大学で歯周治療(APT)を終え、その後サポーティブ歯周治療(SPT=メンテ)を受けた172人を、平均11.3年(最長27年)追った後ろ向きコホート。残存ポケット(PPD≥5mm)とBOPが、その後の歯周炎の進行と抜歯にどう効くかを多変量で解析しました。
③結果=残った深さで抜歯リスクが激変
治療後に残ったポケットが深いほど、その歯を失うオッズ(抜歯リスク)は跳ね上がりました。基準は浅いポケット(PPD≤3mm)です。
④なぜ深い残存が危ないのか
深いポケットは器具も歯ブラシも届きにくく、嫌気性菌のすみかとして残ります。そこにBOP(出血)が重なる=炎症が続いているサイン。著者は、残存PPD≥6mmを「不完全な治療結果(治療未完)」と位置づけ、追加治療が必要だと結論づけています。
⑤明日の臨床へ
「炎症が引いた」だけで終わらせず、再評価時の残存6mm以上は”宿題が残っている部位”として扱う。BOPの有無もセットで見て、再SRP・歯周外科・部位ごとの再評価につなげるのが筋です。
⑥ここだけ、冷静に補助線
後ろ向き・単施設のコホートで、喫煙などの交絡も完全には除けません。これは因果の証明ではなくリスク関連です。とはいえ172人・最長27年という長期・多数の実データは重く、残存ポケットを軽く見ない根拠として十分に説得力があります。
今日のひとこと
治療後に残った6mm以上のポケットは『治療未完』。残存5mmで約8倍、7mm以上で60倍超の抜歯リスク——様子見にせず、もうひと押しの治療を。
J Clin Periodontol. 2008;35(8):685-695. PMID: 18549447.
※本記事は論文の要点を歯科医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。


