エンド|バイオセラミックシーラー(BC Sealer)とシングルコーン、AH Plus と加熱した垂直加圧で抜去歯の根管を充填し、2週間後に同じ手順で再治療して、作業長と根尖の開通を取り戻せるかを比べた実験室研究(Hessら 2011・Journal of Endodontics)
バイオセラミックシーラーで詰めた歯は、再治療で根尖まで戻れるのか。Hessらは2011年、抜去した下顎第一大臼歯の近心頬側根40本(湾曲が20度より小さく根尖が完成した根管)を4群(各10本)に分けて充填し、2週間後に同じ手順で再治療しました。ガッタパーチャのコーンを作業長の約2mm手前で止めたBCS(BC Sealer)群は、作業長に届いたのも根尖の開通が戻ったのも30%で、ほかの3群と有意に違いました。コーンを作業長まで入れたBCS群は、作業長に100%届き、開通は80%が戻りました(コーンを作業長まで入れたAH Plus群は100%。この2群の差は有意ではありません)。著者らは、従来の再治療の方法ではBCSを取りきれないことがある、と結論しています。
①バイオセラミックシーラー、再治療で根尖まで戻れる?
バイオセラミックシーラーとシングルコーンで詰めた歯が、数年後に再根管治療になった。ガッタパーチャは溶かせても、硬化したシーラーは取れるのか。根尖まで、ファイルは戻れるのか。使い始める前に、一度は気になる点だと思います。
この問いに抜去歯で答えようとしたのが、Hessらが2011年に Journal of Endodontics に報告した実験室研究です。バイオセラミックシーラーの BC Sealer(以下 BCS)と、比較の AH Plus で根管を充填し、2週間後に同じ手順で再治療して、作業長と根尖の開通(パテンシー)を取り戻せるかを調べました。
・ガッタパーチャのコーンを作業長の約2mm手前で止めたBCS群は、再治療で作業長に届いたのが30%、根尖の開通が戻ったのも30%だった。この群だけが、ほかの3群と有意に違った
・コーンを作業長まで入れたBCS群は、作業長には100%届いたが、根尖の開通が戻ったのは80%。コーンを作業長まで入れたAH Plus群(100%)との差は、有意ではなかった
・再治療の時間は、コーンを作業長まで入れたBCS群が平均7.14分で、コーンを作業長まで入れたAH Plus群(平均3.73分)より有意に長かった
・著者らの結論は「従来の再治療の方法では、BCSを取りきれないことがある」
・抜去した下顎第一大臼歯の近心頬側根40本(湾曲が20度より小さく根尖が完成した根管、各群10本)の実験室研究で、充填の2週間後に再治療した結果
②なぜこの研究が必要だったか
BCSは、練らずにそのまま根管に注入するバイオセラミックのシーラーです。メーカーの説明では、酸化ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、水酸化カルシウムなどからなり、象牙細管の水分を使って硬化が進みます。硬化の時間は、象牙細管の水分しだいで4時間から10時間以上とされています。
著者らは序論で、理想的な根管充填材の条件の1つに「必要なときに根管から取り除きやすいこと」を挙げ、バイオセラミックシーラーではこの点がまだ調べられていなかった、と書いています。ケイ酸カルシウムとリン酸カルシウムを基にしたバイオセラミックの材料は、硬化すると硬いことが知られていて、BCSで詰めた歯を再治療できるかは臨床家の心配ごとだった、という流れです。
③何をどう調べたか
抜去したヒトの下顎第一大臼歯40本から近心頬側根を切り離し、湾曲が20度より小さく、根尖が完成している根管を使いました。#10のファイルが解剖学的根尖を1mm越えて出ることで、根尖の開通を確かめています。作業長は、ファイルの先が根の表面に出る位置の1mm手前です。
NiTiロータリー(EndoSequence、テーパー0.04)で35号まで形成し、次亜塩素酸ナトリウムとEDTAで洗浄したあと、根管を、無作為にシーラー別の2群(各20本)に分け、さらにコーンの位置で2つずつ(各10本)に分けて、計4群で充填しました。
・BCS・作業長まで:BCSとガッタパーチャのシングルコーン。コーンを作業長まで入れる
・BCS・作業長の約2mm手前:同じくシングルコーンだが、コーンを作業長の約2mm手前に合わせる
・AH Plus・作業長まで:AH Plus と、加熱したガッタパーチャの垂直加圧(continuous wave compaction)。Obtura II で埋め戻す
・AH Plus・作業長の約2mm手前:同じ方法で、コーンを作業長の約2mm手前に合わせる
根管口はグラスアイオノマーで封鎖し、37℃・湿度100%で2週間保管したあと、全群を同じ手順で再治療しました。200℃に加熱した System B のプラガーで歯冠側の充填材を取り、クロロホルムを3〜4滴入れて、NiTiロータリーを2〜3mmずつ進めます。作業長まで届かなければ、細い手用ファイル(6・8・10号)で、詰まりを突破するか脇を抜けることを試みました。40号のロータリーが作業長に届くか、それ以上進めなくなった所で終わりです。
評価したのは、作業長に届いたか、根尖の開通が戻ったか、1根管の再治療にかかった時間の3つ。代表の試料は根を縦に割って、根尖部を走査電子顕微鏡(50倍)で観察しています。処置と評価は、すべて1人の術者が行いました。
④結果:コーンを作業長の約2mm手前で止めたBCS群は、7割で根尖に戻れなかった
作業長には、BCS・作業長まで、AH Plus の2群の計3群で100%が届きました。BCS・作業長の約2mm手前の群では、届いたのは30%でした。この群だけが、ほかの3群と有意に違いました(カイ二乗検定。原著の表記は P=.000)。
根尖の開通は、AH Plus の2群で100%が戻りました。BCS・作業長までの群は80%、BCS・作業長の約2mm手前の群は30%です。有意差があったのは、BCS・作業長の約2mm手前の群と、ほかの3群それぞれとのあいだでした(フィッシャーの正確検定 p=0.035、0.0015、0.0015)。BCS・作業長までの群と、AH Plus の2群とのあいだには、有意差は検出されませんでした。
再治療の時間は、BCS・作業長までの群が平均7.14分でいちばん長く、AH Plus・作業長までの群が3.73分でいちばん短い結果でした。4群の比較(一元配置分散分析)で有意差があり、その後の検定で有意差が出たのは、この2群のあいだだけでした(p=0.003)。
⑤結果の読み方
電子顕微鏡で見た代表の試料では、全群に削りかすや材料が残っていました。BCS・作業長までの群の試料では、根尖孔がBCSで埋まっているように見え、BCS・作業長の約2mm手前の群の試料では、根尖部の根管と根尖孔にBCSが残っていました。著者らは、コーンを作業長まで入れたBCS群で開通が戻らなかった歯は、このように根尖孔に残ったBCSが原因かもしれない、と考えています。
BCS・作業長の約2mm手前の群で、30%は作業長と開通が戻った理由について、著者らは「細い手用ファイルが、BCSの中の空隙を通ったか、形の不規則な根管でBCSの脇を抜けたのかもしれない。硬化しきっていないシーラーなら通ることもある」と推測しています。どれも確かめた結果ではありません。
押さえておきたい点が2つあります。1つは、BCS・作業長の約2mm手前の群について、著者らが「BCSの正しくない使い方だが、臨床でときに起こりうる状態」と書いていることです。もう1つは、コーンを作業長まで入れたBCS群の開通80%は、AH Plus 群の100%と有意差が検出されなかったことです。差がないと確かめたわけではありませんが、「BCSは作業長まで詰めても開通が戻らない」と言い切れる結果でもありません。
再治療の時間について、著者らは、BCS・作業長までの群が AH Plus・作業長までの群より平均3.4分長かったのは、開通を取り戻すのに手間がかかった試料があったためかもしれない、と書いています。BCS・作業長の約2mm手前の群と AH Plus・作業長の約2mm手前の群に有意差が出なかったのは、根尖まで進めないと早めに分かった歯に時間をかけなかったためかもしれない、としています。
著者らは、「シーラーとして使い、充填材の代わりにしない」こと、歯冠側3分の1〜半分を超音波で、残りをクロロホルム・ロータリー・手用ファイルで再治療することが、以前に勧められていたと紹介しています。そのうえで、この方法は今回の一部の試料で効かなかったとして、新しい方法か溶剤が要る、硬いペーストの除去に超音波が有効だった過去の報告から、超音波が役立つ場合もある、と書いています。ただし、方法の欄に書かれた再治療の手順は、歯冠側の充填材を加熱したプラガー(System B)で取るもので、超音波の使用は書かれていません。考察の「この方法」と方法の欄が食い違っているため、超音波の効果をこの研究から判断することはできません。
⑥明日の臨床へ
ここからは筆者の読みです。原著の主張ではありません。
BCSでシングルコーンの充填をするなら、ガッタパーチャのコーンを作業長まで入れることが、再治療のしやすさの面でも大事そうです。コーンが作業長の約2mm手前で止まり、根尖側がシーラーだけになった群では、10本中7本で作業長に戻れませんでした(30%から筆者が換算)。
コーンを作業長まで入れたBCS群でも、根尖の開通が戻らなかった歯が20%ありました(戻ったのは80%)。再治療になる可能性がある歯では、この結果も材料を選ぶときの判断材料の1つになりそうです。
ただし、これは抜去歯で充填の2週間後に再治療した結果です。再治療になった歯の痛みや治癒、臨床の成績は調べていません。
(1)抜去歯の実験室研究で、各群10本と少数です。対象は下顎第一大臼歯の近心頬側根で、湾曲が20度より小さい根管だけでした。
(2)充填から2週間後の再治療だけを調べています。もっと長い期間がたった歯で同じ結果になるかは分かりません。
(3)BCS群はシングルコーン、AH Plus 群は加熱した垂直加圧と、シーラーと充填の方法が同時に違います。差がシーラーの違いだけによるものかは、この設計では分けられません。
(4)測ったのは作業長・根尖の開通・時間で、根管に残った材料の量は測っていません。電子顕微鏡は代表の試料だけで、何本を観察したかは書かれていません。
(5)処置と評価は1人の術者で、評価する人が群を知らないようにした(盲検化)という記載はありません。
(6)材料は、BCSを発売した Brasseler USA が提供し、研究費は米国歯内療法学会(AAE)財団の助成です。著者らは利益相反は無いと記載しています。
BCSで詰めるならコーンは作業長まで。そのうえで、再治療の難しさも頭に置いておく。その出発点として読みたい1本です。
今日のひとこと
抜去歯の実験で、ガッタパーチャのコーンを作業長の約2mm手前で止めたBCS群は、再治療で作業長に届いたのも根尖の開通が戻ったのも30%でした。コーンを作業長まで入れたBCS群は、作業長に100%届き、開通は80%が戻りました(AH Plus 群100%との差は有意ではない)。湾曲が20度より小さく根尖が完成した下顎大臼歯の近心頬側根・各群10本・充填の2週間後の結果で、臨床の成績は調べていません。BCSで詰めるならコーンは作業長まで。そのうえで、再治療の難しさも頭に置いておく。その出発点として読みたい1本です。


