1問1答 論文 エンド

NiTiは太いほうが折れにくい——回すと逆だった。湾曲半径を10mmから5mmへ縮めると寿命は有意に短くなり、テーパーが大きいほど早く折れた(1999年・600本)

1問1答 論文 エンド

エンド|静的な荷重試験では見えない「繰り返し疲労」を、3ブランドのエンジン駆動NiTiファイル600本を折れるまで回して調べた研究。湾曲半径・サイズ・テーパー・破断面の様式を同時に見ている(Haïkel 1999・Journal of Endodontics)

ニッケルチタン(NiTi)は超弾性という性質を持ちます。Waliaらが「試作の」歯内療法用ファイルで、同種のステンレス鋼器具に比べ2〜3倍しなやかだと報告したのが始まりで、弾性限界を超えるまでに大きくたわめるため湾曲根管をトランスポーテーションを抑えて形成できる——それがNiTi導入の理屈でした。ところが問題が残ります。NiTiは弾性限界の内側で、しかも目に見える永久変形の兆候なしに折れることがあるのです。当時の規格(ANSI/ADA仕様書 第28号)は器具に静的な荷重をかけて破壊するまで測ると定めていましたが、著者らはこれをエンジン駆動NiTiには不適切だと断じます——これらの器具は根管へ入れる前から一定の回転速度で動くことを前提に作られているから。実際、静的トルク試験ではNiTiはステンレスと同等以上なのに、臨床では突然の破折が起きていました。そこでProfile・Hero・Quantecの3群から各条件10本ずつ、合計600本を、焼入れ鋼で作った半径5mm(急な湾曲)と10mm(緩やかな湾曲)の溝に入れ、350rpmで冷却しながら折れるまで回しました。結果、湾曲半径を10mmから5mmへ縮めると寿命は有意に短くなり(有意でなかったのはHero #30 テーパー4%の1条件のみ)、著者らは湾曲半径が破折の予測因子として最も有力だったと述べています。例えばHero テーパー2%の#20は半径10mmで1887秒もったのに半径5mmでは110秒。そしてテーパーが大きいほど破折までの時間は短く動的な破折時間は器具の直径に反比例しました——静的なねじり試験で「直径が増えると破折抵抗が増す」とされてきたのとは正反対です。破断面は3ブランドすべて例外なく延性破壊で、繰り返し疲労が主因であることを裏づけました。

論文
Dynamic and Cyclic Fatigue of Engine-Driven Rotary Nickel-Titanium Endodontic Instruments
著者
Youssef Haïkel, René Serfaty, Geoff Bateman, Bernard Senger, Claude Allemann(ストラスブール・フランス)
掲載
Journal of Endodontics 1999;25(6):434-440
種類
器具のin vitro疲労試験(実験室)。対象=Profile(Maillefer・#15〜40、テーパー4%と6%、非切削の先端、断面はU字のラジアルランド設計だがメーカーの図と異なり角を落とした三角で切削角は計6つ)、Hero(Micromega・#20/25/30、テーパー2%・4%・6%、断面は三角、先端は非切削)、Quantec(McSpadden・#1〜#10のサイズとテーパーの組み合わせ、先端は能動的に切削。#8と#1は作業長が同一のため1度だけ試験)。各群・各サイズ・各テーパー・各湾曲半径ごとに10本を無作為に選び、合計600本。装置=減速20:1のハンドピースを支持ブロックに固定し、焼入れ鋼の凹型の半径と凸型のシリンダーで湾曲を保証(凹型にはV字の導入溝)。湾曲半径は5mmと10mmの2種類で、湾曲が最も急な部分で根管の走行に一致する円の半径として定義。回転は350rpm(メーカー推奨)、冷たいエアスプレーで冷却して発熱によるNiTi合金の構造変化を防いだ。破折は先端が湾曲の出口から見えるため容易に検知でき、1/100秒のクロノメーターで記録。全ファイルの破断面を走査型電子顕微鏡で観察。先端から3mm(D3)と13mm(D13)の直径をマイクロメーターで実測してテーパーの表示精度も検証(装置全体の精度±2µm)。統計はt検定
PMID
10530246

「太いほうが折れにくい」は、回すと逆になる

ニッケルチタン(NiTi)は超弾性という性質を持ちます。Waliaらが「試作の」歯内療法用ファイルのねじり特性を調べ、同種のステンレス鋼(SS)器具に比べて2〜3倍しなやかだと報告したのが始まりで、この性質のおかげで弾性限界を超えるまでに大きくたわめ、湾曲根管をトランスポーテーションを抑えて形成できる——それがNiTi導入の理屈でした。

ところが問題が残りました。NiTiは弾性限界の内側で、しかも目に見える永久変形の兆候なしに折れることがあるのです。

結論を先に言います。600本を回し続けて分かったのは、寿命を決める最大の因子は湾曲半径であること。そして器具は太いほど・テーパーが大きいほど早く折れる——静的なねじり試験で「直径が増えると破折抵抗が増す」とされてきたのとは逆です。

止めて測る試験では、回転器具の折れ方は分からない

当時の規格(ANSI/ADA仕様書 第28号)は、器具に静的な荷重をかけて破壊するまで測ると定めていました。著者らはこれを、エンジン駆動NiTiファイルの破折抵抗の試験法として不適切だと断じます。理由は単純で、これらの器具は根管へ入れる前から一定の回転速度で動くことを前提に作られているから。止めた状態の解析には意味がない、というわけです。

実際、静的なトルク試験ではNiTi器具はSS器具と同等かそれ以上の成績を示していました。にもかかわらず臨床では突然の予期しない破折が起きる。この食い違いを埋めるのが繰り返し疲労(cyclic fatigue)だ、というのがこの論文の出発点です。

回転する器具は、湾曲部で外側に引張力、内側に圧縮力を同時に受けます。これが1回転ごとに入れ替わる——極めて破壊的な負荷のかかり方です。この領域の先行研究は、著者らの知る限りPruettらの1本しかありませんでした。

今回の一手:焼入れ鋼の溝で、折れるまで回す

対象=Profile(Maillefer)、Hero(Micromega)、Quantec(McSpadden)の3群。各群・各サイズ・各テーパー・各湾曲半径ごとに10本を無作為に選び、合計600本
装置=ハンドピース(減速20:1)を支持ブロックに固定し、焼入れ鋼の凹型の半径と凸型のシリンダーで器具の湾曲を保証する。凹型にはV字の溝があり器具を導く。湾曲半径は5mm(急な湾曲)と10mm(緩やかな湾曲)の2種類
回転は350rpm(メーカー推奨・低速ハンドピースの動作速度を模す)。冷たいエアスプレーで冷却し、発熱によるNiTi合金の構造変化を防いだ。破折は器具の先端が湾曲の出口から見えているので容易に検知でき、1/100秒のクロノメーターで時間を記録した。

さらに、破断面はすべて走査型電子顕微鏡で観察して破壊の様式を調べ、各ファイルの先端から3mm(D3)と13mm(D13)の直径をマイクロメーターで実測して、表示されたテーパーが正しいかも確認しています(装置全体の精度±2µm)。統計はt検定。

結果①:湾曲半径がいちばん効く

0 183.3秒 366.7秒 550秒 破折までの回転時間(秒・平均) 491.5秒 106秒 330.1秒 91.7秒 361.6秒 79.5秒 317.8秒 85.8秒 393.8秒 68.9秒 212.4秒 38.2秒 #15 #20 #25 #30 #35 #40 半径10mm(緩い湾曲) 半径5mm(急な湾曲) 原著Table 1のProfile テーパー6%。各条件10本の平均。すべてのサイズで半径5mmと10mmの差は有意(p<10⁻⁴)。サイズの効果については、著者は「大きいほど短くなる傾向があるが統計解析はしておらず、どの群でも一様な所見ではなかった」と明記している(実際、Profileのテーパー4%・半径10mmでは#15→#25でむしろ延びている)
Profile テーパー6%の各サイズにおける破折までの時間(原著Table 1)

湾曲半径を10mmから5mmへ縮めると、寿命は有意に短くなりました。有意でなかったのは600本のうちHero #30 テーパー4%のただ1条件だけ(p=0.23)。著者らは湾曲半径がこの試験における器具破折の予測因子として最も有力だったと述べています。

差の大きさも印象的です。例えばHero テーパー2%の#20は、半径10mmで平均1887秒(標準偏差675)もったのに、半径5mmでは平均110秒(同31)。Quantecの2%・#15は半径10mmで平均2124.5秒(同628・この研究の最長)でしたが、半径5mmでは平均191.2秒(同36)まで落ちます。なお標準偏差が平均の3〜5割に達する条件も複数あり、1本ごとのばらつきは小さくありません。

ここに皮肉があると著者らは書いています。著しく彎曲した歯根(ディラセレーション)こそNiTiファイルが本来開発された場面なのに、まさにその場面で最も折れやすい。そしてNiTiの疲労はSSと違って目で見て判断できないため、急な湾曲を形成したあとの器具はそれ以上使わずに捨てるのが賢明かもしれない、と。

結果②:太い・テーパーが大きいほど短い

0 366.7秒 733.3秒 1100秒 破折までの回転時間(秒・平均) 1005.2秒 212.3秒 389.5秒 114.6秒 379秒 143.6秒 142.8秒 11.3秒 98秒 27.2秒 テーパー2% テーパー3% テーパー4% テーパー5% テーパー6% 半径10mm(緩い湾曲) 半径5mm(急な湾曲) 原著Table 3のQuantec・すべて#25。各条件10本の平均。半径10mmではテーパーが大きくなるほど単調に短くなる。半径5mmでは4%が3%より、6%が5%より長く、単調ではない。Quantecはサイズごとに2つのテーパーが揃っていないため、テーパーの効果の統計検定は行われていない(検定が行われたのはHeroとProfile)。なおテーパーの効果はHero(Table 4)とProfile(Table 5)で検定されており、全体としては有意だが、個々の対比較30組のうち8組は有意差がついていない
Quantec #25 のテーパー別・破折までの時間(原著Table 3)

サイズについては「大きくなるほど破折時間が短くなる傾向」が見られましたが、著者らはこれを統計解析していないと明記し、どの群でも一様な所見ではなかったとも書いています。ただしこの傾向はテーパーが大きいほど、そして湾曲が急なほど顕著になるようだ、と。

一方テーパーの効果は全体として統計的に有意でした(HeroはTable 4、ProfileはTable 5で検定)。ただし表を開くと、個々の対比較30組のうち8組は有意差がついていません——とくに細いファイル(Profile #15は両半径とも、Hero #20の2%対4%と4%対6%)では差が出ていません。Quantecはサイズごとに2つのテーパーが揃っていないため検定そのものが行われていませんが、#25ではテーパーが2%から6%へ増えるにつれ破折時間が減る、ほぼ直線的な関係が見て取れます(グラフのとおり、半径5mmでは4%が3%より、6%が5%より長く、完全に単調ではありません)。

著者らの結論はこうです。動的な破折までの時間は、器具の直径に反比例する。サイズが増えてもテーパーが増えても、理論上は寿命が縮む。これは静的なねじり試験で「直径が増えると破折抵抗が増える」とされてきたのと正反対なので、太い器具ほど、細い器具と同じかそれ以上に頻繁に捨てるのが賢明かもしれない、と。

この研究で最も長かったのはQuantecのテーパー2%の一群でしたが、著者らはすかさず注意を添えています——これらは直径が小さく(#15・#20・#25)テーパーも2%と小さい。同じことがHeroの2%・半径10mmでも起きており、設計がまるで違うのに同じ結果になった。つまり効いているのはブランドの設計より直径とテーパーだったと読めます。

結果③:折れ方はすべて「延性破壊」だった

走査型電子顕微鏡で破断面を見ると、3ブランドすべて、例外なく延性破壊でした。巨視的には滑らかな破断面で、高倍率にするとクレーター状の微小空洞(マイクロボイド)の集合が一様に広がっています。

Laustenらの整理によれば、これは器具の外側表面にかかる引張応力が破壊の起点として支配的な延性破壊であることを示す所見です。対照的に、脆性破壊ではこうした形態は現れません。折れ方そのものが「繰り返し疲労が主因である」と告げているわけです。

ブランド間の比較は、直径が揃う条件だけ

ブランド間の比較は、直径が揃う#25のテーパー4%と6%に限って行われました。Profileは、テーパー4%・6%の半径10mmと、テーパー6%の半径5mmで有意に優れ半径5mm・テーパー4%ではQuantecが有意に優れていました。最も過酷な条件は半径5mm・テーパー6%です。有意差がつかなかったのはProfile対Heroの4%・半径5mmの1組だけでした。

テーパー表示の正確さという別問題

実測の結果、表示テーパーはおおむね正確でした。ただし気になる例も挙げられています。

表示4%に対し、Profile #30は実測3.3%、#35と#40は4.5%Hero #25は3.7%(いずれも半径5mmの試験に使った個体)。Hero #20は3.5%(半径10mmの試験に使った個体)。Quantecが最も正確で、Heroは4%と6%で最も不正確だった。
ISOの規定では、サイズ8〜60の器具の特定点の直径は±0.02mmを超えてずれてはならない。ところがテーパー4%と6%のファイルについては、その精度を定める規格が存在しない

著者らはここを突きます。テーパーが大きいほど破折時間が短くなるのだから、折れやすいファイルほど規格は厳密であるべきではないか、と。

明日の臨床へ

急な湾曲の根管では警戒する。この試験で寿命を最も強く決めたのは湾曲半径だった。
急な湾曲を形成した器具は、それ以上使わないという選択肢。NiTiの疲労はSSと違い目で見えない。
太い器具・テーパーの大きい器具を「丈夫だ」と思わない。静的試験の直感が通用しない領域である。
・回転速度について=Pruettらは750〜2000rpmの範囲では破折までの回転数に有意な影響がなかったと報告している。ただしメーカーは臨床での寿命を延ばすため200〜600rpmを推奨している。
・ハンドピースでは指先で感じる器具の弱りが分からない。この試験の条件は、その感覚が使えない状況そのものである。

ここだけ、冷静に補助線

著者ら自身が最も大きな限界を書いています。この研究は形成中の軸方向の動き(ペッキング)を扱っていません。上下動があれば応力が一点に集中しないため、臨床での器具寿命はこの実験より長くなると予想される。そして「これらの器具は、この研究と同じような使い方をするようには設計されていない。根管内の一定の深さに留まり続けることは早期破折を招く」とはっきり述べられています。つまりこの数字は臨床で何秒もつかの目安ではなく、条件を揃えて器具同士を比べるための物差しです。また試験は焼入れ鋼の溝という理想化された湾曲で行われており、象牙質を削る抵抗も、洗浄液も、根管の断面形も入っていません。ブランド間の比較も#25のテーパー4%・6%に限られます。もうひとつ、ブランドを名指しで順位づけている論文なので添えておきます。原著の謝辞には、試験した3ブランドすべての製造元(NT Co./Tycom・Maillefer・Micromega)が挙げられています。資金提供の明記はありませんが、器具の提供を受けた可能性を念頭に置いて読むのが妥当でしょう。それでも「静的試験では見えないものが、回し続けると見える」と示したこの論文は、NiTi器具に破折抵抗の試験規格が必要だという主張を裏づける土台になりました。

今日のひとこと

著者らの結論:湾曲半径が疲労抵抗を決める最も有力な因子であり、半径が小さくなるほど破折までの時間は短くなる。テーパーも有意で、直径が増えるほど破折時間は短くなる。破折はすべて延性破壊であり、繰り返し疲労が主要な原因である。臨床に効く形に直すと3つです。①急な湾曲ほど折れやすい——ところが著しく彎曲した歯根(ディラセレーション)こそNiTiが本来開発された場面という皮肉があり、しかもNiTiの疲労はステンレスと違って目で見て判断できないので、急な湾曲を形成した器具は捨てるのが賢明かもしれない、と著者らは書いています。②太い器具・テーパーの大きい器具ほど早く折れる(ただしテーパーの対比較30組のうち8組は有意差がつかず、とくに細いファイルでは差が出ていません)——静的なねじり試験の直感(直径が増えれば丈夫)が通用しません。この研究で最も長くもったのはQuantecのテーパー2%の一群でしたが、著者らは直径が小さくテーパーも小さいことが理由であり、設計がまるで違うHeroの2%でも同じ結果になったと指摘しています。③規格が追いついていない——ISOは直径のずれを±0.02mm以内と定めるが、テーパー4%・6%のファイルには精度の規格が存在しない。折れやすいファイルほど規格は厳密であるべきだ、というのが著者らの主張です。筆者の読みでは、この論文の値打ちは個々の秒数より「止めて測る試験では回転器具の折れ方は分からない」と示した点にあります。ただし著者ら自身が軸方向の動き(ペッキング)を扱っておらず、臨床での寿命はこの実験より長くなると予想されると明記しています。

Haïkel Y, Serfaty R, Bateman G, Senger B, Allemann C. Dynamic and cyclic fatigue of engine-driven rotary nickel-titanium endodontic instruments. J Endod. 1999;25(6):434-440. PMID: 10530246
本記事は論文の要点を医療従事者向けにまとめた解説です。臨床判断は原著と最新のエビデンスをご確認ください。