エンド|根管洗浄4方法(通法の針・EndoVac・EndoActivator・手動の上下運動)で、AH Plusの象牙細管への浸透を共焦点レーザー顕微鏡で比べた抜去歯の実験室研究(Ch ほか 2021・J Pharm Bioallied Sci)
根管充填の前の洗浄、針で流すだけで根尖付近まで届いているでしょうか。インドなどの研究グループは、抜去した下顎小臼歯76本を4つの洗浄方法に分け、蛍光色素を混ぜたAH Plusを側方加圧で充填し、根尖から1・3・5 mmの断面で、シーラーが象牙細管に入り込んだ深さと周の割合を測りました。浸透の深さ(表1の値。指標は最も深い点の可能性)は、3 mmと5 mmでEndoVacが他の3方法より有意に深く、根尖から1 mmではEndoVacとEndoActivatorに有意差はありませんでした。通法の針はどの高さでも最も浅い値でした(5 mmでは手動の上下運動と有意差なし)。一方、周の割合は図の数値だけで、3 mmと5 mmではEndoActivatorがわずかに上回っていました。
①洗浄液、根尖付近まで届いていますか
根管形成のあいだ、シリンジの針で次亜塩素酸ナトリウムを流し、最後にEDTA。多くの医院で見慣れた手順です。けれど針は根尖の手前で止めるので、洗浄液が根尖付近まで入れ替わっているのかは、目では確かめられません。
結論を先に言うと、この抜去歯の実験では、針で流すだけの群がどの高さでも最も浅く、陰圧で吸い込むEndoVacが3 mm・5 mmで最も深い浸透でした。根尖から1 mmでは、音波で動かすEndoActivatorとEndoVacに有意差はありませんでした。
②なぜ洗浄とシーラーが関係するのか
シーラーは、ガッタパーチャと根管壁のすき間を埋める材料です。象牙細管の中まで入り込むと、根管壁との封鎖が良くなると考えられています。著者らは、先行研究を引いて、シーラーの浸透と抗菌作用には関連があるとも述べています。
シーラーが細管に入るには、壁の表面が削りかすやスメア層でふさがれていないことが前提になります。ところが通法の針洗浄は、根管の途中までは効いても、根尖側では洗浄液が届きにくいと指摘されてきました。著者らは、その理由として、根尖側に空気がたまって液が入れ替わらない「ベーパーロック」や、押し出し事故を防ぐために針を作業長の2 mm手前で止めることを挙げています。ただし著者ら自身、この説明は十分に確立されていないと書いています。
③今回の実験:洗浄の方法を4通りに変えて比べた
形成と充填:ProTaperでF3までクラウンダウン。AH Plusに蛍光色素(0.1%ローダミンB)を混ぜ、ガッタパーチャで側方加圧充填。
洗浄4方法(洗浄液はいずれも5.25%次亜塩素酸ナトリウムと17%EDTA):
・通法の針:側方開口の28G針(Max-i-Probe)で1 mLずつ、作業長の2 mm手前から
・EndoVac:根管口から液を送り、陰圧で根尖側から吸い出す仕組みの装置(原著の方法の記載は不明瞭)
・EndoActivator:音波で振動するポリマーチップ(25/.04)を作業長の2 mm手前で30秒ずつ作動
・手動の上下運動(MDA):ガッタパーチャポイントで押し引きして洗浄液を動かす
評価:37℃で1週間保管後、根尖から1・3・5 mmで輪切りにし、共焦点レーザー顕微鏡で観察。①シーラーが象牙細管に入り込んだ深さと、②根管壁の周のうちシーラーが細管に入っていた部分の割合を測定。深さは「8か所の平均」と「最も深い点」の2通りで測り、統計は最も深い点について行ったと書かれています。表1の値がどちらの指標かは明記がなく、最も深い点の値の可能性があります。
④結果1:浸透の深さはEndoVacが3 mm・5 mmで最も深い
4方法とも、根尖に近いほど浅く、5 mmで最も深くなりました。群どうしの比較(表2のBonferroni検定)は、高さによって並びが変わります。
・根尖から1 mm:EndoVac 426とEndoActivator 443に有意差なし(p=0.860)。この2つは手動の上下運動 346、通法の針 304より有意に深い。手動の上下運動も通法の針より有意に深い(p=0.003)
・3 mm:EndoVac 892>EndoActivator 721>手動の上下運動 602>通法の針 548(すべての組み合わせで有意差)
・5 mm:EndoVac 993>EndoActivator 943(p=0.003)>手動の上下運動 770・通法の針 755(この2つは有意差なし p=1.000)
1 mmの値は、数字だけ見るとEndoActivatorのほうがEndoVacよりわずかに大きく、統計では差がつきませんでした。「EndoVacがどの高さでも一番」と読むのは、浸透の深さについては3 mmと5 mmに限った話です。
⑤結果2:浸透した周の割合は、3 mm・5 mmでEndoActivatorと並ぶ
周の割合は、根尖から1 mmではEndoVacが40.15%で最も高く、本文では他の3方法より有意に高いと書かれています。一方、3 mmと5 mmでは、本文は「EndoVacとEndoActivatorが通法の針・手動の上下運動より高かった」と2つを並べて書いています。図1の数値でも、3 mmはEndoActivator 53.45%とEndoVac 48.95%、5 mmは60.20%と60.00%で、EndoActivatorのほうがわずかに上でした。
抄録と結論では「EndoVacは1・3・5 mmで割合も深さも最大」とまとめられていますが、図と表の数値とはこの点で食い違います。周の割合にはp値や標準偏差の表がなく、差の大きさを確かめることもできません。
⑥なぜEndoVacで深く入ったのか(著者らの説明)
著者らは、EndoVacの陰圧が根尖側まで新しい洗浄液を流し続け、空気のたまりを防ぐこと、微細なカニューレの穴から削りかすを吸い出せることを理由に挙げています。EndoActivatorについては、音波で根管内の液を動かす流体の作用で、通法の針や手動より浸透が良かったと説明しています。
ただし、この研究ではスメア層や削りかすの残り具合は測っていません。「きれいに洗えたから深く入った」というのは、先行研究の結果を引いた著者らの解釈です。著者ら自身も、洗浄の方式より液の量と届く深さのほうが大事だったという別の研究(Howardら)に触れています。
⑦明日の臨床へ
補足(筆者の読み):
・この条件では、針で流すだけの群が1 mmと3 mmで最も浅く、陰圧(EndoVac)や音波(EndoActivator)を使った群のほうが深く入りました(著者らは、液が根尖側まで届くためと説明)。
・根尖から1 mmの深さでは、EndoVacとEndoActivatorに差はなく、周の割合は3・5 mmでEndoActivatorが並ぶか上でした。「EndoVacでなければ」とまでは読めません。
・ガッタパーチャポイントで押し引きする方法は、3 mmまでは針だけより深く、器具を足さずにできる工夫の1つです(5 mmでは有意差なし)。
・シーラーが深く入ることが、根尖病変の治癒や治療成績の向上につながるかは、この研究では調べていません。器具を導入するかは、根管の形・費用・手間と合わせて考える話です。
⑧ここだけ、冷静に補助線
今日のひとこと
著者らの結論:洗浄方法はシーラーの象牙細管への浸透に有意に影響し、EndoVacは根尖から1・3・5 mmで他の方法より浸透が良かった。ただし表の統計を見ると、浸透の深さは1 mmではEndoActivatorと有意差がなく、周の割合は3・5 mmでEndoActivatorの数値がわずかに上でした。筆者の読みでは、針で流すだけより、陰圧(EndoVac)や音波(EndoActivator)を使った群のほうが、抜去歯ではシーラーが深く入った(著者らは、液が根尖側まで届くためと説明)。浸透が根管治療の成績を良くするかは、この研究では調べていません。


